べんぴしょう
便秘症
一般的に排便が週に3回以下と少ないことを指す。排便時痛、便に血液が付くなどの症状を伴う場合もある
14人の医師がチェック 154回の改訂 最終更新: 2020.08.09

便秘症の基礎知識

POINT 便秘症とは

便秘症は一般的に排便が週に3回以下と少ない状態を指します。排便時痛・便に血液が付くなどの症状を伴う場合もあります。生活習慣・病気・薬剤の副作用などの様々なことが原因となりえます。排便回数の減少以外にも、腹痛・吐き気・胃もたれ・食欲の低下などの多くの症状が起こります。 症状や身体診察に加えて、画像検査や超音波検査を用いて診断します。治療には生活習慣の改善や薬物療法などがあります。便秘症が心配な人や治療したい人は、消化器内科や総合内科などを受診して下さい。

便秘症について

  • 排便が順調に行われない状態
    • 一般的に排便が週に3回以下で、便が硬く排便時に痛みを伴ったり便に血液が付くなどの排便困難があることをいう
    • 便秘によって有害物質を体に溜め込み、さまざまな症状や病気が発生することがある
  • 便秘の分類と主な原因
    • 習慣性便秘(慢性便秘
      • 腸の動きが弱くなっている
      • 加齢やその他の病気による神経の機能の低下
      • 生活習慣やストレスによるもの
      • 食生活が悪い(繊維質が少ない、脂肪が多い、水分が少ない、ミネラルが少ない、ダイエットなどで食事量自体がが少ない)
    • 一時性便秘(急性便秘
      • 環境が変わったことによるストレス
    • 弛緩性便秘
      • 内蔵が重力に従って垂れ下がるため、腸の運動が低下してしまう
    • 直腸性便秘
      • 便があっても感じなくなることによる便秘
      • 便意を感じにくくなることにより、便が直腸にまで達しても直腸やその手前にある神経がさらに不感になることによる悪循環が生じる
    • けいれん性便秘
      • 精神的あるいは肉体的なストレスが原因となって、大腸が緊張し痙攣することで便が移動しにくくなる
    • 器質性便秘症候性便秘
      • 他の病気が原因で便秘の症状が出ていること
  • 便秘を起こす病気の例
  • 腹痛によって救急外来を受診する小児の多くは便秘によるもの
  • 食事による便秘の予防法
    • 三食を規則正しく食べる
      • 1日3度の規則正しい食事は、排便をスムーズにする
      • 食事の量が少ないのも便秘の原因となるので適度な量を食べることも大切
    • 食物繊維の多い食事を摂る
      • 食物繊維は便に水分を保持して排便をスムーズにさせる
      • 腸の蠕動運動を高めて排便をスムーズにさせる
    • 食物繊維を多く含む食品の例
      • 野菜類(キャベツ、大根など)
      • 果物(りんご、みかん)
      • イモ類
      • 海藻類
      • こんにゃく
      • アロエ
      • プルーン
      • 穀類
      • 豆類
      • ごぼう
    • 極端なダイエットは避ける
      • 食物繊維や水分も不足してしまうと排便しにくくなる
      • 食べ物が口から入ることで腸の動きが刺激されるが、過度のダイエットを行うと腸が動くタイミングが減ってしまう
      • 過度のダイエットを行うことで自律神経が乱れて腸の動きが悪くなる
    • 発酵食品を摂る
      • 納豆やヨーグルトなどの発酵食品やオリゴ糖などは便秘を改善すると言われている
    • 水分を十分にとる:
      • 水を飲む量が少なかったり、汗を多くかいたりすると体内の水分が不足し、便が硬くなり、便秘がちになります。目安として1日にコップ7-8杯ほどの水分を摂りましょう。朝起きた時にコップ1杯の冷水や牛乳を飲むと、腸が刺激されて排便が促されます。
  • 運動による便秘の予防法
    • 運動不足は、便秘の大きな原因になります。特に、腹筋や骨盤底筋群を中心とした下腹部の筋肉が弱まると排便が困難になります。目安として1日に10-15分ぐらいの簡単な運動を行いましょう。
    • 骨盤底筋群や腹筋運動
      • 便を押し出すときに腹筋の力が必要です。腹筋運動は腹部の血行を促進して胃腸の働きを高めてくれます。
      • 骨盤底筋群の訓練方法
      • 全身の力を抜き肛門を強く締めた状態で5秒間持続し、緩める方法やスクワットなどの足腰の全体運動をする方法があります。
    • 全身運動(ウォーキング、水泳、ヨガなどの全身運動)
      • 体を動かすと、血流が良くなり腸の動きが活発になります。
    • 腹部のマッサージ
      • 腹部のマッサージや温めは腸を刺激し、排便を促す効果があります。
    • マッサージ方法
      • あおむけになり、人さし指から薬指までの4本指で、おへその周りを「の」の字を描くようにゆっくりと軽く約30回マッサージします。
    • 腹部や腰を温める
      • 腸への血流が増加し、腸の動きが良くなります。腹巻やカイロ、入浴時に腹部をマッサージすると良いでしょう。
  • 排便習慣による便秘予防法
    • 朝食後に必ずトイレに行く
      • 朝食後は、胃・結腸反射が出やすいタイミングとされている
      • 毎朝トイレに行くことで定期的に便意を感じるようになり、排便の習慣が作られる
    • トイレを我慢しない
      • 便意が起こっているのに排便を我慢することを繰り返すと、便意を感じにくくなってしまう
      • 便意を感じにくくなることで排便回数が減ってしまい便秘になりやすくなる
  • ストレス発散による便秘予防法
    • ストレスが溜まると交感神経副交感神経のバランスが崩れて、腸の活動が低下し便秘になることがある
    • ストレスを受けないようにすることは簡単ではないが、ストレスを解消する方法をいくつか持っておくことは大切
      • 音楽を聴く
      • スポーツをする
      • 友人とお話をする    など

便秘症の症状

  • 主な症状
    • お腹が張る
    • おならが多く出る
    • げっぷがでる
    • むねやけを感じる
    • 口臭が強くなる
    • 舌にこけが付着する
    • 疲れやすくなる
    • 頭が重い
    • 肩こりを感じる
    • 気分が悪くなる
    • 眠れなくなる
    • じんましんが出る
    • 肌が荒れる
    • にきびが出る
    • 体臭が強くなる
    • 便が硬くなる
    • 食欲が落ちる
    • お腹が痛くなる
  • 乳児ではお腹の張り、幼小児ではお腹の痛みで気づかれることが多い
  • 便秘と関連して、下記のような病気の原因となることがある

便秘症の検査・診断

  • 診断に検査は必須ではない
    • 便秘の原因となる病気や他に隠れている病気を探すため検査が必要となる
  • 腹部超音波検査
    • 腸の中にガスや便が溜まっていないか確認する
  • 腹部レントゲンX線写真)検査
    • 便秘によって腸が張っていないかを確認する
  • 大腸カメラ下部消化管内視鏡検査
    • 便秘に大腸の腫瘍などが隠れていないかを調べる
  • 血液検査、尿検査

便秘症の治療法

  • 下剤や浣腸で直腸に溜まって動かなくなった便を十分に排便させる
  • 便を柔らかくする薬を使用する
    • 酸化マグネシウムを含んだ薬がよく使われるが、腎臓の機能が低下している人や高齢者には副作用が出やすいため注意が必要
  • 腸管の動きが悪いことが原因の場合、腸の動きを良くする薬を飲む
  • 便秘の原因として他の病気がある場合、そちらの治療を同時に行う
  • 予防には生活習慣の改善と排便の習慣化が効果的である
    • 早めに起きて朝食をゆっくり摂るようにする
    • 朝食後の決まった時間にトイレに行く習慣をつける
    • 水分をしっかりと摂る
    • 繊維の多い食べ物を摂取する
    • 運動をして腸の運動を促進する
    • 便意を我慢しない
    • お腹を冷やさない
  • 排便の習慣を是正することには時間がかかるため、定期的な診察とあせらずに生活習慣を改善していくことが必要
  • 新生児であれば、綿棒浣腸をする
    • 大人用の綿棒を少しほぐしてベビーオイルやワセリンをなじませる   先が隠れるくらいまで肛門にいれて円を描くように動かす(約20秒間)   機嫌が良い時など体に力が入っていない時の方がやりやすい
    • 一般的に母乳よりもミルクの方が便秘になりやすい
    • 綿棒浣腸は「癖」になることはない(むしろ放置している方が便秘は悪化する)
    • 離乳食が始まると便は硬くなる一方なので、できるだけ早い時期に排便の習慣をつけてあげることが重要
  • トイレトレーニングの済んでいない乳幼児期などは排便の習慣付けが特に難しいので、市販の浣腸(必ず体重や年齢ごとに量を確認)なども早めに使用してあげる

便秘症に関連する治療薬

塩類下剤

  • 便の水分バランスなどを調整することで排便を促す薬
    • 便秘は何らかの原因によって腸の動きが弱くなるなどにより排便が順調に行われない状態
    • 塩類下剤は腸内で便に水分を含ませ膨大・軟化させることで排便を促す作用をあらわす
  • 本剤の中には製剤中の金属イオンなどの作用により胃酸を中和する制酸作用をあらわす薬剤もある
塩類下剤についてもっと詳しく

パントテン酸製剤

  • 体内にパントテン酸を補充し、エネルギー代謝などに関与して、脂質異常症、湿疹、便秘などを改善する薬
    • パントテン酸は水溶性(水に溶けやすい性質)ビタミンでエネルギー代謝などに関わっている
    • エネルギー代謝に関わることで、コレステロール低下や血小板数改善するなどの作用をもつ
    • 副腎皮質ホルモンの合成にも関与し、ストレスに対する防御機能を高めるとされる
  • アミノグリコシド系抗菌薬による副作用の予防や治療に使用する場合もある
パントテン酸製剤についてもっと詳しく

刺激性下剤

  • 小腸や大腸などを刺激することで排便を促す薬
    • 便秘は何らかの原因によって腸の動きが弱くなることなどにより排便が順調に行われない状態
    • 刺激性下剤は腸を刺激することにより排便を促す作用をあらわす
  • 本剤は主な作用部位により、小腸刺激性下剤と大腸刺激性下剤に分かれる
刺激性下剤についてもっと詳しく

便秘症の経過と病院探しのポイント

便秘症が心配な方

便秘症とは、排便が順調に行われない状態です。便秘の原因にはさまざまなものがあり、お腹が張る、便が硬いなどの症状が認められます。便秘により切れ痔になることもあります。このような症状がある方は、普段から便秘と自覚していることと思いますが、日常生活を送る上で困るような状況が出てきた時が、受診をするタイミングとして適切です。

便秘症に関連する診療科の病院・クリニックを探す

便秘症でお困りの方

ご自身が便秘でお困りになった時、最初に受診するのは、内科でも外科でも大丈夫です。これらの科以外でもかかりつけのクリニックまたは病院があれば、上記以外の科でも診療が可能なこともあります。総合病院でもクリニックであっても、大多数の方にとっては診療に差が出にくい疾患です。

便秘の診断は問診や診察で行います。場合により、腹部レントゲン検査を併用します。総合病院でなくてもレントゲン検査ができるクリニックは多く、また検査を必ずしも必要としないため、便秘の診療はクリニックでも可能です。診察により追加の検査が必要であると判断された場合は、総合病院へ紹介するシステムもあり、診療情報提供書(紹介状)を作成してもらうことも可能です。必要に応じて大腸カメラや腹部造影CTを使用し、便秘の原因が腸に何かが詰まって起こっていないかを確認することもあります。

便秘の治療は原因により異なりますが、便秘の方の大多数に関しては、生活習慣の改善、飲水、運動をしている前提で内服治療を行います。内服薬にも、腸の動きを良くするもの、便を柔らかくするものなどいくつか種類があり、適宜組み合わせて使用します。クリニックでも内服薬の調整は可能です。浣腸を行うこともあります。

便秘症の治療において大切なことは、器質性便秘といって、体に身体的な問題があることにより起こる便秘に対して治療を行うことです。具体的には、大腸がん腸閉塞などが挙げられます。これらの疾患を調べるためには、大腸カメラや腹部CTが必要になりますので、専門施設の受診となります。かかりつけがクリニックであっても、これらの検査が必要と判断されれば紹介してもらうことができます。

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