かんぞうがん
肝臓がん
肝臓にできた悪性腫瘍のこと
1人の医師がチェック 71回の改訂 最終更新: 2022.10.17

肝臓がんのラジオ波焼灼療法(RFA):焼灼療法のメリット、デメリットについて解説

 肝臓がんの治療では手術の他に焼灼療法があります。現在の多くの焼灼療法はラジオ波を利用したものです。ここではラジオ波焼灼療法(RFA)の解説をします。RFAは体の外から病変に針を刺してラジオ波を流す治療です。 

RFAは針を肝臓がんに直接刺してラジオ波(電流)を流してその熱でがん細胞を熱凝固させます。熱凝固によりがん細胞は死滅します。熱凝固させることを焼灼(しょうしゃく)とも言います。話し言葉では「がんを焼く」と説明されることもあるでしょう。

RFAはどんな人にもできる治療ではありません。いくつか条件があります。

まずある程度肝機能が保たれていることが治療の条件になります。下の図は肝細胞がんの治療の目安になります。

参照:肝癌診療ガイドライン 2021年版

RFAをするには肝臓の機能がある程度保たれている必要があります。肝臓の機能の目安には肝障害度とChild-Pugh分類のどちらかを使います。以下で肝障害度とChild-Pugh分類について解説します。詳細な説明になるので、自分に当てはまらないと思う部分は読み飛ばしても理解に差し障りはありません。

肝障害度は肝臓の機能を検査や症状から3つに分類したものです。肝障害度の評価には以下の5つの項目が用いられます。

  • 腹水

  • 血清ビリルビン

  • 血清アルブミン

  • ICG15

  • プロトロンビン活性値

腹水とはお腹の中の腹腔(ふくくう)という場所にたまった水のことです。肝臓の機能が悪くなくても少量の腹水はありますが肝臓の機能が低下すると腹水が多くなりお腹が張った感じなどの症状がでます。腹水は利尿剤などの薬で良くなることがあります。

ビリルビンは赤血球が壊れた後にできる物質です。ビリルビンは常に体内で作られています。ビリルビンは肝臓で処理され体の外に出されます。肝臓の機能が低下している場合にはビリルビンが十分処理されずに体の中に貯まります。

アルブミンはたんぱく質の一種です。アルブミンは肝臓でつくられます。肝臓の機能が低下するとアルブミンをつくる勢いがなくなり体の中のアルブミンが低い値となります。

ICG(アイシージー)はIndocyanine green(インドシアニングリーン)の略です。ICGが注射で体の中に入ると肝臓で代謝されます。正常な肝臓の場合は15分程度でICGは10%以下になります。肝臓の機能が低下している場合はICGを代謝するために時間がかかります。ICGが代謝される時間で肝臓の機能を推測することができます。ICG15の名称はICGを投与してから15分後に検査をすることを由来としています。

プロトロンビンは血液を固める役割をもつ物質です。プロトロンビンは肝臓でつくられるので肝臓の機能が低下するとプロトロンビンの働き(活性値)が低下します。プロトロンビンは他にも表現の仕方があります。プロトロンビン時間(PT)やPT-INRとして検査結果が表示されることもあります。

以上5項目をもとに、次の表に従って肝障害の程度を評価します。

 

肝障害度A

肝障害度B

肝障害度C

腹水

なし

治療効果あり

治療効果少ない

血清ビリルビン(mg/dl)

2.0未満

2.0-3.0

3.0超

血清アルブミン(g/dl)

3.5超

3.0-3.5

3.0未満

ICG15(%)

15未満

15-40

40超

プロトロンビン活性値(%)

80超

50-80

50未満

参照:原発性肝癌取扱規約 第6版

肝障害度の決め方は5項目について評価をして、2項目以上が該当する分類を肝障害の分類とします。2項目以上該当するものが2つある場合は肝障害度が高い方を採用します。

例えば肝障害度Aに該当するものが4項目、肝障害度Bに該当するものが1項目に該当した場合には肝障害度Aになります。肝障害度Bが3項目、肝障害度Cが2項目の場合は肝障害度はCになります。

Child-Pugh分類は肝臓の機能を推定する方法です。Child-Pugh分類は、以下の5つの項目で決まります。

  • 血清ビリルビン 

  • 血清アルブミン 

  • 腹水 

  • 精神神経症状(昏睡度) 

  • プロトロンビン活性(%)

ビリルビンは赤血球が壊れた後にできる物質です。ビリルビンは肝臓で処理され体の外に出されます。肝臓の機能が低下している場合にはビリルビンが体の中に溜まります。

アルブミンはたんぱく質の一種です。アルブミンは肝臓でつくられます。肝臓の機能が低下するとアルブミンをつくる勢いがなくなり体の中のアルブミンが低い値となります。

腹水はお腹の中の腹腔というスペースに水が貯まることです。腹水はアルブミンが低くなると溜まります。

精神神経症状はアンモニアによって引き起こされます。アンモニアは常に体内で発生しています。通常はアンモニアは肝臓で処理されて尿として体の外にだされます。アンモニアが体の中に溜まると異常な行動をとるようになったり、意識状態が低下したりします。

プロトロンビンは血液を固める役割をもっています。プロトロンビンは肝臓でつくられるので肝臓の機能が低下するとプロトロンビンが低下します。

以下の表は細かな数値になるので次に進んでも理解の差し支えにはなりません。

  1点 2点 3点
血清ビリルビン(mg/dl) 2.0未満 2.0-3.0 3.0超え
血清アルブミン(g/dl) 3.5超 2.8-3.5 2.8 未満
腹水 ない 少量 中等量
精神神経症状(昏睡度) ない 軽度 重症
プロトロンビン活性値(%) 70超 40−70 40未満
  • A:5-6点 

  • B:7-9点 

  • C:10-15点

以上の5項目を評価して合計点数によって分類します。例えば7点だった場合Child-Pugh Bとなります。

肝障害度は治療に関しては問題がないと判断されました。次にRFAをするかどうかの判断は肝臓がんの場所や形が問題になります。

以下のすべてを満たす場合にRFAが適しているとされます。

  • 肝臓がんの大きさが3cm以内

  • 肝臓にあるがんの数は3個以内

  • 腹水がない

  • 門脈への浸潤がない

原則として肝臓の外に転移をしている場合はRFAの適応とはしないことが多いです。しかし肝臓の外に転移があっても肝臓の病変が大きくなりすぎると破裂の危険性などが高まります。この場合は肝臓のがんを小さくすることなど目的にしてRFAも選択肢にあがります。

RFAは原則として肝臓がんの大きさが3cm以内の人が対象になります。その理由は一度に焼灼できる範囲が3cm程度になるので確実にがんを焼き切るには3cm以下の方が適していると考えられるためです。数も原則として3個以下が治療時間や安全性の面から適当な目安とされています。

大きさや個数に関しては施設によっては条件を変えていることがあります。例えば5cmでも焼灼方法を工夫して治療が可能と判断することも、腫瘍の数が5個でも治療が可能と判断することもあります。

腹水も原則としてはないことがRFAをする条件とされていますが、利尿剤の投与で腹水が消えることが確かめられていてコントロールがよいと判断される場合などはRFAが可能と判断されることもあります。

肝臓には門脈という血管が流れ込んでいます。門脈は腸で吸収された栄養が血液に乗って肝臓に運ばれる通り道です。門脈は非常に大事な血管なので、がんが門脈に及んでいる(浸潤している)場合は治療ができないことがあります。

RFAの方法などについて解説します。詳細な情報になるので読み飛ばしても問題はありません。

RFAは処置室などで行われます。麻酔は局所麻酔か、うとうとして意識がぼんやりするような麻酔薬を使います。

RFAはがんの場所を狙って刺す必要があります。超音波検査エコー検査)でがんの位置を確認して針を刺す位置を決めます。針は太い針になるので刺す前に十分に局所麻酔をします。局所麻酔が十分であることを確認してラジオ波が出る針を刺します。超音波検査で針の先が狙った位置にあることを確かめながら治療を進めます。針が刺さった状態でしばらくラジオ波を出し続けて病変を焼灼します。焼灼中は痛みを感じたり熱い感じを自覚する人もいます。

焼灼が十分なことを超音波検査で確認して処置が終了になります。

肝臓がんに対してRFAと手術のどちらも可能な状況がよくあります。どちらが適した治療なのかはその人によって異なります。

肝臓がんの手術は歴史があり、治療実績も豊富です。対してRFAは実績データの蓄積では手術に一歩譲りますが傷が小さいなどがよい点です。現在のところ手術とRFAのどちらがよいかの結論はでていません。

現在、肝臓がんの数が3個以内で大きさも3cm以内の人を対象に、RFAと手術の効果を比較する研究が進められています。下記サイトで詳細な情報を得ることができるのでご紹介しておきます。

参照:SURF trial

RFAの治療は肝臓にあるがんが3cm、3個以下の状況が適した条件とされています。個数や病変の大きさに注目して生存率の統計データが発表されているので紹介します。

「第22回 全国原発性肝癌調査報告書」ではRFAを含む焼灼療法を受けた人の累積生存率を知ることができます。肝臓がんの個数ごとの生存率に注目してみます。この治療結果にはRFA以外のマイクロ波やエタノール硬化療法が混じっているので純粋にRFAの効果を見たわけではないのですが参考にはなると思います。

腫瘍の個数

1年生存率

2年生存率

5年生存率

1個

95.9%

89.3%

64.1%

2個

94.9%

86.9%

57.6%

3個

94.3%

86.1%

48.9%

4個

95.0%

83.0%

52.3%

5個以上

96.2%

83.8%

42.2%

通常、RFAはがんの個数が3個以下の場合に適しているとされます。しかし中にはがんが3個以上あってもRFAによって治療される人もいます。

「第22回 全国原発性肝癌調査報告書」では腫瘍の大きさごとの生存率も集計されています。

腫瘍の大きさ

1年生存率

2年生存率

5年生存率

1cm以下

96.3%

91.7%

72.1%

超1-2cm

96.6%

90.6%

66.6%

超2-3cm

95.5%

87.7%

58.9%

超3-5cm

92.1%

80.7%

47.8%

超5cm

86.5%

76.0%

49.7%

RFAは大きさが3cm以下のがんの治療に適していると考えられています。小さいがんほど生存率は高い傾向にあります。がんが3cmを超えるとRFAができない訳ではありません。状態によってはRFAが選ばれることもあり、5cmを超えるがんでも中には効果のある人はいます。

RFAは手術に比べると体に残る傷が小さい点が優れています。しかし治療にともなう合併症はいくつかあります。合併症は治療によって発生する症状や病気のことです。

RFAを受けると発熱する人が多くいます。病変を焼灼したために正常な肝臓も焼灼の影響を受けていわゆるやけどをした状態になります。肝臓のやけどに対してはそれを治すための反応が起きます。発熱はその反応が症状として現れたものの一つと考えられています。様子をみることで発熱は落ち着いていきます。

RFAは体に針を刺します。針を肝臓がんに直接刺してラジオ波を流します。針が肝臓の大きな血管にあたり出血することは有り得る話です。出血は少ない量であれば様子をみることで改善が期待できます。しかし出血が多いと判断された場合には、カテーテル治療などで止血をすることがあります。

RFAではラジオ波を利用して熱を発生してがん細胞を死滅させます。焼灼した部分に大きな壊死した部分ができます。そこに細菌が感染しての溜まりをつくることがあります。肝膿瘍といいます。肝膿瘍ができた場合には発熱や腹痛などの症状が現れることがあります。肝膿瘍の治療は膿の溜りに体の外から針を指して膿を体の外にだします。同時に抗菌薬を投与して感染を抑え込みます。

消化管穿孔(しょうかかんせんこう)

胃や腸を総称して消化管といいます。消化管穿孔は消化管に穴があくことです。

RFAで使う針は太い針になります。針を刺すときには超音波検査を見ながらします。しかしまれに針により腸などを傷つけることや、腫瘍と腸が接していてラジオ波の影響で腸が傷つくことがあります。

特に危険なのは消化管を傷つけているのにラジオ波を流してしまうことです。その場合は穴が大きく腸の内容物がお腹の中にもれ出て腹膜炎などの原因になります。消化管穿孔や腹膜炎は手術が必要になります。

腹膜播種とは肝臓がんの細胞が腹腔(ふくくう)という場所にばらまかれて増殖している状態です。腹腔というのは肝臓の周りにある、腸などの内臓の隙間にあたる場所です。RFAの後に腹膜播種が起きることは多くはないものの可能性があります。RFAは体の外から肝臓がんに針を刺してラジオ波で焼灼します。RFAで使用した針の先にはがん細胞が付着しており、その針に付着したがん細胞が腹腔内入ってしまうことがあるためです。がん細胞が腹腔内で成長する状態を腹膜播種といいます。腹膜播種したがん細胞が大きくなると炎症によってがん性腹膜炎が起きます。

他の原因でもRFA後に腹水がでることがあります。肝臓がんの人はもともと肝臓の機能が低下しています。治療の影響などで肝臓の機能が一時的に低下すると腹水が出ることはありうるはなしです。治療後に腹水が出ているからといって必ずしも腹膜播種が起きたわけではありません。まずは医師の説明を聞いて状況を確認することが大事です。

入院期間の短さはRFAの特徴の一つです。手術では、合併症が起きることなく順調に経過しても入院期間は1−2週間は必要ですが、RFAは多くの場合は1週間以内です。以下は入院中のスケジュールの例です。

入院は多くの場合は手術前日のことが多いです。前日に入院して入院中の過ごしかたや治療後の注意点などについて説明を受けます。食事は夕食まではとってそれ以降は食べないということが多いと思います。RFAは超音波を使って治療をするので食事の影響で病変が見にくくなるなどの影響があるからです。

治療が終了したら、病棟に移動します。この日は数時間の間はベッドで安静にするように言われるかもしれません。治療後なので許可が出るまではベッド上で安静にします。食事の許可が出ていても無理する必要はないと思います。体力をつけないとという思いで食事を無理に食べる必要はありません。

治療後にCTもしくは超音波検査で治療が十分であったかの確認をすることが多いです。採血で肝臓の機能を確認します。痛みは治療した直後に比べると収まってきているとは思いますが、我慢をする必要はありません。痛み止めを内服して痛みを軽くしてください。

CTや超音波検査で治療が不十分と判断される場合もあります。そのときにはもう一度RFAをすることを提案されるかもしれません。特に問題がなければその後の受診日などが説明されて退院となります。

RFAの治療費費は30万円から50万円程度です。入院期間や施設によって少し差がでます。治療費は気にかかるものの一つだと思います。高額療養費制度や限度額適用認定証などを使うことで負担金額が下がります。病院には医療費などの相談に乗ってくれる窓口があることが多いので相談してみることをオススメします。

高額療養費制度とは、家計に応じて医療費の自己負担額に上限を決めている制度です。

医療機関の窓口において医療費の自己負担額を一度支払ったあとに、月ごとの支払いが自己負担限度額を超えた部分について、払い戻しがあります。払い戻しを受け取るまでに数か月かかることがあります。

たとえば70歳未満で標準報酬月額が28万円から50万円の人では、1か月の自己負担限度額が80,100円+(総医療費-267,000円)×1%と定められています。それを超える医療費は払い戻しの対象になります。

この人で医療費が1,000,000円かかったとします。窓口で払う自己負担額は300,000円になります。この場合の自己負担限度額は80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%=87,430円となります。

払い戻される金額は300,000-87,430=212,570円となります。所得によって自己負担最高額は35,400円から252,600円+(総医療費-842,000円)×1%まで幅があります。
高額療養費制度について詳しくは厚生労働省のウェブサイトやこちらの「コラム」による説明を参考にしてください。

あらかじめ医療費が高額になることが見込まれる場合は「限度額適用認定証」を申請し、認定証を医療機関の窓口で提示することで、自己負担分の支払い額が一定額まで軽減されます。高額療養費制度で支払われる還付金の前払いといった位置づけになります。保険外の費用(入院中の差額ベッド代や食事代など)は対象外となります。