2016.02.06 | ニュース

アルコール中毒で起こる腹痛、危険な原因も

6万人の解析から
from Mayo Clinic proceedings
アルコール中毒で起こる腹痛、危険な原因もの写真
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多量飲酒の習慣は、アルコール性肝硬変など、命に関わるさまざまな病気の原因になります。急激な腹痛を起こし、緊急手術が必要になる腸間膜虚血との関連が検討されました。

◆アルコール中毒と腸間膜虚血の関係

小腸や大腸は、上腸間膜動脈、下腸間膜動脈という血管から血液を受け取っています。これらの動脈の中で、血の塊などにより血液の流れが止まってしまうと、腸の組織が壊死して出血したり腸に穴が開いてしまい、激しい腹痛や嘔吐、血便の症状を起こし、緊急手術で腸を切り取るなどの救命が必要になる場合もあります。

こうした「腸間膜虚血」という状態は、心房細動など血の塊ができやすい背景がある人、動脈硬化が進んでいる人などで起こりやすくなります。

この研究は、アルコール中毒があり入院した6万人以上の患者を、アルコール中毒がない人と比較することで、アルコール中毒が腸間膜虚血の頻度に関係しているかどうかを調べました。

 

◆腸間膜虚血は5倍に

次の結果が得られました。

年齢、性別、併存する高血圧、高脂血症糖尿病心房細動脳卒中心不全慢性腎臓病虚血性心疾患慢性閉塞性肺疾患肝硬変の病歴で調整したのち、アルコール中毒と腸間膜虚血の間に有意な関連が観察された(調整ハザード比5.21、95%信頼区間4.36-6.23、P<0.0001)。

アルコール中毒がある人とない人を、ほかの病気などの条件が揃うように比較すると、アルコール中毒がある人では腸間膜虚血が5倍以上の率で発生していました

研究班は「腹痛があり、治療の効果が乏しい患者について、臨床医はアルコールの病歴について注意深く考えるべきである。なぜなら、アルコール飲用障害は腸間膜虚血という外科的緊急事態のリスク因子だから」と結論しています。

 

少量の飲酒は健康に良い面があるとも言われていますが、飲み過ぎによる明らかな害は肝臓、膵臓などいろいろな臓器に起こります。

適度を保つことはもちろん、アルコール依存症に対しては家族など周りの人も危険性をよく理解したうえ協力して治療を進めることが、深刻な事態を防ぐことにつながります。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Increased Risk of Mesenteric Ischemia in Patients With Alcohol Use Disorder: A Population-Based Retrospective Cohort Study.

Mayo Clin Proc. 2015 Dec 24. [Epub ahead of print]

[PMID: 26725146]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。