潰すな危険!粉瘤は手術時間5分・痛みなしの「へそ抜き法」で完治!
粉瘤(ふんりゅう、アテローム)は皮膚の中に袋ができて老廃物がたまった状態です。手術で治せます。へそ抜き法手術は、傷が小さく、早ければ5分程度で終わります。潰すと再発するだけでなく感染の原因になり危険です。
目次
1. これって粉瘤(アテローム)?
粉瘤とは、正常な皮膚の中に
アテロームという言葉は、
粉瘤を体の表面から見ると、しこり・できものとして、ときにはニキビや脂肪の塊に似て見えます。
粉瘤をよく観察すると、嚢胞の内側につながる黒い穴が開いています。皮膚開口部と言うのですが、「へそ」とも呼ばれます。
粉瘤の見た目には以下の特徴があります。
- 皮膚がドーム状に盛り上がっている
- 大きさは数mmから10cm以上までさまざま
- 真ん中に小さな黒い点(へそ)が見える
- 押すと白か黄色のドロドロした臭い
膿 が出る
ただしこれらの特徴に当てはまらない粉瘤もあります。
粉瘤ができる場所は?
粉瘤は以下のように体のどこにでもできます。
- 頭
- 顔面
- 耳たぶや耳の裏
- 背中
- おしり
- 胸
- お腹
- 手足
- 脇
- 股の間、陰部
見た目が粉瘤の特徴に似ていれば、上に挙げた場所以外でも粉瘤かもしれません。
たとえば、女性の
参照文献:Int J Surg Case Rep. 2015 Jan 21
粉瘤を治療する必要はある?
粉瘤は放置しても重大な問題になることはありません。ただし次のような理由で治療が必要になります。
- 美容(見た目)の問題
- 邪魔になる
- 感染して
炎症 を起こしたり、「臭い汁」のような膿が出る
粉瘤はがんになる?
粉瘤は
- 粉瘤だと思っていたが、別のものの見間違いだった
- 粉瘤と同じ場所に偶然がんができた
皮膚科で診察を受けていれば、危険なものを粉瘤と誤診されることはほとんどありません。
一方、粉瘤の場所に偶然がんができることも非常にまれです。
粉瘤が急に大きくなることがあれば、皮膚科などで相談してください。
参照文献:Case Rep Dermatol. 2015 Apr 28.
2. 粉瘤(アテローム)と似た病気は?
粉瘤と見た目が似ている病気の例を挙げます。
それぞれの特徴と見分け方を説明します。
ニキビ
ニキビは顔だけでなく全身どこにでもできます。ニキビと粉瘤で違う特徴を挙げます。
- 大きさ
- ニキビは数mmです。粉瘤は大きければ10cm近くにもなります。
- へそ
- 粉瘤の中心あたりに小さな黒い点があります。「へそ」とも呼ばれるものです。ニキビには「へそ」はありません。
- 手触り
- 粉瘤は触るとつまめるくらいの塊です。ニキビは普通つまめるほどにはなりません。
- 臭い
- 粉瘤の中身が臭うことがあります。ニキビに異臭はありません。
ニキビは自然に治ります。ニキビの原因には睡眠不足やストレスが関係しています。生活習慣を見直してニキビを予防することも対策になります。
脂肪腫
脂肪腫は皮下脂肪が異常に増殖した
粉瘤と違う点はへそがないことです。ほかの見た目は粉瘤とよく似ています。
悪性リンパ腫
悪性リンパ腫は血液の細胞からできた
- 触ると硬い
- 押しても動かない
- 数ヶ月のうちに大きくなる
- 痛みはない
急速に成長して痛む場合など、例外もあります。全身の症状をともなうことがあります。
- 発熱
- 寝汗
- 体重減少
治療には
がんのリンパ節転移
がん細胞が
ガングリオン
ガングリオンは関節の一部が袋状に飛び出したものです。手や手首によくできます。
症状がなければ放置しても害はありません。一部は症状を起こします。
- 痛み
- しびれ
- 手に力を入れにくい
手術で取り除けます。
毛母種
毛母腫は皮膚の良性腫瘍です。石灰化上皮腫(せっかいかじょうひしゅ)とも呼ばれます。石のように硬いのが特徴です。放置しても害はありません。ただし、皮膚がんと紛らわしい場合があります。区別しにくければ手術で取り除きます。
顔のできもの・しこりは粉瘤?
顔や頭のできもの・しこりの多くは以下のどれかです。
- ニキビ
- 粉瘤
- 外毛根鞘性嚢腫(がいもうこんしょうせいのうしゅ)
外毛根鞘性嚢腫は髪の毛の毛根から発生する、袋状の構造を持った塊です。治療法は手術です。手術方法は粉瘤の手術と似ています。頭皮にできるのが特徴です。
顔に粉瘤ができた場合、治し方は手術しかありません。潰しても治らないだけでなく悪化の原因になるので、決して潰さないでください。
手術で嚢胞を取り除けば治ります。しかし、手術で多少の傷跡が残ります。顔の手術をどの病院で受けるかは、美容外科なども考えに入れて慎重に選ぶといいでしょう。
脇の下のできもの・しこりは粉瘤?
脇の下にできもの・しこりができる原因として以下が考えられます。
ほとんどは粉瘤かニキビです。
乳癌は脇の下にある腋窩(えきか)リンパ節に転移することがあります。乳癌と診断されたことがある人は注意が必要です。
副乳とは、通常の乳頭以外の場所にある乳房で、脇の近くにある人もいます。男性・女性ともに、気付かないほどの大きさの副乳を含めると数%の人が副乳を持っています。
副乳の大きさや形によってはしこり・できもののように見えます。妊娠中や産後・授乳中に副乳に気付く女性もいます。治療の必要はありません。
耳たぶのできもの・しこりは粉瘤?
粉瘤やニキビのほか、耳たぶに生まれつき耳前
3. 粉瘤(アテローム)の原因とは?
粉瘤の原因は、皮膚の一部に袋状の構造(嚢胞)があることです。なぜ嚢胞ができてしまうのかはわかっていません。
粉瘤は以下のように体のどの場所にでもできます。
- おしり
- 背中
- 脇
- 顔
- 股の間、陰部
場所ごとの原因は知られていません。
細菌などが原因ではないので、不潔にすることや、ストレス、タバコなどが原因で粉瘤ができることはありません。粉瘤を予防する方法は知られていません。
ただし、粉瘤を不潔にすることで、細菌が感染して悪化する場合があります。次に説明します。
4. 粉瘤は潰すと危険!
粉瘤は潰さないでください。一度気になるとニキビやイボと同様に、引っ掻いたり潰したりして対処したくなりますが、粉瘤は潰しても治らないだけでなく、潰すと悪化の原因になります。
粉瘤を潰すと、細菌が入り込んで感染してしまう可能性があります。細菌を侵入させないために、粉瘤は潰さないことが大事なのです。
粉瘤は潰しても治らない?
粉瘤は潰しても治りません。潰しても中身の袋(嚢胞)は残っているためです。
皮膚開口部から中身が自然に出てきたり、粉瘤を潰して中身を絞りだしたりすると、一時的に粉瘤がしぼむので治ったように見えます。しかし嚢胞の構造が残っている限り、また老廃物がたまって、大きい粉瘤になってしまいます。
粉瘤は自分で潰しても再発します。再発しないように完治させるためには、手術で嚢胞を取り切る必要があります。
粉瘤を潰すとどうなる?
粉瘤を潰すと細菌が感染して悪化する恐れがあります。
嚢胞の中に細菌が感染した粉瘤を、感染性粉瘤と言います。炎症性粉瘤、化膿性粉瘤とも言います。感染性粉瘤では以下の症状が現れます。
- 痛み
- 腫れ
- 臭い
粉瘤の中央にある黒い点(へそ)から、内容物が出てくることがあります。膿が出たように見えます。すでに炎症を起こした感染性粉瘤からは、白色から黄色のどろっとした膿が出てきます。
さらに、感染が起こるとすぐに手術できなくなります。感染していない粉瘤なら、簡単な手術で治せます。ところが、感染していると嚢胞の壁が破れやすく、きれいに取り除けません。
感染による臭いや痛みを治すため、また根治手術を可能にするためにまず感染を止める必要があります。
治療として
感染の自然
粉瘤を完治させるには手術が必要です。手術で治すためには、まず潰さないことです。
5. 粉瘤の薬は効かない?
粉瘤は薬では治りません。感染して炎症が起こっていれば、炎症を和らげる薬はあります。しかし粉瘤をなくす薬はありません。
「たこの吸い出し」という薬はお勧めできません。
たこの吸い出しの有効成分は、硫酸銅とサリチル酸です。硫酸銅には腐食作用があり、サリチル酸には角質軟化作用があります。たこの吸い出しを粉瘤に塗ると、皮膚と嚢胞の壁が溶けて、穴が開きます。穴から内容物が出てきます。
つまり、たこの吸い出しを塗ると、粉瘤を潰したのと同じことになります。嚢胞は残っているので粉瘤はまた大きくなります。また、感染して悪化する恐れもあります。
粉瘤を完治させるには手術が必要です。
6. 粉瘤の臭い対策は?
粉瘤から臭いがするときは、必要なら抗菌薬(抗生物質、抗生剤)で感染を抑えたうえ、手術をするのが有効な対策です。
粉瘤の臭いの原因は?
粉瘤の臭いの原因は、嚢胞の中にたまった老廃物です。皮膚開口部から臭い汁や膿のようなものが出てくるときは、細菌が感染して炎症が起きているかもしれません(感染性粉瘤、炎症性粉瘤、化膿性粉瘤と言います)。
臭いがしないのは粉瘤ではない?
どんな臭いかわからないと、わきがや体臭と間違うのではないかと心配かもしれませんが、臭いは粉瘤を診断する決め手にはなりません。臭いがしない粉瘤もあります。
粉瘤の特徴に注目すると手がかりになるかもしれません。
- 粉瘤は(臭いがあるときも、ないときも)数mmから数cmの塊で、黒い穴(へそ)がある。
- 粉瘤が臭うとき、粉瘤がない場所から同じ臭いはしない。たとえば右脇に粉瘤があって臭いが出ていれば、左脇から粉瘤の臭いはしない。
感染した粉瘤はすぐ手術できない
感染性粉瘤は手術ですぐに取り除くことができません。
嚢胞が感染して炎症を起こしていると、嚢胞の壁が破れやすくなります。すると、手術をしてもきれいに取り除けないのです。
嚢胞を取り除く手術の前に、感染(炎症)を落ち着かせる必要があります。皮膚を切開して膿を出したり、抗生物質を使用したりします。
7. 粉瘤(アテローム)の「へそ抜き法」手術とは?
粉瘤に対して、近年は傷が小さくて済み、より簡便なへそ抜き法(くり抜き法)という手術方法が普及してきています。
へそ抜き法の手順は以下の通りです。
- 局所麻酔をする
- 4mmディスポーザブルパンチという丸い穴を開けることのできるメスを使って、粉瘤の部分に穴を開ける
- 内容物を絞り、出しきる
- 粉瘤がしぼむので、内容物を取り囲んでいた、袋の壁を取り切る
へそ抜き法(くり抜き法)の場合、手術自体の時間は5分から20分程度で終えることができます。
粉瘤の従来の手術とは?
従来の切開手術では、粉瘤の真上の皮膚をひし形に切って、嚢胞を作っている壁を丸ごと、摘出していました。
切開にかかる時間は大きさなどによっても違いますが、10分から30分程度です。一回でも感染を起こしていると、袋の壁が周りとくっついてしまっているため、手術が少し大変で、時間もかかるようになります。
粉瘤の手術で皮膚の縫合はする?
粉瘤の手術では、切開手術でもへそ抜き法でも、袋の壁を取りきったあとに、皮膚を
粉瘤ができている場所や大きさ、感染していたかどうかなどで変わります。
8. 粉瘤(アテローム)の手術は痛い?痕は残る?
粉瘤の手術は皮膚に穴を開けるので、痛くないか心配になるところです。
粉瘤の手術は麻酔がしっかり効いた状態で行われます。麻酔の針を刺す時にチクッと痛いくらいで、あとは痛みはあまりありません。もし痛みを感じるようでしたら、医師に伝えれば麻酔を調整してもらうことができます。
手術の後、傷痕はどうしても残ってしまうのですが、多くは半年から1年ほどで目立たなくなります。
9. 粉瘤(アテローム)の手術費用は?
保険が効く場合、粉瘤の手術自体の自己負担額は5,000円から25,000円程度です。顔など「露出部」の手術のほうが、背中など「露出部以外」の手術よりも高額になります。手術自体の費用に加えて、初診料、検査費用、薬代などを支払うことになります。
粉瘤の手術費用は病院によって違う
粉瘤の手術をするときは、病院によって費用がかなり違うことに注意してください。
理由は保険診療として手術する病院と、自由診療で手術する病院があるからです。
自由診療で手術する場合の費用は病院によって違い、多くは保険診療よりもかなり高額になります。
粉瘤の手術は保険が効くところで受けたほうがいい?
顔など目立つ部分の手術で、見た目が気になるなら、形成外科や美容外科、美容皮膚科などの専門性の高い病院・クリニックで自由診療の手術を相談する選択肢もあります。
ただし、自由診療のほうが必ず良い結果が出るとは限りません。病院のウェブサイトなどで手術件数などが公開されていれば、その病院がどの程度粉瘤の手術に慣れているかの目安になります。
病院を探すにはこのサイトの検索機能をぜひ利用してください。
たとえば「東京都新宿区で皮膚科などを標榜している病院・クリニック」のように、条件に合う病院を検索できます。粉瘤の手術ができるかどうかなど、詳細は各医療機関にお問い合わせください。