いがん
胃がん
胃の壁の粘膜にできたがんのこと。ピロリ菌への感染や喫煙、塩分の多い食事などでリスクが上がる
24人の医師がチェック 326回の改訂 最終更新: 2024.11.08

胃がんになりやすい人はどんな人?胃がんの原因や予防法についての解説

胃がんは主に40歳以上で発生し、年齢とともに増加する傾向にあります。ピロリ菌や食塩の過剰摂取との関係も指摘されています。 

胃がんの年齢階級別罹患率・全国推計値2015

40歳を境にして胃がんが発生する人が目立ち始め、男女ともに年齢を重ねるとともに発生する人が多くなる傾向にあります。

一親等以内の肉親に胃がんが発生した人が1人以上いる人は、胃がんが発生する危険性がほかの人よりも高いことが報告されています。

  • 男性:1.60倍 
  • 女性:2.47倍
  胃がんを発生するリスク
2.04倍
5.37倍
兄弟 1.18倍
姉妹 2.90倍
両親 16.90倍
肉親の2人以上 9.45倍

研究結果からも胃がんには家族歴が強く関係していることは明らかです。遺伝的な要素の関わりはあると考えられます。
しかし、親が胃がんになれば子供もなるというほど強い関係はありません。胃がんの発生にはピロリ菌の感染などの要因もあり、一人一人の胃がんを正確に予測することはできません。
参照:Int  J Cancer.2002;97:688-694

糖尿病の人で発生しやすい種類のがんが知られています。糖尿病の人は胃がんが発生する危険性が上昇するという研究があります。日本人を対象にした調査で、糖尿病がある人は糖尿病がない人に比べて胃がんが発生する危険性が男性で1.23倍、女性で1.61倍と高い結果でした。
この結果にはピロリ菌やその他の要因については考慮されていまぜん。糖尿病と胃がんに確実な関係性があるとは判断するにはまだ証拠が不十分とも言えます。しかし糖尿病は他の病気の原因になったりすることがあるので糖尿病の予防や適切な治療が重要です。

参照:Arch Int Med.2006;166:1871-77

胃がんとピロリ菌について深い関係があります。ピロリ菌に感染している人全てで胃がんが発生する訳ではありません。ピロリ菌が胃に感染すると中には萎縮性胃炎の状態を引き起こされる人がいます。萎縮性胃炎になると胃の粘膜が腸の粘膜のように変化することがあります。これを腸上皮化生といいます。腸上皮化生が起きると胃がんが発生する危険性が高まります。
ピロリ菌を除菌して萎縮性胃炎、腸上皮化生になるのを防ぐことで胃がんが予防できると考えられています。実際にピロリ菌を除菌すると胃がんの発生を抑制できたとする報告があります。

参照:Gastroeterology.2016;150:1113-1124
 

胃がんと食事の関係については多くの研究があります。その中からいくつかについて解説します。ただし、前提として食事は日々の栄養バランスを保つことが第一です。食事と関係する病気は胃がんだけではありません。胃がんへの影響を気にするあまり栄養バランスを崩してしまっては本末転倒です。

また、食事が胃がんに影響する強さはわずかです。胃がんのリスクを下げる食事に長年努めたとしても胃がんになる人はいます。

以下の情報を食事の見直しに使おうと思うときは、栄養、胃がんとの関係の弱さ、好きなものを食べられる楽しい生活とのバランスを考えて、個人や家族の価値観に基づいて判断してください。

日本で行われた研究から、食事の塩分が多い男性で胃がんの発生が多かったことが報告されています。また味噌汁、つけもの、塩蔵魚卵(たらこ、いくらなど)、塩蔵魚(塩鮭、めざしなど)などが塩分の多い食品として集計され検討されました。塩分濃度が10%と非常に高い食品(いくら、塩辛、練りウニなど)を毎日食べる人はほとんど食べない人に比べて胃がんが発生した数が2.23-3.12倍だったというものでした。

胃がん以外でも塩分の過剰摂取は心臓や腎臓の病気の原因になったり悪化させる要因になると考えられています。塩分の摂取は控えめにすることが健康維持につながると考えられます。

参照:Br J Cancer. 2004;12:128-134

緑茶が胃がんの発生リスクを抑える可能性があると考えられています。
緑茶を飲む量と胃がんの関係を調べた研究では、女性で1日5杯以上緑茶を飲む人は1杯未満の人に比べて胃がんの発生リスクが0.79倍だったと報告されています。

参照:Jpn J Clin Oncol. 2012;42:335-46

野菜は胃がんが発生するリスクを抑える可能性があります。日本で調査された食事と胃がんの統計をもとにした研究では、野菜や果物を最も多く摂取する男性は最も少なく摂取する男性に比べて胃の出口に発生する胃がんが少なかったという報告があります。

参照:Ann Oncol. 2014;25:1228-33

胃がんが発生するリスクを上げるものとしてはピロリ菌の感染、食塩の過剰摂取などが知られています。ピロリ菌の除菌や減塩が胃がんの発生を抑制することが示唆されており、それらを実行することが間違いとは言えないでしょう。
どの病気にも言えることですが、予防は完全ではありません。胃がんの予防をしているからといって胃がんにならないわけではありません。まったく予防を考えない人でも胃がんにならない場合のほうが多数です。

胃がんを診断された人は、「何か間違っていたのだろうか」と思えてくるかもしれませんが、予防が足りなかったせいではありません。
予防を考えるとともに、もし胃がんになったときにどう治療するかを考えることも大切です。