二日酔いの治療法を徹底的に探してみた結果
歓迎会やお花見など、つい飲み過ぎて二日酔いに悩まされた経験のある方も多いのではないでしょうか。医学の研究でも二日酔いは長年のテーマになってきました。有効な治療法はあるのか、過去の研究を体系的に調査した2005年の研究を紹介します。
◆過去の研究を調査
この研究は、イギリスの有名医学誌『BMJ』が毎年クリスマスに企画している、遊び心のある研究特集のひとつとして掲載されました。
研究班は、文献データベースを検索して、二日酔いに対する医学的な治療法または予防法を調べた研究を集めました。過去の研究論文が記録されている主な6種のデータベースから、古いものでは1951年以降の研究を検索範囲に含めたことに加え、いくつかの情報源を追加で参照して検索しました。
さらに詳しい調査の対象とするかどうかの基準として、研究参加者にどの治療法を使うかを研究者がランダムに割り当てる方法で行われたもの(ランダム化対照試験)だけに絞って採用を選ぶこととしました。一般に、ランダム化対照試験は、単独の研究としては最も想定外の要素から影響を受けにくい、質の高い方法とされています。
◆基準を満たす方法で研究されていた治療は8種類
調査によって次の研究が見つかりました。
潜在的に関係する15件の試験が同定された。7件の出版物はすべての採用基準を満たすに至らなかった。8種の異なる介入を評価した8件のランダム化対照試験がレビューされた。試された治療はプロプラノロール、トロピセトロン、トルフェナム酸、フルクトースまたは
グルコース 、食品による補充としてはルリヂシャ、アーティチョーク、オプンチア・フィクス=インディカ、酵母を元にした製剤だった。
8件の研究で、それぞれ違った治療法が試されていました。それらの効果は以下のものでした。
- 効果が確認できなかったもの:
- プロプラノロール(血圧を下げる作用のある薬)
- トロピセトロン(吐き気を抑える作用のある薬)
- フルクトースまたはグルコース(多くの食物に含まれる糖類)
- アーティチョーク(チョウセンアザミ)
- オプンチア・フィクス=インディカ(サボテンの仲間)
- 何らかの効果が見られたもの:
- トルフェナム酸(鎮痛作用のある薬)
- 全体的な症状のスコアに差があった
- 目の腫れ、わずかな排尿困難が見られた
- ルリヂシャ(ハーブの一種)由来のγ-リノレン酸
- 全体的な症状のスコアに差があった
- 乾燥酵母
- 症状のスコアに差があった
- トルフェナム酸(鎮痛作用のある薬)
このように、8種類のうち3種類の治療で、統計的に認められる程度の効果があったことが報告されていました。
◆その他、根拠不明の療法も
詳しい評価の対象とされた8件の研究報告のほか、研究班は「インターネット上で報告されている二日酔いの治療」として、以下のものがGoogleの検索で見つかったことを挙げています(サプリメントなどの商品名が含まれていますが、すべて原文からの直訳です)。
アスピリン バナナ 大麦
ビタミン B複合体、ビタミンC、カルシウムを含むベロッカ カルダモン、アモムム、ミカンの皮、シトラスの皮、朝鮮人参、オケラ、アナタケ、massa fermenata、乾燥ショウガ、チョレイタケを含む混合物 ブラッディマリー(すなわち、アルコール飲料) キャベツ 炭酸カルシウム 炭の錠剤 チェイサー(すなわち、アルコール飲料) コーヒー システイン 卵 運動 新鮮な空気 フルーツジュース 朝鮮人参 グルタミン 緑茶 ヘア・オブ・ザ・ドッグ(すなわち、アルコール飲料) ハチミツ 熱いお風呂 イブプロフェン 氷嚢 腎臓透析 ミルクセーキ マルチビタミン アセトアミノフェン ピザ RU-21 ロシア・パーティー シャワー 睡眠 Sob'r-K HangoverStopper コハク酸 オリーブオイル、生卵の卵黄、トマトケチャップ、タバスコ、ウスターソース、レモン汁、バターミルクなどの素材を含むさまざまな料理 ベジマイトをトーストにつけたもの 水
医学の研究ではないこれらの情報は、ここでは検討の対象とされていません。
すべての調査結果をふまえ、研究班は「なにがしかの伝統的な療法または補助療法が二日酔いを予防または治療することに有効とする、注目に値するエビデンスは存在しない。アルコールによる二日酔いの症状を避けるために最も有効な方法は禁酒または節酒を実行することである」と結論しています。
研究班が言うように、飲み過ぎないことが唯一確実な対策なのかもしれません。が、わかっていてもやめられないのが飲み過ぎというものです。Google検索からは、二日酔いに対抗するために世界中の人々が数えきれないほどの方法を試していること、「迎え酒」を試す人も多いことが伺われます。
この研究の時点で、医学研究の方法で検証されたものはわずかで、その効果も限られているという結果でした。しかしこの研究よりあとにも、二日酔いに対する世界の関心は続いています。ここでもいくつかの治療法に多少の効果が見られたほか、まだ検証されていない方法が眠っているかもしれません。いつか何かの方法に、確かに効果があるという証拠が見つかるかもしれません。
それまでは、二日酔いにはっきり有効とわかった治療はないということを頭に置きつつ、節度を持ってお酒を楽しみましょう。
執筆者
Interventions for preventing or treating alcohol hangover: systematic review of randomised controlled trials.
BMJ. 2005 Dec 24.
[PMID: 16373736]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。