かんぞうがん
肝臓がん
肝臓にできた悪性腫瘍のこと
1人の医師がチェック 71回の改訂 最終更新: 2022.10.17

肝臓がんの治療:手術、焼灼療法、塞栓療法などの選び方

肝臓がんの治療は手術、焼灼療法、塞栓療法、抗がん剤、肝移植などがあります。肝臓がんの治療を選ぶには肝臓の機能、がんの個数、大きさ、ステージを参考にして決めます。肝臓がんは再発が多いので再発時の治療も大事です。 

肝臓にできるがんには種類があります。まず大きくは肝臓から発生したものか、他の臓器にできたがんが肝臓に転移したものかで分かれます。肝臓から発生したもの(原発性肝がん)はさらに、肝細胞がん、肝内胆管がんなどに分かれます。

肝臓から発生したがんを原発性肝がんといいます。原発性肝がんにはいくつかの種類がありますが、ほとんどは2種類のいずれかです。肝細胞から発生する肝細胞がん、肝臓の中を走行する胆管上皮から発生する肝内胆管がんの2つで99%以上を占めます。「全国原発性肝癌追跡報告調査」の最新版によると原発性肝がんのうち肝細胞がんは93.3%、肝内胆管がんは4.8%でした。このページでは肝臓がん=肝細胞がんとして解説しています。肝内胆管がんについては「肝内胆管がん(胆管細胞がん)とは?」を参考にしてください。

肝臓は他の臓器でできたがんが転移しやすい臓器でもあります。どこに発生したがんでも肝臓に転移することはあります。肝臓に転移したがんを転移性肝がんということがあります。

肝臓には肝細胞という細胞があります。肝細胞はたんぱく質の合成、炭水化物、脂質の代謝、解毒作用など様々な役割を担っています。肝細胞がんは肝細胞ががん化したものです。肝細胞がんの主な原因は肝炎ウィルスの持続感染による慢性肝炎や肝硬変です。

肝臓には胆管という胆汁が流れる管が張り巡らされています。胆汁が流れる管を胆道ということもあります。肝内胆管がんは胆管の上皮から発生するがんです。肝細胞ががん化した肝細胞がんとはがん化する細胞が異なります。肝内胆管がん胆道がんの一部に分類されます。

肝内胆管がんの手術は肝細胞がんと同じく肝臓の一部をがんとともに切除します。一方で抗がん剤治療は肝細胞がんと違って胆道がんに準じた治療薬などを選択します。

肝臓から発生したがんを原発性肝がんといいます。原発性肝がんのうち肝細胞から発生する肝細胞がん、肝臓の中を走行する胆管上皮から発生する肝内胆管がんの2つが99%以上を占めます。「全国原発性肝癌追跡報告調査」の最新版によると原発性肝がんのうち肝細胞がんは93.3%、肝内胆管がんは4.8%でした。

その他の原発性肝がんは以下のものがあります。

  • 胆管嚢胞(たんかんのうほうせんがん)

  • 混合型肝癌

  • 肝芽腫(かんがしゅ)

  • 肉腫

  • 未分化癌

いずれも原発性肝がん全体に占める割合は1%以下とかなり珍しい種類です。

他の臓器で発生したがんが肝臓に転移したものを転移性肝がんといいます。転移性肝がんの原因となるもので多いのは大腸がんです。多くのがんでは肝臓に転移をすると積極的に手術をすることはありませんが、大腸がんでは転移性肝がんを手術で切除することで生存期間が延びることが知られています。

大腸がんの肝転移については「大腸がんの肝転移とは?」で診断から治療まで解説していますので参考にしてください。

肝臓がんの治療は以下のものがあります。

  • 肝臓がんの治療

    • 手術

      • 肝切除

      • 肝移植

    • 焼灼療法(しょうしゃくりょうほう)

      • RFA(ラジオ波焼灼療法)

    • 塞栓療法

      • TAE(肝動脈塞栓療法)

      • TACE(肝動脈化学塞栓療法)

    • 抗がん剤治療

      • 分子標的薬(ソラフェニブ)

      • 肝動注化学療法

肝臓がんの治療では肝臓の機能を保ちつつ、肝臓がんに対して治療をしなければなりません。2つのバランスをとるために今日まで多くの治療法が考案されて改良を重ねられています。

肝臓がんの治療方針を決める際、重要になるのが肝機能の程度です。

肝臓は生きていくうえでなくてはならない臓器です。肝臓の機能が失われた場合、それを補う治療は現在のところありません。そのため、肝臓の機能が低下している場合には、たとえがんが小さくても治療しないほうが良いと判断されることがあります。肝臓がんの治療は肝臓に負担をかけます。治療した結果、肝臓の機能が損なわれて命に危険をおよぼすことは避けなければなりません。

治療方針の決定にはそのほかにも、転移の有無、リンパ節への侵入の有無、腫瘍の数や大きさ、といったことが考慮されます。

【肝臓がん(肝細胞がん)の治療方針を決める要素】

  • 肝機能の程度:Child-Pugh(チャイルドピュー)分類にてA, B, Cの3段階で評価
  • 肝臓以外の臓器に転移があるかどうか:肝外転移の有無
  • がん細胞がリンパ節や血管に入り込んでいるかどうか:脈管侵襲の有無
  • 腫瘍の数:1-3個と、4個以上で区別される
  • 腫瘍の大きさ:3cm以内か、3cmより大きいかで区別される

さらに、患者さんの年齢や持病、日常生活の活動度など全身状態を総合的に判断して、手術に耐えられるかどうかを担当医が判断します。

参考文献:日本肝臓学会, 肝がん診療ガイドライン2021年版, 金原出版, 2021

肝臓の機能を評価する方法としては肝障害度とChild-Pugh分類の2つがあります。どちらも肝臓の機能を見ていますが、少し調べる項目が異なります。手術が適しているかを判断する場合には肝障害度を用い、焼灼療法、塞栓療法などが適しているかを判断する場合にはChild-Pugh分類を用いることが多いです。肝臓の機能を調べて治療方針を定めます。

肝障害度は肝臓の機能を検査や症状から3つに分類したものです。肝障害度は以下の5つの項目が用いられます。

  • 腹水 

  • 血清ビリルビン 

  • 血清アルブミン 

  • ICG15 

  • プロトロンビン活性値

腹水とはお腹の中の腹腔(ふくくう)という場所にたまった水のことです。肝臓の機能が悪くなくても少量の腹水はありますが、肝臓の機能が低下すると腹水が多くなりお腹が張った感じなどの症状がでます。腹水は利尿剤などの薬で良くなることがあります。

ビリルビンは赤血球が壊れた後にできる物質です。ビリルビンは肝臓で処理され体の外に出されます。肝臓の機能が低下している場合にはビリルビンが処理されずに体の中に貯まります。

アルブミンはたんぱく質の一種です。アルブミンは肝臓でつくられます。肝臓の機能が低下するとアルブミンをつくる勢いがなくなり体の中のアルブミンが低い値となります。

ICG(アイシージー)はIndocyanine green(インドシアニングリーン)の略です。ICGが注射で体の中に入ると肝臓で代謝されます。正常な肝臓の場合は15分程度でICGは10%以下になります。肝臓の機能が低下している場合はICGを代謝するために時間がかかります。ICGが代謝される時間で肝臓の機能を推測することができます。ICG15の名称はICGを投与してから15分後に検査をすることを由来としています。

プロトロンビンは血液を固める役割をもつ物質です。プロトロンビンは肝臓でつくられるので肝臓の機能が低下するとプロトロンビンの働き(活性値)が低下します。プロトロンビンは他にも表現の仕方があります。プロトロンビン時間(PT)やPT-INRとして検査結果が表示されることもあります。

分類に使われる基準値を表に示します。

 

肝障害度A

肝障害度B

肝障害度C

腹水

なし

治療効果あり

治療効果少ない

血清ビリルビン

(mg/dl)

2.0未満

2.0-3.0

3.0超

血清アルブミン

(g/dl)

3.5超

3.0-3.5

3.0未満

ICG15(%)

15未満

15-40

40超

プロトロンビン活性値(%)

80超

50-80

50未満

参考:原発性肝癌取扱規約 第6版

肝障害度の決め方は5項目について評価をして、2項目以上が該当する分類を肝障害の分類とします。2項目以上該当するものが2つの場合は肝障害度が高い方を採用します。

例えば肝障害度Aに該当するものが4項目、肝障害度Bに該当するものが1項目に該当した場合には肝障害度Aになります。肝障害度Bが3項目、肝障害度Cが2項目の場合は肝障害度はCになります。

Child-Pugh分類は肝臓の機能を推定する方法です。Child-Pugh分類は、以下の5つの項目で決まります。

  • 血清ビリルビン 

  • 血清アルブミン 

  • 腹水 

  • 精神神経症状(昏睡度) 

  • プロトロンビン活性(%)

ビリルビンは赤血球が壊れた後にできる物質です。ビリルビンは肝臓で処理され体の外に出されます。肝臓の機能が低下している場合にはビリルビンが体の中に溜まります。

アルブミンはたんぱく質の一種です。アルブミンは肝臓でつくられます。肝臓の機能が低下するとアルブミンをつくる勢いがなくなり体の中のアルブミンが低い値となります。

腹水はお腹の中の腹腔というスペースに水が貯まることです。腹水はアルブミンが低くなると溜まります。

精神神経症状はアンモニアによって引き起こされます。アンモニアは常に体内で発生しています。通常はアンモニアは肝臓で処理されて尿として体の外にだされます。アンモニアが体の中に溜まると異常な行動をとるようになったり、意識状態が低下したりします。

プロトロンビンは血液を固める役割をもっています。プロトロンビンは肝臓でつくられるので肝臓の機能が低下するとプロトロンビンが低下します。

以下の表は細かな数値になるので次に進んでも理解の差し支えにはなりません。

  1点 2点 3点
血清ビリルビン(mg/dl) 2.0未満 2.0-3.0 3.0超え

血清アルブミン(g/dl)
3.5超 2.8-3.5 2.8 未満
腹水 ない 少量 中等量
精神神経症状(昏睡度) ない 軽度 重症
プロトロンビン活性値(%) 70超 40−70 40未満
  • A:5-6点 

  • B:7-9点 

  • C:10-15点

以上の5項目を評価して合計点数によって分類します。例えば7点だった場合Child-Pugh Bとなります。ソラフェニブが使える肝機能の状態はChild-Pugh Aと考えられています。

肝臓がんの手術にはいくつか方法があります。肝臓を切り取る範囲で手術の方法は分けられます。

  • 部分切除 
  • 亜区域切除 
  • 区域切除 
  • 葉切除 

肝臓がんの手術には他に肝移植もあります。肝移植は特殊なので別に説明します。

肝臓がんで手術をしない場合の例として以下が考えられます。

  • 肝臓がんがリンパ節や他の臓器に転移している
  • 肝臓の機能が良くない
  • 肝臓がんの個数が多い

原則として以上の場合は積極的に手術を勧められません。もちろん例外はあります。

肝臓がんが肝臓の外に転移している場合は手術の効果は少ないと考えられます。

肝臓の外に転移が見つかっているなら、すでに全身に目には見えない小さな転移が起きている可能性が高いと考えます。この場合は手術で肝臓にあるがんを取り除いても全身に散らばったがんを抑える効果はないと考えられます。

そこで転移のある場合は抗がん剤による治療が検討されます。抗がん剤では薬の効果が全身に行き届くと考えられます。肝臓の機能がよい場合にソラフェニブという薬が選ばれます。

肝臓の手術においては肝臓の機能が重要です。

肝臓がんの手術ができるかは肝障害度で判断します。肝障害度はA、B、Cの3段階で評価されます。手術は肝障害度がAの人が望ましく、Bでも手術が難しいと判断される場合があります。肝臓障害度Cでは手術は難しいと判断されるケースが多いです。

肝臓の手術ではがんとともに正常な肝臓を周りに付けて切除します。がんを取り残さないようにするためです。手術後には肝臓が少なくなります。肝臓が少なくなると肝臓の機能が低下します。手術したものの肝臓が機能しなければ命に影響が及びます。

このため手術の前の肝臓の機能と手術によって失う肝臓の大きさから手術後の肝臓の機能を推定します。推定の結果、肝臓の機能が十分ではないと判断された場合には手術をすることができません。

肝臓がんは多発したり、肝臓の中に転移することも知られています。肝臓がんの個数があまりにも多い時は手術できないと判断されることがあります。肝臓がんの手術に向いているのは肝臓がんの個数が3個以内の場合とされています。4個以上の場合は肝動脈化学塞栓療法(TACE)による治療が検討されます。

肝臓がんはがんの部分だけを焼き切る焼灼療法(しょうしゃくりょうほう)でもがんを根治することが可能です。根治とはすべてのがんを死滅させることです。

焼灼療法には大きく2つの方法があります。現在は焼灼にラジオ波を使うラジオ波焼灼療法(RFA)が広く普及しています。もうひとつの焼灼療法はマイクロ波凝固壊死療法です。それぞれの使用された割合は、「第19回 全国原発性肝癌追跡調査報告」によるとRFAが81.5%で大部分を占め、マイクロ波凝固療法は7.9%でした。焼灼療法が適していると考えられるのは、肝障害度がAまたはBで肝臓がんの大きさが3cm以内、かつ数が3個以内の場合です。しかし現在はより大きながんや多くの個数を治療することも多くなっています。

RFAは針を肝臓がんに直接刺してラジオ波(電流)を流してその熱でがん細胞を熱凝固させます。熱凝固によりがん細胞は死滅します。現在行われている焼灼療法の約80%以上がRFAです。

肝動脈塞栓療法(TAE)は肝動脈を塞いでがん細胞への血流を絶つ治療法です。がん細胞が生存するには血流が必要です。肝臓がんは肝動脈から栄養を得ています。栄養源を絶つことでがんが小さくなったりする効果がでます。

動脈を塞ぐことで正常な細胞に影響がでることが心配されます。しかし肝臓のがん以外の正常な部分は肝動脈以外の門脈という血管から栄養を得ています。つまり肝動脈を塞いでもがんが受ける影響に比べて影響は小さいです。

肝動脈塞栓術はカテーテルを使った治療です。カテーテルとは細い管です。血管の中にカテーテルを挿入して肝動脈まで送り込み操作します。多くの場合は右足の付け根に針を刺してそこから細い針金(ガイドワイヤー)とカテーテルを血管の中に入れます。ガイドワイヤーを目的の血管に挿入し、それに沿わせる形でカテーテルをどんどんと進めていきます。カテーテルから造影剤を注入するとがんが映ります。血管造影を繰り返していきがんに栄養を与えている血管を特定します。その血管に塞栓物質(詰め物)をカテーテルから送り込み血管を塞ぎます。

肝動脈塞栓術(TAE)は、肝動脈を塞ぐ治療です。TAEは肝臓がんに流れてくる血流を遮断することによって治療効果を発揮します。TACEでは、TAEをする前に抗がん剤と造影剤を混ぜた薬品をカテーテルを使って肝臓がんに送り込みます。抗がん剤を注ぎ込んだ後に塞栓物質を送り込み、がんに行く血流を絶ちます。TACEはTAEに加えて抗がん剤を使うことで効果が高まることが期待できます。

肝臓がんに対して効果のある抗がん剤のひとつに、分子標的薬に分類されるソラフェニブがあります。ソラフェニブは飲み薬で全身に行き渡ります。その他ではエピルビシンやシスプラチンなどの抗がん剤をカテーテル越しに直接肝動脈に流し込む肝動脈注入化学療法(肝動注療法)も使われます。

肝臓がんに対して効果のある抗がん剤は分子標的薬に分類されるソラフェニブです。ソラフェニブは、がん細胞の増殖やがんに栄養を送る血管が作られるのを抑えて、がんの成長を抑えます。ソラフェニブが適している患者さんの例を挙げます。

  • 門脈などの太い血管にがんが入り込んでいる

  • 肝臓の外に転移がある

基本的な適応は、がんが門脈という血管に入り込み血管の流れを妨げている場合、リンパ節や他の臓器に転移している場合、他の治療が適していない場合などです。

肝臓には体にとって有害な物質を解毒する機能があります。肝臓の機能は薬剤の代謝にも関わります。薬によっては、肝臓の機能が落ちている人には毒性が強く出てしまう恐れがあります。

ソラフェニブも重度の肝機能障害がある人には注意が必要とされます。背景として、肝臓がんは肝硬変によって発生する場合があります。肝硬変は肝臓が肝炎ウイルスやアルコールなどで障害されて機能が落ちた状態です。肝硬変が元で肝臓がんができた人は、ソラフェニブの使用を検討する際には肝機能に十分注意するべきと考えられます。

肝動脈注入化学療法とは抗がん剤を直接肝動脈に注入する治療法です。似た治療に肝動脈化学塞栓療法(TACE)があります。肝動脈注入化学療法は、肝動脈にカテーテルという長い管を挿入してカテーテルを抗がん剤を投与します。

肝移植は肝臓を全て取り除いて代わりに他の人の肝臓を移植することです。

肝移植は、肝臓の機能が低下していて肝切除などの治療ができない人にも高い根治性が期待できる治療法です。治療後は免疫抑制薬などの内服薬での治療が必要になります。

肝移植には生きた人から肝臓を分けてもらう生体肝移植のほかに、脳死判定された人から肝臓をもらう脳死肝移植があります。日本では生体肝移植がほとんどを占めています。「肝移植症例登録報告」によると2015年は生体肝移植を受けた人は391人であったのに対して脳死肝移植を受けた人は57人でした。肝移植を受けた人のうち87.2%が生体肝移植で治療されています。

移植のためには肝臓を提供する人(ドナー)が必要です。生体肝移植ではドナーの安全が前提となります。そのためにドナーの肝臓の機能も手術の前に慎重に調べます。肝臓は再生能力がある臓器です。健康なドナーであれば移植のために肝臓の一部を提供してもその後肝臓は再生して生活には大きな影響がないと考えられています。

肝臓がんに対して肝移植が適しているかどうかを判断するためにはミラノ基準という基準を使うことが多いです。ミラノ基準は以下のすべてを満たす場合に肝移植が適していると判定します。

  • 腫瘍は単発で5cm以下もしくは3個以下ですべて3cm以下

  • 血管浸潤を認めない

  • 遠隔転移を認めない

ミラノ基準は肝移植に際しては理想的な条件だと考えられています。しかしながら、かなり進行した状況で肝移植以外の治療が難しくなる場合もあります。このため新たに設けられた新基準では、「腫瘍の大きさが5cmいないかつ5個以内かつAFPが500ng/ml以下」の状態も移植の適応と考えられています。。

肝移植によるメリットは肝臓の機能が低下している人でも根治性の高い治療が受けられることです。

肝臓がんの治療は進行度に加えて肝臓の機能が非常に重要です。肝臓がん自体は小さくて個数が少なくても肝臓の機能が悪くて手術ができないことも有り得る話です。肝臓がんは肝硬変などを背景にして発生します。肝硬変になった肝臓を摘出して肝硬変ではない肝臓を移植すれば再発の可能性も低いと考えられています。

一方で肝移植にはデメリットもあります。まず肝移植の手術自体が難しい手術であり、そのため手術後に合併症が起きる可能性があります。合併症の中でも肝臓が機能しなくなる肝不全は重い合併症の一つで命に危険がおよぶこともあります。

また肝移植後は新しい肝臓に対する拒絶反応を抑えるために免疫抑制剤を飲む必要があります。免疫抑制剤は生涯にわたって内服する必要があります。

また肝移植では臓器を提供する人の負担も大きなものがあります。肝臓を提供するには手術で肝臓の一部を切り取る必要があります。肝臓を切り取る手術は体への負担がかなり大きいものです。提供する側にも手術による合併症の可能性があります。

肝移植は複雑な手術の治療と厳格なその後の管理の上に成り立つ治療です。その分、肝移植はどこででも受けられる治療ではありません。

肝移植を受けることのできる施設は「日本臓器移植ネットワーク」で確認することができます。

肝移植を検討する場合は、まずは今の担当医に相談してみて説明を受けその後、肝移植が可能な施設に紹介してもらうなどの手順を踏むことになります。

参考文献
N Eng J Med.1996;334:693-699
日本肝移植研究会・肝移植症例登録報告

肝臓がんの主な治療は以下のものがあります。

  • 手術

    • 肝切除

    • 肝移植

  • 焼灼療法 

    • RFA(ラジオ波焼灼療法) 

  • 塞栓療法

    • TAE(肝動脈塞栓療法)

    • TACE(肝動脈化学塞栓療法) 

  • 抗がん剤治療 

    • 分子標的薬(ソラフェニブ)

    • 肝動注化学療法 

日本で肝臓がんに対して標準治療と考えられているものは他にもいくつかあります。ここに記したもの以外の治療法を提案されることもあります。そのときには注意をしてほしいことがあります。そのためには標準治療の意味を理解することが大事です。

標準治療とは、実際に多くの患者さんが治療を受けた結果に基づいて、効果があると判断された治療のことです。根拠のもとになる情報には臨床試験などが含まれます。

標準治療という名前からは「平凡な治療」という印象を受けるかもしれません。しかし決してそうではありません。標準治療は、過去に知られた情報を積み重ねた結果に基づくものなので、最も確実に効果を得ることができて安全な治療と言い換えることもできます。

つまり標準治療でない治療は、標準治療よりも何かの点で効果と安全性の証拠が弱いと言えます。たとえば「最新治療」は「最も優れた治療」という意味ではありません。最新治療として始まった治療が多くの人に使われ、実際に効果と安全性を示し続けることによって、標準治療に取り込まれるかどうかが決まっていきます。「先進医療」という用語もありますが、先進医療も同様に、誰にでも勧められるものではありません。

しかしながら世の中にはあたかも標準治療を上回るような言い回しで宣伝をする治療法がいくつも存在します。その中には「何千例を治療しました」と謳う治療法もありますがそれには疑問を抱かざるを得ません。本当に優れた治療があるのならば、すでに標準治療として普及しているはずです。治療が上手くいかないときに優しい言葉をかけてくるのは、本当にあなたのためを思ってくれる人ばかりではないのです。

肝臓がんの再発は治療後1年以内に最も多いです。一方で時間が経って再発が確認されることもあります。

また、治療したがんは完全になくなっていても、別のがんが新しく発生することがあります。肝臓がんは肝炎や肝硬変を背景として発生します。肝臓がんを手術や焼灼療法で一度完全になくすことができても、新しくがんができる可能性はつきまといます。その意味で、肝硬変などを背景として肝臓がんができた人は、治療後も「完治したのでもう安心」と言えることはありません。

肝臓がんが何回もできてしまいそのたびに手術などの治療が必要になる人も多くいます。治療が終わっても再発の不安を抱えながら検査を受けるのはつらいことです。しかし、見方を変えると肝臓がんは再発してもまた治療できるがんです。治療がうまくいっている限り、再びがんを完全に取り除くことを狙えます。簡単なことではないのはわかりますが、諦めずに根気よく治療をすることができます。

再発なく何年も無事に過ごす人もいます。再発なく何年か過ぎると「もう完治した」と思えるかもしれませんが、常に再発する可能性はあります。このために定期的な診察を受けることは大切です。 

肝臓がんは治療中に痛みがでることがあります。このためにモルヒネなどのオピオイド鎮痛薬を使用して痛みを抑えることがあります。肝臓がんの患者さんに対してモルヒネなどをどのように使用するかの統一した見解は今のところありません。またモルヒネは肝臓の機能が低下している状況では使うべきではない(禁忌)ともされているので肝臓の機能などを考えながら治療をしていきます。

モルヒネに似たオピオイド鎮痛薬(オキシコドン、フェンタニル)も選択肢となります。

がんの痛みを抑える治療には、NSAIDsやアセトアミノフェンといった鎮痛薬が検討されることもあります。これらの薬は鎮痛効果に限界があるので、中等度以上の強さの痛みにはオピオイド鎮痛薬の使用が推奨されています。

肝臓がんが全身に転移して強い痛みが出ている場合の多くは、オピオイドを使って痛みをコントロールする必要があるでしょう。肝臓がんが進行すると、割合として多くはありませんが、骨などに転移をすることがあります。骨に転移をすると痛みで生活が不自由になったりもします。

また肝臓がんが大きくなると肝臓を包んでいる被膜が引き伸ばされて痛みの原因になります。

がんを原因とした痛みにはオピオイドに効果があります。

オピオイドは肝臓で代謝されます。肝臓の機能が低下した状態ではオピオイドの血液中での濃度が想定より高くなってしまうことも有り得ます。

またオピオイドに共通した副作用である便秘が起きると肝臓の機能低下を原因とした意識の障害などが起きることがあります。この意識の障害を肝性脳症といいます。

痛みを抑えることと副作用のバランスを見ながら慎重に投与量などを決めます。

参照:Palliative Care Research.2014;9:101-106
 

まずどの病気においても名医の明確な定義はありません。それは、医師と患者の関係も人間同士の関わりなので、出会った医師を名医と呼べるかどうかは患者さん自身の考え方が大きく影響するからです。つまり名医はその人によって異なると考えられます。ここでは具体的な病院や医師の名前を挙げることはしませんが、肝臓がんの名医に出会う方法を考えてみたいと思います。

肝臓がんの治療には手術、局所治療(ラジオ波など)、カーテル治療、抗がん剤治療などを状況によって使い分けます。これら全ての治療を同じ医師が担当することはほとんどありませんが、肝臓がんの名医は自分の手で治療を行わなくてもそれぞれの治療に精通している必要があります。たとえば手術を担当する医師でも局所治療や抗がん剤などに精通している医師であれば別の医師に治療を頼むことがあっても連携がスムーズにいくことが予想されます。

とはいえ、どれほどの知識を持ち合わせているかは一見するとわからないものです。知識の幅広い医師にたどり着くには、局所治療や手術の数を参考にすることは有効な方法だと考えられます。治療実績の多い病院では患者が多く集まり判断が難しいケースも多く経験していることが想像されます。治療実績が多いことが名医であることを必ずしも意味しないことは注意が必要ですが、良い参考になると思います。

医師とのコミュニケーションも重要視してください。友人の勧めや評判をもとにして名医と言われる医師の診察を受けたものの気が合わなかったりすることはありえる話です。がん治療は複雑で長期に及ぶこともあるので医師とのコミュニケーションも重要です。性格が合う、話しやすいといった面も重要視して医師を選んでください。

最後に、医師選びは重要ですが、あまり長い時間をかけるべきではありません。がんは刻一刻と進行していきます。どこで治療をするかを早く決めて治療を始めたほうが治療の効果が高いと考えられます。自分にとって大事だと思う点を見極めて決断することが重要です。

肝臓の病気の治療は難しいです。日本肝臓学会や日本肝胆膵外科学会は肝臓の病気に対しては専門的な知識や技術を持つ医師に肝臓専門医や高度技能専門医の資格を与える制度をとっています。肝臓専門医や高度技能専門医の氏名や在籍する施設は日本肝臓学会や日本肝胆膵外科学会のウェブサイトで確認できます。

肝臓専門医や高度技能専門医の資格を得ていなくても専門的な知識や技術を持った医師は存在するので、資格がなければ治療を行えないわけではありません。しかし医師を探す手掛かりにはなります。治療する場所を探している場合などには参考にしてみるといいと思います。

参照:

日本肝臓学会日本肝胆膵外科学会
 

セカンドオピニオンとは主治医以外の医師に現在受けているもしくはこれから受ける治療の方針などについての意見を聞くことです。一般的には主治医から紹介状診療情報提供書)を書いてもらって、それを他の医療機関に持参し自分の病状や治療についての意見を聞きます。医療機関によっては「セカンドオピニオン外来」など専用の窓口を設けているところもあります。セカンドオピニオンはより広い視野を持って治療を選択するために有用な手段です。

セカンドオピニオンは主治医との関係が悪くなるような気がしてなかなか切り出しにくいと思うかもしれません。セカンドオピニオンを聞きたいと言うと、今の治療方針に疑問があると受け取られてしまうかもしれないと思えるかもしれません。

医師の立場からみると、セカンドオピニオンを求められたからといって患者さんのことを悪く思うようなことはありません。セカンドオピニオンは患者さんがもつ当然の権利です。セカンドオピニオンを聞くことで適した治療が選択されたり、今の治療に納得してくれるならば主治医としてもありがたいことだと思います。もし他の医師の意見を聞いてみたいと思ったならば、遠慮なく主治医にセカンドオピニオンを求めることをお薦めします。

セカンドオピニオンを聞くには、診療情報提供書を主治医に書いてもらうことと、セカンドオピニオンに対応してくれる医療機関を探すことが必要です。いきなり診療情報提供書を持って初めての医療機関を訪ねてもセカンドオピニオンには対応してはくれないことがあります。あらかじめ医療機関に問い合わせてセカンドオピニオンの受診枠を確保しておいてください。

医療機関が思いつかない場合は主治医に意見を求めてもいいと思います。医師でしか把握できない情報もあるかもしれません。主治医の施設と提携している紹介先であれば、施設間の連絡で受診枠の確保をしてくれることもあります。自分で何を連絡しないといけないかの確認は重要です。セカンドオピニオンを聞くことが決まったらまずやるべきことです。

セカンドオピニオンを聞く時にもっとも注意してほしいのは、受診する目的をはっきりとさせることです。

セカンドオピニオンを担当する医師は主治医とは異なり、初対面になります。今までの治療経過については診療情報提供書で把握していても、患者さんの性格や価値観などは把握できていません。診療情報提供書には書ききれない患者さん自身の考えを短い時間で明確に伝えなければ、本当に聞きたかったことをうまく聞けないかもしれません。少しでも短時間で自分の意思を知ってもらうためにあらかじめ聞きたい点を紙に書き出すなどして整理しておいてください。一人で受診をしたら自分の話を聞いてもらうことに一生懸命になってしまうことはよくあります。伝えることも大事ですが、セカンドオピニオンの目的はあくまで違う医師の話を聞くことです。意見を聞き漏らすことを少なくするには可能ならば家族など信頼できる人と一緒に話を聞くことも良い方法だと思います。

またセカンドオピニオンを求めると治療や検査を行う時間が先延ばしになっていることも忘れてはいけないことです。時間は刻々と経過していきます。セカンドオピニオンのために貴重な時間を使っているのだということを自覚することは大事です。

またセカンドオピニオンで質問したいことや、どんな答えのときにどんな行動をとるかについては、ある程度決めておく必要があります。例えば主治医と同じ意見であればどちらで治療をうけるかなどです。具体的にイメージを膨らませておくほど次の行動へ円滑に動けます。

セカンドオピニオンを聞いたあとには、治療や検査についての決断をする必要があります。つまりどの医療機関でどんなで治療や検査を受けるかを決めることです。

主治医の提示した治療を選択しなかった時は気まずいと思うかもしれません。しかし主治医は患者さんの決断を受けて、希望を叶える方法を考える立場にあります。

結果として主治医の提案を受け入れるという判断になったとしても、セカンドオピニオンを聞いた意味があります。他の医師の意見により頭の中が整理されて治療に前向きになれることがあるからです。

セカンドオピニオンを聞いた医療機関での治療を希望した場合には、もとの主治医に経緯を報告し、必要ならば改めて紹介の手続きを取ってもらってください。少し負担かもしれませんが追加した情報が提供されたりしてその後の治療にもいい影響が期待できます。主治医もきっとその選択を後押ししてくれると思います。

診療ガイドラインは、治療にあたり妥当な選択肢を示すことや、治療成績と安全性の向上などを目的に作成されています。肝臓がんにも診療ガイドラインがあります。肝臓がんのガイドラインでは、日本肝臓学会が作成した「肝癌診療ガイドライン」があります。

外国にもいくつかのガイドラインがあります。ガイドラインがいくつも存在するのは理由があります。国ごとに病院に行くときの環境などが違い、使うことのできる薬剤などの違いもあるからです。また、答えを一通りに決められない問題に対して学術団体ごとに違った意見を持っている場合もあります。

医学は日々進歩を遂げているので、ガイドラインは数年に1回のペースで中身が更新されています。ガイドラインにはまだ反映されていない情報がすでに一般的な治療として認知され実践されていることも珍しくはありません。ガイドラインは医師が治療を進めていく上で役立ちますが、ガイドライン通りの治療がすべて正しいわけではありません。ガイドラインにはまだ反映されていない新しい知見が役に立つ場合もあります。さらに実際にはその時々、患者さんの状態はひとりひとり異なることを考えに入れて治療します。