手術前後の抗がん剤治療では何をする?効果、副作用、再発率など
胃がんの手術の前または手術のあとに
1. 手術前の抗がん剤治療
手術の前に抗がん剤治療を行うことがあります。胃がんが胃壁の深くまで浸潤している場合や
現時点では胃がんの手術前の抗がん剤治療について、標準治療とされる方法はありません。どのような患者さんに手術前の抗がん剤治療の効果があるか、またどんな薬を使うべきかに関して検討が行われています。現時点では各施設の基準に基づいて、また臨床試験として、手術前の抗がん剤治療が行われています。
2. 手術後の抗がん剤治療
手術後に行う抗がん剤治療は再発を予防するために行われます。術後補助
ある程度進行したがんでは、目に見えないがん細胞がすでに小さな転移を起こしていることが想定されます。手術した部分のがんを取り除いても、小さな転移が残っていれば再発につながると考えられます。再発予防のためには、全身に見えない転移があることを想定する必要があります。
手術後の病理検査で進行した状態であったと診断された場合は、再発の危険性が比較的高い状態と考えられるため、再発予防のために手術後の抗がん剤治療が勧められます。
抗がん剤治療には副作用もありますが、手術の効果を最大限に高めるという狙いがあります。
手術後の抗がん剤治療で効果が確認されている方法は2つあります。
- S-1単独療法
- XELOX療法
以下ではそれぞれの方法の効果が確かめられた臨床試験などを紹介します。少し難しい話なので、結果だけを知りたい人は表の数字に注目してください。
S-1単独療法
S-1は
通常「28日連日服用後、14日間休薬」を1サイクルとし、1サイクルを繰り返して使います。手術のあと休薬日も含めて1年間かけて内服を続けます。
| 日 | 1-28 | 29-42 |
| S-1 80mg/m2 | ○(連日服用) | 休薬 |
用量は通常、体表面積によって変更されます。体表面積1.25m2未満の人であれば80mg/日、1.25〜1.5m2であれば100mg/日、1.5m2以上であれば120mg/日となります。全身の状態などによっても増減が考慮されます。副作用にはやや注意が必要で、下痢が多い人には特に注意するべきと考えられます。
効果について、手術後にS-1を内服する人と
| 薬剤 | S-1 | 経過観察 |
| 3年生存率 | 80.1% | 70.1% |
| 薬剤 | S-1 | 経過観察 |
| 5年無再発生存率 | 65.4% | 53.1% |
| 71.7% | 61.1% |
参照:J Clin Oncol.2011;29:4387-93
臨床試験の結果では手術後にS-1を1年間内服することで再発率や死亡率が低下することが明らかになりました。また、S-1にドセタキセルという抗がん剤を組み合わせることで、生存率が上昇することも明らかになっており、ドセタキセルが併行して投与されることがあります。
XELOX療法
XELOX療法はカペシタビン(Cap)とオキサリプラチン(L-OHP)を併用する治療です。カペシタビンは内服薬で、オキサリプラチンは注射薬です。21日を1回の治療期間としてこれを8回繰り返します。
| 日 | 1-7 | 8 | 9-14 | 15-21 |
| カペシタビン 2000mg/m2/日(内服) | ○(連日服用) | ○ | ○(連日服用) | 休薬 |
| オキサリプラチン100−130mg/m2(点滴) | 休薬 | ○ | 休薬 | 休薬 |
XELOX療法の効果を経過観察と比較して調べた臨床試験があります。
| 治療法 | XELOX療法 | 経過観察 |
| 5年無病生存率 | 68% | 53% |
| 5年生存率 | 78% | 69% |
参照:Lancet Oncol.2014;15:1389-96
胃がんのステージII、IIIの人に対して再発予防目的でXELOX療法を行うと5年生存率や無病生存率が改善することが明らかになりました。