肺がんでステージと同じくらい大事な「組織型」:腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、小細胞がん
肺がんは日本国内で最も死亡者数の多い
1. 肺がんの組織型
肺がんの組織型は大きく「小細胞がん」と「非小細胞がん」にわけられます。非小細胞がんには主に腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんが含まれます。種類によって性質が異なり治療法も変わってくるので、どの種類かはっきりさせることが重要です。
以下では肺がんの主な分類を記しますが、明確に分類できない肺がんもしばしば存在します。
【肺がんの主な組織型】
- 腺がん
- 扁平上皮がん
- 小細胞がん
- 大細胞がん
- 多形がん
非常にまれながんとして「多形がん」という種類もあります。
2. 肺腺がんの特徴
腺がんとは、身体の臓器にある分泌腺にできたがんのことです。肺だけでなく胃がんや大腸がんなどにも腺がん(せんがん)という種類が存在します。肺腺がんは肺の分泌腺に出現したがんのことを指します。
肺がんの中で最も多いのが肺腺がんです。全ての肺がんの半分前後が腺がんとなります。
肺腺がんは女性に多い
肺腺がんは女性に多いがんです。一方、肺扁平上皮がんは男性に多いです。男性の肺がんよりも女性の肺がんで肺腺がんの割合が高く、女性の肺がんの70%が腺がんであると考えられています。この原因ははっきりとは分かりませんが、喫煙率の影響はありそうです。
タバコと肺がんの関係を次に説明していきましょう。
肺腺がんは肺扁平上皮がんに比べタバコの影響を受けにくい
肺がんの原因の1つにタバコが挙げられます。タバコを吸わない人に比べてタバコを吸う人は肺がんのリスクが4倍以上になると報告されています。しかし、実はこのデータを肺がんの種類別に見ていくと、喫煙の影響を受けやすい種類があることがわかってきます。
結論から述べると、タバコが肺扁平上皮がんに与える影響は非常に大きい一方で、肺腺がんに関してはその傾向が比較的弱いです。
扁平上皮がんでは喫煙の有無で10倍以上も
この数字を見ると肺腺がんに対してはタバコの影響が比較的小さいことがわかります。とはいえ、タバコの悪影響が存在することは事実ですので、禁煙することは非常に重要です。
肺腺がんは肺がんの中でも特に症状が出にくい
肺がんは進行するまで症状が出にくい病気ですが、なかでも肺腺がんは症状が出にくいことが多いです。
というのも、肺腺がんは他の肺がんに比べて比較的肺の端っこ(末梢側)にできることが多いからです。肺の中心部に肺がんがある場合は、空気の通り道の太い部分(中枢側)に影響をおよぼすことが多く、空気を吸いづらかったり咳が出やすかったりします。しかし、肺の端っこにがんができると、かなり大きくなるまで症状が出ない場合が多いのです。
以下に肺がんの種類別に肺のどのへんにできやすいかを表にします。
【肺がんの種類別のできやすい部位】
肺がんの種類 | 部位 |
肺腺がん | 末梢側(端っこ) |
肺扁平上皮がん | 中枢側(体の中心近く) |
肺小細胞がん | 中枢側(体の中心近く) |
肺大細胞がん | 末梢側(端っこ) |
また、肺腺がんの中には粘液を作るタイプ(浸潤性粘液産生性腺がんなど)があり、この場合は比較的初期から症状が出ることがあります。粘液が空気の通り道に詰まったり、気道の粘膜に
肺腺がんに多い症状
肺腺がんは進行するまで症状が出ないことがほとんどです。それでも進行した場合にはいろいろな症状が出てきます。以下が肺腺がんの代表的な症状になります。
- 咳(咳嗽)
- 痰(喀痰)
血痰 - 発熱
- 息苦しさ(呼吸困難感)
- 全身
倦怠感 - 体重減少
- 胸痛
肺腺がんの患者さんでこれらの症状が強くなってくる場合は、肺腺がんが進行している可能性が考えられます。治療法を変更したり緩和治療を強化したりするほうが良いかもしれませんので、あまり我慢はしないでかかりつけの医師に相談してください。
肺腺がんの治療について
肺がんの治療には、3大治療法として手術療法(外科的治療)・薬物療法(
肺腺がんに対しては、手術に比べると抗がん剤や放射線療法は効きにくいことが分かっています。
肺腺がんに対する手術療法
肺腺がんに対して最も治療成績が良いのが手術療法です。ただし、当然身体への負担の大きい治療なので、誰でも行えるわけではありません。また、病気の進行度によっては、手術をすることでかえって良くない影響がある場合もあります。手術を行えるかどうかは慎重に判断する必要があるのです。
手術を行えない場合は、薬物療法や放射線療法を行って治療していくことになります。また、薬物療法や放射線療法も身体への負担が大きすぎて行えない場合は、肺がんによる症状を和らげる緩和療法のみを行うことになります。
肺腺がんに対する薬物療法
肺がんに対する薬物療法は大きくわけて3種類あります。
- プラチナ系抗がん剤(白金製剤)
- 第3世代抗がん剤
- 分子標的薬
免疫 チェックポイント阻害薬
これらは全身の状態やがんの持っている遺伝子、PD-L1の発現率(免疫チェックポイント阻害薬の効きやすさ)の状況によって使い分けていくことになります。腺がんの場合は扁平上皮がんよりもがんの遺伝子変異がみつかる場合が多く、変異の種類に合った分子標的薬が使えることがあります。
分子標的薬はいろいろな方向から研究が進んでおり日進月歩です。しかし、現状では肺がんの患者さんを完治するには至っていません。また、副作用が出にくいように工夫されてはいますが、重篤な副作用が出ることもあります。治療中にどういったことが予想されるのかは、治療を受ける本人が把握していなければなりません。治療を始める前にしっかりと主治医と相談し、どういった治療を行うかを納得したうえで決めることが必要になります。
肺腺がんに対する放射線療法
肺腺がんは、手術に比べると放射線療法のほうが治療の成績が良くないことがわかっています。しかし、全身の状態などから考えて、放射線療法で十分にメリットがあると判断された場合には放射線療法が行われます。
放射線療法には、放射線の当たった細胞を死滅させる力がありますが、狙った細胞だけ死滅させることが難しいという欠点があります。つまり、放射線は身体を貫いて直進する性質がありますので、放射線が通っていく前後の細胞にもどうしても照射されてしまうのです。
その欠点を解消するために、高い精度で狙った部分に集中して放射線を当てるサイバーナイフ治療などの方法(いわゆるピンポイント照射)が考え出されました。サイバーナイフ治療は360度のいろいろな角度から放射線を当てることで、狙った部位以外の細胞にあたる放射線を分散させることができます。
しかし、サイバーナイフ治療は動くものに放射線を当てることが苦手です。このため、呼吸によって動く肺は対象外となっていました。近年は工夫が凝らされて、肺の呼吸による動きに同期してサイバーナイフ治療ができるようになってきています。
以上で簡単に肺腺がんの特徴と治療法について説明してきました。「肺腺がんの治療」というページでより詳しい説明をしていますので参考にしてください。
3. 扁平上皮がんの特徴
扁平上皮(へんぺいじょうひ)と呼ばれる、人体の内部と外界を隔てる丈夫な組織にある細胞(上皮細胞)が
肺がんには多くの種類がありますが、肺扁平上皮がんは肺がんの中で2番目に多いがんです。肺扁平上皮がんのおおよその割合は、肺がん全体の約20%ほどです。
肺扁平上皮がんの特徴
肺扁平上皮がんは、扁平上皮という人体を外界から守るための丈夫な細胞ががんになってしまった病気です。
肺扁平上皮がんの特徴は、タバコを吸う男性に多いことです。また、年齢は60歳以上の人が多いです。
扁平上皮がんができやすい場所
肺扁平上皮がんは肺の中心部分(中枢部)にできやすいです。反対に、肺腺がんは肺の端っこ(末梢)に生じることが多いです。
肺小細胞がんも中枢部にできやすいのですが、がんの進行スピードに違いがあります。肺小細胞がんは非常に進行スピードが速いです。肺扁平上皮がんは比較的進行がゆっくりであることが多いです。個人差も大きいので、人によっては肺扁平上皮がんが急速に進行することもありますが、平均すれば肺扁平上皮がんは進行が遅い傾向があると考えて良いです。
肺の中枢部にがんができると空気の通り道(気道)の太い部分が変形しやすく、息苦しさや血痰などが起こりやすいです。
肺扁平上皮がんの原因
肺扁平上皮がんはタバコの影響を強く受けます。タバコを吸っている人のほうが吸っていない人と比べると扁平上皮がんに10倍以上なりやすいことが分かっています。肺腺がんと比べるとタバコの影響が非常に強く出るがんであることが分かります。
また、喫煙以外の原因としては、アスベストや肺の慢性疾患(COPD、肺線維症など)、大気汚染、肺結核などが挙げられます。
肺扁平上皮がんは症状が出やすい?
肺がんは種類に限らず初期の段階では症状の出にくいことが多いです。しかし、その中では扁平上皮がんは比較的症状が出やすい肺がんです。
肺扁平上皮がんは肺の端っこ(末梢)よりは中心部(中枢)にできやすいです。そのため、空気の通り道(気道)が中心部から変形させられてしまうことが多く、咳や痰や息苦しさといった症状が出やすいです。
以下が代表的な症状になります。
- 咳(咳嗽)
- 痰(喀痰)
- 血痰
- 発熱
- 呼吸困難感
- 息苦しさ(全身倦怠感)
- 体重減少
- 胸痛
肺扁平上皮がんでは太い気道が変形することが多いので、上の中でも特に血痰や呼吸困難感が出やすいです。
肺扁平上皮がんの患者さんでこれらの症状が強くなってくる場合は、がんが進行している可能性が考えられます。治療法を変更したり緩和治療を強化したりするほうが良いかもしれませんので、あまり我慢はしないでかかりつけの医者に相談してください。
肺扁平上皮がんの治療について
肺扁平上皮がんも肺腺がんと同じく、手術が可能であれば手術を優先的に行います。手術療法(外科的治療)・薬物療法(抗がん剤など)・放射線療法がメインの治療になるのですが、その中でも手術が最も治療効果の高い治療になります。
肺扁平上皮がんの手術療法について
肺腺がんと同じく、肺扁平上皮がんに対しても、治療法の中で手術が最も成績が良いです。ただし、身体への負担の大きい治療ですので、誰でも行えるわけではありません。また、病気の進行度によっても、手術をすることでかえって良くないことが起こる場合もあります。手術を行えるかどうかは、がんの進行度と体力と肺の余力などを鑑みて、慎重に判断する必要があるのです。
手術を行えない場合は、
肺扁平上皮がんの薬物療法について
肺がんの治療薬を大きく分けると下の4系統になります。
- プラチナ系抗がん剤(白金製剤)
- 第3世代抗がん剤
- 免疫チェックポイント阻害薬
- 分子標的薬
肺扁平上皮がんでは肺腺がんよりも使用できる治療薬が限られてしまいがちです。例えば、肺腺がんでよく用いられる第3世代抗がん剤ペメトレキセドは肺扁平上皮がんに用いることはできません。また、がんの遺伝子変異は肺扁平上皮がんではあまり存在しないことがわかっていますので、分子標的薬が使用できる可能性は高くありません。
これらの薬は各々で副作用が違うので、使い分けが重要になります。たとえば、もともと間質性肺炎のある人に副作用で肺障害が出やすい薬は避けたほうが良いなどという判断がなされます。薬の副作用を含めた詳しい説明は、「肺がんの抗がん剤治療」のページをご覧ください。
肺扁平上皮がんの放射線療法について
肺扁平上皮がんは放射線療法が効きにくいことがわかっていますが、状況次第ではメリットが高いと判断され、放射線療法が行われる場合もあります。
放射線療法には、放射線の当たった細胞を死滅させる力がありますが、狙った細胞だけ死滅させることが難しいという欠点があります。つまり、放射線は身体を貫いて直進する性質がありますので、放射線が通っていく前後の細胞にもどうしても照射されてしまうのです。
その欠点を解消するために、サイバーナイフ治療などの高い精度で集中して放射線を当てる方法(いわゆるピンポイント照射)が出現しました。サイバーナイフ治療は360度のいろいろな角度から放射線を当てることで、狙った部位以外の細胞にあたる放射線を分散させることができます。
しかし、サイバーナイフ治療は動くものを狙うことが苦手です。このため、呼吸によって動く肺は対象外となっていました。近年は工夫が凝らされて、肺の呼吸による動きに同期してサイバーナイフ治療ができるようになってきています。
以上で簡単に扁平上皮がんの特徴と治療法を説明しました。「肺扁平上皮がんの治療」というページでより詳しい説明をしていますので参考にしてください。
4. 小細胞がんの特徴
肺小細胞がんは3番目に多い肺がんで、肺がん全体の15%ほどを占めています。進行は非常に速いことがわかっており、的確に診断し可及的速やかに治療することが望まれます。
肺小細胞がんの特徴
肺小細胞がんは、非常に治療の難しいがんです。治療すると一旦良くなるのですが、がん細胞の増殖が速いため再発が起こりやすいです。
また、がんの進行のスピードが速いため気付いたときにはだいぶ進行してしまっていることも多いです。
喫煙は肺小細胞がんのリスクになる
肺小細胞がんは肺扁平上皮がんと同じく喫煙の影響を強く受けます。喫煙している人は喫煙していない人と比べて10倍以上肺小細胞がんになりやすいと言われています。肺腺がんは喫煙によって2倍程度にリスクが上がると言われていますが、小細胞がんと扁平上皮がんははるかに強く喫煙の影響を受けるといえます。
タバコの煙には発がん物質が入っているので、がんを予防したい人も、がんの治療をしている人も、禁煙することが重要です。
また、受動喫煙も肺がんへの悪影響が言われています。副流煙を吸うとおよそ1.3倍肺がんになりやすくなります。愛煙家の人は周りの環境へ配慮して喫煙してください。
肺小細胞がんの症状は出やすいか
肺がんは種類によらず初期では症状が出にくいです。そのため早期発見が難しく、気付いたときには進行してしまっていることが多いです。
皮肉な話ですが、肺小細胞がんは進行が速いため症状が出やすいという特徴があります。また、扁平上皮がんと同じく肺の中心部(中枢側)にがんができることが多く、肺腺がんに比べて血痰や呼吸困難感といった症状が出やすいです。
小細胞がんは肺がんの一般的な症状に加えて、まれに特殊な症状をあらわします。
小細胞がんの症状
肺小細胞がんでは太い気道が変形することが多いので、血痰や呼吸困難感が出やすいです。以下が肺小細胞がんの代表的な症状になります。
- 咳(咳嗽)
- 痰(喀痰)
- 血痰
- 発熱
- 呼吸困難感
- 息苦しさ(全身倦怠感)
- 体重減少
- 胸痛
肺小細胞がんの患者さんで、これらの症状が突然あらわれたり強くなったりしてくる場合は、がんが進行している可能性が考えられます。かかりつけの医師に相談してください。
小細胞がんによる「低ナトリウム血症」とは
肺がんになると低ナトリウム血症になることがあります。低ナトリウム血症というのは血液中のナトリウムが異常に少なくなった状態です。原因は色々と考えられますが、主なものは以下になります。
- 異所性ADH産生
腫瘍 - 塩喪失症候群(腎臓や脳の影響で塩分のナトリウムを吸収できなくなる)
- 希釈性(水分過剰)
薬剤性 (利尿薬、降圧薬など)
これらの中でも特に異所性ADH産生腫瘍について説明します。
肺がんはまれに
肺がんが異所性ADH産生腫瘍となる場合の9割が小細胞がんです。
低ナトリウム血症になるとさまざまな症状が出てきます。以下がその代表的な症状です。
- 初期から見られやすい症状
- 倦怠感(だるさ)
- 頭痛
- 吐き気
- 嘔吐
- 重症化すると出現する症状
浮腫 (むくみ )- 脱力
傾眠 意識障害 - けいれん
肺小細胞がんを治療中に、特にだるさや頭痛や吐き気が現れてきた場合は、低ナトリウム血症を考えて一度検査をしたほうが良いかもしれません。
異所性ACTH産生腫瘍とは何か
肺小細胞がんは
本来ACTHは脳の
副腎皮質ホルモンが増えたときに出る主な症状は以下のものになります。
- 体幹が太る(中心性肥満)
- 顔が丸くなる(満月様顔貌)
- 肩が盛り上がる
- 皮膚に赤紫色の線が走る
- 毛が濃くなる
- 筋力が低下する
- 骨がもろくなる(骨粗鬆症)
- 精神症状
- 意識が朦朧とする
- 幻覚が起こる
- 認知機能が低下する
抑うつ 状態になる- 不安が強くなる
ACTHを出すのは肺小細胞がんの中でもごく一部ですが、万が一こういった症状があらわれた場合は、一度ホルモンの検査を受けたほうが良いかもしれません。
肺小細胞がんの治療
肺小細胞がんは肺腺がんや肺扁平上皮がんに比べて抗がん剤や放射線療法が効きやすいです。しかし、がんを完治させるには、それでも手術のほうが優れています。
そのため肺小細胞がんの治療では、手術が可能であれば手術を行い、手術が難しければ薬物療法(抗がん剤など)や放射線療法を行います。
ではもう少し具体的にどんなことをやるのか解説していきましょう。
肺小細胞がんの手術
肺小細胞がんの中でも初期のもののみ手術を行うことができます。
肺小細胞がんに対する手術をしたときは、どんなに初期であっても基本的には手術後に化学療法を行うことになります。肺小細胞がんは進行が速く、目に見えないがん細胞が体内のどこかにひそんでいることが多いです。そのため、目に見えるがんを手術で切除しても完全には取り切れていないことがあるので、薬物療法が可能な状況であれば手術後に薬物療法を行うことになります。
肺小細胞がんの薬物療法
手術ができない場合に有力な治療となるのは化学療法です。小細胞がんの治療に使える抗がん剤は肺腺がんの治療薬よりもだいぶ少ないため、選択肢は狭くなります。
以下が主に使用される抗がん剤の組み合わせです。
- シスプラチン/カルボプラチン+エトポシド+アテゾリズマブ(CDDP/CBDCA+VP-16+Atezolizumab)
- シスプラチン/カルボプラチン+エトポシド+デュルバルマブ(CDDP/CBDCA+VP-16+Durvalumab)
- シスプラチン+イリノテカン(CDDP+CPT-11)
- イリノテカン(CPT-11)
- アムルビシン(AMR)
- ノギテカン(NGT)
最初の治療では、(従来の)抗がん剤に加え、アテゾリズマブやデュルバルマブという免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせて用いることが多いです。
肺小細胞がんの放射線療法
肺小細胞がんに対して放射線療法は有効です。
特に手術のできない人に対しては、全身状態が良ければ薬物療法に重ねて放射線療法を行うことが多いです。しかし、病状の進んでいる人は放射線療法を行っても良くならないこともあり、その人の全身状態とがんの進展状態から放射線療法を行うべきか(適応)が判断されます。
また、肺小細胞がんでは予防的全脳照射という治療が行われることがあります。これを行うかどうかはその人の治療背景によります。
以上で簡単に肺小細胞がんの特徴と治療法について説明しました。「肺小細胞がんの治療」というページでより詳しい説明をしていますので参考にしてください。
5. 大細胞がんの特徴
肺がんの中には大細胞がんという種類があります。あまり聞き慣れないとは思いますが、肺がん全体の数%程度が大細胞がんです。
肺大細胞がんの特徴
肺大細胞がんは、肺の端っこ(末梢部)に生じやすいです。そのため、初期には症状が出にくいです。肺大細胞がんで症状が出てきたときにはかなり進行している可能性が高いです。
肺大細胞がんは進行が速いことも特徴に挙げられます。肺の末梢で症状が出にくい上に進行が速いため、なかなか早期発見が難しくなります。
肺大細胞がんの治療
肺大細胞がんの治療においても、肺がんの基本原則と変わらず手術のできる場合は手術で治療します。手術が不可能な場合は、薬物療法や放射線療法を行うことになります。
治療に用いる抗がん剤のほとんどは肺腺がんに用いるものと同じです。但し、LCNEC(大細胞神経内分泌がん)は名前の中に大細胞とありますが、性質は小細胞がんと類似しているため、治療では小細胞がんと同じものを用います。
6. 多形がんの特徴
多形がんは非常にまれながんです。進行が速いうえになかなか治らないことが知られています。
肺多形がんの特徴
肺多形がんは、肺がんの色々な種類(肺腺がん、肺扁平上皮がんなど)に
60歳以上の喫煙習慣のある男性に多いことが分かっています。
肺の上のほう(上葉)に大きな腫瘍を作ることが多く、腫瘍の大きくなる速度が速いことが特徴です。
治療してもなかなか治ることの難しい病気です。
肺多形がんの症状
肺腺がんと同じく、肺の末梢にがんができると、がんが大きくなるまで症状が出ないことがほとんどです。そのため、肺多形がんで症状が出てきたときには進行していることが多いです。
以下に肺多形がんで出やすい主な症状を記します。
喀血 - 咳嗽
- 胸痛
- 背部痛
- 発熱
- 体重減少
肺多形がんは多彩な症状が出るため、ここに挙げた以外の症状もありえます。明らかな原因なくこれらの症状が続いた場合は、一度医療機関にかかるようにしてください。
肺多形がんの治療
多形がんに対する治療は明確にこうするべきという指針がありません。そのため、腫瘍の増殖スピードや
手術が可能な場合は手術で切除することが多いです。しかし、手術が難しい場合は化学療法や放射線療法を選択することになります。
化学療法はあまり効果的でないですが、抗がん剤の中ではタキサン系と呼ばれる抗がん剤(パクリタキセル、ドセタキセル)の効果が高いという報告があります。また、出血のリスクが低い場合には、これに加えてベバシズマブという薬を追加したほうが治療効果が上がるといった報告もあります。
参考文献