ふんりゅう
粉瘤
皮膚の下にできた袋状の構造物に皮膚の老廃物が溜まってこぶのようになったもの
8人の医師がチェック 226回の改訂 最終更新: 2024.10.24

脇の下のにできた「できもの」や「しこり」は粉瘤(アテローム)なのか

粉瘤は脇の下にもできます。脇の下のできものは、粉瘤以外に脂肪腫悪性リンパ腫乳がんリンパ節転移などの可能性が考えられます。見た目だけで区別するのは難しいので、医療機関で判断してもらう必要があります。このページでは粉瘤を中心に脇の下のできものやしこりに焦点を当てて説明します。

1. 脇の下のできもの原因には何が考えられるのか:粉瘤・脂肪腫・悪性リンパ腫・乳がんのリンパ節転移・副乳

脇の下にできる「できもの」や「しこり」のうち、よく見られる原因の一つが粉瘤(ふんりゅう、アテロームとも呼びます)です。粉瘤以外の代表的な病気として、脂肪腫悪性リンパ腫が挙げられます。

「しこり」とは?

「しこり」とは身体の一部が周りより硬くなっている症状のことを指します。簡単に考えるために、「しこり」は「かたまり」のことだと考えてもらって問題ありません。
粉瘤の「しこり」は1cm以下で見つかることがあります。「しこり」の硬さはさまざまで、肩こりぐらいの硬さの「しこり」もあれば、石のように硬い「しこり」もあります。粉瘤の「しこり」は触ると周りの皮下脂肪よりは硬いことがわかる程度の硬さです。

粉瘤(アテローム)とはどんなものなのか?

粉瘤は皮膚の下に嚢胞(のうほう)という袋ができて、その中に老廃物が溜まる病気です。袋の中が何らかの理由で感染してしまい炎症を起こすと、赤く腫れたり、痛み、悪臭といった症状が現れます。数mmから数cm程度のしこり・できものとしてみつかり、身体のどこにでもできます。脇から脇腹にかけてできることもあります。

粉瘤とニキビの違いについて

粉瘤と間違えやすいのがニキビですが、粉瘤とニキビには違った特徴があります。ニキビにはない粉瘤の特徴は以下のものになります。

【粉瘤の特徴】

  • 粉瘤には真ん中に黒い点(へそ)がある
  • 粉瘤は臭いが出ることがある

ただしこれらの特徴がはっきりしない粉瘤があるので、特徴に当てはまらないからといって粉瘤ではないとは言い切れません。

粉瘤と脂肪腫の違いについて

脂肪腫は、皮膚のすぐ下にできる良性腫瘍として、よく見つかる病気です。
身体のいろいろな部位にでき、背中や肩、首に多く、脇の下にもできます。特に症状はありませんが、皮膚の下の柔らかいしこり・できものとして触れることができます。良性腫瘍なので、がんのように命を脅かすことはありませんが、見た目が気になったり、邪魔になるようであれば、手術によって取り除くことができます。
粉瘤より触感が柔らかく、粉瘤とは違って悪臭の原因になることはありません。

粉瘤と悪性リンパ腫の違いについて

悪性リンパ腫とはリンパ球と呼ばれる白血球の一種が悪性化したもので、悪性腫瘍に含まれます。悪性リンパ腫リンパ節の腫れから見つかることがあり、脇の下のリンパ節の腫れから見つかることもあります。脇の下のしこりが固かったり、触っても動かなかったりした場合には悪性リンパ種が疑われます。粉瘤と共通点もあるのですが、悪性リンパ腫であった場合には、「発熱」「体重減少」「寝汗」といった症状が現れることが多いです。一方で、粉瘤ではこれらの症状をともなうことはほとんどありません。

粉瘤と乳がんのリンパ節転移の違いについて

乳がんの細胞が腋窩リンパ節(脇にあるリンパ節)に転移すると、脇のしこり・できものとして触れることがあります。乳がんリンパ節転移によるしこりは悪性リンパ腫と同様に、硬かったり触っても動かなかったりしますが、こうした特徴が必ずあるとは限りません。特に、乳がんの手術後の人や乳がんの治療中人が脇のしこり・できものに気付いたら、乳がんを治療している病院で相談してください。

粉瘤と副乳の違いについて

副乳とは、通常の乳頭以外の場所にある乳房のことを指します。脇の近くできることもあります。男性・女性ともに数%の人が気付かないほどの大きさの副乳を持っています。副乳の大きさや形によってはしこり・できもののように見えます。妊娠中や産後・授乳中に副乳に気付く女性もいます。副乳は治療の必要がありません。

2. 脇の下の粉瘤は痛いのか痛くないのか

痛みがあるかないかで粉瘤とほかの病気を見分けることはできません
感染して炎症を起こすと、粉瘤が赤くなって痛みが生じますが、粉瘤なら通常は痛みはありません。一方で、悪性リンパ腫乳がんのリンパ節転移などでも通常は痛みがないので、痛くないから悪い病気ではないとは言えません。

脇の下に痛み・かゆみがあるときは、粉瘤のほかに毛嚢炎帯状疱疹も考えられます。

3. 脇の下のしこり・できものが粉瘤だった場合の治療法について

脇の下のできものがもし粉瘤であり、かつ症状が重い場合の治療法は以下になります。

上記に記したものは、粉瘤の標準的な治療法になります。脇の下にできたからと言って、特別な治療が行われるわけではありません。

脇の下のしこり・できものが粉瘤ではなかったときの治療法について

脂肪腫では前述したように治療の必要性は少ないのですが、他の病気の可能性が否定できない場合や、外見上の問題が発生している場合には手術によって取り除くこともあります。悪性リンパ腫の場合では、重症度にもよりますが、抗がん剤治療化学療法)や放射線治療が主となり、手術が治療の主体になることはほとんどありません。

4. 脇の下のしこり・できものは何科を受診すればいいのか

脇の下のしこり・できものに気付いたときにはどうすればよいのか悩ましい問題かと思います。結論から述べると、まず皮膚科に行くことをおすすめします。検査や診察を受けずに原因を正確に見分けるのは難しいためです。
粉瘤が疑わしくても、他の病気である可能性は否定できません。ですので、他の病気と見分けて正確に診断する必要があり、そのためには皮膚科が適しています。
粉瘤と診断されたあとで手術する病院を選びたい人は、手術の内容や費用が病院によって違うので、自分の希望をはっきりとさせたうえで、自分に合った病院を探してください。
病院の選び方について詳しくは「粉瘤は何科に行けばいいの?皮膚科?形成外科?美容外科?」で説明しています。