胆石症の原因について
胆石とは、胆のうの中にある胆汁の成分が何らかの原因で固まってしまった石のようなものです。胆石は大きく分けて
目次
1. 胆石のもととなる胆汁とその貯蔵庫である胆のうの役割
胆石ができるメカニズムを理解するために、まずは胆汁と胆のうの役割について解説します。

胆汁の役割について
胆汁は肝臓で作られる黄褐色の液体です。胆汁は
胆のうの役割について
胆汁は、肝臓で作られた後、
一方、口から入った食べ物は、胃で消化された後に十二指腸と呼ばれる短い管を通って小腸まで運ばれます。食べ物が十二指腸を通過するタイミングに合わせて胆のうは収縮し、溜めこんでいる胆汁を吐き出します。胆のうから出た胆汁は総胆管を通って十二指腸の中に排出され、食べ物と混ざり合います。なお、総胆管の出口となる十二指腸の開口部は、膵臓でつくられた膵液の通り道である主膵管と合流しています。
2. 胆石ができるメカニズム
胆石は主に、胆汁の成分に異常があることや、胆汁の貯蓄倉庫である胆のうの働きに問題が生じることが原因でできやすくなるとされています。
具体的には、次のさまざまな要因が絡み合って胆石ができると考えられています。
- 胆汁中のコレステロール濃度が高い
- 胆汁中のビリルビン濃度が高い
- 胆のうの収縮する力が弱い
- 胆汁の通り道がどこかで詰まっている
- 胆汁に
細菌 が感染している - 胆汁の生産工場である肝臓の機能が低下している
胆石のもととなる成分は、胆汁に含まれるコレステロールやビリルビンとよばれるものです。食事や病気などいろいろな原因で胆汁中のコレステロールやビリルビンの濃度が高まってしまうと、胆石ができやすくなるとされています。
また、胆のうがうまく働かないことによって胆汁が胆のうの中で長期間とどまっていると、胆汁が濃縮される過程で胆石のもととなる成分が結晶として固まりやすくなります。これら胆石ができる原因について、胆石の種類ごとに分けて詳しく説明します。
胆石の種類と成り立ち
胆石は大きく分けてコレステロール胆石と色素胆石の二つに分類されます。色素胆石はさらにビリルビンカルシウム石と黒色石に分けられ、それぞれ成り立ちが異なります。
【胆石の種類】
- コレステロール胆石
- 色素胆石
- ビリルビンカルシウム石
- 黒色石
なかでもコレステロールを主成分とするコレステロール胆石は食生活と密接に関わっていると言われ、日本の全患者数の約3分の2を占めていると報告されています。
それぞれの胆石の成り立ちについて詳しく説明します。
コレステロール胆石の成り立ち
コレステロール胆石は、胆汁に含まれるコレステロールが石の主な成分で、胆汁中のコレステロール濃度が高い状態の人にできやすいと考えられます。例えば脂肪分の多い食生活や、女性
胆汁中のコレステロール濃度が高まることに加えて、胆のうの収縮する力が低下することも、コレステロール胆石をよりできやすくすると考えられています。
収縮する力が弱まって胆汁が胆のうの外に運び出されにくくなると、胆のうは胆汁を溜めこんで風船のようにどんどん膨らんでいきます。膨らんだままの胆のうの中でコレステロール濃度の高い胆汁が長くとどまると、胆汁が濃縮していく過程でコレステロールの成分が固まりやすくなると考えられています。さらに胆汁の流れが悪くなると、最終的に肝臓でコレステロール濃度の高い胆汁が作られるようになって、ますますコレステロール胆石ができやすくなると考えられています。
また、胆汁の流れが悪くなることは、細菌が増えやすい状況を引き起こします。コレステロール胆石の中に細菌を含むものが多くみつかったとの報告もあり、コレステロール胆石と細菌感染の関係も注目されています。
ビリルビンカルシウム石の成り立ち
色素胆石のうちビリルビンカルシウム石は、胆汁に細菌が感染するとできやすくなります。細菌が産生する
胆汁の細菌感染は、胆汁の流れが悪くなると起こりやすいとされています。胆汁の通り道である胆管が狭くなっていたり、異物で胆管がふさがれていたりすることが胆汁の流れが悪くなる原因となります。したがって、ビリルビンカルシウム石は胆のうの中よりも、総胆管や肝臓内の胆管に多くみられるタイプの胆石です。ちなみに前者は総胆管結石、後者は肝内結石と呼ばれます。
黒色石の成り立ち
色素胆石のうち黒色石は、ビリルビンカルシウム石と違って胆汁の細菌感染がない状態でできる胆石と考えられています。
黒色石はビリルビンを主成分として、銅やマグネシウム、鉄など金属の成分を含んでいることが分かっていますが、まだ成因は十分に解明されていないのが現状です。
黒色石の原因となる病気に溶血性疾患(サラセミア、遺伝性球状赤血球症、鎌状赤血球症)、クローン病、肝硬変などが分かっています。また、溶血性貧血を起こしやすい心臓弁置換手術後や、回盲部切除術後の人も黒色石ができやすくなります。詳しくは「胆石の原因になる病気について」を参考にしてください。
3. 胆石の原因になる病気について
胆石症は病気が原因で起きることがあります。コレステロール胆石と色素胆石で原因となりやすい病気が異なるので、分けて説明します。
コレステロール胆石(コレステロールが主成分)の原因となる病気
胆汁に含まれるコレステロールが増加しやすい、次の病気や状態が原因となります。
- 脂質異常症
- 非アルコール性脂肪性肝疾患
- 糖尿病
- 脊髄損傷
消化管 の手術後- 完全経静脈栄養(栄養剤を血管に直接注入して栄養をとる方法)
- 食事を摂らない期間(絶食期間)が長い
脂質異常症や非アルコール性脂肪性肝疾患の人では、胆のうの収縮が弱まることや、胆汁へのコレステロール分泌が増加することにより、とくにコレステロール胆石ができやすくなると考えられています。
糖尿病や脊髄損傷、消化管手術後、完全経静脈栄養の状態は、胆のうの収縮を弱めることにつながり、コレステロール胆石と色素胆石のいずれもできやすくなると考えられています。
完全経静脈栄養とは、長期にわたり口から食事を摂れない人のために点滴で栄養を補給する方法です。食べ物が腸を通過しないと胆のうは収縮せず、胆のうの中の胆汁が濃縮していきます。長時間にわたって胆汁の濃縮がすすむと胆汁中の成分が結晶化しやすくなり、しだいに胆石として固まってきてしまいます。
食事を摂らない期間が長くなる絶食の状態は、完全経静脈栄養の人だけに限りません。夕方早い時間に夕食を摂ったあと、翌日の朝食まで何も食べずに過ごす人や、朝食を抜くことで食べない時間が長く続いてしまう人にも当てはまるといわれています。
色素胆石(とくに黒色石)の原因となる病気
色素胆石のうち黒色石は、血中のビリルビン濃度が高くなる病気や状態に伴って生じやすいといわれています。具体的には以下のような病気があげられます。
ビリルビンは胆汁色素の主成分です。血液中の
溶血性疾患や心臓弁置換術後の人は、その病気のために赤血球が壊されてしまい、赤血球の中にとどまっていたヘモグロビンが血液中に流れ出てしまいます。最終的に、通常の胆汁に多く含まれている抱合型ビリルビンよりも、非抱合型ビリルビンが胆汁中に増えることにつながり、色素胆石の一種である黒色石ができやすくなると考えられています。
クローン病や回盲部切除術後の人では、小腸の終わりで大腸の入り口につながる回盲部と呼ばれる部分の腸の働きが失われます。これが体内の非抱合型ビリルビンが増えることにつながり、黒色石ができやすくなると考えられています。
肝臓の機能が大幅に低下してしまう肝硬変では、胆汁の成分が変化し、胆汁中の非抱合型ビリルビンが増えて黒色石ができやすくなると考えられています。
4. 胆石の原因になりやすい食事と飲酒について
胆石の中でもコレステロール胆石は生活習慣と密接に関わると言われています。
胆石の原因になりやすい食事について
胆石ができやすくなる原因の一つに食生活習慣があげられます。多数の報告をまとめると具体的には次のような食事内容となります。
- 一日の摂取総カロリーが高い食事
- 炭水化物(米、パン、麺類など)が多い
- 糖分(お菓子、ジュースなど)が多い
- 動物性脂肪(牛肉や豚肉、牛乳、バターなど)が多い
胆石の一種であるコレステロール胆石はとくに、食事の影響を受けやすいといわれています。上記のような食べ物が好きな人は、普段の食事について一度見直してみてください。
胆石ができにくくなる食事については、「胆石症の人が知っておきたいこと:予防法や疑問について」を参考にしてください。
胆石と飲酒について
適度な飲酒(アルコール)は胆石ができるリスクを下げるといわれています。また、胆石症だけでなく、虚血性心疾患や脳梗塞などの
人によってアルコールを分解する能力が異なるため、「適度な飲酒」を明確に定義することは難しいです。厚生労働省の示す指標では、日本人の適量の飲酒は「純アルコールに換算して、1日平均20g程度」とされています。ただし、女性や高齢者、飲酒後に皮膚が赤くなりやすい人は、これより少なくすべきとされていますので注意してください。
純アルコール20gといってもわかりにくいので、およその目安を以下に示します。
- ビール・発泡酒 500mL(中ビン1本)
- 焼酎 100mL
- 日本酒 160mL(1合)
- ワイン 200mL
- ウィスキー 60mL(シングル2杯)
これよりも多く飲酒している人は、胆石症に限らずさまざまな病気の予防のためにも節酒を心がけるようにしてください。
飲酒については、「厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト」で詳しい情報が提供されています。こちらも参考にしてみてください。
5. 胆石ができやすい人の特徴
胆石ができやすい人の特徴として大きく分けて4つあげられます。
- 年齢が50歳以上である
- 女性、または女性ホルモンを投与している
- 家族に胆石症の人がいる
- 肥満である
それぞれについて詳しく説明します。
年齢が50歳以上である
胆石症は、年齢を重ねるにつれてみつかる人が増える病気といわれています。日本人全体で胆石症の人の割合は約5%とされていますが、50歳未満の年代で胆石がある人の割合はおよそ1%未満です。ところが50歳代になると約2%に増え、60歳代で約3%と右肩上がりに胆石がある人の割合が増えていきます。
胆石は症状のない人でも、検診で
女性、または女性ホルモンを投与している
胆石症はこれまで女性に多い病気として知られていました。しかし2013年に日本胆道学会が行った調査では過去の報告と逆転して、女性より男性に多い(男女比 1:0.9)ことが判明しました。男性の胆石症患者が増えた背景には、肥満の増加などさまざまな要因が考えられますが、胆石症がもともと女性に多い病気といわれるのは女性ホルモンとの関連が指摘されているからです。
女性ホルモンは胆石の中でもコレステロール胆石ができやすい状況を引き起こすと考えられています。コレステロール胆石とは、胆汁に含まれるコレステロールが主に固まってできた胆石のことです。
女性ホルモンの一種である
女性では特に、女性ホルモンの影響を受けやすい思春期のはじまりから閉経までの期間に、胆石症の発症リスクが高くなるとされています。なかでも妊娠中は、エストロゲンとプロゲステロンがたくさん分泌されます。妊娠回数が多くなればなるほど胆石ができる可能性は高くなると考えられています。
妊娠のほかに女性ホルモンが増える状態として、ホルモン補充療法や
家族に胆石症の人がいる
胆石症の人の中には、遺伝が関係している人もいるといわれています。家族の中に胆石症の人が多い場合は、遺伝が原因の一つになっている可能性も考えられます。とくにコレステロール胆石は、原因となるような遺伝子の変異が複数みつかったとの報告があります。
ただし、胆石ができる原因には生活習慣の影響も強く、遺伝によるものとそうではない場合を判別するのは難しいこともあります。
肥満である
男性、女性ともに肥満傾向の人は胆石ができやすいといわれています。
肥満度の指標の一つであるBody Mass Index(
肥満を引き起こす高カロリー、高脂肪の食事は、胆石の主成分となるコレステロールを多く摂ることにつながり、コレステロール胆石ができやすくなると考えられます。また運動不足もコレステロール胆石ができやすくなる原因の一つとされています。
胆石のできやすい食事についてさらに詳しい内容は「胆石の原因になりやすい食事について」で説明しているので参考にしてください。
肥満の人がダイエットとリバウンドを繰り返して、体重が急激に減ったり増えたりすることは、胆石ができるきっかけになるといわれています。また、重度の肥満に対する治療の一つである減量手術を受けたあとに、急激に体重が減少することで胆石ができやすくなることがあります。
これは、体重が急激に変動することで、胆汁に含まれるコレステロールが固まりやすくなると同時に胆のうが収縮する動きも弱まるためといわれています。胆のうが縮みにくくなることで胆のうの中に胆汁が長い間とどまると、胆石ができやすくなると考えられています。
肥満の解消を目指すことは、胆石症だけでなく多くの病気を遠ざけることにつながります。急激に体重が変動するようなことはできるだけ避けて、運動を取り入れながら無理なくダイエットをするようにしてください。
【参考文献】
・胆石症診療ガイドライン2016
・「NEW外科学」(出月康夫, 古瀬彰, 杉町圭蔵/編集)、南江堂、2012
・今村直哉、七島篤志、甲斐真弘. 胆石症の外科治療 胆道 32 (1): 51-61, 2018
・日本胆道学会学術委員会 胆石症に関する2013年度全国調査結果報告. 胆道 28: 612-617, 2014
・正田純. 性差による臨床像の差異ー胆石症ー. 胆と膵 39 (6): 515-519, 2018
・山口和哉、谷村広、石本喜和男ほか 剖検例からみた最近の胆石保有率と胆嚢癌合併率. 日臨外会誌 58: 1986-1992, 1997