たんせきしょう(たんのうけっせき)
胆石症(胆のう結石)
胆のうの中に、砂つぶのようなかたまり(胆石)ができた状態。突然の痛みが起こることがある
12人の医師がチェック 144回の改訂 最終更新: 2021.03.31

胆石症の症状について

胆石症とは、胆のうの中に石のような塊ができた状態のことです。胆石発作と呼ばれるお腹や背中の強い痛みや、発熱、吐き気などが症状として現れますが、なかには特に症状が出ない人もいます。このページでは、胆石症によって起こる症状について詳しく説明します。

1. 胆石症は症状がないこともある

胆石症では、お腹の痛みや発熱、吐き気などの症状が現れますが、一方で症状が出ない人もいます。胆石があるけれども症状がない場合を、無症状胆石といいます。

腹部超音波検査は、胆石をみつけるのが最も得意とされる検査です。(詳しくは「胆石を診断するための検査について」を参照してください。)無症状胆石は人間ドックや集団検診の腹部超音波エコー)検査で見つかる人がいます。腹部超音波検診を受けた人のうち2-3%の人に胆石症がみつかるといわれていて、身体の中に胆石があることを知らずに日常生活を送っている人は少なくありません。

胆石による症状がなければ、ほとんどの人は治療を受ける必要がありません。ただし、胆のうがんが隠れている可能性がある人など、一部の人はお医者さんから治療をすすめられることがあります。胆石症と言われたことがあるけれどもこれまで詳しい検査を受けたことがない人は、一度医療機関を受診してみてください。

無症状胆石の人に対する治療については、「胆石症の治療について」で詳しく説明しています。

2. 胆石によるお腹や背中の痛み(胆石発作も含む)

胆のうの解剖図

胆石で生じる最も多い症状は腹痛や背部痛です。なかでも、急激な強いお腹の痛みは「胆石発作」と呼ばれています。胆石発作とは、胆石症で起きる、みぞおち(心窩部)から右脇腹(右季肋部)にかけて生じる激痛のことです。発作というとおり、症状は急激に起こります。胆道疝痛発作と呼ばれることもあります。

胆石発作は腹痛のほか、背中の痛み(背部痛)、右肩に広く散らばるような痛み(放散痛)、吐き気などを感じることもあります。なお、左肩に広がる放散痛は、胆石症よりも心臓疾患が原因となることが多いといわれています。

胆石発作が起こるタイミングとして多いのは、主に次のような時です。

  • 脂肪の多い食事を摂った2-3時間後
  • 疲れている時
  • 精神的な緊張が強い時
  • 眠っている時

上記のタイミングで激しい腹痛が現れたからといって胆石症とは限りませんが、強い痛みがある場合には医療機関を受診して原因について調べてもらってください。

胆嚢,胆のう,胆管

胆石によって起こる腹痛や背部痛は、胆石が入っている胆のうが収縮して胆のう内の圧が急上昇するために生じます。これだけでは理解しにくいので、詳しく説明します。

胆のうは肝臓で作られた胆汁をためておく臓器です。胆のうと総胆管をつなぐ胆汁の細い通り道を胆のう管といいます。胆のう管は胆汁の出入り口となっています。この胆のう管に胆石が詰まる(嵌頓:かんとん)ことで胆のうの内圧が上昇し、腹部や背部に激しい痛みを生じると考えられています。

また、胆のう管に胆石が詰まって閉塞すると胆汁の流れは悪くなり、この状況が長引けば胆のうに炎症を起こして胆のう炎になってしまうといわれています。胆石症に胆のう炎が伴っている状態では、一時的ではなく継続的な痛みを感じます。

腹痛や背部痛は、胆石症や胆のう炎に限った症状ではありません。身体の中に胆石があることを知らずに過ごしていた人では特に、胆石によって起こった痛みを胃腸炎による胃痛や尿路結石による腰痛のように感じてしまうことがあるかもしれません。お腹の痛みが強い時には、医療機関で詳しく調べてもらうようにしてください。

3. 発熱

胆のうの出入り口となる胆のう管に胆石が詰まり、胆のうの内圧が上昇することで炎症が引き起こされると、胆のう炎の状態に陥ります。

胆のう炎の症状は初期はお腹の痛みだけの場合が多いです。時間が経って胆のうが腫れたり壁が厚くなったりして炎症が強くなると、腹痛に加えて発熱が生じます。また、胆石が総胆管へ移動して胆管炎を生じたときにも熱が出るので注意が必要です。

4. 黄疸(皮膚が黄色く染まること)

黄疸(おうだん)とは、皮膚や眼球結膜(白目の部分)が黄色く染まることを指します。黄疸は、胆汁の流れが悪くなることで生じる症状で、血液中のビリルビンという物質の濃度が基準値上限のおよそ2倍以上に増えると生じるといわれています。

胆石が胆のうの中にとどまっている場合は、黄疸を生じることはそれほど多くないとされています。また、胆のう管が一時的に詰まるだけでもこれほどまでビリルビンが上昇することはあまり多くありません。

一方で、総胆管結石によって胆汁の大きな流れである総胆管が閉塞してしまうと黄疸が生じやすいといわれています。胆のう管に詰まった胆石が総胆管に移動し、総胆管内にとどまると総胆管結石となります。総胆管結石になると、黄疸や発熱といった症状があらわれる急性胆管炎になりやすいので、原則的にすべての総胆管結石で治療が勧められます。

ただし総胆管に入り込んだ胆石が、胆汁とともに十二指腸内まで自然に排出されれば、それ以降に問題となることはほとんどありません。(ごくまれに胆石イレウスとよばれる、胆石が腸を詰まらせて腸閉塞を引き起こすことがあります。)

黄疸についての詳しい解説は、「胆道がんの症状」を参照してください。

5. 吐き気・嘔吐

胆石や胆のう炎によって吐き気を感じたり、嘔吐したりする人もいます。

胆石による症状は食後に起こる場合が多く、ときに胃もたれや胃腸炎のように感じられて、胆石による症状だと気づきにくいことも少なくありません。また、胃や腸の病気を含め、吐き気を感じる病気は数多くあります。吐き気だけで胆石症を強く疑うことはありませんが、可能性の一つとして考えられます。

【参考文献】

胆石症診療ガイドライン2016
・「NEW外科学」(出月康夫, 古瀬彰, 杉町圭蔵/編集)、南江堂、2012
・今村直哉、七島篤志、甲斐真弘. 胆石症の外科治療 胆道 32 (1): 51-61, 2018
・日本胆道学会学術委員会 胆石症に関する2013年度全国調査結果報告. 胆道 28: 612-617, 2014
・正田純. 性差による臨床像の差異ー胆石症ー. 胆と膵 39 (6): 515-519, 2018
・山口和哉、谷村広、石本喜和男ほか 剖検例からみた最近の胆石保有率と胆嚢癌合併率. 日臨外会誌 58: 1986-1992, 1997