[医師監修・作成]てんかん(癲癇)の治療について:薬物療法・手術・食事療法・ガイドラインなど | MEDLEY(メドレー)
てんかん
てんかん
脳細胞が一時的に異常な活動をすることで、さまざまな発作症状が現れる病気
26人の医師がチェック 283回の改訂 最終更新: 2022.11.11

てんかん(癲癇)の治療について:薬物療法・手術・食事療法・ガイドラインなど

てんかんの治療は薬物療法が中心になります。薬物療法を継続的に行うことにより発作を抑えることができます。薬物療法の効果が乏しい難治性てんかんに対しては手術や食事療法を組み合わせて治療が行われます。

1. 薬物療法

てんかんの治療には薬物療法、手術、食事療法があります。このなかでも抗てんかん薬を用いた薬物療法が治療の主体になります。薬物療法の目的は発作をできる限り抑えることです。抗てんかん薬ではてんかんそのものを治すわけではなく、あくまで発作を抑える薬であることに注意が必要です。

また、抗てんかん薬を使う際には発作を抑える効果とともに副作用にも注意が必要です。いくら発作がうまく抑えられていても、副作用に苦しむようでは生活の質が著しく低下してしまいます。発作を抑える効果を最大限に発揮しながら副作用は最小限に抑えることが最も望ましい状態です。

てんかん発作には部分発作と全般発作があります。それぞれの発作で治療に用いる薬が異なるので、2つに分けて説明します。部分発作と全般発作の違いについては「てんかんの症状」を参考にしてください。

次にそれぞれの発作ごとに使う薬について説明していきます。

部分発作に使う薬

部分発作は脳の一部の異常な電気的興奮によって起こります。部分発作の人には次のような薬が使われます。

【部分発作の治療薬】

  • 第一選択
    • カルバマゼピン
    • ラモトリギン
    • レベチラセタム
    • ゾニサミド
    • トピラマート
  • 第二選択薬
    • フェニトイン
    • ガバペンチン
    • バルプロ酸
    • フェノバルビタール
    • クロバザム
    • ペランパネル
    • ラコサミド

身体の状態や発作の程度などを鑑みて第一選択薬の中から適したものが選ばれます。治療薬の効果が不十分な場合や、副作用が問題になる場合は薬が変更されます。その際には第一選択薬の中から選び直されます。

1つの薬で効果が不十分な場合は複数の薬が用いられることもあります。

全般発作に使う薬

全般発作には発作の種類が次のようにいくつかあります。

  • 強直間代性発作
  • 脱力発作
  • 欠神発作
  • ミオクロニー発作

発作の種類によって治療薬は使い分けられるので、発作のタイプをきちんと見極めることが大切です。全般発作の症状については「てんかんの症状」を参考にしてください。

【全般発作の治療薬】

  第一選択薬 第二選択薬
強直間代発作 バルプロ酸 ラモトリギン
レベチラセタム
トピラマート
ゾニサミド
クロバザム
フェノバルビタール
フェニトイン
ペランパネル
脱力発作 バルプロ酸 ラモトリギン
レベチラセタム
トピラマート
欠神発作 バルプロ酸
エトスクシミド
ラモトリギン
レベチラセタム
トピラマート
ゾニサミド
クロバザム
フェノバルビタール
フェニトイン
ペランパネル
ミオクロニー発作 バルプロ酸
クロナゼパム
レベチラセタム
トピラマート
ピラセタム
フェノバルビタール
クロバザム

全般発作も部分発作と同様に、「発作の種類」に加えて「身体の状態」などを鑑みて第一選択薬が決められます。効果が不十分で発作の回数が多い場合や、副作用が強く出る場合には薬が変更されることがあります。また、1つの薬で治療が不十分な場合には複数の薬で治療されることもあります。

2. それぞれの薬の詳細情報

抗てんかん薬にはたくさんの種類があり、一人ひとりの状況に合わせて治療薬が選ばれます。てんかんの治療では「てんかんを起こさないための薬」と「てんかん重積状態のときに使う薬」の2つがあります。

下記では、体内での作用機序などの難しい内容まで踏み込んで、薬の詳細について説明します。

てんかん発作を起こさないための薬:抗てんかん薬

■バルプロ酸(バルプロ酸ナトリウム)

バルプロ酸ナトリウム(主な商品名:デパケン®、セレニカ®)は、日本では1974年の承認以降長く医療現場で使われている薬の一つで、現在でも多くの治療で使われ、特に全般発作の治療では優先的に使われている薬の一つになっています。

バルプロ酸ナトリウムは、脳内で抑制性の神経伝達物質となるGABA(gamma-aminobutyric acid:γ-アミノ酪酸)による神経伝達を増強することで、抗けいれん作用などをあらわすと考えられています。

作用の仕組みをもう少し詳しくみていきます。GABAは脳内でGABAトランスアミナーゼなどの酵素によって不活性化されますが、バルプロ酸ナトリウムはこの酵素の働きを抑えることで、脳内のGABA濃度などを上昇させGABAによる抑制性の神経伝達を促進させる作用をあらわすとされています(このほか、神経伝達物質のセロトニン系の代謝などへの作用も考えられています)。

バルプロ酸ナトリウムの注意すべき副作用には、眠気やめまいなどの精神神経系症状、吐き気や食欲不振などの消化器症状、発疹などの過敏症、体重増加、貧血白血球減少などの血液症状、高アンモニア血症、肝機能障害などがあります。

また、バルプロ酸ナトリウムは体内で葉酸の代謝を阻害する作用をあらわします。

葉酸は細胞分裂などに重要な役割を果たしているビタミンで、体内で代謝されてその効果をあらわしますが、この代謝が阻害されることで、妊娠中のバルプロ酸ナトリウムの投与が新生児の先天性奇形に関与する可能性などが報告されています。

バルプロ酸ナトリウムだけでなく抗てんかん薬を妊婦(または妊娠希望者や妊娠している可能性がある人)へ使用する場合は通常、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合であったり、葉酸欠乏を伴うような薬剤では必要に応じて葉酸を補充して治療にあたるなど、十分な注意や配慮がなされます。

妊娠中だけでなく授乳に対しても注意が必要で、バルプロ酸ナトリウムは母乳中に移行することがあり、授乳婦が服用する場合には授乳を避ける必要もあります。これはバルプロ酸ナトリウムをはじめとする抗てんかん薬に限ったことではありませんが、妊娠中であったり妊娠希望がある場合では、出産後の注意点なども含めて医師や薬剤師から特にしっかりと説明を聞いておくことがとても大切です。

◎バルプロ酸ナトリウム製剤の剤形(剤型)や保管上の注意とは?

バルプロ酸ナトリウム製剤には錠剤のほか、散剤(細粒剤、顆粒剤)、水剤(シロップ剤)があり、病態や嚥下状態などに合わせた剤形(剤型)選択が可能です。デパケン®R錠やセレニカ®R錠などのように、徐放性製剤といって体内で薬剤の効果が持続するように造られているものあります。

また、バルプロ酸ナトリウムの成分自体の吸湿性はかなり強く、空気中で徐々に潮解する性質をもっているため、湿気を避けて薬剤を保管するなど注意が必要です。特にデパケン®錠(普通錠)やセレニカ®R錠などは服用直前までシート(PTPシート)から取り出さないようにしたり、保存中にシートを破損しないようにするなどの注意が必要です。薬剤の吸湿性の度合いは剤形(剤型)などによっても異なることがあり、事前に保管上の注意などを薬剤師からよく聞いておくことも大切です。

◎バルプロ酸ナトリウムは頭痛などの治療にも使われる?

バルプロ酸ナトリウムは、てんかんやそう病(そう状態)の治療のほか、片頭痛発作の予防薬としても承認されています。

「頭痛」と「てんかん」と聞くとあまり関連性がないようにも思えますが、片頭痛発作を引き起こす主な原因として脳の神経細胞の興奮などが考えられていて、同じく脳の興奮によって引き起こされるてんかんの治療薬が片頭痛を改善することは、理にかなっているとも言えます。バルプロ酸ナトリウムをはじめとして、レベチラセタムやとトピラマートなどのいくつかの抗てんかん薬は片頭痛の予防に有用とされています。

■カルバマゼピン

カルバマゼピン(主な商品名:テグレトール®)は日本では1966年の承認以降、長く医療現場で使われている薬の一つで、現在でもてんかんの部分発作などで優先的に使われている薬になっています。

カルバマゼピンは、主に脳内で興奮性のシグナルとなるナトリウム(Na)イオンの通り道であるNaチャネルを阻害することで、抗てんかん効果をあらわすと考えられています。

子どもから大人まで幅広い年齢で使われてることもあり、カルバマゼピン製剤の剤形には錠剤に加え散剤(主な商品名:テグレトール®細粒)もあります。

カルバマゼピンで注意すべき副作用には、眠気、めまい、頭痛などの精神神経系症状、食欲不振や口渇などの消化器症状、血圧変動や不整脈などの循環器症状、皮疹などの皮膚症状、肝機能障害などがあります。またバルプロ酸ナトリウムの欄でもふれましたが、カルバマゼピンでも服用を続けていると葉酸欠乏が起こることがあり、特に妊婦などにおける葉酸欠乏には注意が必要です。カルバマゼピンは多くの薬との相互作用(飲み合わせ)に注意が必要で、薬によるなんらかの治療を行っている場合には、事前に医師や薬剤師に相談することが大切です。

また薬以外にも、カルバマゼピンによる治療中にグレープフルーツやセントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウというハーブの一種)などを摂ると、カルバマゼピンの血中濃度が変動する可能性があるため、食品やサプリメントとの相互作用に対しても注意が必要です。

カルバマゼピンはてんかん治療以外にも多くの病態に対して使われることがあり、そう病(そう状態)や統合失調症の興奮状態の改善、三叉神経痛の治療などに対して有用とされています。

■ラモトリギン

ラモトリギン(主な商品名:ラミクタール®)は、日本では2008年に承認された抗てんかん薬で、部分発作や強直間代発作などの全般発作における治療の選択肢になっています。

ラモトリギンは、主に脳内で興奮性のシグナルとなるナトリウム(Na)イオンの通り道であるNaチャネルを阻害することなどによって神経膜を安定化させ、グルタミン酸などの興奮性の神経伝達物質の遊離を抑えることで、抗けいれん作用をあらわすと考えられています。

大人だけでなく子どもに対しても使われ、幼児期から小児期に発症する難治性てんかんの一つ、レノックス・ガストー(Lennox-Gastaut)症候群の治療に対しても承認されています。

ラモトリギンで注意すべき副作用には、めまいや眠気などの精神神経系症状、吐き気などの消化器症状、複視(ものが二重に見える)などの眼症状、肝機能障害などがあります。また皮疹などの皮膚症状があらわれる場合もあり、頻度は非常に稀とされていますが重度な皮膚症状(中毒性表皮壊死症皮膚粘膜眼症候群など)を引き起こす可能性も考えられ注意が必要です。もしも皮疹などの症状がみられた場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡するなど適切に対処することが大切です。

ラモトリギンは他のいくつかの薬との相互作用(飲み合わせ)に注意が必要です。特に抗てんかん薬などとして使われるバルプロ酸ナトリウム(主な商品名:デパケン®、セレニカ®)とラモトリギンを併用する場合には、用量・用法などの調節が必要になり、ラモトリギンの量を徐々に維持量に増やしていく漸増法などが指示されることがあります。副作用などの注意点も含め、医師や薬剤師からしっかりと説明を聞いておくことが大切です。

てんかん治療とは話題が変わりますが、ラモトリギンは双極性障害の治療に対しても使われる場合があります。

このほか、ラモトリギンは「痛み」に対しての有用性も考えられます。カルバマゼピンやガバペンチンなどのいくつかの抗てんかん薬と同じように痛み(特に「神経障害性疼痛」と呼ばれる神経の痛み)を緩和する作用が期待でき、鎮痛補助薬としての効果も期待できると考えられています。

■レベチラセタム

レベチラセタム(主な商品名:イーケプラ®)は、日本では2010年に承認された抗てんかん薬で、部分発作をはじめとして多くのてんかん治療に使われている薬の一つです。てんかん発作を起こさない目的で使われることもありますし、後述するてんかん重積発作時にも使われることがあります。

既存の抗てんかん薬とは異なる作用の仕組みをもち、主に神経終末のシナプス小胞タンパク質2A(SV2A:Synaptic Vesicle Protein)という物質に作用することで、抗けいれん作用などをあらわすと考えられています。SV2Aは神経伝達物質の放出を調節する物質と考えられていて、レベチラセタムはこの物質と結合することで、抗てんかん効果をあらわすとされています。レベチラセタムにはこのほかにも、脳内で興奮性のシグナルとなるカルシウム(Ca)イオンの通り道であるCaチャネル(N型Caチャネル)の阻害作用や、細胞内Caイオンの遊離抑制作用など、複数の作用の仕組みによって、てんかん発作を抑えると考えられています。

レベチラセタムで注意すべき副作用には、眠気やめまいなどの精神神経系症状、下痢や便秘などの消化器症状、咽頭炎気管支炎などの呼吸器症状などのほか、頻度は稀とされますが汎血球減少などの血液症状などがあります。また腎機能の状態などによっては薬剤の用量の調節が必要になる場合もあり、腎機能が低下していたり腎疾患をもつ場合には特に注意が必要です。

レベチラセタムが子どもから大人まで幅広い年齢で使われていることなどもあり、錠剤に加え散剤(商品名:イーケプラ®ドライシロップ)の剤形があり、嚥下機能が低下した場合などに対するメリットが考えられます。また2014年には、主に一時的に内服(飲み薬)での薬剤投与ができない場合の剤形として注射剤(商品名:イーケプラ®点滴静注)が追加になっています。

また、レベチラセタムはバルプロ酸ナトリウムなどのいくつかの抗てんかん薬と同様に、片頭痛発作予防などへの有用性も考えられています。

■ゾニサミド

ゾニサミド(主な商品名:エクセグラン®)は日本では1989年に承認された抗てんかん薬で、部分発作やいくつかの全般発作などに対する治療の選択肢となっています。

ゾニサミドの作用の仕組みは完全に解明されているわけではありませんが、脳内の神経伝達部位に働き、発作の活動が伝わる過程を遮断したり、てんかん原性焦点(てんかんを起こしている場所)を抑える作用などが考えられています。

ゾニサミドで注意すべき副作用には、眠気、運動失調、幻覚などの精神神経系症状、食欲不振や吐き気などの消化器症状、発疹や痒みなどの皮膚症状などがあります。また頻度は稀とされますが、発汗減少(および発汗減少に伴う熱中症など)、腎結石や尿路結石などがあらわれることもあり注意が必要です。

抗てんかん薬のなかでは比較的、他の薬との相互作用(飲み合わせに注意すべき事項)が少なめではありますが、注意すべき併用薬のなかにはフェニトインやカルバマゼピンなどの抗てんかん薬なども含まれます。

パーキンソン病の治療薬としても使われているゾニサミド

ゾニサミドはてんかん治療以外にもパーキンソン病の治療薬(商品名:トレリーフ®)としても医療現場で使われています。これは元々、パーキンソン病をもつ患者に併発した痙攣(けいれん)発作の治療においてゾニサミドを使ったところ、けいれん発作がおさまると共にパーキンソン病自体の症状改善もみられたことがきっかけとなり、2009年にトレリーフ®の名称でパーキンソン病治療薬としても承認された経緯があります。仮にパーキンソン病でトレリーフ®を使用していて、抗てんかん薬としてのゾニサミドを使うという場合には、薬の成分(ゾニサミド)が重複することになるため、事前に持病や併用薬を医師や薬剤師にしっかりと話しておく必要があります。

■トピラマート

トピラマート(主な商品名:トピナ®)は、日本では2007年に承認された抗てんかん薬です。トピラマートの抗てんかん薬としての作用の仕組みは多様で、おおまかにまとめると、脳内で興奮性の神経伝達物質となるグルタミン酸の神経系の抑制作用と、抑制性の神経伝達物質となるGABA(gamma-aminobutyric acid:γ-アミノ酪酸)の神経系の増強作用といった両面から脳神経の興奮を抑える薬とされています。

作用の仕組みを少し細かくみていくと、以下のようになります。

  • 脳内で興奮性のシグナルとなるナトリウム(Na)イオンの通り道であるNaチャネルの抑制作用
  • Naイオンと同じく興奮性のシグナルとなるカルシウム(Ca)イオンの通り道となるCaチャネル(電位依存型L型Caチャネル)の抑制作用
  • グルタミン酸の受容体機能の抑制作用
  • 炭酸脱水素酵素阻害作用

これらのしくみにより抗てんかん薬としての効果をあらわすと考えられています。

トピラマートで注意すべき副作用には、眠気やめまいなどの精神神経系症状、体重減少、電解質異常、発汗減少、肝機能異常などがあります。また頻度は稀とされますが、腎結石や尿路結石、代謝性アシドーシスなどがあらわれることも考えられます。

主なトピラマート製剤であるトピナ®の発売当初は剤形が錠剤のみでしたが、2013年に2歳以上の子どもに対する用法・用量が追加承認されたこともあり、2014年には細粒剤(商品名:トピナ®細粒)が追加になっています。

トピラマートはてんかんの治療以外にも有用とされ、特に脳の神経細胞の興奮が発症に深く関わる片頭痛発作の予防などに使われることもあります。

■ガバペンチン

ガバペンチン(商品名:ガバペン®)は、日本では2006年に承認された抗てんかん薬で、この薬以前に登場した抗てんかん薬とは異なる仕組みによって抗けいれん作用をあらわす薬です。

ガバペンチンには主に2通りの作用の仕組みが考えられていて、一つは脳内で興奮性のシグナルとなるカルシウム(Ca)イオンの流入を抑えることで、興奮性の神経伝達物質であるグルタミン酸などの遊離を抑えるとされています。もう一つは脳内で抑制性の神経伝達物質となるGABA(gamma-aminobutyric acid:γ-アミノ酪酸)の量を増やし、GABAの神経系機能を維持・増強する仕組みが考えられています。

ガバペンチンで注意すべき副作用には、めまい、眠気、頭痛などの精神神経系症状、複視(ものが二重に見える)などの眼症状、体重増加、浮腫などがあります。また腎機能の状態などによっては薬剤の用量の調節が必要になる場合もあり、腎機能が低下していたり腎疾患をもつ場合には特に注意が必要です。

ガバペンチンは抗てんかん薬のなかでは他の薬との相互作用(飲み合わせに注意すべき事項)がかなり少ない薬です。これは体内でほとんど代謝されないこと、また肝臓の薬物代謝酵素に対する影響が少ないこと、などのガバペンチンの特徴が大きな要因とされています。ただし、一部の制酸薬(水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなど)やオピオイド系鎮痛薬(モルヒネなど)といった薬との飲み合わせには注意が必要です。

2011年には3歳以上の子どもに対しての用法・用量が承認されたことに伴い、新しい剤形としてシロップ剤(商品名:ガバペン®シロップ)が追加になり、子どもだけでなく大人においても嚥下機能が低下している場合などに対するメリットが考えられます。

またてんかん治療とは話題が変わりますが、ガバペンチンは抗けいれん作用に加え、「痛み」に対しての有用性も考えられます。カルバマゼピンやラモトリギンなどのいくつかの抗てんかん薬と同じように痛み(特に「神経障害性疼痛」と呼ばれる神経の痛み)を緩和する作用が期待でき、鎮痛補助薬としての効果も期待できると考えられています。

■クロナゼパム

クロナゼパムは、ベンゾジアゼピン系という種類に分類される薬剤の一つで、主に脳内の抑制性の神経伝達物質GABA(gamma-aminobutyric acid:γ-アミノ酪酸)の働きを増強することで、抗けいれん作用や鎮静作用などをあらわします。

作用の仕組みをもう少し詳しくみていくと、クロナゼパムは脳内のベンゾジアゼピン受容体(benzodiazepine受容体:BZD受容体)に対して作用します。BZD受容体はGABAの受容体(GABAA受容体)と複合体を形成していて、クロナゼパムなどのベンゾジアゼピン系の薬がBZD受容体へ作用するとGABAに関わる神経伝達が亢進し、脳神経の興奮を抑える方向へ促します。

てんかん治療においてクロナゼパムはミオクロニー発作や点頭てんかんなどの治療の選択肢になっています。

クロナゼパムはてんかん治療以外にも、不安などの症状緩和や神経が関わる痛み(神経障害性疼痛)の緩和に使われたり、てんかんと同じく脳神経の興奮が関わる片頭痛の発作予防に使われるなど、その用途が比較的広い薬剤でもあります。

注意すべき副作用としては、眠気やふらつきなどの精神神経系症状、喘鳴ぜんめい:呼吸をするときにヒューヒュー、ゼイゼイなどと音がすること)などの呼吸器症状、吐き気や食欲不振などの消化器症状などがあります。また頻度は稀とされていますが、ある程度の期間使用を継続することで依存(薬物依存)を生じる懸念もあります。一方で、治療継続中に急に服用を中止したり、服用量を大幅に減らしたりすると、かえってけいれん発作を助長し、てんかん重積状態などがあらわれることも考えられます。

クロナゼパムなどのベンゾジアゼピン系の薬に限ったことではありませんが、副作用を含めなんらかの気になる症状がみられた場合は自己判断で薬を中止せず、まずは医師や薬剤師に相談するなど適切に対処することが大切です。

クロナゼパム製剤のランドセン®やリボトリール®には、錠剤のほか散剤(細粒剤)の剤形があり、嚥下機能が低下している場合などへのメリットも考えられます。

■クロバザム

クロバザムは、クロナゼパムやジアゼパムなどと同じベンゾジアゼピン系に分類される薬で、主に脳内の抑制性の神経伝達物質GABA(gamma-aminobutyric acid:γ-アミノ酪酸)の働きを増強することで、抗けいれん作用などをあらわします。

クロバザムはジアゼパムなどの主要なベンゾジアゼピン系の薬とは少し異なる化学構造(主に窒素原子の位置が異なる)をもつ薬で、難治性てんかんなどに対しての有用性が確認され日本では2000年に承認されています。

一般的に部分発作や全般発作の治療において他の抗てんかん薬との併用で使われることが多い薬ですが、病態によっては単剤で使われるケースも考えられます。

クロバザムの注意すべき副作用は、眠気やめまいなどの精神神経系症状、吐き気などの消化器症状などのほか、頻度は稀とされてますが、呼吸抑制や連用による依存性など、他のベンゾジアゼピン系の薬と類似しています。

クロバザム製剤のマイスタン®の剤形には、錠剤以外に散剤(細粒剤)があり、嚥下機能が低下している場合などへのメリットも考えられます。

■ペランパネル

近年開発された抗てんかん薬の一つで、日本では2016年に承認されています。

ペランパネル(商品名:フィコンパ®)は脳内で神経細胞を興奮させる物質となるグルタミン酸の作用を抑えることで、抗てんかん作用をあらわします。

作用の仕組みを少し詳しくみていくと、グルタミン酸は脳内のシナプス後膜に存在するAMPA(α-amino-3-hydroxy-5-methyl-4-isoxazolepropionic acid)型グルタミン酸受容体に作用することで神経細胞の興奮を引き起こし、このAMPA受容体はてんかん波の発生などに深く関わると考えられてます。ペランパネルは、このAMPA受容体に選択的に結合し、グルタミン酸のAMPA受容体を介した神経伝達を抑えることで抗てんかん作用をあらわすとされています。

AMPA受容体抑制という、ペランパネル以前に開発された薬にはない作用の仕組みをもっていることもあり、他の抗てんかん薬で効果が不十分であるような難治性の部分発作(二次性全般化発作を含む)や強直間代発作などへの有効性が考えられてます。

ペランパネル製剤のフィコンパ®は通常、1日1回、寝る前(就寝前)に服用します。

他の抗てんかん薬との併用療法で使われることも多い薬ですが、抗てんかん薬として使われるカルバマゼピン(主な商品名:テグレトール®)やフェニトイン(主な商品名:アレビアチン®、ヒダントール®)といった薬との併用は、薬物代謝酵素への影響により本剤(ペランパネル)の血中濃度が低下する可能性が考えられ、本剤の用量の調節が必要となる場合もあります。

また、経口避妊薬などに含まれるレボノルゲストレルなど、いくつかの薬剤成分によっても本剤の血中濃度が変動し、薬効に影響を及ぼす可能性が考えられ、飲み合わせに注意が必要です。

注意すべき副作用として、めまい、傾眠、易刺激性(イライラしたり、怒りっぽくなるなど)、頭痛などの精神神経系症状、吐き気などの消化器症状などがあります。

■ラコサミド

近年開発された抗てんかん薬の一つで、日本では2016年に承認されています。

ラコサミド(商品名:ビムパット®)は主に脳内で興奮性のシグナルとして作用するナトリウム(Na)イオンの通り道であるNaチャネルを阻害することで抗けいれん作用をあらわす薬です。

Naチャネルを阻害することで抗けいれん作用をあらわす薬としては、カルバマゼピン(主な商品名:テグレトール®)、フェニトイン(主な商品名:アレビアチン®、ヒダントール®)などがありますが、ラコサミドはこれらとは異なる作用の仕組みをもつ薬剤と考えられています。

Naチャネルは急速な不活性化と緩徐な不活性化という2種類の仕組みによって制御されているとされ、特に緩徐な不活性化はてんかんのような持続する神経細胞の過度な興奮に深く関わるとされています。カルバマゼピンやフェニトインなどの抗てんかん薬は、どちらかというとNaチャネルの急速な不活性化に関わるとされていますが、ラコサミドはNaチャネルの緩徐な不活性化に関わる(緩徐な不活性化を促進させる)薬剤と考えられています。

緩徐な不活性化の促進によって、Naチャネルの長期利用可能性を低下させることが期待でき、これによりラコサミドは他の抗てんかん薬で十分な効果が得られないような病態などに対しての有用性が考えられます。ラコサミド製剤のビムパット®は、発売当初は主に部分発作の治療において他の抗てんかん薬との併用で使われていましたが、2017年には部分発作に対してラコサミド単剤での治療も承認され、てんかん治療に対する選択肢が広がっています。

ラコサミドで注意すべき副作用には、めまい、眠気、頭痛などの精神神経系症状、吐き気などの消化器症状、複視(ものが二重に見える)などの眼症状、疲労などがあります。また頻度は稀とされますが、徐脈などの循環器症状、肝機能障害、無顆粒球症などにも注意は必要です。

■エトスクシミド

エトスクシミドは、主に脳内で興奮性のシグナルとなるカルシウム(Ca)イオンの流入を阻害することで抗てんかん効果をあらわすとされ、欠神発作(数十秒、意識がなくなるなどの症状があらわれる)などの治療の選択肢になっています。脳の視床は欠神発作などの発現に深く関わる部位とされ、エトスクシミドは視床神経での低閾値Caイオンによる電流(T電流)を減少させる作用などをあらわすと考えられています。

子どもに使われることが多いこともあり、医療現場で使われているエトスクシミド製剤は散剤(商品名:エピレオプチマル®散)と水剤(商品名:ザロンチン®シロップ)で、一般的に病態や服薬状況などに合わせて選択されます。

エトスクシミドの注意すべき副作用としては、眠気やめまいなどの精神神経系症状、吐き気などの消化器症状のほか、頻度は稀とされますが皮疹などの皮膚症状、過敏症、貧血や汎血球減少などの血液症状などがあります。

■その他、てんかん治療に使われる薬

ここで紹介した以外にもてんかんの治療に使われる薬はいくつかあります。

例えば、近年になって承認されたスチリペントール(商品名:ディアコミット®)、

ルフィナミド(商品名:イノベロン®)、ビガバトリン(商品名:サブリル®)などがあります。スチリペントールはドラベ(Dravet)症候群、ルフィナミドはレノックス・ガストー(Lennox-Gastaut)症候群、ビガバトリンは点頭てんかん(ウエスト(West)症候群)といったように、いずれも子どもの難治性てんかんの治療を対象としている薬で、治療の選択肢が広がってきています。

その他、臭化カリウム、ピラセタム(商品名:ミオカーム®)、スルチアム(商品名:オスポロット®)などの薬剤がてんかん治療の選択肢となっています。

またビタミンB群の一つであるビタミンB6はGABA(gamma-aminobutyric acid:γ-アミノ酪酸)などの神経伝達物質の合成に深く関わるため、てんかんや脳症などの神経疾患との関連性も深いとされていて、例えば子どものてんかん治療にビタミンB6製剤が使われるケースもあります。

薬剤の特徴や注意などは個々で異なるため、医師や薬剤師からしっかりと説明を聞いておくことが大切です。

てんかん重積状態に使う薬

■ジアゼパム

ジアゼパムはクロナゼパムなどと同様にベンゾジアゼピン系という種類に分類される薬で、主に脳内の抑制性の神経伝達物質GABA(gamma-aminobutyric acid:γ-アミノ酪酸)の働きを増強することで、抗けいれん作用や鎮静作用などをあらわします。

ジアゼパム製剤は、錠剤や散剤などの内服薬(飲み薬)以外に注射剤や坐剤があり、慢性的な症状に対してだけではなく、急性症状に対する治療の選択肢にもなっています。

てんかん治療におけるジアゼパムの注射剤は、主にてんかん重積状態におけるけいれんを抑える治療に使われ、静脈からの投与が困難な場合などには必要に応じて注腸投与などが検討される場合もあります。

またジアゼパムの坐剤(商品名:ダイアップ®)はてんかん治療のほか、場合によってはてんかんとの関わりも考えられる熱性けいれんの治療で使われる場合もあります。熱性けいれん治療では、発熱自体を改善するために解熱鎮痛成分の坐剤(アルピニー®坐剤、アンヒバ®坐剤など)と併用されることも考えられますが、これらの坐剤とジアゼパムの坐剤との間隔を開けずに挿入すると薬剤の吸収などに影響が出ることも考えられ、挿入する順番や間隔などに注意が必要です。

ジアゼパムの注意すべき副作用としては、クロナゼパムなど他のベンゾジアゼピン系の薬と類似していて、眠気やふらつきなどの精神神経系症状、吐き気などの消化器症状、呼吸抑制、連用による依存などがあります。

ジアゼパムはてんかんなどのけいれんを伴う病態の治療だけでなく、抗不安薬として不安、緊張、抑うつなどの症状改善目的で使われたり、脳脊髄疾患による筋肉の痙攣や疼痛緩和に使われるなど、色々な用途で用いられています。

■フェニトイン/ホスフェニトイン

フェニトイン(主な商品名:アレビアチン®、ヒダントール®)は、化学構造中にヒダントイン骨格という基本構造をもつことからヒダントイン系という種類に分類される抗てんかん薬の一つで、てんかん重積状態の治療のほか、部分発作や強直間代発作などの治療の選択肢にもなっています。

脳内における神経細胞への興奮性のシグナルの一つにナトリウム(Na)イオンがあり、

Naチャネルという通り道から流入することで神経細胞の興奮が起こり、てんかんなどのけいれん発作発症に深く関わるとされています。

フェニトインは、主に神経細胞へのNaイオンの通り道となるNaチャネルを阻害することなどによって抗けいれん作用をあらわすとされています。

フェニトインの注意すべき副作用としては、めまい、眠気、不随意運動などの精神神経系症状、複視(ものが二重に見える)などの眼症状、吐き気などの消化器症状、多毛などがあります。頻度は稀とされますが、皮疹などの皮膚症状、肝機能障害などがあらわれる場合も考えられます。また比較的長期に継続していると、歯肉増殖や骨粗しょう症などがあらわれることも考えられます。

フェニトイン製剤には錠剤や散剤といった内服薬(飲み薬)のほか、注射剤があります。注射剤はてんかん重積状態において、ジアゼパムなどの即効性が期待できる注射剤に続けて使われる薬剤としての有用性もあります。

一方で、フェニトインの注射剤は、低血圧不整脈などの循環器症状などへの懸念から緩やかに投与を行う必要があるのに加え、薬剤の性質上、注射液が血管外へ漏れた場合の組織壊死、注射部位における浮腫や疼痛などへの懸念があります。このフェニトイン注射剤の組織障害性の軽減をはかった薬剤が、フェニトインの水溶性プロドラッグ(体内で代謝を受けて薬理作用をあらわす薬)であるホスフェニトイン(商品名:ホストイン®)ですホスフェニトインはてんかん重積状態の時だけでなく、脳外科手術時やフェニトインの経口投与が困難な場合などにおけるフェニトインの代替薬としても有用です。

フェニトインは単独成分の製剤以外にも、フェノバルビタールを配合した製剤(ヒダントール®D配合錠など)もあります。

フェニトインとフェノバルビタールといった2つの成分を一つの製剤にすることで、両成分による抗けいれん作用だけでなく、服薬におけるアドヒアランス(患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること)の維持などのメリットも考えられます。

フェニトイン・フェノバルビタール・安息香酸ナトリウムカフェインの3成分を配合した製剤がヒダントール®D配合錠、ヒダントール®E配合錠、ヒダントール®F配合錠で、フェノバルビタール及び安息香酸ナトリウムカフェインの含有量はD、E及びFで一定で、フェニトインの含有量が異なり、個々の病態などに合わせて選択されます。この他、フェニトインとフェノバルビタールの配合製剤としては複合アレビアチン®配合錠もあります。

■フェノバルビタール

フェノバルビタールはバルビツール酸系という催眠・鎮静・抗けいれん作用などをあらわす薬剤の一つです。

主に脳内で抑制性のシグナルとして作用する塩化物イオン(Clイオン)の細胞内への流入を促進することで神経細胞の興奮を抑えて抗けいれん作用などをあらわし、部分発作や全般発作(強直間代発作など)への治療の選択肢となっています。

作用のしくみをもう少し詳しくみていくと、フェノバルビタールは主に脳内で抑制性の神経伝達物質となるGABA(gamma-aminobutyric acid:γ-アミノ酪酸)の受容体(GABAA受容体サブユニット)に存在するバルビツール酸誘導体結合部位に結合し、GABAの受容体親和性を高め、Clイオンチャネルの開口作用を強めることで、神経機能の抑制作用を促進する作用をあらわします。

フェノバルビタールは不眠症、不安や緊張状態の改善(鎮静)など、てんかん治療以外にも色々な用途で使われることが考えられる薬になっています。

フェノバルビタールを単独成分として含む製剤には錠剤、散剤、水剤(エキリシル剤)、坐剤、注射剤といったように多くの剤形があり、病態や服薬状況などに応じて選択が可能です。2008年には静脈注射用の製剤(商品名:ノーベルバール®)が承認され、てんかん重積状態や新生児てんかんなどの治療の選択肢になっています。

このほか、同じく抗てんかん薬として使われるフェニトインとの配合製剤(製剤例:ヒダントールD®配合錠、複合アレビアチン®配合錠)なども発売されています。

フェノバルビタールの注意すべき副作用には、めまいや眠気などの精神神経系症状、血圧低下や徐脈などの循環器症状、呼吸抑制、長期に継続した場合の依存性や骨粗しょう症などがあります。またフェノバルビタールは薬物代謝酵素への影響などから、相互作用(飲み合わせ)に注意が必要な薬が比較的多く、併用注意の薬剤のなかにはバルプロ酸ナトリウム、スチリペントール、クロバザムといった抗てんかん薬も含まれます。副作用も含めて服用に関する注意点などを事前に医師や薬剤師からしっかりと聞いておくことが大切です。

■ミダゾラム

ミダゾラムは、ジアゼパムなどのベンゾジアゼピン系の薬に類似する催眠、鎮静、麻酔、抗不安などの作用のほか、抗けいれん作用もあらわす薬剤です。もともと、全身麻酔などの薬として国内外で使われていた経緯をもっています。ミダゾラムは、主に脳内の抑制性の神経伝達物質GABA(gamma-aminobutyric acid:γ-アミノ酪酸)の働きを増強することで、催眠、鎮静、抗けいれんなどの作用をあらわします。即効性と強い抗けいれん作用を併せ持つなどの特徴からけいれん発作への高い有用性などが考慮され、2014年にてんかん重積状態の治療薬(商品名:ミダフレッサ®)としても承認されています。また、2020年には口の粘膜から吸収できるタイプの治療薬(商品名:ブコラム®)も発売され、医療機関以外での使用が可能になりました。この薬は18歳未満の人が使用可能です。適切に使用するために、医師からの説明をよく聞いて使ってください。

ミダゾラムは、点滴での持続投与も可能で、一般的に呼吸抑制や循環器症状への懸念が少ないなどのメリットも考えられます。一般的に呼吸器や循環器などの状態をしっかりと確認しつつ投与されるため、副作用への懸念は少ないとされていますが、呼吸抑制、頻脈などの循環器症状、ショック、発熱、過敏症、肝機能障害などに注意は必要です。

■ロラゼパム

ロラゼパムは、海外ではてんかん重積状態に対して第1選択薬として使用されています。国内でも2018年9月に製造販売承認され、2019年2月から市販されました。

クロナゼパムなどと同様にベンゾジアゼピン系という種類に分類される薬で、主に脳内の抑制性の神経伝達物質GABA(gamma-aminobutyric acid:γ-アミノ酪酸)の働きを増強することで、抗けいれん作用や鎮静作用などをあらわします。
飲み薬と点滴薬がありますが、正常な意識がないてんかん重積状態では点滴薬が使用されます。急速に点滴すると呼吸が止まってしまう可能性があるので、使用の際にはゆっくりと点滴する必要があります。また、3回以上使用した場合の効果や安全性が確立していないため、2回使用しても効果がない場合は使用薬を変更する必要があります。

2019年7月現在、国内においても「小児けいれん重積治療ガイドライン」作成委員の声明でロラゼパムの使用推奨が検討されていることが分かっていますが、まだ検討段階というのが現状です。適切な使用に関して問題はないものの、今後のてんかんに関連するガイドラインにおける本格的な言及が待たれる状況です。

3. 薬物療法の注意点

てんかんの治療は薬物療法が中心になります。発作を抑えるために薬物療法は有効ですが、内服中には注意が必要なことがいくつかあります。

ここではてんかん発作の薬(抗てんかん薬)を内服中に注意してほしいことを説明します。

薬の飲み合わせに注意:飲んでいる薬を伝えること

抗てんかん薬は飲み合わせに注意が必要です。同時に内服すると、抗てんかん薬の効果を強めたり弱めたりするものがあります。効果が強いと副作用が出やすくなり、効果が弱いと発作を抑えることができません。他の病気で薬を飲む必要がある場合は、抗てんかん薬を飲んでいることを医療者に伝えるようにしてください。

しかし、薬の名前や用量を覚えておくのは簡単ではありません。内服中の薬の名前や用量を上手に伝える方法として「お薬手帳」を利用してみてください。お薬手帳には「薬の種類」や「薬の用量」、「薬の開始時期」などが明記されています。診察のときに「お薬手帳」を持参すると内服している薬をもらさずに伝えることができます。

副作用に注意:めまい、眠気、吐き気など

ほとんどの抗てんかん薬にはめまいや眠気、吐き気、記憶力の低下(認知症)といった副作用があります。そして、内服する量が多いほど副作用は現れやすくなります。

お医者さんはてんかん発作を抑える効果とともに副作用にも気をつけて薬の量や種類を決めています。しかし、薬を始めたばかりのころは手探りで薬を決めなければならないので、副作用が出やすい時期でもあります。

薬を飲み始めて身体に変調を感じる場合には、その症状をお医者さんに伝えてください。薬の量や種類の調整が必要かもしれません。副作用がひどいと日常生活の質を下げますし、転倒などの事故のもとになることがあるので我慢することはありません。治療をしている医療機関を受診して相談してみてください。

薬を飲み忘れたときにはどうすれば良いのか

てんかんの薬を飲み忘れた場合は、気づいた時点で薬を飲むようにしてください。忘れたことで飲む時間がずれ込んでしまうので、次のようなことが心配になります。

  • 次の薬はいつ飲めばいいのか
  • 副作用はでないのか

2つの不安について説明します。

■次の薬はいつ飲めばいいのか

飲み忘れによりずれ込んだ分だけ時間を遅らせて、次の薬を飲むようにしてください。

仮に1日2回(朝夕に内服)飲む薬の朝分を忘れていつもより遅く飲んだ場合、夕方の分もいつもより時間を遅らせて内服するようにしてください。例えば朝の薬がいつもより2時間遅れて内服したのであれば、夕方も2時間遅らせるようにするとよいです。

■副作用はでないのか

薬を飲む時間が大きくずれて、次の薬の時間との間隔を十分に取れない場合もあります。できるだけ時間をとって内服しても、いつもより薬と薬の間隔が短くなると効果が強くなって副作用が出やすくなるのではないかと心配になると思います。

副作用の出やすさについては、一人ひとりで飲んでいる薬の種類や量が異なるので一概に言うことはできません。薬の種類が少ない人は、薬と薬の間隔が短くなっても大きな問題は起こりにくいと考えられています。一方で、薬の種類が多い人は薬の間隔が短くなることで副作用が出やすくなることが心配になります。

薬の種類が多い人はまずかかりつけのお医者さんに連絡して、対応について相談してみてください。さらに、あらかじめ、薬を飲み忘れた際の対応について外来で聞いておくとことも大切です。

自己判断で減量や中止しないために:薬をきちんと飲みつづけた方が良い理由

長い間、発作を抑えられていると「抗てんかん薬を飲まなくても発作は起きないのでは」と考えるかもしれません。それでも抗てんかん薬を飲み続けるのには理由があります。

てんかんの人は抗てんかん薬によって発作が抑えられてる状態なので、薬の減量や中止によって発作が起きたり、重積状態になってしまったりすることが懸念されるからです。そのため、抗てんかん薬の減量や中止は経験のあるお医者さんでも慎重に行います。

また、現在のところ、抗てんかん薬を減量や中止をするための確実な指標はありません。

このため、お医者さんは患者さんの様子や最後に発作が起きた時期や状況などさまざまなことを踏まえて薬を減らしたり中止したりする判断を慎重に行っています。

このように、抗てんかん薬の減量や中止は専門家であるお医者さんにとっても難しい判断が求められるので、患者さんが自分の判断で減量や中止をするのは避けるべきです。たとえ長い間発作が起きていなくとも抗てんかん薬はしっかりと飲み続けることが大切です。

4. 手術(外科的治療)

てんかんの治療は薬物療法が主体で、高い効果が期待できます。その一方で、薬が効かない人もいます。薬の効果が弱く発作のコントロールが不十分な人には手術が検討されることがあります。

どんな人に手術が検討されるのか

薬物療法の効果が小さい「薬剤治療抵抗性てんかん」の人には手術が検討されます。「てんかん診療ガイドライン 2018」によると「薬剤治療抵抗性てんかん」と手術の適応については以下のように説明されています。

  • 適切に選択された2種類以上の抗てんかん薬で単独あるいは併用療法が行われても、発作が継続した一定期間抑制されないてんかんを薬剤治療抵抗性てんかんと分類し外科的治療適応を検討する

少し難しい言葉が並んだので説明します。

薬剤治療抵抗性てんかんは、2種類以上の治療薬を1剤または2剤以上使ったものの発作のコントロールが不十分だった場合のことです。またここでいう一定期間とは1年以上のことです。

つまり、「1年以上てんかん発作を抑える薬を複数使っても、発作のコントロールが不十分だった人」には手術が検討されます。ただし、子どもの場合はこの限りではなく、重症のてんかんの場合は早期に手術が検討されることがあります。

手術にはどんなものがあるのか:焦点切除術、脳梁離断術、迷走神経刺激療法

手術は「てんかん発作を治すための手術」と「てんかん発作を少なくしたり軽くしたりするための手術」の2つに分けられます。

それぞれの手術の内容は次の通りになります。

  • てんかん発作を治すための手術
    • 焦点切除術
  • てんかん発作を少なくしたり軽くしたりするための手術
    • 脳梁離断術
    • 迷走神経刺激療法

それぞれは違った手術なので特徴や内容について説明します。

■焦点切除術(しょうてんせつじょじゅつ)

てんかん発作のなかでも、部分発作は脳の一部分が異常な電気的な興奮をすることによって起こります。発作の原因となる部分を手術で切り取ると発作を抑えられることが期待できます。てんかん発作の原因となる部位を「てんかん焦点」と言うことから、この手術は「焦点切除術」と呼ばれます。

てんかん焦点が運動野(身体の運動を司る場所)や言語野(言語を司る場所)に近い場合には手術による悪影響が強く出る可能性があるので、他の治療法が検討されます。

■脳梁離断術(のうりょうりだんじゅつ)

頭の中には大脳が左右に1つずつあります。

左右の大脳は脳梁という神経の束によって真ん中でつながっており、左右の大脳間のやり取りは脳梁を通じて瞬時に行うことができます。てんかんが起こった場合、脳の異常な電気的興奮は脳梁があるがために全体に広がりやすくなってしまっています。左右の大脳ををつなぐ脳梁を離断すると左右の連絡が絶たれて、てんかん発作が起こっても脳全体には広がりにくくなり、症状を和らげられます。

脳梁離断術によっててんかん発作の症状緩和は期待できますが、一方で発語の減少や構音障害(発音に問題が生じる)などの後遺症が起こることがあります。このため、手術によって得られる利益と不利益の両者を鑑みて行うかどうかの判断が必要になります。お医者さんと治療についてしっかりと相談したうえで決めることが大切です。

■迷走神経刺激療法

迷走神経刺激療法は脳から出ている迷走神経に刺激を加え続ける方法です。てんかんを治す治療ではなく、迷走神経を刺激し続けることで、発作の回数を減らすことが期待できます。

効果が得られるメカニズムについては不明な点がまだ多いのですが、世界では多くの患者さんに治療として行なわれており効果が確認されています。

神経の刺激は機械を埋め込むことで行います。刺激を発生する装置を左胸の皮膚の下に埋め込み、装置につながった刺激を伝える針金を迷走神経の近くにおいて針金越しに刺激を伝えます。

手術をすれば薬をやめることができるのか

てんかんに対する手術を行ってもしばらくは薬を飲み続ける必要があります。

発作が落ち着いてくると薬の量を減らしていき、発作がない期間がしばらく続いた場合には薬をやめられることがあります。発作がない期間がどのくらい続けば薬をやめられるかの判断は、一人ひとりの身体の状態や病気の状態を鑑みて決められます。

5. 食事療法

ケトン食療法やアトキンス食療法は薬が効きにくい難治性のてんかん発作を少なくする可能性があるとされています。

ケトン食療法

ケトン食療法は子どもの難治性てんかんに対して行われます。ケトン食は身体の中でのケトン体の産生を促すよう考えられた食事のことです。身体の中でケトン体が多く作られて血液の中でも増加した状況では、てんかん発作が起こりにくくなると考えられています。

ケトン体は身体の中でグルコールが不足したときに使われるエネルギー源のことで、脂肪やタンパク質をもとにして作られます。食事中の炭水化物(グルコースのもと)を減らして脂質を増やすと、身体の中のケトン体が増加します。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準 2015」によると通常の食事では炭水化物は50から65%、タンパク質、脂質は20から30%の割合でエネルギーを摂取するように勧められています。一方で、ケトン食療法では炭水化物、タンパク質、脂質のエネルギー摂取の比重を等しくした食事を行います。

アトキンス食療法

アトキンス食療法は大人の難治性てんかんに対して行われます。

ケトン食療法と同じく炭水化物を制限する点は同じですが、タンパク質や脂質の制限は行いません。ケトン食療法は炭水化物、タンパク質、脂質から得るエネルギーを一定にしなければならないので、綿密な食事のメニューが必要です.一方で、アトキンス食療法では炭水化物の制限だけなので、ケトン食糧法よりは簡単に行うことができます。

てんかんの食事療法を行う際の注意点

ここで紹介した食事療法を行う場合は、食品ごとに含まれている栄養素などを把握しておかなければならないので、専門的な知識が必要になります。また、栄養バランスに偏りが生じて身体に悪影響を及ぼすことにも気を配らなければなりません。食事療法は、自分だけの考えや判断で行うのではなく、医師や管理栄養士に相談してから始めるようにしてください。

6. てんかんの治療は入院が必要なのか

てんかんの主な治療には薬物療法と手術があります。

手術には入院が必要ですが、発作が落ち着いた状態のてんかんの治療は外来で行うことができます。薬物療法を行う場合でも発作が起きた場合には数日から数週間程度の入院が必要になることがあります。入院しててんかん発作の原因を詳しく調べたりや発作を予防するための薬の量の調整を行います。

7. てんかんの治療にガイドラインはあるのか

主に治療に用いられる診療ガイドラインは、治療成績や安全性の向上などの目的のために作成されています。てんかんは「てんかん診療ガイドライン」に治療の方針が示されています。ガイドラインは数年に一回は改訂が行われており、時代の流れの変化にも対応できるようになっています。「てんかん診療ガイドライン」は2018年に改訂が行われました。

お医者さんはガイドラインを中心に治療を組み立てていますが、ガイドライン通りに治療することが正しいこととは限りません。ガイドラインの改訂前に新しい治療が浸透したり、不明だった治療の成績が明らかになって治療法が変わることもありえます。また、ガイドラインは患者さんの細かな身体の状態を鑑みて作られているものではないので、一人ひとりに最適な治療を行えるようにガイドラインはアレンジして使われています。

参考:てんかん診療ガイドライン2018

8. てんかんの人は何科を受診すればいいのか

てんかんの診療は、大人は神経内科や脳神経外科、精神科で行われ、子供は小児科で行われることが多いです。

てんかんにはさまざまな原因があります。

脳卒中や神経の病気が背景にある場合は、神経内科や脳神経外科が診療科として適していますし、うつ状態や幻覚・妄想などの症状をともなう場合には精神科による治療が必要なこともあります。また、てんかん治療の一つである手術は、主に脳神経外科によって行われます。手術が必要と判断された場合には、それまでかかっていた診療科がどの科であっても脳神経外科が主体になって治療が行われます。

てんかんはさまざまな症状が現れるので、多くの診療科が連携して治療を行います。そのため「どの診療科を受診すればいいのかかえってわからない」という声も聞きます。上に挙げたどの診療科を受診してもお医者さんは患者さんの状態をみて適切な診療科を勧めてくれます。大人であれば神経内科、精神科、脳神経外科を、子どもであれば小児科を受診してみてください。

参考:てんかん診療 ガイドライン2018