ふんりゅう
粉瘤
皮膚の下にできた袋状の構造物に皮膚の老廃物が溜まってこぶのようになったもの
8人の医師がチェック 225回の改訂 最終更新: 2023.06.18

粉瘤(アテローム)と他の病気との違いについて:ニキビとの見分け方など

粉瘤と見分けが必要な病気はいくつかあります。特に、ニキビ(尋常性挫創)は一見すると非常に似ています。しかし、ニキビと粉瘤は別物であり、症状も治療も異なります。そのため、粉瘤か他の病気かを見分ける必要があります。このページではニキビを中心に粉瘤とよく似た病気について説明します。

1. 粉瘤とニキビ(尋常性ざ瘡)の比較:見分け方・臭い・治療法

粉瘤(ふんりゅう、アテロームとも呼びます)は、表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)とも呼ばれる皮膚の病気です。身体のいろいろな場所にイボのようなしこりができることが特徴です。粉瘤はニキビと見た目が似ていますが、その性質は全く異なります。粉瘤では、放置した場合、感染を起こして痛みが強くなったり、異臭を放ったり化したりすることがあります。このような症状はニキビで見られることはほとんどありません。

ニキビは、皮脂や細菌が関係して、毛穴(毛包)が炎症を起こした状態です。毛穴に皮脂が詰まることで、中に皮脂や角質が溜まりやすくなり、そこに細菌が繁殖して炎症が起きます。女性の場合、ホルモンバランスの関係で、月経前にニキビが悪化することがよく知られています。

粉瘤とニキビの違いと見分け方について

■大きさとへそ(開口部)の存在
ニキビの大きさは数mmです。粉瘤は大きくなることがあり、数cm、10cmにもなることもあります。
表面を観察してみると、粉瘤の真ん中の辺りに開口部と呼ばれる小さな黒い点が見られます。これは「へそ(開口部)」と呼ばれるものです。一方で、ニキビにはこのような黒い点はありません。開口部は見分けにくい場合もありますが、粉瘤とニキビを見分ける手がかりのひとつになります。

■臭いについて

粉瘤とニキビの見分け方で、もうひとつポイントになるのは臭いです。粉瘤は臭いがする場合があります。粉瘤が大きくなったり、感染を起こしたりすると、臭いにおいを放つことが知られていてます。

粉瘤とニキビの治療法の違いについて

粉瘤とニキビの治療法の違いについて簡単に説明します。

粉瘤とニキビでは、治療法が異なります。

粉瘤は症状がなければ基本的に放置しても問題ありません。ただし、ある程度大きくなってくるようであれば、感染を起こす前に手術で取り切るほうがよいと考えられます。また、粉瘤を薬で治したいと考える人がいるかと思いますが、残念ながら、粉瘤を治す薬というものはありません。粉瘤にニキビ用の薬やスキンケア用品を使用しても効果はありません。

粉瘤の治療には手術が必要になります。手術といっても入院や麻酔などおおがかりなものではなく、皮膚科の外来で短い時間で受けられます。一方、ニキビは基本的には塗り薬や飲み薬などで対応することになります。

粉瘤の詳しい治療法については、「粉瘤の治療法とはどのようなもの?手術を中心に解説」をご覧ください。

2. ニキビ以外(尋常性ざ瘡)で粉瘤と間違われる可能性のある病気一覧:ガングリオン、脂肪腫など

粉瘤(アテローム)やニキビ以外にも、「皮膚のできもの」はたくさんあります。その中でも、ニキビほど多くはありませんが、粉瘤と見分ける必要がある病気を説明していきます。

外毛根鞘性嚢腫(のうしゅ)

皮膚の下にできて、ゆっくり大きくなっていく良性腫瘍です。粉瘤にとても良く似ています。外毛根鞘性のう腫は髪の毛の毛根から発生するため、ほとんどが頭皮にできるのが特徴です。治療法は手術で、粉瘤の手術ととても似ています。粉瘤よりも境界の壁が固くて破れにくいため、手術自体は簡単だと考えられています。

脂肪腫

皮膚のすぐ下にできる良性腫瘍として、よく見られる病気です。腫瘍と聞くと「がん」を連想するものですが、良性腫瘍ですので、命を脅かすことはまずありません。

脂肪種とは脂肪組織が異常に増殖した状態です。身体のいろいろな部位にできますが、背中、肩、首に多いことが特徴です。痛みなどの自覚症状はなく、皮膚の下の柔らかいしこりとして触れることができます。しこりがつまめるという点でも粉瘤と似ています。特に治療する必要はありませんが、見た目が気になる場合には手術によって取り除きます。脂肪腫については「こちらのページ」で詳しく説明しているので参考にしてください。

ガングリオン

手や手首の関節にできやすいできものです。嚢胞(のうほう)の中に液体が溜まっています。ガングリオン自体は良性ですが、痛みや手に力を入れにくいなどの症状を引き起こすことがあるため、症状が強ければ手術を検討します。ガングリオンについては「こちらのページ」で詳しく説明しているので参考にしてください。

毛母腫

石灰化上皮腫(せっかいかじょうひしゅ)とも呼ばれる病気です。皮膚の下に石のように硬いしこりを触れるのが特徴です。特に症状がないことが多く、ゆっくりと大きくなります。自然に治ることはありませんが、良性の腫瘍なので特に治療する必要もありません。ただし、悪性の腫瘍と判別できないこともあるため、その場合は手術で取り除いて詳しく調べます。

耳前瘻孔(じぜんろうこう)

耳たぶにできる耳前孔が粉瘤と間違えられることがあります。耳前瘻孔では生まれつき、耳の周囲に小さな穴が開いています。耳前瘻孔も粉瘤と同じように、細菌が入り込んで感染して、炎症をおこすことがあります。局所麻酔の手術で摘出できます。