アルコール性肝障害について知っておくとよいこと
アルコール性肝障害は大量に飲酒を続けることによって起こる肝障害です。進行するまで自覚
1. 飲酒について
適切な飲酒量はその人の状況によって異なります。どのような人がどれくらいの飲酒量ならばよいのか、断酒したいときはどうしたらよいのか説明をします。
アルコール性肝障害の人は少しであれば飲酒して良いのか?
アルコール性肝障害の治療では節酒よりも禁酒が効果的です。また、禁酒によって病状が回復したとしても、飲酒を再開することは望ましくありません。特にアルコール性肝硬変の人が一旦禁酒した後に再度飲酒を始めると、重症化しがちであるといわれています。
また、アルコール性肝障害の人はアルコール依存症でもあることが少なくありません。アルコール依存症の人は、ほんの少しでも飲んでしまうと歯止めが利かず飲み続けてしまう特徴があることからも「少しならば飲んでよい」とはいえません。
アルコール性肝障害でない人の飲酒の目安とは?
アルコール性肝障害や依存症になったことがあれば、禁酒を続けることが大切です。では、アルコール性肝障害や依存症ではない人は、どれくらいの飲酒量にとどめておくのがよいのでしょうか。一つの目安になるのが、厚生労働省の「健康日本21」に提示されている「節度のある飲酒量」です。女性や高齢男性は1日平均純アルコールで約10g以下とされており、高齢でない男性は約20g以下にとどめておいたほうがよいとされています。
【純アルコール10gもしくは20gを含むアルコール飲料の量(目安)】
アルコールの種類 | 純アルコール量10gを含む量 | 純アルコール量20gを含む量 |
ビール (アルコール5%) | 250mL (ロング缶1/2本) | 500mL (ロング缶1本) |
日本酒 (アルコール14%) | 90mL(0.5合) | 180mL(1合) |
ウイスキー(アルコール43%) | 30mL(ダブル0.5杯) | 60mL(ダブル1杯) |
焼酎(アルコール25%) | 50mL (グラス1/4杯) | 100mL (グラス1/2杯) |
ワイン(アルコール12%) | 100mL(ワイングラス1杯) | 200mL(ワイングラス2杯) |
ただし、アルコールの許容量には個人差があり、上記の量以下であっても臓器にダメージが生じることがあります。初期の肝障害は検査しないと見つからないので、少しの飲酒量だからと油断せず、定期的な健康診断を欠かさず行うことをお勧めします。
断酒が難しい人に勧めたい治療について:アルコール依存症の治療
アルコールには依存性があるため、習慣的に大量に飲んできた人がアルコールを完全に止めるのは難しいこともしばしばです。アルコール性肝障害があるのにお酒がやめられない人は、アルコール依存症の治療を医療機関で受けることができます。また、断酒会などの自助グループへの参加は、断酒の支えとなります。アルコール依存症は症状の軽いうちのほうが治りやすい病気なので、なかなかお酒をやめられない思ったら早期に医療機関や自助グループなどに相談することをお勧めします。
2. 食事について
肝臓は栄養を蓄えたり必要に応じて供給したりする重要な臓器です。アルコール性肝障害の人は低栄養状態になりがちであり、基本的には「高タンパク」な食事と「
肝硬変の人は生の魚介類の摂取を控える
肝硬変の人がビブリオ・バルニフィカス菌(Vibrio vulnificus)に感染すると重篤化することがあります。ビブリオ・バルニフィカス菌は海中にいる
ビブリオ・バルニフィカス菌は加熱で死滅するので、肝硬変の人が魚介類を食べる時は、十分に加熱調理をしてください。
3. 医療・福祉制度について
アルコール性肝障害の治療は長期に渡ることが多く、医療費の負担が大きくなりがちです。また、進行した肝障害の人では日常生活に支障が出ることがあります。これらの負担軽減のために利用できる制度があります。
高額療養費制度について
高額医療助成制度とは、医療費の自己負担が高額になりすぎないように、ひと月の上限額(自己負担限度額)を超えた分が後から戻ってくる制度です。自己負担限度額は所得や年齢によって変わるので、自分の上限がどれくらいなのかをあらかじめ知っておくと良いです。また、申請するには医療機関や薬局で発行される領収証が必要なので捨てずにとっておいてください。
高額療養費制度について詳しくは厚生労働省のウェブサイトやこちらの「コラム」による説明を参考にしてください。
身体障害者手帳について
身体障害者手帳が交付されると医療費の助成や税金の軽減など、さまざまなメリットがあります。申請できる条件は症状や検査結果によって細かく決まっており、対象となる可能性があるのは「非代償期肝硬変の人」または「肝移植を受けた人」です。申請では指定医と呼ばれるお医者さんに診断書を作成してもらう必要があります。指定医がどこにいるかは市区町村の担当窓口で教えてもらえます。