爆発物と間違われたのは皮膚病だった
アメリカのローワン大学クーパー・メディカル・スクールの研究者が、空港で爆発物を持っているのではないかと疑われた患者の例を報告しました。皮膚科学専門誌『JAMA Dermatology』に掲載されています。
報告されている患者は、大きさ1.5cmほどの表皮嚢胞(粉瘤)がありました。空港のセキュリティチェックを通ろうとしたところ、ボディスキャナに粉瘤が写り、爆発物を隠しているのではないかと疑われてしまいました。
この患者は今後も飛行機に乗るときのため、医師から空港の担当者に向けた説明の文書を書いてもらいました。
2013年にも似た例が
報告した研究者は、似た例として2013年の報告を紹介しています。68歳の男性が鼠径陰嚢ヘルニアのために空港で陰部の身体検査を受けたというものです。この男性は鼠径ヘルニア縫合術を受けることにしました。2013年の報告の著者は、近い将来に脂肪腫や嚢胞を持っている人が似たような目に遭うことを予言していました。
どうやって対策する?
あらぬ疑いをかけられてしまった人は気の毒です。しかし、テロ対策のためには、紛らわしい皮膚病があれば身体検査をせざるをえない状況もあるでしょう。
粉瘤は普通、放っておいても害がありません。見た目をよくするために手術で取り除く方法もあります。鼠径陰嚢ヘルニアも軽度なら手術せず様子を見るのは普通のことです。空港で疑われないために取り除くというのは、これまで医学的に想定されてこなかった目的です。しかし、対策としては最も確実でしょう。
健康上の危険がないのに手術はしたくない人にとっては、この人のように説明の文書を持ち歩くのがひとつの対策になるかもしれません。それで十分安心して旅行できるようになるためには、病気についての知識が周知され、文書が有効に疑いを晴らしてくれる体制が整えられる必要がありそうです。
執筆者
A Cyst Misinterpreted on Airport Scan as Security Threat.
JAMA Dermatol. 2016 Sep 7. [Epub ahead of print]
[PMID: 27603497]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。