こうにょうさんけっしょう
高尿酸血症
血液中の尿酸の濃度が高い状態。痛風や腎障害、尿路結石などの原因となりうる
8人の医師がチェック 70回の改訂 最終更新: 2023.07.16

高尿酸血症の治療:食事療法、運動療法、薬物療法など

高尿酸血症の治療には食事療法、運動療法、薬物療法があります。食事療法は適切な食事を行うことで高尿酸血症の改善を目指します。運動療法では有酸素運動を中心に行います。薬物療法には尿酸合成阻害薬や尿酸排泄促進薬があります。

1. 高尿酸血症の治療には何があるか

高尿酸血症の治療には食事療法、運動療法、薬物療法があります。

高尿酸血症はプリン体を多く含むものばかり食べていたり、お酒を飲み過ぎたりすると起こりやすいです。また、高尿酸血症は肥満の人で起こりやすいことも分かっています。食事療法はプリン体の摂り過ぎやお酒の飲み過ぎに注意するなど、適切な食事を行うことで高尿酸血症の改善を目指す治療法です。

運動療法は高尿酸血症の中でも肥満がある方で主に行われます。ジョギングなどの有酸素運動を行います。

薬物療法は薬により血液中の尿酸を改善させる治療法で痛風発作を繰り返す場合などに行われます。

以下で食事療法、運動療法、薬物療法の内容を詳しく説明します。

2. 食事療法

プリン体は尿酸のもととなる物質であり、プリン体を多く含むものを食べ過ぎたり、アルコール飲料を飲みすぎたりすると血液中の尿酸値の上昇の原因になります。また、肥満と高尿酸血症は密接に関わるため、カロリーの過剰摂取にも注意が必要です。食事療法は高尿酸血症の基礎となるものであり、あとで述べる薬物療法を行う場合においても欠かせないものになります。高尿酸血症の食事療法では以下のポイントが重要です。

  • プリン体を多く含むものを食べ過ぎない
  • 適切な量のカロリー(エネルギー)を摂取する
  • 脱水に気をつける
  • アルコール飲料を摂取しすぎない

以下ではこれらのポイントについて詳しく説明していきます。

プリン体を多く含むものを食べ過ぎない

プリン体は尿酸のもととなる物質であり、高尿酸血症の治療の時には食べ過ぎに気をつける必要があります。具体的には1日あたりのプリン体の摂取量が400mgを超えないようにするのが目標とされています。

また、100gあたりプリン体を200mg以上含む食べ物は高プリン食品と呼ばれ、高尿酸血症の治療の時に食べ過ぎに気をつける食品の一つになります。高プリン食品に該当するもの一例を以下に挙げます。

  • レバー
  • カツオ
  • マイワシ
  • ちりめんじゃこ
  • 白子

食品中に含まれるプリン体の含有量は「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」でも紹介しています。

高尿酸血症の食事療法ではレバーなどの内臓類や魚の干物などプリン体を多く含むものを摂り過ぎないように注意してください。

適切な量のカロリー(エネルギー)を摂取する

高尿酸血症の治療において肥満の解消は重要です。そのため、高尿酸血症の食事療法ではカロリーの摂りすぎに注意する必要があります。具体的に1日の目標カロリー摂取量は以下のように計算されます。

  • 目標カロリー摂取量=標準体重×身体活動量
    • 標準体重=身長(m)x身長(m)x22
    • 身体活動量は以下の通り
      • 35(重い労作、力仕事が多い)
      • 30(普通の労作、立ち仕事が多い)
      • 25(軽い労作、デスクワークが多い)

例えば、身長170cmでデスクワークが多い仕事をしている人の1日の目標カロリー摂取量は、1.7x1.7x22x25≒1600kcalになります。このように身長から計算される標準体重と身体活動量をもとに目標カロリー摂取量は計算されます。

脱水に気をつける

脱水は血液中の尿酸の濃度を高め、尿酸の結晶をできやすくさせます。尿酸の結晶が関節や皮膚にできると関節の痛みや皮膚のしこりの原因にもなるため、高尿酸血症の人は脱水にならないように注意する必要があります。喉が渇いたと感じたら我慢せずにしっかりと水を飲むようにしてください。

アルコール飲料を摂取しすぎない

アルコール飲料は摂取量が増えると、血液中の尿酸値の上昇を引き起こし、痛風の頻度が増えるとされています。そのため、高尿酸血症の人ではアルコール飲料を飲みすぎないように注意が必要です。尿酸値へ影響が出にくい1日のアルコール飲料の目安量としては以下のようになります。

食品 目安
日本酒 1合
ビール 500ml
ウィスキー 60ml

高尿酸血症で飲酒量が多い自覚のある場合は、上記のアルコール量を意識するようにしてください。

栄養指導

栄養指導(栄養指導外来)では、食事療法を行う上で目標とする摂取カロリー、栄養素の量などの説明を病院やクリニックで受けることができます。栄養指導は栄養に関する専門知識を持つ管理栄養士により行われます。栄養指導を受けることで、どのような食事を摂取したら良いか、具体的な献立の説明も受けることができ、食事療法をより効果的に行うことができます。栄養指導のご希望がある方は担当の医師と相談してみてください。

3. 運動療法

肥満の人は高尿酸血症を起こしやすいです。また肥満がある場合は体重を減量することで高尿酸血症が改善することが多く、そのための運動療法としては有酸素運動が勧められています。有酸素運動とは十分な呼吸で酸素を取り込みながら行う運動のことです。有酸素運動の一例を以下に挙げます。

  • ジョギング
  • 速歩
  • 水泳
  • エアロビクス
  • サイクリング

有酸素運動は長時間継続可能な強度の運動です。有酸素運動は肥満解消効果が高い運動であることから、肥満がある高尿酸血症の人で推奨されています。一方、ウエイトトレーニングのように運動をした後に手足がぱんぱんになる運動は無酸素運動と言います。無酸素運動は尿酸値をあげるという報告もあり、高尿酸血症の人には適していません。もし、運動をした後に手足がぱんぱんになる場合には運動強度として強すぎる可能性があります。

4. 薬物療法

痛風発作を繰り返す高尿酸血症では薬物療法が選択される場合があります。薬物療法で使われる薬は大きく4種類に分けられます。

  • 尿酸排泄促進薬
  • 尿酸生成抑制薬
  • 尿アルカリ化薬
  • 漢方薬

尿酸生成抑制薬は尿酸の生成を抑え、尿酸排泄促進薬は尿酸の排泄を促すことで尿酸値を下げる効果があります。尿アルカリ化薬は尿酸排泄促進薬を使う時など尿路結石ができやすい時に尿路結石を予防する目的で使われます。漢方薬は高尿酸血症になりやすい体質を改善するために使われます。また高尿酸血症は肥満がある人で起こりやすいとされていますが、肥満の改善を目的として漢方薬が使われることもあります。

尿酸生成抑制薬と尿酸排泄促進薬は高尿酸血症の原因に応じて使い分けることがあります。高尿酸血症の原因は3種類に分類できます。

  • 尿酸産生過剰型:尿酸が多く作られている
  • 尿酸排泄低下型:尿酸の排泄が少ない
  • 混合型:尿酸の産生過剰・排泄低下の両方が関わっている

高尿酸血症の原因がこれらのどれであるかは、血液検査や尿検査を行うことでわかります。尿酸生成抑制薬は尿酸産生過剰型に対して、尿酸排泄促進薬は尿酸排泄低下型に対して使われることが多いです。

以下で尿酸生成抑制薬、尿酸排泄促進薬、尿アルカリ化薬、漢方薬に分類される薬について説明します。

尿酸生成抑制薬(主な商品名:ザイロリック®、フェブリク®、ウリアデック®、トピロリック®)

プリン体が尿酸になる過程ではキサンチンオキシダーゼという酵素が関わっています。尿酸生成抑制薬はキサンチンオキシダーゼを阻害することで尿酸が作られないようします。以下では尿酸生成抑制薬に分類される薬について具体的に説明します。

◎アロプリノール

アロプリノール(主な商品名:ザイロリック®、サロベール® など)は1960年代から使われている尿酸生成抑制薬です。現在でも多くの患者さんが使用しています。アロプリノールは尿酸の生成を抑える薬なので、血中の尿酸値の低下とともに,尿中の尿酸排泄量も減少するため、あとで述べる尿酸排泄促進薬のような尿路結石の副作用は少ないと考えられています。アロプリノールの注意点としては、腎機能の悪い人が通常用量内服すると中毒症状があらわれることがあります。そのため、腎機能に合わせた薬剤量の調整が必要です。副作用には重症薬疹、血球減少、肝障害、腎障害、間質性肺炎横紋筋融解症などがあります。

◎フェブキソスタット、トピロキソスタット

フェブキソスタット(商品名:フェブリク®)、トピロキソスタット(商品名:ウリアデック®、トピロリック®)はアロプリノールから約40年ぶりに国内で承認された尿酸生成抑制薬です。フェブキソスタット、トピロキソスタットはアロプリノールと異なり、軽度〜中等度に腎機能が低下している場合でも通常用量で内服可能です。これはアロプリノールは腎臓からの排泄が主だったのに対し、フェブキソスタットとトピロキソスタットは肝臓からも代謝されるため、腎機能が低下しても薬が血液中に蓄積しにくいためです。副作用には血球減少、肝障害、腎障害、手足のしびれ、関節痛などがあります。また、アザチオプリン(商品名:イムラン®など)やメルカプトプリン(商品名:ロイケリン®など)と同時に飲むと血球減少が悪化することがあるため、飲み合わせに注意が必要です。副作用や飲み合わせのことで気になることがあれば、担当の医師、薬剤師に相談してみてください。
また、持病(先天性心疾患、慢性腎疾患、甲状腺機能低下症先天性代謝異常症など)のある小児や肥満児では、成人期に痛風発症する可能性を考えて小児期から尿酸値をコントロールする必要があります。フェブキソスタットは小児にも使用できる唯一の尿酸降下薬です。

尿酸排泄促進薬

身体の中の余分な尿酸は、腎臓で尿の中に排泄されることで溜まらないようになっています。しかし、腎臓が何らかの理由で障害されると、腎臓からの尿酸の排泄が落ち高尿酸血症の原因になります。このような高尿酸血症を尿酸排泄低下型の高尿酸血症と呼びます。

尿酸排泄促進薬は尿酸の尿への排泄量を増やすことで血液中の尿酸値を下げる薬です。尿酸排泄低下型の高尿酸血症のように、尿への排泄量が少なくなっている時に適した薬です。

ただし、尿酸排泄促進薬の問題点に尿路結石が起こりやすくなることが挙げられます。これは尿酸排泄促進薬により排泄量の増えた尿酸が結石を作ることにより起こります。尿酸排泄促進薬を飲んでいて血尿、背中の痛み、尿道の痛みなどを自覚した場合には、尿路結石を起こしている可能性があるので、担当の医師、薬剤師に相談するようにしてください。尿酸排泄促進薬を使う時には尿路結石を予防するため、あとで述べる尿アルカリ化薬を一緒に使う場合もあります。以下で尿酸排泄促進薬について詳しく説明します。

◎ベンズブロマロン

ベンズブロマロン(主な商品名:ユリノーム®)は尿酸排泄促進薬の中で尿酸排泄作用が最も強いとされている薬です。

ベンズブロマロンの注意点の一つに薬の飲み合わせの問題があります。具体的には抗凝固薬であるワルファリンカリウム(主な商品名:ワーファリン)などと一緒に飲むと薬の濃度に影響が出る場合があります。

また、ベンズブロマロンの副作用として注意しなくてはならないものとして肝障害があります。そのため、ベンズブロマロンの服用開始から半年程度は血液検査などで肝障害の出現がないか確認しておく必要があります。肝障害の初期症状としては、倦怠感、食欲不振、発熱、黄疸発疹、吐き気などがあり、これらの症状が続く場合は放置せず、医師や薬剤師に相談するようにしてください。

◎プロベネシド

プロベネシド(商品名:ベネシッド®)は尿酸排泄促進薬の一つです。副作用は比較的少ないとされていますが、食欲不振、皮膚炎アレルギー反応などが報告されています。プロベネシドはもともと抗菌薬のペニシリンの排泄抑制(排泄を抑え、ペニシリンの効果を高めること)を目的として開発された薬のため、ペニシリン系抗菌薬やペニシリンと類似したセフェム系抗菌薬などの効果を必要以上に高めてしまう可能性があります。ペニシリン系抗菌薬やセフェム系の抗菌薬は非常に多くの症状や治療で使われているものであり、ベネシッドを服用中に他の医療機関や診療科を受診した際は、この薬を服用していることを医師や薬剤師に伝えるようにしてください。

◎尿酸生成抑制薬と尿酸排泄促進薬の注意点

尿酸生成抑制薬と尿酸排泄促進薬は尿酸値を下げる作用のある薬ですが、これらの薬は痛風発作が起きている時には、基本的に開始しません。これは痛風発作時に尿酸値を変動させると痛風発作が悪化することがあるためです。痛風発作時には炎症を抑える治療を優先し、痛風発作が落ち着いたところで、尿酸値を下げる薬が開始されます。

尿アルカリ化薬(主な商品名:ウラリット®、ウラリット®U)

尿アルカリ化薬は尿をアルカリ性にすることで、尿酸の結晶(尿酸結石)による尿路結石を防ぐ薬です。

尿酸結石ができやすくなる要因のひとつに尿が強い酸性になること(酸性尿)があります。尿は通常では弱い酸性ですが、一般的に酸性が強くなるほど尿酸による結晶ができやすくなり、逆に尿を適度にアルカリ性へと傾けた状態では尿酸の結晶ができにくくなります。

尿アルカリ化剤として主に使われているのは、クエン酸カリウムとクエン酸ナトリウムの配合製剤(主な商品名:ウラリット®)です。クエン酸が体内で代謝されると重炭酸塩という物質がつくられますが、この重炭酸塩が尿などをアルカリ性へと変化させる主な物質になると考えられています。以下ではクエン酸カリウムとクエン酸ナトリウムの配合製剤について説明します。

◎クエン酸カリウムとクエン酸ナトリウムの配合製剤

クエン酸カリウムとクエン酸ナトリウムの配合製剤には、錠剤(主な商品名:ウラリット®配合錠)と散剤(主な商品名:ウラリット®U配合散)の剤形があります。散剤は、なんらかの理由によって嚥下機能(飲み込む機能)が低下している場合などにおけるメリットが考えられますが、主成分が「クエン酸」であるため「酸味(及び塩味)」があり、フィルムコーティングされている錠剤に比べて酸味や塩味を感じやすく、特に日頃から酸っぱいもの(塩からいもの)が苦手という場合には服用に際し注意が必要です。クエン酸は柑橘類などの食品にも含まれている身近な物質で、酸味があり、調味料として使われることもあります。

薬としてのクエン酸カリウムとクエン酸ナトリウムの配合製剤は、クエン酸を主成分としていることもあり、一般的に安全性は高いとされている薬ですが、下痢や胃の不快感などの消化器症状などには注意が必要です。また頻度は非常に稀とされていますが、高カリウム血症(及び高カリウム血症に伴う脈の乱れや倦怠感など)が引き起こされることも考えられ、腎機能が低下してる場合などでは特に注意が必要です。

漢方薬

高尿酸血症の治療では、体内で尿酸がつくられる過程を阻害したり、尿酸の排泄を促したりする薬が主に使われています。漢方薬は高尿酸血症になりやすい体質を改善するために使われることがあります。また高尿酸血症は肥満がある人で起こりやすいとされていますが、肥満の改善を目的として漢方薬が使われることもあります。

漢方医学では「気・血・水(き・けつ・すい)」という言葉を使って生命活動や体内の状態を表現することがありますが、例えば瘀血(おけつ)といって体内の「血(血液など)」が滞っている状態では血液中の尿酸値が高くなることも考えられます。漢方医学では通常、健康な状態からの隔たりを判断(診断)し、その病態に対して適切な漢方薬を使うことなどによって治療を行いますが、これにより瘀血や肥満などの状態を改善することも期待できます。ここでは高尿酸血症を引き起こす要因や病気を改善する効果が期待できる漢方薬をいくつか挙げてみていきます。

◎大柴胡湯(ダイサイコトウ)

肥満を改善する漢方薬としても知られ、比較的体力があり(実証)、便秘がちで、上腹部の張りや苦しさ、耳鳴りや肩こりなどを伴うような場合に適するとされています。

柴胡(サイコ)や黄芩(オウゴン)といった脂質代謝改善作用などが期待できる生薬を含み、肥満または筋肉質で、お腹が緊張しているような状態における胆石症、胆のう炎、肝障害、消化性潰瘍、胃腸炎、蕁麻疹動脈硬化症などに使われることも考えられます。肥満は高尿酸血症と深く関わるとされ、これらを改善することで血液中の尿酸値を改善する効果などが期待できる場合があります。

大柴胡湯は構成生薬に緩下作用をあらわす大黄(ダイオウ)を含みます。そのため、体力がやや低下していて、お腹が下りやすいなどの体質がある場合には、下痢などの消化器症状が起こりやすくなることが考えられ、注意が必要です。

◎防風通聖散(ボウフウツウショウサン)

お腹に皮下脂肪が多く便秘がちであるような、動悸、肩こり、のぼせ、肥満むくみなどに用いられる漢方薬です。「皮下脂肪」「肥満」といった言葉からもわかるように、脂質などの代謝を改善し内臓脂肪の燃焼を助ける作用などが期待できます。

先ほどの大柴胡湯でも少しふれましたが、肥満と高尿酸血症の関わりは深いとされ、肥満や脂質代謝を改善することで高尿酸血症が改善することも考えられます。

防風通聖散は抗炎症作用や中枢抑制作用などが期待でき主薬にもなっている防風(ボウフウ)をはじめ、計18種類と比較的多くの生薬成分を含んでいることも特徴のひとつです。

防風通聖散は通常、実証といって体力が比較的充実しているような状態に適する漢方薬で、緩下作用(緩やかにお腹を下す作用)をあらわす大黄(ダイオウ)を構成生薬として含むため、便秘を改善する効果も期待できます。逆に体力が虚弱気味で日頃からお腹が下りやすいような体質がある場合には、下痢などの消化器症状があらわれやすくなることも考えられます。防風通聖散は一般用医薬品(市販薬)としても比較的多くの商品が発売されていて、方剤名そのままの名前以外にも「ナイシトール®」などの商品名で発売されています。証(体質や症状など)に適する場合には確かに内臓脂肪の改善などの有益な効果が期待できますが、単に「肥満を解消する(痩せる)」などのイメージで服用すると副作用などの不利益が生じることもあるため、注意が必要です。

◎その他、高尿酸血症の改善に期待ができる漢方薬

肥満などを改善することで高尿酸血症の改善が期待できる漢方薬として、桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)、通導散(ツウドウサン)、三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ)などが有用となることも考えられます。桃核承気湯、通導散、三黄瀉心湯は便秘肥満の改善効果が期待でき、高血圧(及び頭痛や肩こりなどの高血圧の随伴症状)や月経不順などに使われることもあります。高血圧も肥満同様、高尿酸血症へ深く関わるとされることもあり、これらの漢方薬によって高尿酸血症の改善が期待できる場合も考えられます。

◎漢方薬にも副作用はある?

一般的に安全性が高いとされる漢方薬も「薬」の一つですので、副作用がおこる可能性はあります。

例えば、生薬の甘草(カンゾウ)の過剰摂取などによる偽アルドステロン症(偽性アルドステロン症)や黄芩(オウゴン)を含む漢方薬でおこる可能性がある間質性肺炎や肝障害などがあります。ただし、これらの副作用がおこる可能性は比較的まれとされ、万が一あらわれても多くの場合、漢方薬を中止することで解消されます。

漢方医学では個々の症状や体質などを「証(しょう)」という言葉であらわしますが、漢方薬自体がこの証に合っていない場合にも副作用があらわれることは考えられます。

大柴胡湯(ダイサイコトウ)や防風通聖散(ボウフウツウショウサン)などの例にもあるように肥満便秘などを改善する漢方薬には大黄(ダイオウ)が含まれることがあり、もともとお腹が下りやすい体質がある場合には下痢などの消化器症状が起こりやすくなることが考えられます。また大黄は早産流産などの危険性から妊婦に対して特に注意する生薬成分です。加えて大黄の成分の一部は母乳中に移行するため、仮にその母乳を乳児が飲んだ場合、乳児が下痢を引き起こす懸念があり、授乳婦に対しても注意が必要な生薬成分でもあります。

漢方薬は通常、個々の体質や症状などを十分考慮した上で使われ、体質に合わない場合などは変更・中止するなどの適切な対応がとられます。もしも気になる症状があらわれた場合は医師や薬剤師に相談するようにしてください。

5. 高尿酸血症の薬はいつまで飲み続けるのか?

尿酸値を下げる薬は月〜年単位で内服することも珍しくありません。

尿酸値が良い状態が長い期間続いている場合には、高尿酸血症の治療薬をやめられる場合があります。ただし、薬の中止によって、尿酸値が戻ってしまうこともあります。高尿酸血症の薬の中止を希望される場合は、担当の医師と相談するようにしてください。

6. 高尿酸血症を指摘された人や心配な人は何科に行けばいい?

高尿酸血症に関連する専門科は内科です。高尿酸血症は内科の医師であれば診断、治療が可能な病気であり、受診先としては内科のクリニックや病院が適しています。高尿酸血症は大きな病院でなくとも診断や治療を受けることが可能です。

7. 高尿酸血症に関するガイドラインはある?

近年、どこの病院でも一定水準以上の医療を受けられるようにするため、さまざまな病気に対してガイドライン(治療指針)が作成される時代となっています。ガイドラインを参考に治療が行われます。高尿酸血症の診断・治療の指針は「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」として発表されています。