てんかん
てんかん
脳細胞が一時的に異常な活動をすることで、さまざまな発作症状が現れる病気
26人の医師がチェック 287回の改訂 最終更新: 2024.01.10

てんかん(癲癇)発作の原因について

てんかんは原因によって特発性てんかんと症候性てんかんに分けることができます。特発性てんかんは画像検査などで調べても明らかな病変がないてんかんのことです。一方で、症候性てんかんは脳腫瘍脳卒中などが原因のてんかんを指します。

1. 特発性てんかんと症候性てんかんの違い

てんかんは「症状」を軸にして分類する方法と「原因」を軸にして分類する方法の2つがあります。ここでは「原因」を軸にした分類の方法について説明します。「症状」を軸にした分類は「てんかんの症状」で説明しているので参考にしてください。

原因で分類をする場合、てんかんは「脳に明らかな原因病変がない特発性てんかん」と「脳に原因病変がある症候性てんかん」の2つに分けることができます。

それぞれについて説明します。

特発性てんかん

特発性てんかんは脳に明らかな原因病変が見られないタイプのてんかんのことです。 ここでいう「明らかな原因病変」とは画像検査などで病気が指摘されるもののことを指します。例えば脳腫瘍脳卒中などのことで、これらの病気がてんかんの原因になることがあります。検査を行ってもこのような明らかな原因が指摘できない場合は、特発性てんかんという診断になります。

症候性てんかん

画像検査などで明らかな原因病変が指摘できない場合を特発性てんかんと呼ぶのに対して、症候性てんかんは画像検査などで原因病変が明らかなものを指します。

子どもの場合には「脳の先天異常」や「出産時の脳の低酸素」などが原因として知られ、大人の場合は「脳腫瘍」や「脳卒中」などが原因として知られています。

2. 赤ちゃんや子ども(小児)のてんかんの原因

子どものてんかんは原因がわからないことも多いのですが、一方で原因がはっきりしていることもあります。子どもに特徴的なてんかんの原因は「分娩時の頭部外傷や低酸素状態」と「脳の先天異常」などです。

分娩時の頭部外傷や低酸素状態

分娩時のトラブルで赤ちゃんの頭部に強い力が加わったり、酸素が十分に供給されないと脳にダメージが起こってしまいます。脳が傷つくと脳の機能に影響が及ぶことがあり、てんかんの原因になることがあります。

脳の先天異常

お母さんの体内で赤ちゃんの脳が作られる過程で問題が起こり、脳の形に異常が起こることがあります。脳や脳の血管の形が通常とは異なることで脳の機能に悪影響を及ぼして、てんかん発作が起こります。脳の代表的な先天異常として脳動静脈奇形や海綿状血管腫もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)などが知られています。先天異常が原因のてんかんは発作を抑える治療に加えて原因に対する治療も行なわれます。

3. 大人のてんかんの原因

大人のてんかんも原因がわからないことが多いのですが、一方で原因がはっきりすることもあります。大人に多いてんかんの原因は「脳卒中」、「脳の変性疾患」などです。

それぞれについて詳しく説明します。

脳卒中:脳出血、脳梗塞、くも膜下出血、一過性脳虚血発作

脳卒中は脳の血管が破れたり詰まったりする病気の総称で、脳出血脳梗塞くも膜下出血一過性脳虚血発作などがあります。脳卒中が起こると脳の一部が栄養不足で死んだり脳の形が変わったりしてダメージを受け、脳に異常な電気的興奮が起こりやすくなり、てんかん発作を引き起こします。脳卒中の後遺症でてんかん発作が起こる場合は、抗てんかん薬(てんかんを抑える薬)を内服して治療します。脳卒中について詳しく知りたい人は「脳卒中」を参考にしてください。

脳の変性疾患

神経変性疾患は、脳や脊髄にある特定の神経細胞が時間とともに変性する病気のことです。神経変性疾患の代表的な病気には、認知症の原因の約半数を占めるアルツハイマー病があります。アルツハイマー病は大脳の側頭葉の内側にある「海馬」に変性を起こし、てんかん発作を起こすことが知られています。てんかん発作に対しては他の病気と同様に抗てんかん薬(てんかん発作を抑える薬)を用いて治療します。

神経変性疾患には他にレビー小体型認知症ピック病などがあります。

それぞれの病気については「アルツハイマー病」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症(ピック病)」で詳しく説明しているので参考にしてください。

4. 子どもにも大人にも起こるてんかんの原因

ここまでは子どもと大人に分けててんかんの原因について説明しました。次に子どもにも大人にも共通しててんかんの原因となる病気について説明します。

髄膜炎

脳や脊髄を包む膜を髄膜といい、髄膜の内側は髄液という液体で満たされています。髄膜に炎症が起きる病気のことを髄膜炎といいます。髄膜炎の主な原因は細菌ウイルス真菌による感染です。その他の原因にはがん自己免疫性疾患(免疫の異常によって免疫細胞が自分の身体を攻撃してしまう病気)などもあります。髄膜炎が重症化した場合、その後の後遺症としててんかんが残ることがあります。髄膜炎後のてんかんは他のてんかんと同様に、発作が起こらないように薬物療法を中心とした治療が長期にわたって必要になることがあります。

脳炎

脳炎は脳の実質に起こる炎症のことです。髄膜炎と同様にウイルスや細菌、自己免疫疾患などが原因になります。脳炎のなかでも、単純ヘルペスウイルスの感染によって起こる単純ヘルペス脳炎がよく知られています。脳炎が重症化した場合には、脳にダメージが残り後遺症としててんかんが起こることがあります。脳炎の後遺症としててんかんが残った場合には、発作が起こらないように薬物療法を中心に長期の治療が必要になることがあります。

脳腫瘍

脳腫瘍は脳にできる腫瘍のことで、良性腫瘍悪性腫瘍も含まれます。

悪性腫瘍はいわゆる「がん」ですが、悪性の脳腫瘍には「がん」という表現は用いられません。また、他の臓器にできたがんが脳転移した場合には「〇〇がんの脳転移」もしくは「転移性脳腫瘍」と表現されます。

脳腫瘍ができると、腫瘍が周りに刺激を与えて脳の一部または広い範囲に異常な電気的興奮が起きててんかんを起こすと考えられています。悪性の脳腫瘍だけがてんかん発作の原因になるのではなく、良性でも原因になります。

てんかんの症状は脳腫瘍ができた場所によってさまざまです。症状についての詳しい説明は「てんかんの症状」を参考にしてください。脳腫瘍が原因のてんかんの治療は、「手術で腫瘍を取り除くこと」や「薬でてんかん発作を抑えること」などです。必要に応じて放射線治療が行われることもあります。ただし、手術や放射線治療はどんな人でも行える訳ではなく、脳腫瘍のある位置や大きさ、患者さんの身体の状態などを鑑みて判断されます。

脳腫瘍について詳しい情報が知りたい人は「脳腫瘍の基礎情報ページ」を参考にしてください。