2015.11.26 | ニュース

アルコール性肝炎から命を救える治療はあるか?

治療効果を文献から比較
from Gastroenterology
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多量の飲酒を続けることにより、肝臓はアルコール性肝炎の状態に陥り、肝硬変やそれによる門脈圧亢進症、さらには死亡の原因となります。これまでに薬物治療の効果を調べた文献の研究により、使われる薬の効果が比較されました。

◆薬の効果を比較

この研究は、過去の文献から、重症のアルコール性肝炎に対してステロイド薬、ペントキシフィリン、N-アセチルシステインが死亡を防ぐ効果を調べたものを集めました。

得られたデータを統計手法を使って統合し、これらの薬を単独で、または組み合わせて使ったときの効果を比較しました。

 

◆ステロイド薬とN-アセチルシステインの併用で短期的効果あり

次の結果が得られました。

ネットワークメタアナリシスにおいて、中等度の質のエビデンスにより、短期的死亡率を減少させるために、副腎皮質ステロイドの単独治療(相対リスク0.54、95%信用区間0.39-0.73)、またはペントキシフィリンとの併用(相対リスク0.53、95%信用区間0.36-0.78)、N-アセチルシステインとの併用(相対リスク0.15、95%信用区間0.05-0.39)が支持された[...]。N-アセチルシステインを副腎皮質ステロイドに加えることは副腎皮質ステロイド単独治療よりも短期的死亡率を減少させるために勝っていると見られたが、ペントキシフィリンを加えることは単独治療に勝るとは見られなかった。

ステロイド薬を使ったときに短期的に死亡率を下げる効果があると見られ、またその効果は単独で使うよりもN-アセチルシステインを併用したときのほうが高いと見られました。

 

「肝臓は沈黙の臓器」と言われるように、アルコール性肝炎が発見されたときには重症になっていることがあり、食道静脈瘤からの大出血や肝細胞がんなど、深刻な問題につながりえます。肝硬変にまで進んでしまうと元には戻らないと言われ、肝臓移植が必要になる場合もあります。

ステロイド薬は血糖値を高くするなどの副作用も知られていますが、炎症を抑えるなどの作用から、さまざまな病気の治療に使われ、効果が示されています。アルコール性肝炎に対しても有益に働くのかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Comparative Effectiveness of Pharmacological Interventions for Severe Alcoholic Hepatitis: A Systematic Review and Network Meta-analysis.

Gastroenterology. 2015 Oct

[PMID: 26091937]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。