めまい・耳鳴り
最終更新: 2018.03.19

耳鳴りの治療:処方薬

耳鳴りを良くするために処方される薬の効果や副作用などを説明します。

1. 耳鳴りがあるときにはどんな薬を使うのか?

ここでは、病気が原因の耳鳴りに重点を置いて、耳鳴りの症状を改善するために処方される薬の例を紹介します。具体的には次のものです。

【耳鳴りにがある人に使われる主な薬】

  • アデノシン三酸ナトリウム(ATP)(商品名:アデホス、トリノシン®など)
  • ビタミンB12製剤(商品名:メチコバール®など)
  • イソソルビド製剤(商品名:イソバイド®など)
  • 抗めまい薬
  • ステロイド薬(商品名:プレドニン®、プレドニゾロンなど)
  • ニコチン酸アミド・パパベリン塩酸塩配合錠(商品名:ストミンA®配合錠)
  • 抗不安薬

なお、耳鳴りを起こす代表的な病気「突発性難聴」と「メニエール病」については、「突発性難聴の治療」、「メニエール病の治療」で説明しています。

2. 耳鳴りの薬①:アデノシン三リン酸二ナトリウム(ATP)(商品名:アデホス、トリノシン®など)

メニエール病など内耳の異常によるめまい・耳鳴り・難聴を改善します。耳鳴りやめまいの予防薬として長期的に飲むことも多い薬です。

3. 耳鳴りの薬②:ビタミンB12製剤(商品名:メチコバール®など)

ビタミンB12は食べ物にも含まれているビタミンです。神経細胞の修復やタンパク質・脂質などの代謝を助ける働きを持っています。めまいや耳鳴りの治療にも使われているメチコバール®(メコバラミン)などの薬は、神経組織に取り込まれやすいビタミンB12製剤です。ビタミンB12製剤は、耳鳴りやめまいの治療以外にも、しびれや痛みが出る末梢性神経障害などの治療でも使います。

ビタミンB12は水溶性ビタミンと言って水に溶けやすい物質です。水溶性ビタミンは過剰に摂っても体に蓄積しにくいので安全性が高いとされます。そのこともあり、ATP製剤と同様に、ビタミンB12製剤を予防的に長期に渡って飲んでいる人も大勢います。

4. 耳鳴りの薬③:イソソルビド製剤(商品名:イソバイド®など)

イソバイド®(イソソルビド)など薬には、メニエール病で内耳にたまりすぎている水分を移動させて尿にする作用があります。めまい・耳鳴りの改善が期待できる薬です。

5. 耳鳴りの薬④:抗めまい薬

ベタヒスチンメシル酸塩(商品名:メリスロン®など)、ジフェニドール塩酸塩(商品名:セファドール®など)は抗めまい薬とも呼ばれる薬です。メニエール病のめまい・耳鳴りを改善します。

6. 耳鳴りの薬⑤:ステロイド薬(商品名:プレドニン®、プレドニゾロンなど)

炎症を和らげる作用など多くの作用があり、アレルギー性疾患、自己免疫疾患など多くの病気や症状に対して使われている薬です。メニエール病前庭神経炎に対して内耳や神経の炎症を抑える目的で使われます。

用量を守ることがとても大切で、急にやめたり処方された用量を変えて飲んだりすると、体のホルモンバランスが崩れてしまい危険です。

副作用にも注意が必要な薬で、処方した医師や薬剤師から注意点や副作用が出たときの対処をよく聞いておき、正しく使ってください。副作用についてはコラム「ステロイド内服薬の副作用とは」で詳しく解説しています。

7. 耳鳴りの薬⑥:ニコチン酸アミド・パパベリン塩酸塩配合錠(商品名:ストミンA®配合錠)

ストミンA®配合錠には2種類の有効成分が配合されています。

ニコチン酸アミドは、内耳の細胞の機能を改善します。パパベリン塩酸塩は、内耳の血流を改善します。この2種類の作用により、内耳や神経に原因がある耳鳴りに対して効果が期待できます。

副作用が起こることはまれとされますが、眠気や頭痛などの精神神経系症状や、便秘、口の渇きなどの消化器症状には注意が必要です。

8. 耳鳴りの薬⑦:抗不安薬

自律神経の乱れなどによる不安は耳鳴りやめまいを引き起こす場合もあります。抗不安薬によって不安や緊張を和らげることで、耳鳴りやめまいなどの改善効果が期待できます。

ロフラゼプ酸エチル(商品名:メイラックス®など)

作用の持続時間が比較的長めの抗不安薬で、耳鳴りやめまいの治療にもよく使われています。不安、緊張、不眠などを改善するため、自律神経失調症など、神経のバランスが崩れることでさまざまな症状が出ている状態に対しても効果が期待できます。

アルプラゾラム(商品名:コンスタン®、ソラナックス®など)

ロフラゼプ酸エチルに比べると作用の持続時間が短いタイプの抗不安薬です。比較的速やかに効果があらわれる特徴もあり、耳鳴りやめまいの症状が出たときに飲む頓服薬(とんぷくやく)としても使われています。自律神経失調症心身症における不安、緊張、不眠などの改善にも効果が期待できます。

クロチアゼパム(商品名:リーゼ®)

抗不安薬の中でも比較的速やかに効果があらわれ、体内で分解されるのも速く、あとに残りにくい特徴があります。耳鳴りやめまいの他、不安、緊張、不眠、自律神経失調症における肩こりや食欲不振などに使う場合もあります。

その他の抗不安薬 

その他、肩こりや筋肉の緊張を伴う場合にはエチゾラム(商品名:デパス®など)などの抗不安薬が治療に使われることもあります。

また耳鳴りやめまいを経験すると、再び発症することへの不安から不眠などの症状が引き起こされることもあり、抗不安薬が有用となる場合があります。

気をつける副作用としては、抗不安薬の多くが眠気を現すことがあるため、転倒(特に高齢者など)や車の運転などの危険を伴う作業に対しては特に注意が必要です。

9. 耳鳴りの薬⑧:その他の薬

これ以外にも末梢の血管拡張薬であるカリジノゲナーゼ(商品名:カルナクリン®など)などの薬が使われる場合もあります。

ストレスや不安からくる心因性の症状に対しては、抗うつ薬(SSRIなど)や自律神経調整薬のトフィソパム(商品名:グランダキシン®など)といった薬もあります。その他、漢方薬による治療も選択肢の一つです(詳しくは「耳鳴りに効果が期待できる漢方薬は?」で解説しています)。

耳鳴りやめまいに処方される薬は、原因がどのようなものなのかを診察や検査から推定したうえで、原因に合わせて選ばれています。薬局・薬店やドラッグストアでも「耳鳴りに効果が期待できる市販薬(OTC医薬品)」に挙げたような薬が買えますが、自分に合うものが見つからないとき、特に気になる症状があるときなど、困ったときは耳鼻咽喉科(じびいんこうか)のある病院・クリニックで相談してみましょう。



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