あるこーるせいかんしょうがい
アルコール性肝障害
大量のアルコール摂取を続けることにより、肝臓の機能が低下した状態
7人の医師がチェック 114回の改訂 最終更新: 2020.06.11

アルコール性肝障害の検査について

アルコール性肝障害は長年の飲酒によって肝臓に障害が起きている状態です。初期は無症状なので検査をしないとみつかりません。また、肝硬変や肝臓がんなどに進行している場合には、よりよい治療を選ぶための検査が重要です。

1. 問診

問診とはお医者さんからの質問に答える形で、患者さんが困っている症状や身体の状態、生活背景を伝えることをいいます。アルコール性肝障害が疑われる人は以下のようなことを聞かれることがあります。

  • 症状はあるか
  • 持病はあるか
  • 飲酒量はどのくらいか(お酒の種類、1回で飲む量、頻度)
  • 飲んでいる薬はあるか
  • サプリメントや健康食品を摂取するか
  • 家族に肝臓の病気の人はいるか
  • アレルギーがあるか

肝障害を起こす病気はアルコール性肝障害だけではありません。B型肝炎C型肝炎薬剤性肝障害などさまざまな病気があります。疑わしい病気を絞り込むために、問診では生活状況について多岐にわたる質問をされることがあります。

2. 身体診察

初期のアルコール性肝障害では身体診察で異常はまず見当たりません。しかし、進行したアルコール性肝硬変や重症型アルコール性肝炎になった人は、診察でさまざまな変化がみつかります。身体診察には下記のようなものがあります。

  • バイタルサイン
  • 視診
  • 打診
  • 聴診
  • 触診

バイタルサイン:脈拍数、呼吸数、体温、血圧、意識状態

バイタルサインは脈拍数、呼吸数、体温、血圧、意識状態のことで、日本語に直訳すると「生命徴候」です。バイタルサインを確認すると、おおまかに全身の状態がわかるため、緊急で対応が必要かどうかが判断できます。バイタルサインが異常である人は、治療が遅れないように優先的に詳しい検査が行われることもあります。

視診:見た目でわかる肝硬変の兆候

視診は見た目で身体の異常を調べることです。肝硬変になると、全身の皮膚に出血のあとや拡張した毛細血管が見えたり、男性の乳房が女性のように膨れたりすることがあります。

聴診・打診:腹水や胸水の有無

聴診は聴診器を使って身体の音を聞くことです。打診は身体を優しく叩いて、その音で内臓の異常を調べることです。アルコール性肝硬変やアルコール性肝炎の人で生じがちな胸水腹水は、聴診や打診で確認できます。

触診:身体のむくみや肝臓の大きさなど

触診とは身体を直接触って調べることです。アルコール性肝硬変になると脚がむくむことがあるので、指で押したりなどして調べます。寝たきりの人は、脚よりもお尻のほうがむくみやすいです。

また、お腹の右上に手を当てることで肝臓の一部を触ることができます。アルコール性肝硬変の人では肝臓が通常よりも小さく硬い様子が、アルコール性肝炎の人では肝臓が通常よりも大きく腫れている様子がわかります。

3. 血液検査

血液検査では、肝障害や肝臓がんになっているかどうか、病気がどれくらい進んでいるのか、アルコール以外に肝障害の原因となる病気があるかなどを推測することができます。

肝障害があるかどうか調べる検査:γ-GTPとASTが特に上昇

アルコール性肝障害は進行するまで症状がほとんどないため、検査をしないと気づかれません。肝障害のある人では下記のような血液検査項目が異常になります。

  • ALT
  • AST
  • γ-GTP
  • ビリルビン(直接ビリルビン)
  • ALP

同じ肝障害の人でも、原因によって異常値の傾向が異なります。アルコール性脂肪肝の人では、他の肝疾患の人よりもγ-GTPやASTが上がりやすい傾向にあります。また、AST>ALTであればアルコール性肝障害であることが多いですが、ALT>ASTであれば、ウイルス性肝炎非アルコール性脂肪性肝疾患NAFLD)である確率が上がります。

飲酒とγ-GTPについては「お酒好きなら気になるあの値:γ-GTPと飲酒はどう関係するの?」も参考にして見てください。

肝硬変の血液検査

アルコール性脂肪肝の状態が長年続くと、肝線維症や肝炎を経て肝硬変に進んでしまう人がいます。アルコール性肝硬変になると下記の血液検査項目が異常になります。

  • 血小板
  • アルブミン
  • 凝固検査(プロトロンビン時間、活性化トロンボプラスチン)
  • 線維化マーカー(IV型コラーゲン、ヒアルロン酸、M2BPGi)

血小板数、アルブミン、凝固検査は肝硬変があるかどうかや、進行具合を判断するのに重要です。肝線維化マーカーの値からは肝硬変かどうかを類推できます。ただし、肝硬変かどうかを血液検査だけで正確に判断するのは難しく、他の検査も合わせて総合的に判断します。

血中アンモニア濃度:肝性脳症の可能性を調べる検査

血中のアンモニア濃度が高い人は「肝性脳症」が疑われます。肝性脳症とは、肝臓の機能低下に伴って意識障害が現れる病気です。肝臓の毒物を分解する働きが悪くなってアンモニアなどの有害物質が体内に蓄積することで、脳神経に影響を及ぼして意識が悪くなると考えられています。

血中亜鉛濃度

肝硬変の人では亜鉛の吸収が悪くなったり尿からの排出が増加したりするため、亜鉛が不足しがちです。亜鉛の欠乏は肝性脳症発症に関与しているといわれており、血中の亜鉛濃度が低い値であれば内服薬によって亜鉛を補充します。

肝障害の原因を調べる血液検査:ウイルスや自己免疫の検査など

肝障害がある人では、アルコール以外に肝障害を起こす要因があるか調べることが重要です。血液検査では肝障害を起こす下記の病気の有無について調べることができます。

【肝障害の原因となる病気と血液検査】

上記の血液検査で原因がみつからず、長年の大量飲酒の習慣のある人は、アルコール性肝障害である可能性が高いといえます。

4. 画像検査

アルコール性肝障害では、脂肪肝、肝硬変、肝臓がんなどを見分けるために画像検査が重要です。腹部超音波検査がはじめに行われることが多いですが、より詳しく調べたいときはCT検査も併せて行われます。

腹部超音波検査(エコー検査)

人には聞こえない高い音(超音波)を身体に当てて、臓器から跳ね返った超音波を測定することで、臓器を断面図として見る検査です。超音波検査合併症の心配がなく受けられます。

超音波検査で肝臓を調べると、脂肪肝や腹水、肝臓がんなどの病気を見つけることができます。がんかどうか判断が難しい画像が見つかったときには、造影剤を注射をしてから超音波検査をすることもあります。

腹部CT検査

CT検査とは放射線を利用することで身体の断面を映し出す検査です。造影剤を注射してから撮影をする造影CT検査を行うと、より肝臓がんの診断がしやすくなります。ただし、気管支喘息、ヨードアレルギー体質、褐色細胞腫腎機能障害などの持病がある人はCT検査用の造影剤で合併症を起こしやすいといわれているので注意が必要です。このような病気がある人はお医者さんに伝えてください。

5. 肝硬度測定装置(フィブロスキャン®):肝臓の硬さを測る

肝硬度測定は肝臓の硬さを測定する検査です。肝硬度測定は病理組織学的検査よりも精度は劣りますが、超音波を使った検査であるため合併症の心配がありません。

6. 上部消化管内視鏡検査

上部消化管内視鏡検査とはいわゆる「胃カメラ検査」のことです。肝硬変の人は食道胃静脈瘤や胃潰瘍など、消化管からの出血の原因となる病気になりがちです。そのため、これらの病気を見つけるのが得意な上部消化管内視鏡が行われます。上部消化管内視鏡では、食道静脈瘤胃潰瘍を見つけるだけでなく、血を止めるための処置をあわせてできるのもメリットです。肝硬変の人は、出血しやすい病変がないかどうか調べるために、定期的な上部消化管内視鏡検査が勧められます。

7. 肝生検と病理組織学的検査:肝臓の組織を詳しく調べる

生検とは、皮膚の上から肝臓まで針を刺して肝臓の一部を採取することです。採取した細胞や組織の一部を顕微鏡で観察することを病理組織学的検査といいます。肝生検は画像検査に比べると身体に負担がかかり、基本的に入院が必要になる検査です。この検査によって肝障害の進行度や原因が突き止められることがありますが、出血などの偶発症がおこることがあるため、その他の検査によって十分に病状がわかっている人では行われません。