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肺炎

肺炎の基礎知識

肺炎とは?

  • 肺の中にある肺胞(はいほう)という組織に炎症が起こっている状態
  • 細菌ウイルスなどの病原体が肺に感染して炎症を起こす場合が多い
  • 高齢者や子ども、免疫力の落ちている人が起こしやすい
  • 日本人の死因の第4位(がん、心臓病、脳卒中に続く)
    • ただし高齢者に限った統計ではがんなどを抑え死因の第1位
  • 肺炎は感染を起こした環境や原因の病原体によって、いくつかのタイプに分けられる(詳細はそれぞれの病気を参照)
  • 病原体による分類
    • 細菌性肺炎:細菌が原因
      肺炎球菌肺炎
      インフルエンザ菌肺炎(インフルエンザウイルスとは別もの)
      ・モラキセラ・カタラーリス肺炎
      ・クレブシエラ・ニューモニエ(肺炎桿菌)肺炎
      黄色ブドウ球菌肺炎
      緑膿菌肺炎
    • 非定型肺炎:一般的な細菌とは別のタイプの病原体が原因
      マイコプラズマ肺炎
      レジオネラ肺炎
      クラミジア・トラコマティス肺炎
      クラミドフィラ肺炎
      オウム病(クラミジア・シッタシによる肺炎)
      ニューモシスチス肺炎
    • ウイルス性肺炎:ウイルスが原因
      サイトメガロウイルス肺炎
      ・インフルエンザウイルスによる肺炎
      ・RSウイルス肺炎
      アデノウイルスによる肺炎
      麻疹による肺炎
    • 症状で病原体は見分けられない
    • クレブシエラ・ニューモニエ(klebsiella pneumoniae)やニューモシスチス(pneumocystis jirovecii)という名前は肺炎(英語でpneumonia)と同語源
      ・ギリシャ語のpneumon(肺)が由来
  • 細菌によって成り立った肺炎の背景による分類
    • 市中肺炎:病院の外で感染して起こった肺炎
      ・原因として肺炎球菌、インフルエンザ菌、マイコプラズマが多い
    • 院内肺炎:病院に入院している人が感染して起こった肺炎(重症になりやすい)
      ・黄色ブドウ球菌、緑膿菌が問題になりやすい
      ・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、多剤耐性緑膿菌(MDRP)など、特定の抗生物質が効かない細菌が増えている
  • その他の分類
    • 誤嚥性肺炎:飲み込みの機能が低下することで、口の中の細菌や食べ物などが気管や肺に入っていくことで生じる
    • 過敏性肺炎アレルギーによって起こった肺炎
    • 好酸球性肺炎:好酸球と呼ばれる白血球が起こした肺炎
    • 新生児肺炎:新生児期に発症し、ウイルスや真菌が原因となることがある
    • 間質性肺炎は狭い意味での肺炎には含まれない
  • 肺炎球菌、インフルエンザ菌b型(Hib、ヒブ)、インフルエンザウイルスの感染はワクチンで予防できる
    • 肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンともに満2か月から5歳未満で定期接種されている
    • 肺炎球菌ワクチンは4回接種
      ・1回目と2回目の間、2回目と3回目の間は27日以上の間隔を置く
      ・3回目と4回目の間は60日以上の間隔を置き、かつ1歳から1歳3か月で接種する
      ・肺炎球菌ワクチンを打ってからほかのワクチンを打つまでに6日以上の間隔を置く
      ・肺炎球菌ワクチンとほかのワクチンの同時接種はできる
    • 65歳以上の人も肺炎球菌ワクチンの定期接種がある
      ・5年ごとに再接種する
    • ヒブワクチンは4回接種
      ・1回目と2回目の間、2回目と3回目の間は27-56日の間隔を置く
      ・3回目と4回目の間は7-13か月の間隔を置く
      ・ヒブワクチンを打ったあとほかのワクチンを打つまでに6日以上の間隔を置く
      ・ヒブワクチンとほかのワクチンの同時接種はできる
    • インフルエンザウイルスのワクチンは任意接種で毎年うつ
  • 肺炎の多くはうつる
    • 感染経路は主に飛沫感染接触感染
    • 咳やくしゃみなどで飛び散った唾を吸い込んでうつる(飛沫感染)
    • 飛び散った病原体が手につき、口に入ってうつる(接触感染)
    • 飛沫感染予防にはマスクをつけ、咳エチケット(口をティッシュで覆うなど)を守る
    • 接触感染予防には手洗い・うがいをする
    • 空気感染はしない(患者に近づいただけではうつらない)
    • 近づいて話すなどすることで飛沫感染する場合はある
    • 潜伏期間は短い病原体で数日、長い病原体で数週間ほど
    • 潜伏期間には症状がないが、周りにうつす可能性がある
    • 治療で症状が止まったあともしばらくは周りにうつす可能性がある
    • 流行中とそうでないときの大きな差はない(いつどこでうつるかわからない)
    • どこからうつったか特定できない場合がほとんど
    • ニューモシスチス肺炎サイトメガロウイルス肺炎は免疫が正常に働いている人にはうつらない
    • 過敏性肺炎好酸球性肺炎は免疫の異常が原因なのでうつらない
    • レジオネラ肺炎は温泉など不潔な水がある環境で集団発生する
    • オウム病は鳥からうつる

症状

  • 主な症状
    • 発熱
    • 激しい咳
    • 息切れ、息苦しい、呼吸困難
  • 出ることがある症状
    • だるい、倦怠感、疲れ、疲労
    • 胸の痛み
    • 喉(のど)の痛み
    • 声が枯れる、声が出ない
    • 耳の痛み
    • 吐き気
    • 下痢
    • 皮疹発疹、皮膚にブツブツが出る
    • 関節の痛み
    • 鼻水、痰(たん)
    • 喘鳴喘息のように息がヒューヒュー、ゼーゼー鳴る)
    • 意識がもうろうとする、ぼーっとする、錯乱などの意識障害
  • 特に細菌性肺炎では黄色や緑色の痰が出ることがある
  • 重症の場合は水分がとれず脱水になったり、呼吸が十分にできず酸素吸入が必要になることもある
  • 子供や高齢者では、高熱やぐったりする以外に症状がない場合もある
    • 咳がないこともある
  • 子供の症状
    • 発熱
    • 息苦しさ
    • 子供の肺炎は症状だけでは気管支炎などとの区別が難しいことも多い
    • マイコプラズマ肺炎で鼻水や痰が出ることは大人には少ないが、子供では比較的多い
    • 子供は肺炎をきっかけに喘息になることがある
    • ぐったりして元気がなければ、肺炎かどうかにかかわらず医師に見せたほうがよい
  • 5歳未満の子供ではウイルス性肺炎が最も多い
  • 子供で特に注意するべき症状
    • ぐったりしている
    • 息が荒い
    • 息が苦しそう
    • 痰が多い
    • 意識がもうろうとしている
    • 喘鳴

検査・診断

  • 画像検査:肺の炎症の有無、炎症を起こしている場所などを調べる
    • 胸部レントゲン写真(X線検査
    • 胸部CT検査
  • 血液検査:炎症の状態などを調べる
  • 喀痰検査、細菌検査:痰や血液中の細菌の有無を調べる
  • レントゲン写真に特徴的な白い影が写るが、例外も多い
    • レントゲンだけでは診断できない
    • レントゲンだけで肺炎でないとは言えない
    • 症状などで肺炎の疑いが弱い場合、レントゲンは参考程度
    • 症状などから肺炎が強く疑われた場合はレントゲンが必須
  • 自然に治ることを期待できるような場合、肺炎と風邪などを見分ける必要はない
    • 自然に治りそうなら検査も必要ない
  • 痰などから原因の細菌そのものが発見されることが最も確実な証拠になる

治療

  • 次のすべてに当てはまる場合は自然に治りやすい
    • 65歳未満
    • もともと症状が軽い
    • 症状が軽くなってきている
    • 動いても息苦しさがない
  • 子供や高齢者では入院して治療が行われることも多い
  • 治療は大きく2つに分けられる
  • 病原体を倒す治療(抗菌薬治療)
    • 有効な抗菌薬(抗生物質、抗生剤)は病原体ごとに異なる(原因微生物ごとの肺炎の解説を参照)
    • 病原体に合った抗生物質を選ばなければ効かない
    • 特定の抗生物質が効かない細菌耐性菌)が年々増えている
    • ウイルスに抗生物質は効かない
    • 若い人の細菌性肺炎は、適切な抗生物質が使われれば3日程度で効果が現れる
  • 症状を軽くするための治療(対症療法
    • 咳止め、痰切り薬
    • 必要であれば濃度の高い酸素を吸う
  • 50歳未満では重症の肺炎になっても死亡率は低い
    • 50歳未満の死因のうち肺炎は1%程度
    • 子供の肺炎では死亡率は非常に低い
  • 高齢になるほど肺炎が主要な死因になる

肺炎に関連する治療薬

鎮咳薬(非麻薬性)

  • 咳を引き起こす咳中枢の抑制作用や気道を広げる作用などにより咳などの呼吸器症状を緩和する薬
    • 咳はウイルスなどの異物や痰を体外へ排出しやすくする生体内防御反応だが、体力の消耗や元々の呼吸器疾患の悪化などを引き起こす場合もある
    • 咳は延髄の咳中枢からの指令によりおこるが、気管支炎症などにより気道が狭くなると咳がおきやすくなる
    • 本剤は咳中枢を抑えたり、気管支を拡張させるなどの作用をあらわす
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アミノグリコシド系抗菌薬

  • 細菌のタンパク質合成を阻害し殺菌的に抗菌作用をあらわす薬
    • 細菌の生命維持や増殖にはタンパク質合成が必要となる
    • タンパク質合成はリボソームという器官で行われる
    • 本剤は細菌のリボソームにおけるタンパク質合成を阻害して抗菌作用をあらわす
  • 薬剤によって抗菌作用の範囲に違いがあり、淋菌淋菌感染症の原因菌)やMRSA(MRSA感染症の原因菌)などに抗菌作用をもつ薬剤もある
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ST合剤

  • 細菌などが行う葉酸合成と葉酸の活性化を阻害し増殖を抑えることで抗菌作用をあらわす薬
    • 細菌などの増殖には遺伝情報を含むDNAの複製が必要でDNAの複製には葉酸が必要となる
    • 細菌などは自ら葉酸を作り、活性化させることでDNAの複製に使用する
    • 本剤は葉酸合成阻害作用をもつ薬剤と葉酸の活性化を阻害する薬剤の配合剤
  • 真菌が原因でおこるニューモシスチス肺炎に使用する場合もある
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セフェム系抗菌薬

  • 細菌の細胞壁合成を阻害し細菌を殺すことで抗菌作用をあらわす薬
    • 細胞壁という防御壁をもつ細菌はこれがないと生きることができない
    • 細菌の細胞壁合成に深く関わるペニシリン結合タンパク質(PBP)というものがある
    • 本剤は細菌のPBPに作用し細胞壁合成を阻害することで細菌を殺す作用をあらわす
  • 妊婦にも比較的安全に投与できるとされる
  • 開発された世代によって第一世代〜第四世代に分けられる
    • 各世代で、各種細菌へ対して、それぞれ得手・不得手がある
    • 世代が同じであっても薬剤によって各種細菌に対して得手・不得手の違いが生じる場合がある
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鎮咳・去痰薬

  • 咳を抑え、痰を吐き出しやすくするなどにより気管支炎などによる呼吸器症状を和らげる薬
    • 咳はウイルスなどの異物や異物をからめとった痰を体外に排出しやすくなる生体防御反応
    • 咳によって体力の消耗、不眠など体への負担が増す場合もある
    • 本剤は咳を抑える鎮咳作用と痰を排出しやすくする去痰作用をあらわす
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ペニシリン系抗菌薬

  • 細菌の細胞壁合成を阻害し細菌に殺菌的に抗菌作用をあらわす薬
    • 細胞壁という防御壁をもつ細菌はこれがないと生きることができない
    • 細菌の細胞壁合成に深く関わるペニシリン結合タンパク質(PBP)というものがある
    • 本剤は細菌のPBPに作用し細胞壁合成を阻害することで抗菌作用をあらわす
  • 同じペニシリン系でも薬剤によって抗菌作用の範囲が大きく異なる場合がある
    • 天然型ペニシリン、アミノペニシリン、緑膿菌に対して抗菌作用を有するペニシリンなどがある
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マクロライド系抗菌薬

  • 細菌のタンパク質合成を阻害し細菌の増殖を抑えることで抗菌作用をあらわす薬
    • 細菌の生命維持や増殖にはタンパク質合成が必要となる
    • タンパク質合成はリボソームという器官で行われる
    • 本剤は細菌のリボソームでのタンパク質合成を阻害し細菌の増殖を抑える
  • マイコプラズマやクラミジアなどの菌に対しても高い抗菌作用をあらわす
  • 服用する際、比較的苦味を強く感じる場合がある
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テトラサイクリン系抗菌薬

  • 細菌のタンパク質合成を阻害し細菌の増殖を抑えることで抗菌作用をあらわす薬
    • 細菌の生命維持や増殖にはタンパク質合成が必要となる
    • タンパク質合成はリボソームという器官で行われる
    • 本剤は細菌のリボソームでのタンパク質合成を阻害し細菌の増殖を抑える
  • 内服薬は薬剤の作用持続時間により(短い順に)短時間作用型、中等度作用型、長時間作用型に分けられる
  • 他の種類の抗菌薬と比較した時の特徴
    • ブルセラ症ライム病などでは優先的に使用される薬剤
    • ヘリコバクター・ピロリ感染での除菌治療で使用される場合もある(他の抗菌薬に耐性がある場合など)
    • 熱帯熱マラリア予防などに使用する場合もある
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ニューキノロン系抗菌薬

  • 細菌の増殖に必要な酵素を阻害して殺菌的に抗菌作用をあらわす薬
    • 細菌の増殖にはタンパク質合成が必要でそれには遺伝情報をもつDNAという物質が不可欠となる
    • DNAの複製にはいくつかの酵素の働きが必要となる
    • 本剤はDNA複製に必要な酵素を阻害し抗菌作用をあらわす
  • 尿路感染症、腸管感染症、呼吸器感染症など幅広い感染症で有効とされる(薬剤によって抗菌作用の範囲は異なる)
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サイトメガロウイルス治療薬

  • ウイルスの増殖に必要なDNA複製を阻害し、サイトメガロウイルス感染症を治療する薬
    • サイトメガロウイルスはヘルペスウイルスの一種で特に免疫が弱っている状態で感染すると肺炎網膜炎などを引き起こす場合がある
    • ウイルスの増殖には遺伝情報をもつDNAの複製が必要となる
    • 本剤はDNA複製に必要な酵素(DNAポリメラーゼ)を阻害し抗ウイルス作用をあらわす
  • 腎機能の状態などによって薬剤の投与量を変更する場合がある
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肺炎の経過と病院探しのポイント

この病気かなと感じている方

肺炎と一口言っても中身は様々で、若い人がなりやすい肺炎(マイコプラズマ肺炎など)や、抗生物質の効かないウイルス性の肺炎もあります。また細菌やウイルスではなく、アレルギーが原因の肺炎もあります。このように「菌やアレルギーなど様々な原因で肺に炎症が起きている状態」を肺炎と呼びます。具体的な検査や治療は肺炎の原因によって異なりますので、それぞれのページもご参考になさってください。

肺炎は、2014年日本人の死亡原因として3番目に多く、また亡くならない人も含めるととても患者数の多い病気です。ご高齢の方で咳や痰、熱が出てくるというのが典型的な経過です。それに加えて、呼吸の変化が肺炎の特徴の一つです。具体的には、1分間の呼吸数が20回を上回ったり、胸だけの浅い呼吸ではなく、肩も含めた上半身全体が動くような深い呼吸になるといった変化が出ます。

若い方の発熱はいわゆる風邪が多いのに対し、ご高齢の方の発熱では、肺炎などその他の病気の割合が高くなってきます。熱があるからと言ってすぐに肺炎だというわけではもちろんありませんが、上記のような呼吸の変化や咳、痰といった症状が伴っていれば、まずお近くの内科クリニック、もしくは病院を受診することをお勧めします。内科の中で特にどこかということであれば呼吸器内科になりますが、肺炎は患者数が多い病気であるため、一般内科であっても十分に対応可能です。

若い方では肺炎になっても大半は自然に治ってしまいます。マイコプラズマ肺炎は少なくない病気ですが、「長引く風邪だな」と思っているうちに治ってしまい、結局肺炎だと認識されないままになっているケースも少なくないでしょう。治ってしまえば問題ありませんが、呼吸の変化や息苦しい感じが出てきたら一度受診を検討することをお勧めします。






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