きゅうせいたんのうえん
急性胆のう炎
胆のう内で細菌が感染を起こしたり周囲の炎症が胆のうに達したりすることなどによって、痛みや吐き気などの症状が起きる病気
13人の医師がチェック 135回の改訂 最終更新: 2019.10.18

急性胆のう炎の治療について

急性胆のう炎とわかったら、まずは食事を止めて抗菌薬で治療を行います。急性胆のう炎の根本的な治療法は外科手術(胆のう摘出術)ですので、可能であれば早期に手術を行います。身体の状態が悪かったり持病があったりしてすぐに手術を受けるのが難しい人には、胆のう内にたまった胆汁を身体の外に出す治療(ドレナージ)が行われます。

1. 抗菌薬治療

急性胆のう炎の人は入院での治療が必要になります。初期治療では食事を止めて十分な量の点滴を行い、痛みが強い人には鎮痛薬を使用します。

初期の治療でもっとも重要なのは抗菌薬治療です。急性胆のう炎の原因となる細菌は主に大腸菌の仲間なので、これらに効果がある抗菌薬を使用します。胆のう炎の重症度に応じて抗菌薬の種類を選びます。

抗菌薬治療で炎症が落ち着いたあとに手術を行いますが、炎症が落ち着かない場合にはドレナージが必要になります。

2. 胆のう内の胆汁を身体の外に出す治療:ドレナージ

急性胆のう炎の根本的な治療法は外科手術ですが、いろいろな理由で早期に手術ができない人では胆のう内の胆汁を身体の外に出す治療(ドレナージ)が必要になる場合があります。ドレナージが必要なのは次のような人です。

  • 抗菌薬治療を行っても胆のう炎が改善しない人
  • もともと持っている病気があり、すぐに外科手術ができない人
  • 重症胆のう炎で身体の状態が悪く、すぐに外科手術ができない人

ドレナージの方法にはいくつかの種類があります。もっともよく行われているのは経皮経肝胆のうドレナージ(PTGBD)で、胆汁の排出効果が高く比較的安全な治療です。内視鏡治療のエキスパートがいる病院では内視鏡を用いた治療を行うこともあります。

経皮経肝胆のうドレナージ(PTGBD)

PTGBD(percutaneous transhepatic gallbladder drainage)は、右の脇腹から胆のうに向けて太さ4mmほどのポリエチレン製チューブを入れる治療です。胆のうの中の感染した胆汁はチューブを通って身体の外に流れ出て、チューブの端につけられたボトルに溜まります。

PTGBDは主にレントゲン室で行います。腹部エコーの機械でお腹の中の様子を観察しながら胆のうに向けて針を刺し、チューブを胆のうの中まで挿入します。チューブは抜けないように糸で皮膚と縫い付けます。

ドレナージで胆のう炎が良くなったあとに胆のうを切除し、その時にチューブを抜きます。胆のうを取らずにチューブだけを抜いてしまうと胆のう炎が再発するおそれがあるため、原則として手術をしない限りはチューブを抜くことはできません。

経鼻胆のうドレナージ(ENGBD)、内視鏡的胆のうステント(EGBS)

内視鏡的逆行性胆管造影検査(ERCP)を行い、十二指腸経由でカテーテルを胆のう内に挿入して胆汁を流す治療です。治療はレントゲン室で行い、点滴の麻酔薬で眠った状態で治療が始まります。内視鏡を十二指腸まで進め、太さ3mm程度のチューブを胆のうの中に入れます。

チューブは長さ2.5mほどあり、胆のうから十二指腸、胃、のどを経由して鼻から出します。鼻から出たチューブの先にボトルをつないで、ここに胆汁が溜まります。この方法を経鼻胆のうドレナージ(ENGBD)と言います。確実に胆汁を流すことができ、どろどろとした胆汁でチューブがつまってしまった時にも生理食塩水などで洗浄することができるのが長所ですが、チューブが常にのどにあるため不快感が強いのが欠点です。

一方、長さ15cmほどの短いチューブ(ステント)をを胆のうと十二指腸を繋ぐように留置する治療を内視鏡的胆のうステント(EGBS)と言います。胆のうの中の胆汁はステントの中を通って十二指腸に流れ出ます。体内に入れるタイプのチューブなので不快感はありませんが、胆汁がどろどろしているとステントがつまって交換が必要になる場合があります。

胆のう炎が良くなったあとですぐに手術ができる人は、胆のうを切除する時にこれらのチューブを抜くことができます。手術まで時間が空く人は、ENGBDを抜いて一旦退院し、手術まで経過観察を行います。ステントは自宅生活の支障にならないため、身体の中に残した状態で退院して手術を待ちます。

3. 外科手術

急性胆のう炎の根本的な治療法は胆のうを全て取り出す外科手術(胆のう摘出術)です。手術は全身麻酔で行います。具体的には下記の手順で胆のうを切除します。

【胆のう摘出術の大まかな手順】

  • 胆のうに栄養を送っている胆のう動脈を切り離す
  • 胆のうと総胆管とをつないでいる胆のう管を切り離す
  • 肝臓の下面にくっついている胆のうをはがす

手術には大きく分けて腹腔鏡を使う手術とお腹を切り開く開腹手術の2つがあります。急性胆のう炎では腹腔鏡を使う「腹腔鏡下胆のう摘出術」がもっともよく行われており、開腹胆のう摘出術と比べて次のようなメリットがあると考えられています。

  • 傷が小さいため術後の痛みが少ない
  • 入院期間が短くてすむので、早く社会復帰できる

一方、以前にお腹の手術を行ったことがある人や腹腔鏡では安全に手術ができない可能性がある人では、開腹手術が行われることがあります。どの手術を選ぶかはお医者さんとよく相談して指示に従ってください。

それぞれの手術について詳しく説明します。

腹腔鏡下胆のう摘出術

腹腔鏡とは細い筒状のビデオカメラのことです。お腹に小さな穴をあけるだけで、そこからカメラを差し込みお腹の中を観察できます。腹腔鏡下胆のう摘出術ではお腹に3〜4か所の穴をあけ、「鉗子」と呼ばれる細長い手術器具を入れて、腹腔鏡で観察しながら胆のうを切除します。よく観察ができるように、お腹を二酸化炭素のガスで膨らませながら手術を進めます。

手術時間は平均1-2時間ですが、胆のうが周りの臓器(肝臓や腸など)と強くくっついていたりするとさらに時間がかかることがあります。

手術が終わったら、1-2日後から食事をとりはじめ、3日後以降に退院となる流れが一つの目安になります。ただし、病状によって入院期間は変わりますので、詳しいスケジュールは担当のお医者さんに聞くようにしてください。

開腹胆のう摘出術

開腹手術とは、外科手術でよくイメージされるような「お腹を切る」手術のことです。胆のう摘出術では右のあばらの下あたりを10-15cm程度切開し、その部分から外科医が手を差し入れて直接胆のうを触りながら手術を行います。開腹手術は傷が大きく術後の痛みが大きくなりがちというデメリットがありますが、一方で胆のうの炎症が激しくて周りと強くくっついているような難しい状況でも手術を安全に行いやすいというメリットがあります。

開腹手術では傷がふさがって痛みが落ち着くのに1週間程度かかると言われており、入院期間も術後1週間程度となるのが一般的です。

4. 急性胆のう炎の死亡率

急性胆のう炎によって亡くなってしまう人は1%未満と言われており、適切に治療が行われれば命を失う可能性は高くない病気といえます。ただし、大きな手術の後に胆のう炎を起こした場合や無石胆のう炎の場合には死亡率が20%を超えるという報告もあります。また、75歳以上の高齢者や糖尿病を持っている人ではこれらより死亡率が高いと言われています。

5. 急性胆のう炎のガイドライン

急性胆のう炎の基本的な知識や治療法に関するガイドラインとして、

が公表されています。お医者さんはガイドラインを参考にしながら、一人ひとりに合った治療になるよう方針を組み立てています。