かんぞうがん
肝臓がん
肝臓にできた悪性腫瘍のこと
1人の医師がチェック 125回の改訂 最終更新: 2026.02.05

肝臓がん(肝細胞がん)でよくある疑問:ステージ4とは? 末期とは? モルヒネの使用は? など

肝臓がんは肝硬変を背景として発生することが多いです。肝硬変とは肝臓が固くなり機能が低下している状態です。肝臓がんの末期の症状は肝硬変の症状と重なる部分が多くあります。

1. ステージ4は「末期がん」?

ステージ4は肝臓がんのステージ分類では最も進行した段階にあたります。しかし、ステージ4だからといって「末期がん」とは限りません。

実は、「末期がん」には厳密な定義はありません。ステージ4と診断されると「末期がん」という言葉を思い浮かべてしまうかもしれませんが、それは正確とは言えません。

肝臓がんの場合、ステージ4には4Aと4Bの2つの状態がふくまれます。

  • ステージ4A:肝臓でのがんの状態が以下の条件のいずれか一つでも満たすもの
    • 腫瘍が2cmより大きく多発しており脈管侵襲もある
    • 所属リンパ節転移がある
  • ステージ4B:肝臓から離れた場所に転移がある

このように一口にステージ4と言っても幅がありますし、個々人の状態によって体調も異なります。

ステージ4は手術できない?

ステージ4でも残された治療は多くあります。肝臓の機能が手術に耐えられると判断された場合はステージ4でも手術の対象になることがあります。ステージ4と診断されてもその状態はさまざまです。

とはいえ、ステージ4で手術が可能な人はそう多くはいません。「第22回 全国原発性肝癌追跡調査報告」によると、肝臓がんの手術を受けた人の中でステージ4Aだった人は6.7%、ステージ4Bだった人は0.9%です。わずかですが手術をすることができる人もいます。

末期がんの状態は?

では「末期がん」はどんな状態でしょうか。

最初に述べましたが、末期がんには定義がありません。一般的なイメージをふまえて考えてみることにします。末期というと余命がかなり限られていることが、明らかな状態だと考えられます。そこで、ここで言う「末期」は抗がん剤による治療も行えない場合、もしくは抗がん剤などの治療が効果を失っている状態で、日常生活をベッド上で過ごすような状況を指すことにします。

肝臓がんの末期は、すでにいくつかの臓器に転移があったり肝臓の機能がかなり低下している段階です。肝臓がんは肺、骨などに転移し、体に影響を及ぼします。このような状況では、以下のような症状が目立つ悪液質(カヘキシア)と呼ばれる状態が引き起こされます。

  • 常に倦怠感がある
  • 食欲がなくなり、食べたとしても体重が減っていく
  • 身体のむくみがひどくなる
  • 意識がうとうとする

悪液質は身体の栄養ががんに奪われ、点滴で栄養を補給しても身体がうまく利用できない状態です。気持ちの面でも、思うようにならない身体に対して不安が強くなり、苦痛が増強します。

末期の症状は抗がん剤などでなくすことができませんので、緩和医療で症状を和らげることが重要です。また不安を少しでも取り除くために、できるだけ過ごしやすい環境を作ることも大事です。

参照:第22回 全国原発性肝癌追跡調査報告

2. 腹水が出たら末期?

腹水の程度にもよりますが、肝臓がんで腹水がでるといわゆる末期に近い状態と考えられています。腹水は腹腔(ふくくう)に溜まった水分です。肝臓がんは肝硬変の状態から発生することが多いです。肝硬変は肝臓の機能がかなり低下している状態です。肝硬変の状態が進行すると腹水が溜まりやすくなります。

腹水が溜まるとお腹が張った状態になるので、少し動くのにもかなり苦しい状態になります。胃や腸が圧迫されて食欲もなくなり、栄養状態が悪化していきます。栄養状態が悪化すると体の中からアルブミンというたんぱく質の一種が減っていきます。アルブミンは血管内には水分を保つ働きがあります。アルブミンが減ると血管内の水分がお腹の中のスペースに出ていきます。腹水はこの悪循環で溜まり続けていきます。

腹水の症状は利尿剤で緩和されることもありますが、効果には限界があります。腹水による症状が強くなればお腹に針を刺すなどして腹水を抜くことも考慮されますが、症状が緩和されるのは一時的です。腹水が目立つ段階では残された時間は多いとは言えません。

腹部が張って苦痛が増すときなどは、オピオイド鎮痛薬などを使用すると痛みが軽減することがあります。楽な体勢を見つけたり、無理せずに日常の介助を求めたりすることも大事です。

3. 黄疸が出たら末期?

黄疸は皮膚や眼球結膜(白眼の部分)が黄色く染まる状態のことです。原因は、ビリルビンが血液内で多くなることです。見た目で黄疸と診断されるのは血液中のビリルビンがある程度上昇してからになります。初期の黄疸は、尿の色が黄色く見えたりすることがあります。黄疸では体が黄色くなる以外にも症状があります。

  • 皮膚や眼球結膜が黄色くなる
  • 体がだるく感じる(全身倦怠感、疲労感)
  • 皮膚がかゆくなる
  • 風邪のような症状
  • 微熱
  • 尿の色が濃くなる

肝臓がんが進行して肝不全になった状態の黄疸を改善するのは難しいです。肝臓の機能を保護する薬などを使って治療しますが、効果は限られています。

4. 腰痛があったら肝臓がん?

がんで腰痛が症状としてでるのは骨に転移をした場合などです。肝臓がんは骨に転移をしやすいかというとそうではありません。肝臓がんはかなり進行するまでは遠隔転移(肝臓以外の場所への転移)をしにくいことでも知られています。つまり骨転移を原因とする腰痛で肝臓がんが見つかることは多くはないと考えられます。

腰痛の原因となる病気の例として以下のものが考えられます。

  • 整形外科の病気
  • 泌尿器科の病気
    • 水腎症(すいじんしょう)
    • 尿管結石(にょうかんけっせき)
    • 腎盂腎炎(じんうじんえん)
  • 消化器内科の病気
    • 膵炎(すいえん)
    • 胆嚢炎(たんのうえん)
  • 循環器内科の病気

すでに肝臓がんと診断されていて、腰痛が出てきた場合には骨転移の可能性もあるので、主治医に相談してみることが大事です。

肝臓がん以外にも腰痛の原因にはさまざまな可能性があります。原因を探ることで早期に手を打つことができたり、逆に心配ないことがわかって安心できたりもします。しっかりとした原因追求の姿勢が重要です。

5. 肝臓が悪いと血尿が出る?

血尿は尿に血が交ざることです。肝臓が悪くなっても血尿が出ることは多くはありません。血尿の原因は膀胱や腎臓の病気が多くを占めます。

肝臓の機能が低下することで血尿がでる場面を考えてみたいと思います。肝臓の機能が低下すると血液を固めるプロトロンビンなどを十分に作れなくなります。したがって出血した場合、血がとまりにくくなります。肝臓の機能が低下している原因が肝硬変の場合は血小板という血液を固める細胞も少なくなります。この状態で膀胱や腎臓に衝撃などが加わって出血がおきれば血尿がでることはありえるでしょう。

血尿ではない?

もうひとつの可能性としては、尿に血液と見間違うような色が付いているのを血尿だと思うこともありうることだと思います。肝臓の機能が低下して尿中のビリルビンが増えるとやや赤みがかってみえることもあるので、血尿だと思ってもおかしくはありません。肝臓が悪いと言われていて赤っぽい尿がでるときは、主治医または泌尿器科を受診して相談してみてください。血尿かどうかは尿検査ではっきりわかり、血尿だった場合は原因を調べてくれます。

血尿の原因は何がある?

肝臓の機能が低下していると言われていない状態で血尿が出た場合は、まず泌尿器科を受診して血尿の原因を調べることをお勧めします。血尿には以下のような原因が考えられます。

血尿をきっかけにして見つかる病気は多くあります。自己判断をせずに速やかに医療機関を受診することが大事です。

6. 肝臓がんは破裂する?

肝臓がんは破裂することがあります。肝臓がんは血管が多いので破裂するとお腹の中で大量出血をしてしまい命に危険が及びます。肝臓がんが破裂することは多いことではありません。「第20回 全国原発性肝癌追調査報告」によると肝臓がんと診断された人のうち腹腔内破裂していた人は0.9%、肝臓がんにより死亡した人のうち破裂が死因となった人は2.6%でした。肝臓がんが破裂した場合は以下のような症状がでることがあります。

  • 腹痛 
  • 嘔気・嘔吐 
  • 冷や汗
  • 頻脈
  • 意識消失

肝臓がんの破裂はその程度により自然に収まることもありますが、出血量が多ければ緊急で治療が必要になることがあります。カテーテル治療といって、出血の原因となっている血管にカテーテルを介して詰め物をして血管を塞ぎます。肝臓がんは小さなものでも出血します。肝臓がんと診断された人で、急な腹痛などが起きたときには肝臓がんが破裂した可能性もありますので、速やかに医療機関を受診してください。

7. 肝臓がんの末期の余命は?

まず始めに、余命の告知は必ずしも正確ではないことに気を付けてください。

余命を告知されたときに考えてほしいことは、月並な言い方になりますが、1日1日を大事に生きることです。

がんに明確な末期という定義はありませんが、肝臓がんでは肝機能が低下して抗がん剤などの治療が行えなくなった状態がそれに近いと思います。末期と考えられる状況では何をするべきなのかを考えてみたいと思います。

まずはご自分の病気の状態をよく知ることが大事です。これは簡単なことではないかもしれません。臨床医としての経験からも、肝臓がんで積極的な治療ができない状況を冷静に受け止めることの難しさは実感します。少しずつでもいいので、これからどのように過ごせばいいのか主治医に聞いて見てください。同じことを繰り返し尋ねることになっても遠慮する必要はありません。あらかじめ質問を紙に書いておくと答えやすいかもしれません。

主治医からご自分の状況についてしっかりと話を聞き、家族と情報を共有し気持ちをしっかりと整えることをお勧めします。がんに向き合うことになっても一人ではありません。家族、医療者とあなたを支えてくれる人は大勢います。怖さを乗り越えるためにまず知ることから始めてみるのがいいと思います。

8. 肝臓がんの末期の治療はどうする?

がんの末期には明確な定義はありません。ここでは肝臓がんに対して積極的な治療方法ができなくなり、症状を抑える治療が主体になった時期とします。

肝臓がんの末期の治療は低下した肝臓の機能に気を配りながらすることが多いです。肝臓がんの多くは肝硬変という状態から発生します。そのため、肝臓がんが大きくなって出てくる症状と、肝臓の機能が落ちることで現れる症状の両方を治療していく必要があります。

肝臓がんが大きくなった時の治療

肝臓の表面には被膜という膜があります。肝臓がんが肝臓表面から飛び出すほど大きくなると、被膜が引き伸ばされて痛みがでます。痛みに対しては鎮痛剤などを使って、症状を和らげます。

肝臓の機能が低下した時の治療

一度低下した肝臓の機能を回復することは困難です。そのため、肝臓の機能をできるだけ落とさないような治療をします。治療では肝庇護剤(かんひござい)という薬を使うことがあります。

肝臓の機能が低下すると腹水という症状もでます。腹水とはお腹に水分が溜まることです。腹水を減らすには尿の量を増やす薬(利尿剤)などを使ったりします。ただし、利尿剤の効果は限られているので腹水の量が多いときにはお腹に針を刺して腹水を抜くことがあります。

9. モルヒネは使っても大丈夫?

肝臓がんの治療中に痛みがでることがあります。このためにモルヒネなどのオピオイド鎮痛薬を使用して痛みを抑えることがあります。しかし、肝臓がんの患者さんに対してどのように鎮痛薬を使用するとよいかの統一した見解は今のところありません。また、モルヒネは肝臓の機能が低下している状況で使うべきではない(禁忌)ともされているので、肝臓の機能も考慮しながら治療をしていきます。

モルヒネに似たほかのオピオイド鎮痛薬(オキシコドン、フェンタニル)が多く使われることもあります。

10. オピオイド以外の痛み止めとは?

がんの痛みを抑える治療で、まずNSAIDsやアセトアミノフェンといった鎮痛薬が検討されることがあります。ただし、これらの薬は鎮痛効果に限界があるので、中等度以上の強さの痛みにはオピオイド鎮痛薬の使用が推奨されています。

11. オピオイドを使う状況は?

がんを原因とした痛みにはオピオイドに効果があります。

肝臓がんでオピオイドを使うのは骨転移によって起こる痛みや、肝臓がんが大きくなったときの痛みがあらわれた時です。

肝臓がんが全身に転移している場合にはオピオイドを使って痛みをコントロールする必要があります。多くはありませんが、肝臓がんは進行すると骨に転移をすることがあります。骨に転移をすると痛みで生活が不自由になったりもします。

また、肝臓がんが大きくなると肝臓を包んでいる被膜が引き伸ばされて痛みの原因になります。

12. オピオイドで注意が必要な点は?

オピオイドは肝臓で代謝され、その後排出されます。そのため、肝臓の機能が低下した状態ではオピオイドが体内に蓄積しやすく、血液中の濃度が想定より高くなってしまうことが有ります。

また、オピオイドに共通した副作用である便秘が起きると、肝臓の機能低下を原因とした意識の障害などが起きやすくなることがあります。この意識の障害を「肝性脳症」といいます。

これらのことから、痛みを抑える効果と副作用とのバランスを見ながら、慎重にオピオイドの量を決めて使っていくことが大事です。

参照:Palliative Care Research.2014;9:101-106

13. 肝臓がんの末期の食事はどうする?

がんの末期には明確な定義はありません。ここでは肝臓がんに対して積極的な治療方法ができなくなり、症状を抑える治療(対症療法)が主体になった時期とします。このような時期の食事では、肝臓の機能が落ちていることに注意をしながら、がんによって消耗される体力を補うことが望まれます。

肝臓の機能が落ちると腹水や足のむくみがあらわれます。これらの症状の緩和には水分と塩分の摂取を控えると良いと考えられています。一方、がん患者さんは末期になると食欲は落ちがちなので、のどごしの良いものや、さっぱりしたものが求められます。この場合、どうしても水分の助けが必要になります。ですから、栄養のバランスと症状とのバランスをとることが大事です。口がかわいた場合には、水を飲むのではなく、うがいや口の中をスポンジで湿らせる程度で済ませるなどの工夫で、体内に入る水分を減らすことができるかもしれません。

また、肝臓の機能が低下すると、血液中のアンモニア濃度が上昇して肝性脳症を起こすことがあります。アンモニアはタンパク質の摂取量が多いと多くなりますので、肝性脳症が起きた場合はタンパク質の摂取量を見直すと良いかもしれません。便秘肝性脳症の発生リスクを高めますので、便秘がある場合にはまず便秘の解消を目指し、その後にタンパク質の摂取量を決めるとよいと思います。他に、分岐鎖アミノ酸の摂取も、血液中のアンモニア濃度の上昇を抑える効果が期待できます。