2020.11.16 | コラム

【アルコール依存症チェック】「お酒を飲みたい」気持ちが抑えられない人は要注意

アルコール依存症が心配な人や、その家族はどこに相談したらよいのか

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アルコール依存症は身近な病気です。国内のある調査[1]によれば、生涯のうちにアルコール依存症を経験する人は約107万人ほどであるとされており、この数字を日本国の全人口に当てはめるとおよそ117人に1人となります。飲酒する習慣がある人であればアルコール依存症とは無縁ではなく、用心しておくに越したことはありません。
アルコールは一度依存してしまうとなかなか抜けだしにくいのですが、適切な治療によって離脱が可能です。また、依存に対する治療を早く始めれば始めるほど効果が見られやすいため、早く気づいて行動することが大切です。
そこで本コラムでは、アルコール依存症が疑われる状態についてと、どこに相談するのが良いのかを紹介します。
(なお、よく耳にする呼び方に「アル中:アルコール中毒」がありますが、医学用語では「アルコール依存症」と言います。)

1. どのような状態になったらアルコール依存症が疑われるのか

皆さんや皆さんの身近にお酒が好きな人はいませんか。いわゆるお酒好きとアルコール依存症には違いがあり、飲酒をコントロールできるかどうかで大きく分かれます。ポイントを下記にリストアップしますので、いずれかに当てはまるものがあれば、自分はアルコール依存症かもしれないと考えたほうが良いです。

 

【アルコール依存症を疑うポイント】

  • 飲酒をやめたくても自力ではやめられない
  • ついついお酒のことを考えてしまって、仕事・生活・健康などが、ないがしろになっている
  • お酒を飲まないと離脱症状が現れる(不安、発汗、不眠、身体の震え、吐き気など)

 

アルコール依存症になるのは本人の意志が弱いからだ、と白い目で見られがちですが、実は他にも大きな理由があります。アルコールという物質そのものに依存性があるということで、だからこそ誰にでもかかる可能性があるわけです。アルコール以外の依存症でも言えることですが、身体や心が切望する依存状態から自分一人で抜け出すのは簡単ではないため、上記に当てはまるものがあれば専門の医療機関や窓口で相談するのが回復への近道です。

 

2. アルコール依存症は何科に相談するとよいのか

アルコール依存症を専門に扱っているのは精神科や心療内科です。依存症専門外来を設けているところもあります。まずは問診を受けることになり、その内容を踏まえてアルコール依存症であるかどうかが判断されます。

 

アルコール依存症の治療では、酒量のコントロール(節酒)ではなくて、基本的にはお酒を一滴も飲まない状態(断酒)を目指します。依存状態から回復するのは簡単なことではありませんが、依存症専門の医療機関では断酒へのサポートをしてくれます。

断酒を目指す上で特に効果的なのが心理社会学的治療と考えられており、心理社会学的治療では、専門スタッフによる個別に行われるカウンセリングやグループワークなどを通して、病気を理解し飲酒欲求への適切な対処を目指します。加えて、嫌酒薬断酒補助剤といった内服薬を使うと断酒がより成功しやすく場合もあります。

 

3. アルコール依存症専門外来は敷居が高いと感じる人が知っておくとよい相談窓口とは

アルコール依存症が心配でも、いきなりアルコール依存症専門の精神科や心療内科を受診するのは気が引けてしまうかもしれません。そのような人には、他にも相談する手段があります。

 

3-1.内科や消化器内科に相談する

たくさんお酒を飲む人は、肝臓や膵臓などの臓器がダメージを受けていることがあります。このため、まずは内科や消化器内科に身体の状態を調べてもらった上で、アルコールとの付き合い方について相談してみるのもよい方法です。相談した上でアルコール依存症の専門的な治療が必要だと判断されれば、専門外来を紹介してくれます。また、もし臓器のダメージが見つかれば、並行して内科や消化器内科での治療を受けることになります。

 

3-2.保健所や精神保健福祉センターに問い合わせる

2014年に「アルコール健康障害対策基本法」という法律が施行されてから、厚生労働省や地方自治体によって、さまざまな酒害への対策がなされています。その一環として、各地域の保健所や精神保健福祉センターに相談窓口が設けられるようになりました。アルコール依存症かもしれないため心配だけれども、医療機関にいきなり行くのはハードルが高いと考えている人は利用してみてください。ただし、予約制のことが多いので、まずは電話などで問い合わせをしてみるとよいです。なお、近隣の保健所や精神保健福祉センターを検索するのに、厚生労働省のホームページが役立ちます(厚生労働省ホームページ「こころもメンテしよう:身近にある地域の相談窓口」のリンク)。

 

3-3.自助グループに連絡をとる

自助グループとは、共通の病気を抱えている人同士が集まり交流し助け合う場所のことを指します。グループのメンバーと情報・知識・想いなどを共有することで、一人では対処が難しい問題の解決を目指します。

アルコール依存症の代表的な自助グループには、アルコホーリクス・アノニマス(AA)全日本断酒連盟などがあります。アルコール依存症かもしれないと心配な人は、自助グループに連絡をとってアルコールについての悩みを聞いてもらうのも回復につながる一つの方法です。

 

4. 本人が動かない場合には、家族が相談を

アルコール依存症になると健康を害したり社会生活に支障が出たりするようになります。その姿を見ている周りの家族は心配になって、お酒をやめるよう促すこともあると思います。しかし、当の本人は「自分のお金で飲んで何が悪いのか」、「自分はアルコール依存症ではない」などといって聞く耳を持たないことも珍しくありません。

このように本人が治療に乗り気でない時には、ここまで紹介してきた保健所、精神保健福祉センター、アルコール依存症専門外来に家族だけでも相談することをお勧めします。問題解決に向けて本人とどのようにコミュニケーションをとったらよいのか教えてくれたり、どのような対処法が適切か一緒に考えてくれたりしてくれるので、上手く活用してください。

 

5. さいごに

アルコールの問題に困っている人は早期から行動を起こすことが大切です。本コラムで紹介したさまざまな窓口を上手に使うことで、お酒がやめられなくて悩む人たちが少しでも早い段階で適切な対処法に出会うことを願っています。

 

参考文献


  1. Osaki Y, et al. Prevalence and Trends in Alcohol Dependence and Alcohol Use Disorders in Japanese Adults; Results from Periodical Nationwide Surveys.Alcohol Alcohol 2016;51(4)465-473.

  2. 新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン作成委員会/監修, 厚労省障害者対策総合研究事業「新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン」, 新興医学出版社 , 2018

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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