てんかん
てんかん
脳の細胞が一時的に異常な活動をすることで、さまざまな発作を起こす病気
26人の医師がチェック 277回の改訂 最終更新: 2020.10.23

てんかん(癲癇)の検査について:脳波・CT検査・MRI検査など

てんかんの診断には診察や検査が重要です。脳に異常な電気的な興奮が起こることでてんかんは起こります。このため検査では電気的な興奮を調べる脳波検査などが重要になります。

1. てんかんの検査の目的

てんかんの検査の目的は「てんかんかどうか」と「てんかんの種類」を調べることです。

それぞれの意味について説明します。

てんかんかどうかを調べる

てんかんは脳に異常が起こる病気で、発作が起こるとさまざまな症状が現れます。その症状と似たものが現れる病気はいくつかあり、てんかんと見分けなければなりません。「てんかん診療ガイドライン2018」を参考にするとてんかんと区別が必要な主な病気は次のようなものです。

【てんかんと区別が必要な病気】

  • 大人の場合
    • 失神(神経調整性、心原性)
    • 心因性非てんかん
    • 過呼吸やパニック障害
    • 脳卒中脳梗塞脳出血一過性脳虚血発作
    • 睡眠時随伴症(レム睡眠行動異常、ノンレムパラソムニア)
    • 急性中毒(薬物、アルコール)、薬物離脱、アルコール離脱
    • 急性代謝障害(低血糖テタニーなど)
    • 急性腎不全
    • 不随意運動チック、振戦、ミオクローヌス、発作性ジスキネジアなど)
    • 発作性失調
  • 子どもの場合
    • 熱性けいれん
    • 憤怒けいれん
    • 軽症胃腸炎関連けいれん
    • 睡眠時ひきつけ/睡眠時ミオクローヌス
    • チック
    • 失神
    • 心因性非てんかん発作

とても難しい病気の名前が並んでいます。なかには専門医にしか診断ができないような複雑な病気もあります。これらの病気について完全に理解をすることはあまり意味がないことかもしれません。

ここで伝えたいことは、てんかん発作に似た症状は他の病気によっても現れることがあり、診察や検査などを詳しく行って見分ける必要があるということです。そのため、何回も診察や検査が行われることがあり、時には同じ検査が繰り返されることもあります。

てんかんの種類を調べる

てんかんは1つだけではなく、いくつか種類があります。てんかんを分類するときには「症状」と「原因」の2つの軸が用いられます。「症状」と「原因」の2つの軸を用いた分類を正確に行うことは適切な治療につながります。そして、この「症状」と「原因」を詳しく調べるには診察や検査が重要になります。

■「症状」を軸にした分類

てんかん発作は「脳の一部分に異常な電気的興奮が起こる部分発作」と「脳の広い範囲または全体で電気的興奮が起こる全般発作」の2つがあり、症状にも違いが現れます。

  • 部分発作
  • 全般発作

部分発作は意識を失うことは比較的少なく、全般発作はほとんどの場合意識を失うという大まかな違いがあります。

それぞれの発作にはさらに症状の特徴があります。

詳しくは「てんかんの症状」で説明しているので参考にしてください。

■「原因」を軸にした分類

てんかんには原因がある場合とない場合があります。原因が指摘できるものは「症候性てんかん」といいます。ここでいう原因とは画像検査などで指摘できるもののことを指します。例えば脳腫瘍脳卒中の後遺症などがその原因にあたります。

一方でいくら検査をしても原因がわからない場合があります。てんかんで原因がわからないことは珍しいことではありません。原因がわからないてんかんを「特発性てんかん」といいます。

  • 症候性てんかん
  • 特発性てんかん

症状だけでなく原因で分類するのは治療法が異なることがあるからです。

代表的な例でいうと、てんかんの原因が脳腫瘍の場合、手術によって腫瘍を取り除くとてんかんが良くなる可能性があります。

■「症状」と「原因」を組み合わせた分類

これまで説明した2つの軸を組み合わせて、てんかんを4つに分類するのが一般的です。

  • 特発性部分てんかん
  • 特発性全般てんかん
  • 症候性部分てんかん
  • 症候性全般てんかん

てんかん発作を4つに分類をすることは、治療薬を選ぶ際やその後の経過の見通しを予測したりする際に役立てられます。それぞれの分類の特徴については「てんかんとはどんな病気か?」で詳しく説明しているので参考にしてください。

2. 問診

問診はてんかんを診断する際に重要です。次のようなことを問診では聞かれます。

  • どのような発作が起こったのか
    • 意識はなくしたのか
    • 発作時の手や足はどんな格好をしていたのか
    • けいれんは起きたのか
  • 発作はどれくらいの頻度で起こるのか
  • 発作が起きる前にきっかけのようなものはあったか
  • 発作の前触れはあったか
  • 過去にどんな病気になったか
  • 内服している薬はどんなものか

てんかんの人に行われる問診は発作時の様子が中心になります。問診中は発作が起きていない状態なので、どのような発作が起きたかは話から推測するしかないのです。

次によく聞かれる問診の内容についてそれぞれ説明していきます。

どのような発作が起こったのか

てんかんは発作の種類によって部分発作と全般発作の2つに大別されます。部分発作と全般発作では使われる抗てんかん薬に違いがあるので、正確に分ける必要があります。てんかんはどんな発作が起こったかでいくつかの種類に分かれます。このため、どんな様子でてんかん発作が起こったかをできるだけ具体的に説明するようにしてください。可能であればスマートフォンなどで発作時の様子を撮影するのも有用です。てんかん発作の症状については「てんかんの症状」で説明しているので参考にしてください。

発作が起きる前にきっかけのようなものはあったか

てんかん発作は光の刺激(光過敏発作)などをきっかけにして起こることがよく知られています。その他にも「睡眠不足」や「疲労」、「ストレス」などもてんかんを起こすきっかけとして知られています。

てんかん発作が起こる前のきっかけを具体化して気をつけるようにすると、発作の予防につながります。例えば、睡眠不足後に発作が起こる人は睡眠不足にならないようにし、疲労によって発作が起こる人は休息を上手にとるようにすることが発作を防ぐことにつながります。

過去にどんな病気になったか

てんかんは原因を軸にして考えると、2つに分けることができると説明しました。 1つは他の脳の病気が原因となる「症候性てんかん」で、もう1つは脳に明らかな原因がないにも関わらず起こる「特発性てんかん」です。過去にどんな病気になったかを調べることで、「症候性てんかん」なのか「特発性てんかん」なのかの推測に役立てることができます。

症候性てんかんの原因については「てんかんの原因」を参考にしてください。

内服している薬はどんなものか

てんかんと診断された場合には、まず抗てんかん薬による治療が始まります。

抗てんかん薬は、同時に内服する薬によってお互いの薬の効果が強くなったり弱くなったりすることがあります。抗てんかん薬と相性が悪い薬は、うつ病統合失調症などの精神科で処方される薬から、花粉症風邪薬など薬局で入手できるようなものまでさまざまです。また、抗てんかん薬にも多くの種類があり、薬ごとに飲み合わせの良し悪しが異なるので複雑です。

薬の効果を期待通り得るためにも、内服薬をもらさずにお医者さんに伝えることが大切です。内服中のお薬の内容を上手に伝える方法としてお薬手帳の活用があります。お薬手帳には内服中の薬の「種類」や「量」、「飲み始めた日にち」などが記載されているので、薬についての正確な情報を伝えることができます。抗てんかん薬が始められる前には、ぜひお薬手帳を活用してみてください。

3. 身体診察

身体診察では、お医者さんが身体を観察したり触ったりして身体の状態についてくまなく調べられます。てんかんは特に身体に異常がないことが多いのですが、身体診察から原因の手がかりが得られることがあります。身体診察の方法にはいくつかありますが、てんかんが疑われる人には主に脳や神経の機能を調べる神経学的診察が中心になります。

神経学的診察

神経学的な診察では脳の働きに異常がないかが調べられます。脳の役割には「筋肉を動かす命令を出すこと」や「目や耳で感じた情報を処理すること」、「記憶や認知など高度な働きをすること」などがあります。、このように脳にはさまざまな機能があるため、診察の方法は多岐に渡ります。例えば、軽い負荷をかけて身体の隅々の筋力を調べたり、関節を軽く叩いて反射の様子を調べたりします。

4. 血液検査

血液検査でてんかんと診断できるわけではないのですが、次の目的で用いられます。

  • てんかんに似た病気との区別
  • 全身状態(特に肝臓の機能)の把握
  • 薬の血中濃度の測定

それぞれの役割は異なるので、以下では3つを分けて説明します。

■てんかんに似た病気との区別

てんかんに似た病気と区別をする際にに血液検査が役に立ちます。

例えば、てんかんに似た症状が現れる病気に低血糖があります。低血糖は血液中の糖分の濃度が低下した状態を指します。低血糖では手足がけいれんしたり、意識を失ったりとてんかん発作に似た症状が現れます。低血糖とてんかんを見分けるには、身体診察に加えて血糖値を調べるための血液検査が行われます。血糖値が低ければ点滴などで糖分を補充することで改善が望めます。

■全身状態(特に肝臓の機能)の把握

また、抗てんかん薬が始められる前にも血液検査が行われます。多くの抗てんかん薬は肝臓に負担がかかるので、肝臓の機能を血液検査であらかじめ調べておく必要があります。肝臓の機能が低下している場合には、薬の種類や量の工夫が必要です。

また、肝臓だけではなく腎臓や電解質(ナトリウム、カリウムなど)、赤血球白血球血小板など薬の影響が及ぶものに関しても、薬の投与前の状態が確認されます。

■薬の血中濃度の測定

抗てんかん薬が十分に効果を示しかつ副作用が出にくくするために、薬の血中濃度が測定されます。それぞれの抗てんかん薬には効果が現れる血中濃度と副作用が出やすくなる血中濃度がわかっています。効果が現れる濃度を超えてかつ副作用が出やすくなる濃度を下回るのが望ましい状態です。このため、定期的に血中濃度を測定して、薬の濃度がちょうどいい塩梅なのかが確認されます。

5. 脳波検査

脳波検査は、脳の神経細胞から放出される電気信号をとらえて波形化したものです。波形から脳の異常などを知ることができ、てんかんの検査のなかでも最も重要な検査です。脳波検査は外来で行うことができますが、短時間では発作のない状態での波形しか調べられないことが多く、検査が不十分な場合もあります。その際には、入院して長時間の脳波が調べられます。特に、寝ている間には覚醒しているときとは異なる波形が見られることがあり、診断に有用なことがあります。

入院して長時間の脳波を調べる検査を、長時間ビデオ脳波モニタリング検査といいます。入院日数は施設によって異なりますが、数日程度であることが多いです。脳波検査はてんかんの診断だけではなく、治療効果やその後の経過の予測などに有用であると考えられています。

6. 画像検査

てんかんの原因を診断する際には、画像検査を行い脳の状態を確認する必要があります。てんかんの診断にはいくつかの画像検査が用いられます。 それぞれの検査には違いや特徴があるので説明します。

頭部CT検査

CT検査は放射線を利用して身体の中を画像化します。具体的には、脳の形や腫瘍の有無などを調べることができます。脳を画像化する似た検査としてMRI検査があります。てんかんを診断する際にはMRI検査の方がよく用いられますが、CT検査も状況に応じて用いられます。 CT検査はMRI検査と比べて短時間で結果が得られるので、救急の場合などに有効です。痙攣や意識障害が起きている場合には他の脳の病気もすばやく調べることが重要なので、CT検査が行われることもよくあります。

頭部MRI検査

てんかんの診断を行う際に最もよく用いられる画像検査です。MRI検査は磁気を利用して身体の中を画像化します。放射線を使わないので、CT検査と違って被曝することはありません。

MRI検査ではCT検査より詳細に脳の状態を調べることができます。一方で、時間がかかる検査なので、発作が起きているときなど短時間で脳の状態を調べたい場合には向かない検査です。また、身体の中に金属が入っている人や閉所恐怖症の人には行うことができない検査です。頭部MRI検査と頭部CT検査は、患者さんの状態などを鑑みてどちらの検査を行うかが判断されています。

SPECT

SPECTは脳の血流を調べる検査です。てんかん発作の原因となっている脳の部位は、通常の状態では血流が下がり発作時には血流が上がるのが特徴です。CT検査やMRI検査では脳の形状を調べることはできますが、脳の血流を調べることはできません。脳の血流の変化を上手にとらえることができれば、てんかんを起こしている部位を特定することができます。てんかんを起こす原因の場所が分かれば、手術によって切除することも検討できます。

てんかんの手術に関しては「てんかんの治療」で説明しているので参考にしてください。