まんせいふくびくうえん(ちくのうしょう)
慢性副鼻腔炎(蓄膿症)
急性副鼻腔炎が治りきらずに慢性化したもの。一般的には蓄膿症と呼ばれることも多い
11人の医師がチェック 84回の改訂 最終更新: 2026.03.27

副鼻腔炎と慢性副鼻腔炎とは違う?

副鼻腔炎(ふくびくうえん)は急性副鼻腔炎や慢性副鼻腔炎などの総称です。ここでは混同しやすい、急性副鼻腔炎と慢性副鼻腔炎の違いを中心に説明します。

図:副鼻腔の解剖イラスト。前頭洞、蝶形骨洞、篩骨洞、上顎洞の位置を示す。

副鼻腔炎と鼻炎は、似た症状が出ることはありますが、別の病気です。違いは、炎症が起きている場所にあります。
 

  • 副鼻腔炎:副鼻腔(鼻の周囲にある空間)の炎症
  • 鼻炎:鼻の粘膜(鼻腔の粘膜)の炎症

つまり、炎症が起こっている「現場」が違うのです。この違いを押さえると、症状の出方や治療の考え方が整理しやすくなります。
副鼻腔は左右にそれぞれ4つあります。

  • 前頭洞
  • 蝶形骨洞
  • 篩骨洞
  • 上顎洞

どの副鼻腔も炎症を起こす可能性があり、症状も少しずつ異なります。
一方、鼻炎にはいくつかのタイプがあります。代表的なものは次のとおりです。

副鼻腔炎と鼻炎は別の病気ですが、同時に起こることもあり、症状だけでは区別が難しいことがあります。

急性副鼻腔炎は、かぜなどで鼻の中(鼻腔)に炎症が起きたあとに続いて起こる、副鼻腔の炎症です。症状の期間がおおむね4週間以内のものを急性副鼻腔炎と呼びます。途中で長引く場合でも、経過や鼻の中の所見によっては急性の延長として扱われることがあります。

急性副鼻腔炎では、鼻水・鼻づまりに加えて、発熱、頭痛、顔面痛(頬や額の痛み)などが目立つことがあります。はじめはウイルス感染がきっかけになることが多く、経過によっては細菌感染が加わって悪化する場合があります。ここでは「急性副鼻腔炎とは何か」「いつ受診が必要か」を整理します。

「蓄膿症」は、一般には慢性副鼻腔炎を指す言い方として使われることが多い言葉です。ただし「がたまっている」というニュアンスから、急性の副鼻腔炎に対しても俗に使われることがあります。

この言葉だけでは、急性なのか慢性なのか、どの副鼻腔で炎症が起こっているかが分かりません。「蓄膿症」と言われて不安になったときは、正確な病名(急性か慢性か)と、炎症が起きている場所を確認すると整理しやすくなります。

急性副鼻腔炎の主な症状は次のものです。

  • 発熱
  • 鼻水(ねばっこい、色がつくことがあります)
  • 鼻漏(鼻水がのどの奥に流れる)
  • 鼻づまり
  • 顔や頭の痛み
  • 重い場合:顔面の腫れや赤み

急性副鼻腔炎は「鼻の症状」だけでとどまらず、痛み(頬・額・頭)や発熱を伴うことがあります。痛む場所は炎症の部位と関係することがありますが、必ずしも一致しません。症状が強い場合や長引く場合は、かぜとの区別を含めて評価が必要になります。

■危険な症状のサイン:目や脳に影響が及んでいることが考えられる場合

炎症が強い場合、まれに目(眼窩)や脳の合併症につながることがあります。次の症状がある場合は早めの受診が必要です。

  • まぶたの腫れ、赤み、強い痛み
  • 目がかすむ、視力低下、物が二重に見える
  • 強い頭痛、ぼんやりする、反応が鈍い、言動がおかしい

これらは緊急性が高くなることがあるため、「副鼻腔炎かも」で様子を見続けない方が安全です。

急性副鼻腔炎の初期は主にウイルス感染です。ウイルスは自らの免疫で身体から排除することができるので自然に治ることが期待できます。しかし、急性副鼻腔炎が長引くと、細菌の感染が合わさることがあります。細菌感染も程度が軽ければ自らの免疫力で治ることが可能ですが、程度が重くなると自然治癒が難しくなり細菌に対して効果のある抗菌薬抗生物質)による治療が必要になることがあります。
急性副鼻腔炎の全員に抗菌薬を使用するわけではありません。特にウイルス感染に対してはなく、10日以上症状が続く時や、高熱がでている時に使用します。
急性副鼻腔炎の抗菌薬治療については「感染症治療薬ガイドの急性副鼻腔炎」のページも参考にして下さい。

急性副鼻腔炎は、はじめはウイルス感染がきっかけのことが多く、自然に軽快していく場合があります。一方で、経過によっては細菌感染が関与して、治りにくくなることがあります。

抗菌薬(抗生物質)は、急性副鼻腔炎の全員に使うわけではありません。目安として、次のような経過では細菌感染を考えて治療(抗菌薬を含む)を検討します。

  • 10日以上症状が続き、改善傾向が乏しい
  • 高熱や強い顔面痛など、強い症状が数日続く
  • いったん軽くなった後に、再び悪化する(いわゆる「ぶり返し」)

これらの条件に当てはまる場合は、「様子見でよいか」「抗菌薬が必要か」を医療機関で判断します。

急性副鼻腔炎の原因になる細菌は?

細菌性が疑われる場合、原因菌としては肺炎球菌インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリスなどが代表的です。なお、インフルエンザ菌はインフルエンザウイルスとは別物です。

副鼻腔炎に対して保険が適用される漢方薬はいくつかりあり、急性副鼻腔炎で用いられることもあります。代表的なものは次のとおりです。

  • 葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)
  • 荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)
  • 辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)

ただし、漢方は体質や症状に合わせて選ぶ必要があるため、自己判断で固定せず、処方時に使い方を確認します。

通常の急性副鼻腔炎では、手術まで必要になることは多くありません。一方で、次のような状況では、処置や手術が検討されます。

  • 目の症状(視力低下、複視、まぶたの強い腫れなど)がある
  • 意識の変化や強い頭痛など、脳の合併症が疑われる
  • 症状が強く、排膿や洗浄が治療上有用と判断される

たとえば上顎洞に膿がたまっている場合、上顎洞穿刺(じょうがくどうせんし)といって、針で膿を抜き洗浄する処置が行われることがあります。外来で行える場合もありますが、症状や画像診断の結果で判断されます。

慢性副鼻腔炎とは、副鼻腔の炎症が3か月以上続いている状態です。炎症が特定の副鼻腔に留まっている場合は、上顎洞炎・前頭洞炎・蝶形骨洞炎など、炎症の部位に応じた呼び方をすることもあります。

「蓄膿症」は、一般には慢性副鼻腔炎を指す通称として用いられることが多い言葉です。ただし、厳密には「蓄膿」は膿がたまっている状態を表す言葉であり、医師が必ずしも慢性副鼻腔炎の意味で使っているとは限りません。

診察の場で「蓄膿症」と言われたときは、次のことを確認してください。

  • 急性なのか慢性なのか
  • どの副鼻腔が中心なのか

上記を確認すると自分の置かれた状況が整理しやすくなります。分からなければ、その場で言葉の意味を確認して問題ありません。

上顎洞(じょうがくどう)は、鼻の外側、頬の奥にある副鼻腔です。副鼻腔のうちの一つで、この上顎洞に炎症が起きた状態を上顎洞炎と呼びます。

上顎洞炎は副鼻腔炎の一部で、急性として始まることもあれば、症状が長引いて慢性として経過することもあります。上顎洞炎では「歯が原因のタイプ」や「真菌(カビ)が関与するタイプ」など、治療方針が変わる原因があるため、原因の見極めが重要になります。

■上顎洞炎の症状

上顎洞炎では、鼻水・鼻づまりに加えて、次のような症状が目立つことがあります。

  • 頬の痛み、頬の重い感じ
  • 目の周囲の違和感
  • 頭痛
  • 歯の痛みのように感じることがあります

「頬や歯の痛み」が鼻症状と一緒に出る場合は、上顎洞の炎症が関係していることがあります。

■上顎洞炎の原因

上顎洞は上あごの歯に近いため、歯の病気がきっかけで炎症が起こることがあります(歯性上顎洞炎)。また、真菌(カビ)が関与する副鼻腔真菌症が上顎洞に起こることもあります。原因によって治療が変わるため、長引く場合や片側に偏る場合は、原因を意識して評価します。

■上顎洞炎の治療

上顎洞炎では、すべてのケースで抗菌薬(抗生物質)が必要になるわけではありません。病状や原因によって、抗菌薬が選択されることもあれば、別の治療や手術が中心になることもあります。

特に次の2つは、一般的な副鼻腔炎とは治療方針が変わりやすい代表例です。

片側の上顎洞炎の可能性がある場合は、歯性上顎洞炎や副鼻腔真菌症の可能性を検討したうえで治療します。2つの特殊な状況についてもう少し詳しく説明します。

①歯性上顎洞炎

上顎洞は上あごの歯に近いため、歯の炎症が波及して上顎洞炎を起こすことがあります。虫歯だけでなく、過去に治療した歯の根の炎症(根尖性歯周炎など)、インプラント、抜歯後の炎症が関係することもあります。

歯性上顎洞炎では、原因となる歯の治療が重要になります。片側の上顎洞炎が疑われる場合は、歯科で原因となる歯がないか確認することが治療につながります。

副鼻腔真菌症

真菌とはカビのことで、副鼻腔内で真菌が関与して起こるものを副鼻腔真菌症と呼びます。症状は鼻水・鼻づまり・頭痛などで一般的な副鼻腔炎と似ているため、症状だけで見分けるのは簡単ではありません。

副鼻腔真菌症は、内服だけで改善しにくいことがあり、治療として手術が検討される場合があります。長引く症状や片側に偏る所見がある場合は、原因として真菌症も含めて評価します。

好酸球性副鼻腔炎は、好酸球(こうさんきゅう)という炎症細胞が関与する、治療が長引きやすいタイプの副鼻腔炎です。一般的な慢性副鼻腔炎とは病気の発生要因が異なるため、治療の考え方も変わります。

気管支喘息アスピリン喘息NSAIDs過敏喘息)を伴うことが多く、次のような症状が目立ちます。

  • 両側の鼻茸(はなたけ)
  • ねばっこい鼻水
  • 鼻づまり
  • 嗅覚低下

このタイプを疑うきっかけは、「鼻茸が両側にある」「嗅覚低下が強い」「喘息がある(あるいは疑われる)」といった組み合わせです。一般的な副鼻腔炎と同じ治療だけでは十分に改善しないことがあるため、症状の見極めが重要になります。

副鼻腔気管支症候群は、慢性副鼻腔炎に加えて、気管支や肺などの下気道にも炎症を認める状態です。下気道の病態としては、慢性気管支炎気管支拡張症びまん性汎細気管支炎などが含まれます。

症状としては、次のような組み合わせが目立ちます。

  • 8週間以上続く痰のからむ咳
  • 鼻水、後鼻漏(鼻水がのどに流れる症状)
  • 画像検査で副鼻腔炎が確認される

「鼻の症状」と「痰のからむ咳」がセットで長く続く場合は、鼻だけ・肺だけで完結せず、両方をまとめて評価した方が整理しやすくなります。

治療は、痰を出しやすくする薬(去痰薬)などを用いながら、下気道の病態に応じて方針を立てます。病態によっては、びまん性汎細気管支炎などで用いられる少量マクロライド療法が選択されることもあります。