せんいきんつうしょう
線維筋痛症
慢性的な全身の痛みが起こる病気。痛みを伝える神経が敏感になることで起こると考えられているが、詳しいメカニズムは分かっていない。
7人の医師がチェック 157回の改訂 最終更新: 2022.03.15

線維筋痛症に効く薬はある?漢方は効く?

線維筋痛症の治療には飲み薬による治療(薬物療法)と運動療法や鍼などの治療(非薬物療法)があります。薬物療法としては抗うつ薬や抗けいれん薬がよく用いられます。漢方薬が用いられることもあります。

1. 線維筋痛症は治る?

線維筋痛症は治療が難しい病気です。いくつかの治療法を試しても痛みが続く方もいます。しかし、新しい治療法の研究開発も続けられています。2010年代にもプレガバリン(商品名リリカ®)やデュロキセチン(商品名サインバルタ®)など線維筋痛症に対する効能・効果が追加となった薬があります。これから新しい治療法が確立することにより線維筋痛症の治療も大きく変わっていくかもしれません。

2. 線維筋痛症の治療法は?

線維筋痛症の治療には飲み薬による治療(薬物療法)と飲み薬以外の治療(非薬物療法)があります。薬物治療に関しては次の章以下で詳しく説明します。2016年にヨーロッパリウマチ学会から発表された治療の推奨で支持された非薬物療法には以下があります。

  • 運動療法
  • 認知行動療法
  • 鍼治療
  • マインドフルネス療法
  • 水治療法

非薬物療法も薬と同じように、全員に効果が現れるとは限りません。実際にいくつかの治療法を試したり組み合わせたりして治療する人はいます。

運動療法

運動療法は線維筋痛症の症状を改善することが研究で示されています。以下の運動が支持されています。

  • 有酸素運動
  • 水中運動療法
  • ヨガ、太極拳、気功など

身体が痛むのに運動をするのは難しいと感じるかもしれません。いきなり激しい運動をするのは必要はありませんので、自分に合った運動を見つけて行うようにして下さい。

参考文献
・Ann Rheum Dis. 2017 Feb;76(2):318-328.

認知行動療法

認知行動療法は考え方などに焦点を当て、そこに働きかけることで症状の改善を目指す治療です。認知行動療法により痛みの症状を改善できることが分かっています。線維筋痛症では痛みに敏感になることで症状が悪くなるため、そこに働きかけを行うことで症状を改善させると理解されています。

参考文献
・Cochrane Database Syst Rev. 2013 Sep 10;(9):CD009796.

鍼治療

鍼治療には痛みを和らげる作用があり、線維筋痛症でも鍼治療が行われることがあります。過去の報告では、電気鍼の効果を13人の対象者について調べた日本の研究で、痛みの強さが平均で30%程度減少したとされています。

参考文献
Cochrane Database Syst Rev. 2013; 5: CD007070.

マインドフルネス療法

マインドフルネス療法とは瞑想などを病気の治療に取り入れたものです。線維筋痛症に対する効果も過去に検証されており、痛みの軽減などに効果があるのではないかとされています。

参考文献
・J Psychosom Res. 2013 Dec;75(6):500-10.

水治療法

水治療法は水を使った理学療法です。プールや専用の浴槽で行うものがあります。線維筋痛症に対しても痛みの軽減に効果があるとした報告があります。

参考文献
Rheumatology (Oxford). 2009 Sep;48(9):1155-9.

3. 線維筋痛症の薬物治療:抗うつ薬・抗けいれん薬・漢方薬など

線維筋痛症による関節や筋肉の痛みはNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)などの一般的な鎮痛薬では改善しにくいと考えられています。これは痛みが起こる仕組みが通常と異なるためです。体の中には下行性疼痛抑制系(かこうせいとうつうよくせいけい)と呼ばれる痛みの刺激を抑える仕組みがあります。線維筋痛症ではこの下行性疼痛抑制系がうまく働かなくなることで、痛みを感じやすくなっているとされます。下行性疼痛抑制系はノルアドレナリンセロトニンなどの神経伝達物質が関わっています。このため、神経伝達物質に作用する薬である抗うつ薬が有用とされ、薬物療法における主な治療薬として使われています。いくつか例を挙げてみていきます。

抗うつ薬

抗うつ薬はその名前の通り元々はうつ(抑うつ)を治療する薬ですが、神経の痛みなどに使われることも多く、線維筋痛症においてもSNRI、SSRI、三環系抗うつ薬などの抗うつ薬が治療の選択肢となっています。線維筋痛症では不安、恐怖、抑うつなどの心理社会的ストレスが加わることによって慢性的な痛みに発展するケースもあります。抗うつ作用により精神的な症状の改善によって効果が期待できる他、SNRIなどの薬は疼痛改善に直接作用するとされるなど線維筋痛症に対して有用性を持つと考えられています

■SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)

SNRIは神経伝達物質のセロトニンとノルアドレナリンに関わる作用を持ちます。神経性の疼痛にも効果が期待できる薬です。デュロキセチン(商品名:サインバルタ®)やミルナシプラン(主な商品名:トレドミン®)などのSNRIが使われています。SNRIには抗うつ作用の他、下行性疼痛抑制系を賦活(活性化)する作用があると考えられていて、この点からも痛みに対して有用な抗うつ薬と言えます。

デュロキセチンは実際に線維筋痛症へ保険承認された薬です。他にも糖尿病性神経障害、慢性腰痛症変形性関節症などへの有効性が確認されています。

ミルナシプランは日本では最初に発売されたSNRIで線維筋痛症へ使われる場合もあります。

SNRIは神経障害性疼痛(様々な原因によって神経が異常な興奮をすることで起こる痛み)以外にもがん性疼痛の鎮痛補助薬として使われるなど「痛み」に対して有用な薬のひとつになっています。

■SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)

SSRIは主に神経伝達物質のセロトニンに関わる薬です。神経の痛みなどに対して使われることもあります。パロキセチン(主な商品名:パキシル®)やフルボキサミン(主な商品名:デプロメール®、ルボックス®)などのSSRIが使われています。

SSRIはうつ(抑うつ)や疼痛の改善の他、パニック障害などの治療に使われることもあります。抗うつ薬による疼痛緩和においてはセロトニンだけでなくノルアドレナリンの関与も考えられていることからも、こと疼痛緩和という点ではSNRIの方が一般的により有用であると考えられますが、症状などによってはSSRIも治療の選択となります。

■その他の抗うつ薬

SNRIやSSRIの他には初期に開発された三環系抗うつ薬という種類に分類されるアミトリプチリン(主な商品名:トリプタノール®)やクロミプラミン(商品名:アナフラニール®)などが使われる場合もあります。中でもアミトリプチリンは神経障害性疼痛や片頭痛偏頭痛)の治療などに使われることもあり「痛み」に対して有用な抗うつ薬のひとつです。SNRIなどが主流となってきていることなどもあり、線維筋痛症に対して三環系抗うつ薬は以前に比べると使われるケースが少なくなってきていますが、疼痛、倦怠感睡眠障害などの改善効果が期待できるとされています。

他の抗うつ薬ではミルタザピン(商品名:リフレックス®、レメロン®)が使われる場合もあります。ミルタザピンはNaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)と呼ばれる種類に分類される薬です。一般的には不眠を伴ううつ病などに対して使われています。ミルタザピンは中枢神経のノルアドレナリンとセロトニンの神経伝達を増強しSNRIなどと同様に下行性疼痛抑制系を賦活する効果が期待できるとされています。

■抗うつ薬による副作用とは?

抗うつ薬は中枢神経系への作用により効果をあらわすため、副作用としても眠気、ふらつき(めまい)などの精神神経系症状に注意が必要です。

初期に開発されたアミトリプチリン(主な商品名:トリプタノール®)などの三環系抗うつ薬では副作用として体内物質アセチルコリンの働きを阻害する抗コリン作用があらわれる場合があります。抗コリン作用による主な症状には口渇、便秘、眠気などがあります。場合によっては眼圧上昇や排尿障害といった症状が起こる可能性もあります(アミトリプチリンなどは抗コリン作用を利用して夜尿症などの治療に使われる場合もあります)。

このため緑内障前立腺肥大による排尿障害などの持病を持っている場合や高齢者などはより注意が必要です。

SSRIやSNRIなどの抗うつ薬はそれ以前に開発された抗うつ薬に比べれば抗コリン作用などの副作用が比較的少ないと考えられています。それでも副作用がゼロというわけではなく少ない中でも比較的よくみられるものに吐き気や食欲不振などの消化器症状があります。個々の体質などによっても異なりますが、服用開始から1-2週間ほどで軽減していくことが多く、一時的にドンペリドン(主な商品名:ナウゼリン®)などの制吐薬(吐き気止め)を併用するなどの対処も可能です。

ミルタザピン(商品名:リフレックス®、レメロン®)は元々、睡眠改善効果が期待できるという特徴からも眠気の副作用には注意が必要です。ミルタザピンでは他に体重増加の副作用が多い傾向にあるとされています。

抗けいれん薬

「痙攣(けいれん)」と聞くと「痛み」とはあまり関係ないように思うかもしれませんが、一般的に抗けいれん薬と呼ばれる薬の中には「痛み」に対して有用なものもあります。作用の仕組みを少し詳しくみていくと、中枢(脳や脊髄)の神経興奮を抑えることで筋肉の緊張をゆるめる作用や血流改善作用などをあらわし、神経障害性疼痛やしびれなどの改善が期待できます。

プレガバリン(商品名:リリカ®)は近年、神経障害性疼痛などの「神経が関係する痛み」の諸症状に広く使われている薬です。線維筋痛症に対しても保険で承認されています。プレガバリンは神経の興奮を引き起こす因子となるカルシウムイオン(Ca2+)の神経前シナプス内への流入を抑える作用などによって、神経伝達物質の放出を抑え疼痛作用をあらわすといった仕組みを持っています。線維筋痛症以外にも帯状疱疹後や脊柱管狭窄症による疼痛、糖尿病性神経障害などの神経の痛みを改善する目的で使われ、全般性不安障害に対しても効果が期待できるとされるなど、痛みだけでなく不安などの症状を伴う線維筋痛症に対して有用な薬となっています。

他の抗けいれん薬ではプレガバリンに類似した作用の仕組みなどを持つガバペンチン(商品名:ガバペン®など)、以前から片頭痛偏頭痛)予防など「痛み」の改善目的でも使われているクロナゼパム(商品名:ランドセン®、リボトリール®)、三叉神経痛などにも使われるカルバマゼピン(主な商品名:テグレトール®)などが治療の選択肢になる場合も考えられます。

副作用については、抗けいれん薬は主に中枢へ作用することにより効果をあらわすため、眠気やめまいなどの精神神経系症状には注意が必要です。車の運転を控えるなど日常生活の中での注意が指示される場合もあるため、医師や薬剤師からしっかりと説明を聞いておくことが大切です。

ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液含有製剤(商品名:ノイロトロピン®)

ノイロトロピン®は日本で開発された薬で、ワクシニアウイルスを接種した家兎の炎症組織から抽出・分離した成分から造られた製剤です。腰痛症変形性関節症、脊柱管狭窄症などによる痛みの改善に使われ、神経障害性疼痛のひとつである帯状疱疹後神経痛にも保険で承認されています。ノイロトロピンは中枢性の鎮痛機構である下行性疼痛抑制系神経を活性化する作用、局所で痛みを引き起こすブラジキニンという発痛物質の遊離を抑制する作用、末梢循環の改善作用などによって疼痛改善効果が期待でき、線維筋痛症に対しても有用とされています。

副作用としては吐き気や食欲不振などの消化器症状などがあらわれることもありますが、抗うつ薬や抗けいれん薬などに比べて比較的副作用への懸念が少ない点もメリットといえます。

トラマドール

トラマドールは「オピオイド」といって痛みなどに深く関わる受容体に作用することで鎮痛効果などをあらわす薬のひとつです。トラマドール単独の製剤(商品名:トラマール®、ワントラム®)の他、解熱鎮痛成分であるアセトアミノフェンとの配合剤(商品名:トラムセット®配合錠)も使われています。

オピオイド系の鎮痛薬はその有用性の一方で依存性などに注意が必要となりますが、トラマドールは依存性や精神作用への懸念が少なく、セロトニンやノルアドレナリンへの活性化作用もあらわすと考えられていることからも、線維筋痛症に対して有用とされています。

ただし、副作用として眠気やめまいなどの精神神経系症状、吐き気や便秘などの消化器症状などに対して注意は必要です。

その他の薬

この他にも、個々の痛みの状態や随伴症状によっても使われる薬が変わってくる場合があります。

デキストロメトルファン(商品名:メジコン®など)は一般的には鎮咳薬(咳止め)として使われている薬ですが、中枢への作用などから中枢神経が過敏になるのを抑えることで疼痛軽減効果が期待できると考えられています。

またラロキシフェン(主な商品名:エビスタ®)などのSERM(サーム)と呼ばれている薬は一般的に骨粗鬆症(こつそしょうしょう)治療に使われている薬ですが、閉経後の線維筋痛症による痛みや倦怠感などの改善に対しても有用と考えられています。

抗けいれん薬のガバペンチンを元に造られたガバペンチンエナカルビル(商品名:レグナイト®)は一般的にはむずむず脚症候群レストレスレッグス症候群:RLS)の治療に使われる薬ですが、線維筋痛症ではRLSのような症状を伴うケースもあり治療の選択肢になる場合もあります。

このように一般的には他の病気や症状に対して使われている薬も線維筋痛症の治療に使われることも考えられます。薬の種類によっても副作用などの注意事項が変わってくるため、医師や薬剤師から事前にしっかりと説明を聞いておくことが大切です。

漢方薬

線維筋痛症の痛みには、痛みの抑制神経回路である下行性疼痛抑制系の異常が関わっているとされています。このため、抗うつ薬やプレガバリン(商品名:リリカ®)などの神経に作用する薬が有効とされていますが、他に漢方薬を使う場合もあります。

漢方医学では個々の体質や症状などを「証(しょう)」であったり、「気・血・水(き・けつ・すい)」という言葉を用いて表現することがあります(一般的に「気」は呼吸や体内のガス、精神神経系、内分泌系など生命エネルギーを、「血」は血液や血流などを、「水」は血液以外の体液を、指しているとされる)。

線維筋痛症では血が滞っている「瘀血(おけつ)」であったり、気の循環が停滞している「気うつ」などの状態であることが多いとされています。ここではこれらの状態やそれに伴う症状に対して効果が期待できる漢方薬をいくつか挙げてみていきます。

■疎経活血湯(ソケイカッケツトウ)

方剤名に「血」の文字もあるように体内の経路の疎通を良くし血を活かすなどの効果が期待でき、筋肉や神経の痛みに対して使われる漢方薬です。

鎮痛・鎮痙などの作用をあらわす芍薬(シャクヤク)や利尿作用などをあらわす地黄(ジオウ)、血の巡りを改善する当帰(トウキ)など計17種類の生薬によって構成されています。

関節や神経の強い痛みが全身に広がるような症状に対して有用とされ、特に冷えによって痛みが増強するような症状に適するとされることから線維筋痛症に対しても効果が期待できる漢方薬のひとつです。

■抑肝散(ヨクカンサン)

元々は神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症などに使われていた漢方薬ですが、慢性的な疼痛に対しても使われるようになってきています。

方剤名にある「肝」は「怒り」や「興奮」などをあらわす言葉で「怒りや興奮を抑える薬=抑肝散」という名前の由来があり、一般的には神経過敏で興奮しやすく、怒りやすい、イライラする、眠れない・・・などの精神神経症状を訴える場合に使われます。

線維筋痛症における筋肉の攣縮は肝の機能失調によるものとも考えられ、抑肝散には線維筋痛症における心身症状の改善効果が期待できるとされています。

近年、一部の漢方薬では成分の生化学的作用に関する研究が行われ、その作用の仕組みが徐々に解明されてきているものがあります。抑肝散もそのひとつで、脳内における神経伝達物質であるセロトニンの機能低下に対する改善作用や、興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸への作用などが明らかにされてきています。

■当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)

血の巡りなどを改善する当帰(トウキ)や鎮痛・鎮静作用などをあらわす芍薬(シャクヤク)などの生薬から構成される当帰四逆湯(トウキシギャクトウ)に呉茱萸(ゴシュユ)と生姜(ショウキョウ)を加えた漢方薬で痛みに対して改善効果が期待できます。方剤名にある四逆は四肢の末端から逆に肘膝以上まで冷えを呈することをあらわし、手足の冷えなどがあり四肢の末端の痛みや冷感などを伴うような頭痛や腰痛などに対して改善効果が期待できるとされています。線維筋痛症の中でも冷えや気の異常である気うつなどを伴うような状態に適すると考えられます。

■加味逍遙散(カミショウヨウサン)

婦人科領域でもよく使われる漢方薬のひとつで、体力が中等度からやや虚弱気味で冷え、めまい、不眠、イライラ、頭痛などがあるような証に適するとされます。

抗ストレス作用や鎮静・鎮痛作用などをあらわす柴胡(サイコ)、血の巡りを改善する当帰(トウキ)などの構成生薬を含み一般的には月経困難症更年期障害自律神経失調症不妊症などの治療に使われています。気の循環が停滞した状態の「気うつ」によって引き起こされる痛みは身体のあちこちに移動する傾向があるとされますが、加味逍遙散は気うつの状態でイライラなどを伴うような痛みなどに対しても改善が期待できるとされています。

■その他の漢方薬や生薬について

血の異常である瘀血の状態に伴う痛みには桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)、当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)などが使われる場合もあります。また水の異常である水滞(水毒)では口渇やむくみ、めまいなどを伴うことがありますが、このような状態には体内の水分を分散させる利水作用をあらわす五苓散(ゴレイサン)などが有用であることも考えられます。

その他、漢方薬の構成生薬としてだけでなく加工ブシ末のように単独で使われることもある附子(ブシ)にも線維筋痛症による痛みを改善する効果が期待できると考えられています。附子は温熱作用、鎮痛作用、強心作用、利水作用、自律神経への作用など多様な作用をあらわし、特に局所的に冷えが続くような慢性疼痛に対して有用とされています。附子は線維筋痛症以外にも冷え症の改善や関節リウマチや変形性関節炎などによる疼痛の改善など、冷えや痛み、水分代謝の悪化に伴う症状に対して有用とされています。桂枝加朮附湯(ケイシカジュツブトウ)、牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)などの構成生薬としても使われているためこれらの漢方薬が治療の選択肢になることも考えられます。

ここで挙げた漢方薬以外にも芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)など「痛み」に対して効果が期待できる漢方薬はあり、症状や体質などによっては選択肢となる場合も考えられます。線維筋痛症が引き起こされる背景には身体的な外傷や過重な負荷を受けた体験、心理的や社会的なストレスなど様々なものがあり、これらの違いによって痛みの性状が変化することも考えられます。より個々の状態に適した漢方薬によって治療を行う上でも、事前に医師や薬剤師に痛みの性状以外にも自身の体質や痛みを引き起こしていると考えられる背景などを話しておくことは大切です。

■漢方薬にも副作用はある?

一般的に安全性が高いとされる漢方薬も「薬」の一つですので、副作用がおこる可能性はあります。

例えば、生薬の甘草(カンゾウ)の過剰摂取などによる偽アルドステロン症(偽性アルドステロン症)や黄芩(オウゴン)を含む漢方薬でおこる可能性がある間質性肺炎や肝障害などがあります。しかしこれらの副作用がおこる可能性は非常に稀であり、万が一あらわれても多くの場合、漢方薬を中止することで解消されます。

また漢方医学では個々の症状や体質などを「証(しょう)」という言葉であらわしますが、漢方薬自体がこの証に合っていない場合にも副作用があらわれることは考えられます。

例えば、痛みや冷えなどに対して有用な附子(ブシ)は強心作用も期待できますが、場合によっては動悸やのぼせなどの症状があらわれる可能性もあります。持病で心疾患などを持つ場合にはより注意が必要です。

漢方薬を服用することによってもしも気になる症状があらわれた場合には、医師や薬剤師に相談することが大切です。