胃食道逆流症(逆流性食道炎)の検査:内視鏡検査・食道pHモニタリングなど
胃食道逆流症は
1. 問診・身体診察
胃食道逆流症の診察には問診が大事です。検査で数字や画像が出たほうが信頼できそうに感じられるかもしれませんが、
問診の例
胃食道逆流症の問診でよく聞かれる質問を紹介します。不快感ということばは胸焼けなどの症状全般を指します。
- どんな症状がありますか?
- 胸焼け、吐き気など、感じている症状を自分の言葉で説明してください。
- 不快感が起こる時間帯はありますか?
- 胃食道逆流症では食事によって症状が変化することがあります。食事以外にも一日の中で症状が変わることがあるか、ずっと同じくらいの症状が続いているかなどを伝えてください。
- いつもより食べすぎた時の症状を聞かせてください。
- 食べ過ぎると胃食道逆流症の症状がはっきりとすることがあります。
- 脂肪分の多い食事を食べすぎたときに症状の変化はありますか?
- 胃食道逆流症では、脂肪分の多い食事をとったときには症状が悪化することがあります。
- 香辛料のきいた食事を食べた時に症状の変化がありますか?
- 一部の香辛料により胃食道逆流症の症状が悪くなることがあります。
- 不快感に対して胃薬を服用したときの症状に変化はありますか?
- 診察に行くより前に自分で胃薬を飲んだことがあれば、薬が効いたかどうかを伝えてください。15分以内に薬の効果があらわれるときには胃食道逆流症を疑います。
- 不快感は横になったり、前屈みになるとどうなりますか?
- 胃食道逆流症は横になったり前屈みになると症状が悪化することがあります。
- 不快感はものを持ち上げたり、ひっぱったり、あるいは呼吸が激しくなった時にはどうなりますか?
- お腹に力が入ったりすると胃食道逆流症の症状が悪化することがあります。
- 過去に治療した病気(入院歴・手術歴)を教えてください。
- 胃の手術などは胃食道逆流症の原因になることがあります。
- 現在服用中の薬を教えてください。
- 薬剤の中には胃食道逆流症の原因になるものがあります。
胃食道逆流症に現れやすい特徴とともに説明しましたが、いくつかが当てはまらないという答えでも総合的に胃食道逆流症と診断されることがあります。胃食道逆流症らしいかどうかを自分で考える必要はないので、感じているままに答えてください。
胃食道逆流症を診断する上で症状や過去の病気、服用中の薬などの情報は特に大事になります。上の問診例を参考にして、できるだけ詳しい情報を伝えてください。また、服用中の薬があれば、お薬手帳や薬の包装など、薬の名前がわかるものを持って行くと助けになります。
胃食道逆流症の特徴がはっきり出ていれば、問診だけで胃食道逆流症と診断できることもあります。
身体診察
胃食道逆流症の身体診察は胸部・腹部を中心とした
胃食道逆流症では咳や胸の痛みといった症状が現れることもあります。咳や胸の痛みの原因になりうる病気の症状と見分けます。
咳や胸の痛みの原因になる病気
胃食道逆流症は胸焼けや呑酸以外にも多様な症状が現れることがあります。咳・胸痛などが代表的です。
咳や胸痛の原因として胃食道逆流症を連想することは難しいかもしれません。どちらかというと肺や心臓の病気を連想するほうが自然だと思います。咳や胸痛の原因となる病気には以下の様なものがあります。
- 咳の原因になる病気の例
- 胸痛の原因になる病気の例
咳や胸の痛みの原因になる病気は多様です。問診や身体診察に加えていくつかの検査を用いて見分けます。
2. レントゲン、心電図、エコーなど:他の病気を見分けるための検査
問診だけではほかの病気の可能性が否定できない場合、検査を使ってほかの病気がないことを確かめます。
レントゲン検査
胃食道逆流症の症状で咳がでることがあります。
咳の原因になる病気としては肺などの呼吸器系の病気も考えられます。肺や気管支などの臓器を調べるには
心電図検査
胃食道逆流症では胸やみぞおちが痛くなることがあります。胸痛があれば心臓が原因でないかを見分けることは大切です。胸痛の原因となる心臓の病気は狭心症や心筋梗塞などです。
超音波検査
胃食道逆流症では胸痛が現れることがあります。胸痛の原因になる病気で注意が必要なのは狭心症や心筋梗塞など心臓の病気です。
CT検査・心臓カテーテル検査など
レントゲン、
3. 内視鏡、食道造影など:胃食道逆流症の診断を確定させる検査
胃食道逆流症は症状に特徴があるので問診により診断に大きく近づくことができます。問診で他の病気の可能性を考える場合や胃食道逆流症と確定的でない場合には検査を追加します。
胃食道逆流症の診断に用いる検査は以下のものがあります。
- 内視鏡検査
- 病理検査
造影 検査:食道造影- 食道pHモニタリング
- 食道内圧測定
- PPIテスト
食道の中でも、胃食道逆流症に関わっているのが下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)という筋肉です。下部食道括約筋は英語のLower Esophageal Sphincterを略してLESともいいます。食道造影などは下部食道括約筋の機能を調べる検査です。
以下ではそれぞれの検査について解説します。
内視鏡検査
胃食道逆流症の内視鏡検査はいわゆる「
内視鏡検査では後述するロサンゼルス分類という方法で病気の重症度を分類したり治療効果を判断したりするのに役立ちます。
病理検査
胃食道逆流症が長年続いたり逆流の程度が激しかったりすると食道の一部が赤くただれたり
造影検査:食道造影
食道造影検査は食道の形やしわを観察する検査です。胃食道逆流症の原因となる食道裂孔ヘルニアの診断に向いています。
食道造影はバリウムという物質を飲んで画像を撮影します。放射線の一種である
食道pHモニタリング
24時間pHモニタリングは胃から食道への逆流を連続的に観察する検査です。専門的な施設で行われることが多い検査です。pHはドイツ語式にペーハーと読んだり英語式にピーエイチと読んだりします。pHは酸性かアルカリ性かをあらわしています。pHが7であれば中性です。数値が小さいほど酸性が強く、数値が大きいほどアルカリ性が強いことを示します。
検査には細い管を用います。細い管には先にpHを測定できる装置がついています。管を鼻から挿入して食道と胃の境目まで送り込みます。細い管を用いて24時間pHを連続的に測定します。逆流があればpHが小さいほうに偏ります。
管を挿入したまま日常生活を送り逆流の状況を確認します。
食道内圧測定
胃食道逆流症の原因の一つに下部食道括約筋の機能の低下があります。
食道内圧測定は下部食道括約筋の機能を評価することができます。食道内圧測定は以下の手順で行われます。
- 検査は意識がある状態で行います。喉に麻酔をすることがあります。
- 検査用のカテーテルと呼ばれる、太さ4mm程度の管を鼻から挿入します。
- カテーテルが胃に達したところで少量の水を内服して食道の動きを観察します。
- 数回同作業を繰りかえします。検査は20-30分程度要します。
検査の影響として鼻や口の中が痛んだり鼻血が出たりすることがありますが多くの場合は経過をみることで改善します。
PPIテスト
PPIはプロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor)の略です。プロトンポンプ阻害薬は胃酸の分泌を抑制する薬で胃食道逆流症の治療に用いられます。
PPIテストは胸焼けなどの症状が胃食道逆流症を原因とするかの判断に役立ちます。
胃食道逆流症が原因として疑わしい症状を有する人にPPIを試験的に内服してもらい症状の改善があれば胃食道逆流症と診断します。治療効果を診断に用いる方法を診断的治療といいます。
4. 胃食道逆流症の分類
胃食道逆流症の重症度は内視鏡検査を用いて分類します。ロサンゼルス分類という分類を用います。
ロサンゼルス分類
ロサンゼルス分類は食道炎の段階を内視鏡検査で見た特徴から6段階に分けて分類します。分類の内容は難しいですが、医師は内視鏡検査をする際に注目しているポイントに対応しているので紹介します。
【ロサンゼルス分類】
グレードN | 内視鏡的に変化を認めないもの |
グレードM | 色調が変化しているもの |
グレードA | 長径が5mmを超えない粘膜障害で粘膜ひだに限局されるもの |
グレードB | 少なくとも1か所の粘膜障害が5mm以上あり、それぞれ別の粘膜ひだ上に存在する粘膜障害が互いに連続していないもの |
グレードC | 少なくとも1か所の粘膜障害が2条以上のひだに連続して広がっているが全周性ではないもの |
グレードD | 全周性の粘膜障害 |
胃と食道のつなぎ目を内視鏡で観察して色や粘膜の傷つき方、広がりなどから6段階に分類します。