まんせいふくびくうえん(ちくのうしょう)
慢性副鼻腔炎(蓄膿症)
急性副鼻腔炎が治りきらずに慢性化したもの。一般的には蓄膿症と呼ばれることも多い
11人の医師がチェック 56回の改訂 最終更新: 2025.01.20

副鼻腔炎と慢性副鼻腔炎とは違う?

副鼻腔炎(ふくびくうえん)は急性副鼻腔炎や慢性副鼻腔炎などの総称です。ここでは混同しやすい、急性副鼻腔炎と慢性副鼻腔炎の違いなどについて説明します。 

図:副鼻腔の解剖イラスト。前頭洞、蝶形骨洞、篩骨洞、上顎洞の位置を示す。

副鼻腔炎と鼻炎は異なる病気です。

副鼻腔炎は副鼻腔の炎症です。一方、鼻炎は鼻粘膜の炎症です。炎症が起きている場所が違います。

副鼻腔は大きく分けて左右に4か所ずつあります。

  • 前頭洞
  • 蝶形骨洞
  • 篩骨洞
  • 上顎洞

鼻炎には、急性鼻炎、アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎などがあります。

急性副鼻腔炎は、かぜなどの鼻(鼻腔)の炎症に続いて起こる副鼻腔の炎症です。症状の期間が1か月以内のものは急性副鼻腔炎と呼びます。(ただし、1か月を超えて続いても症状などの様子によって急性副鼻腔炎と診断される場合があります。)

急性副鼻腔炎になると、鼻水や鼻づまりと同時に、熱や頭痛、顔の痛みがでます。

よくある経過としては、最初はウイルス感染が原因となり、長引くと細菌も一緒に感染して症状が悪化します。

蓄膿症は慢性副鼻腔炎の通称として用いられることのある呼び名です。蓄(ちくのう)というのは膿が溜まるという意味です。急性副鼻腔炎でも副鼻腔に膿がたまることがあります。蓄膿症は必ずしも慢性副鼻腔炎のことだけを指す言葉ではなく急性副鼻腔炎の通称としても用いられることがありえます。

さらにいうと蓄膿症は膿が溜まった状態を表した言葉なので副鼻腔以外の場所に膿の溜まりができた場合にも用いられることも有りうるかもしれません。蓄膿症という言葉に不安を感じたときには医師に正確な病名や何がおこっているのかを具体的に聞くとよいでしょう。

急性副鼻腔炎の主な症状は次のものです。

  • 熱がでる
  • 鼻水がでる
    • ねばっこい鼻水
    • 色のついた鼻水
  • 鼻水がのどの奥に流れる:後鼻漏(こうびろう)
  • 顔や頭が痛くなる
  • 顔の皮膚の赤みがかったり腫れたりする

説明します。

急性副鼻腔炎は発熱があり、粘っこい鼻水や色のついた鼻水が出ます。また顔を中心に強い痛みがでます。痛む場所は炎症が起きている副鼻腔の場所によって違います。ただし痛い場所と炎症が起きている場所は一致するとは限りません。上顎洞炎の場合は頰や目の周りの痛み、歯痛を感じます。

また、炎症が強くなったり広がったりすると、炎症がある副鼻腔の周囲の皮膚に赤みや腫れがでたり、副鼻腔に目や脳に影響を及ぼすことがあります。

例としてまぶた浮腫むくみ)や腫れ、赤みがでます。眼球がある眼窩(がんか)という空間に炎症が及ぶこともあります。眼窩には眼球から脳に映像の信号を伝える視神経(ししんけい)が通っています。眼窩の炎症は視神経に影響することもあります。眼窩内に膿ができた状態を眼窩内膿瘍(がんかないのうよう)、視神経に炎症が及んだ状態を鼻性視神経症(びせいししんけいしょう)と呼びます。鼻性視神経症では、視力低下や目のかすみ、ものが二重に見えるなどの症状が起きます。

脳に炎症が及んだ場合は、髄膜炎や脳炎を引き起こすため、強い頭痛や、ボーとしたような症状、言動の異常が現れて更に悪化すると意識状態にも影響を及ぼします。

急性副鼻腔炎の初期は主にウイルス感染です。ウイルスは自らの免疫で身体から排除することができるので自然に治ることが期待できます。しかし、急性副鼻腔炎が長引くと、細菌の感染が合わさることがあります。細菌感染も程度が軽ければ自らの免疫力で治ることが可能ですが、程度が重くなると自然治癒が難しくなり細菌に対して効果のある抗菌薬抗生物質)による治療が必要になることがあります。
急性副鼻腔炎の全員に抗菌薬を使用するわけではありません。特にウイルス感染に対してはなく、10日以上症状が続く時や、高熱がでている時に使用します。
急性副鼻腔炎の抗菌薬治療については「感染症治療薬ガイドの急性副鼻腔炎」のページも参考にして下さい。

初期の急性副鼻腔炎は細菌感染ではなくウイルス感染が主な原因なので抗菌薬(抗生物質)が必要ではないことが多いのですが、長期化すると細菌感染を伴うため、抗菌薬(抗生物質、抗生剤)を使って治療しなければならないことがあります。具体的な抗菌薬が必要なケースは10日間にわたって症状が持続する場合や、高熱がでている場合です。

急性副鼻腔炎の原因になる細菌は?

肺炎球菌インフルエンザ菌黄色ブドウ球菌、モラクセラ・カタラーリス菌などが急性副鼻腔炎の主な原因菌です。ちなみにインフルエンザ菌はインフルエンザウイルスのことではありません。インフルエンザの原因はインフルエンザウイルスですが、インフルエンザ菌はインフルエンザには関係ありません。

蓄膿症で保険適用がある漢方薬は下記です。急性副鼻腔炎の治療にも用いることがあります。

細菌の増殖をおさえるより、副鼻腔炎になりやすい体質を改善する目的で使用します。

  • 葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)

  • 荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)

  • 辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)

通常の急性副鼻腔炎では手術をしなくても治ることができます。

しかし、重症化して目がかすんだり、ボーとする症状などの、目や脳に影響が及んでいると考えられる場合には手術が必要です。特に目に炎症がひろがって、目がかすんだり、視力低下や、ものが二重に見える症状がある場合は、緊急手術が必要です。それは、目の症状がでてから48時間以上たつと、症状の回復が難しくなるからです。

脳の合併症のある場合は全身状態に応じて手術を行います。

上顎洞に炎症がある場合は、上顎洞に針を刺して膿を抜く治療法があります。上顎洞に針を刺すことを上顎洞穿刺(じょうがくどうせんし)と言います。鼻の中を麻酔したうえ、鼻の中から頬の上顎洞に向けて、太い針を刺して上顎洞の膿を抜いたあとに、上顎洞内を洗います。外来で行うことが可能な処置です。

慢性副鼻腔炎とは、副鼻腔の炎症が3ヶ月以上続いている状態です。副鼻腔にそれぞれ単独で炎症がある場合は、上顎洞炎や前頭洞炎、蝶形骨洞炎などとも呼ばれます。

蓄膿症は慢性副鼻腔炎の通称として用いられることが多いのですが、正確にいうと蓄膿というのは「膿が溜まっている」という状態を指した言葉です。このためお医者さんが蓄膿症を慢性副鼻腔炎の通称として使っていないこともありえます。お医者さんとの話の途中でわからなかったり疑問に感じたりしたら、蓄膿症の意味について確認してみて下さい。

鼻の横にある骨に囲まれた空間を上顎洞と呼びます。読み方は「じょうがくどう」です。上顎洞は4か所にある副鼻腔のうちの1つです。上顎洞に起きた副鼻腔炎を上顎洞炎と呼びます。

■上顎洞炎の症状

上顎洞炎が始まるときに出やすい症状として、風邪を引いた後に鼻水、鼻づまりと同時に、頰の痛みや、頭痛が起こります。

■上顎洞炎の原因

抜歯後に歯の炎症がひろがって、上顎洞炎になることもあります。長期間にわたって症状のある場合は慢性の上顎洞炎と言います。虫歯やカビなども原因になります。

■上顎洞炎の治療

上顎洞炎の治療では抗菌薬(抗生物質、抗生剤)は必要ないことが多いのですが、病気の状態によって用いられることもあります。

ほかの治療が有効な場合もあります。次の場合は上顎洞炎の中でも治療法が違います。

片側の上顎洞炎は、歯性上顎洞炎や副鼻腔真菌症の可能性を検討したうえで治療します。2つの特殊な状況についてもう少し詳しく説明します。

①歯性上顎洞炎

副鼻腔真菌症

真菌とはカビのことで、副鼻腔にカビが感染して起こるのが副鼻腔真菌症です。副鼻腔は鼻から吸い込んだ空気に混じったカビが、上顎洞に住み着くことで起こります。症状は鼻水、鼻づまり、頭痛などで副鼻腔炎と同じです。

内服などの治療では治りにくいので、治すためには手術が必要です。

好酸球性副鼻腔炎は、好酸球が原因となる難治性(治りにくい)の副鼻腔炎です。

気管支喘息アスピリン喘息といった病気を伴うことが多く、両側の鼻茸(はなたけ)とねばっこい鼻水、鼻づまり、嗅覚の低下をなどの症状が現れます。

副鼻腔気管支症候群は慢性副鼻腔炎に、気管支や肺など(下気道)の炎症を同時に認める病気です。下気道の炎症は慢性気管支炎、びまん性気管支拡張症びまん性汎細気管支炎があります。

症状は8週間以上続く痰のからむ咳、鼻水や後鼻漏(鼻水がのどに流れる症状)です。画像検査で副鼻腔炎が確認できます。

治療は去痰薬(きょたんやく)などが効果的です。びまん性汎細気管支炎などに対する少量マクロライド療法が使われることもあります。