てんかん(癲癇)の症状について:部分発作、全般発作、発作の前兆、重積発作
てんかんの
目次
1. てんかんになると意識がなくなる? 意識があるのにけいれんすることもある? てんかんの種類について
脳は身体を動かす命令を出したり、目や耳などの感覚器から得た情報を集めて処理する役割を果たしています。脳からの命令や情報の処理には電気信号が使われています。
何らかの原因によって脳に異常な電気的な興奮が起こるのがてんかん発作です。てんかんの発作は「脳の一部分に異常な電気的な興奮が起こる部分発作」と「脳の大部分または全体に異常な電気的な興奮が起こる全般発作」の2つに分けることができます。部分発作と全般発作は次のようにさらに細かく分けることができます。
- 部分発作
- 単純発作
- 複雑部分発作
二次性 全般化発作
- 全般発作
- 強直間代発作
- 脱力発作
- 欠神発作
- ミオクロニー発作
耳に馴染みのない言葉ばかりだと思いますので、それぞれの
2. 部分発作
部分発作は「脳の一部分に異常な電気的な興奮が起こる発作」のことです。全般発作ではほとんどの場合意識がなくなるのに対して、部分発作では意識がなくならないこともあります。 部分発作はさらに次の3つに分けることができます。
- 単純部分発作
- 複雑部分発作
- 二次性全般化発作
それぞれの違いについて説明します。
単純部分発作
単純部分発作の一番の特徴は意識がなくならないことです。
意識があるので、患者さんは発作が起きたときのことをほとんど覚えています。単純部分発作では、「手がピクピク痙攣する」といった運動発作や「ピカピカするものが見える」「変な臭いを感じる」といった感覚発作が起こります。
複雑部分発作
意識が保たれている単純部分発作に対して、複雑部分発作では意識が徐々に遠のいてなくなります。具体的に言うと、発作が始まるとそれまで行っていた動作が止まります。そして、その次に「ボーッとしている」状態になり、最終的には一時的に意識を失います。
複雑部分発作では、自動性といって口をモグモグさせたり、手足をモゾモゾさせたりといった症状を伴うことも特徴の1つです。また、複雑部分発作の場合は意識がなくなることが多いので、患者さんは発作時の記憶がない、またはあいまいです。
二次性全般化発作
単純性部分発作または複雑性部分発作が始まり、その後、全身けいれんに発展してしまうものを二次性全般化発作といいます。二次性全般化発作の多くは、この後に説明する強直間代発作に移行することが多いです。
3. 全般発作
全般発作は「脳の大部分または全体に異常な電気的な興奮が起こる」発作です。部分発作は脳の一部の興奮が原因なので意識が保たれることもありますが、全般発作は意識がなくなることがほとんどです。全般発作は発作のタイプによってさらに4つのタイプに分かれます。
【全般発作のタイプ】
- 強直間代発作
- 脱力発作
- 欠神発作
- ミオクロニー発作
それぞれは全く違った特徴があるので次に詳しく説明します。
強直間代発作(きょうちょくかんたいほっさ)
強直性発作で始まりしだいに間代性発作に移行するもので、最も多い発作のタイプです。発作が起こると意識を失います。強直性発作とは身体に力が入った状態でけいれんが起こるものです。肘を曲げて足が伸びきった状態でけいれんすることが典型的な特徴です。
一方、間代性発作は手足が「ピクピク」というリズムで動くようにけいれんが起こるものです。筋肉の収縮と緩みが連続して起こっている様子がみられます。
脱力発作
脱力発作は突然筋肉に力が入らなくなる発作です。このため、発作が起こると倒れたり物を落としたりします。発作の時間は短く数秒間しか続かないので、周りの人は発作が起こったことに気づかないこともあります。
欠神発作
ボーッとする、会話や動きが途中で止まるといった症状がみられ、数十秒間、意識がなくなります。症状の現れ方によっては気づかれにくく、単に注意力がないなどと間違って捉えられることもあります。
ミオクロニー発作
ミオクロニー発作は子どものてんかんに多い発作です。首や手足を一瞬ピクッとさせるのが特徴です。筋肉が縮むことが原因で起こります。
4. てんかん発作に前兆はあるのか
てんかん発作が起きる前に前触れを感じる人がいます。この前触れは「前兆」と呼ばれることもあります。てんかん発作の前兆は一人ひとり違うものです。
主な前兆の例としては以下のものが知られています。
- 身体の症状
- 視覚の症状
- 聴覚の症状
それぞれについて説明します。
■身体の症状
身体の感覚に異常が現れることがあります。「感覚がなくなる」、「手足が動かしにくくなる」、「熱く感じたり冷たく感じたりする」などその症状はさまざまです。
■視覚の症状
視野に本来はないものが見えます。星型のものが見えたり点状のものが見えたりと、見えるものはさまざまです。
■聴覚の症状
変わった音が聞こえたり、いない人の声が聞こえたりします。
上で説明したもの以外にも「めまい」や「嗅覚の異常」を前兆として感じる人がいます。 また、同じ人でもいつも決まった前兆が現れるわけではなく、違った形で現れることもあれば、前兆なく発作が起こる場合もあります。
てんかん発作の前兆を感じた場合は、その旨を周りの人に伝えるようにしてください。発作が起きたら周りの人に対応をしてもらう必要があります。「発作が起こるかも」と一言周りに声をかけるだけで、周りの人は心づもりができてずいぶん対応がしやすくなります。
発作が起きたときの対策については「てんかんの人や家族が知っておきたいこと」で確認してください。
5. てんかんの重積状態とは
てんかん発作が止まらない状態を重積状態といい、危険な状態です。
国際てんかん学会(ILAE:the International League Against Epilepsy)によると重積状態の定義は次の通りになります。
- てんかん重積状態とは、発作停止機構の破綻、あるいは異常に遷延する発作を引き起こす機構が惹起された状態である。また発作型や持続時間によっては神経細胞死、神経細胞障害、神経ネットワーク変化を含む長期的な後遺症をもたらす状態
少し難しい内容なので噛み砕いて説明します。通常てんかん発作は1分から2分でとまることがほとんどです。しかし、発作をとめる脳の仕組みが機能しなくなったり、反対に発作を起こす仕組みが活性化されてしまうと、長時間にわたって発作が続いてしまいます。
この状態がてんかん重積状態です。
てんかん重積状態になると、通常のてんかん発作と異なり自然に収まることは期待できないので、医療機関で治療しなければなりません。
通常のてんかん発作とてんかん重積状態の違いは発作時間で見分けます。発作が5分以上続く場合はてんかん重積状態だと考えて、救急車を呼ぶなどしてなるべく早く医療機関につれていく必要があります。
てんかんの対応については「てんかんの人や家族が知っておきたいこと」で説明しているので参考にしてください。
6. てんかんに似た症状が現れる病気
てんかんの症状は多様で、他の病気でも似た症状が現れることがあります。適切な治療につなげるためにも見分けることが重要になります。
熱性けいれん
熱性けいれんは生後6ヶ月から5歳までの子どもが、発熱(38℃以上)にともなって意識を
失いけいれんが起こる病気です。熱性けいれんの症状はてんかんと似ている所はありますが違う病気です。熱性けいれんは脳の発達が未熟な子どもに熱のストレスが加わって起こる病気です。一方で、てんかんは発熱に関係なく発作が起こります。ですので、熱性けいれんと診断された場合には、てんかんのように発作を抑える薬を飲む必要はありません。
とはいえ、熱性けいれんとてんかんの区別は難しい場合もあります。けいれんが起きた場合にはすみやかに医療機関を受診して詳しく調べてもらってください。
熱性けいれんのより詳しい情報は「熱性けいれんの詳細情報ページ」を参考にしてください。
夜驚症
夜驚症は、睡眠中に突然強い恐怖が起こるために「悲鳴をあげる」「異常に興奮する」「泣く」といった症状が現れる病気です。子どもに多い病気で、睡眠を司る脳の機能が未熟なために起こると考えられています。発達にともなって自然と治るので過度に心配する必要はありません。
神経調節性失神
いわゆる「立ちくらみ」のことです。姿勢や環境の変化が起こると、神経が反応して血管を広げたり縮めたりします。この神経の働きがうまくいかないと身体に必要な血液が行き渡らなくなり、脳の血液が少なくなって立ちくらみが起きます。脳の血液が足りなくなると
神経調節性失神のより詳しい情報は「神経調整性失神の基礎情報ページ」を参考にしてください。
アダムスストークス症候群
アダムスストークス症候群は不整脈が原因で失神が起こる病気です。不整脈があると心臓から脳に十分な血液が送れなくなることあり失神が起こります。失神したときの様子が強直間代性発作というタイプのてんかん発作に似ています。失神以外の症状は頭痛やめまい・顔面蒼白などがあります。てんかんは脳の病気ですが、アダムスストークス症候群は心臓の病気なので、診察に加えて
アダムスストークス症候群のより詳しい情報は「アダムスストークス症候群の基礎情報ページ」を参考にしてください。
低血糖症
低血糖症とは血液中の
低血糖症のより詳しい情報は「低血糖の基礎情報ページ」を参考にしてください。