へるぱんぎーな
ヘルパンギーナ
夏から初秋にかけて流行し、突然の高熱、口腔内のできものや発赤を主症状とする咽頭炎で、小児に多くみられる
12人の医師がチェック 38回の改訂 最終更新: 2018.06.23

ヘルパンギーナの症状について:発熱、のどの痛み、口内炎、発疹など

ヘルパンギーナは、突然の高熱と口内炎発症します。のどや口の中が痛み、食事がとりにくくなることがあります。多くが1週間前後で自然に完治しますが、まれに合併症を起こすこともあります。ヘルパンギーナと似た症状の出る病気には、手足口病プール熱水ぼうそう水痘)などがあります。

1. ヘルパンギーナで起こりやすい症状

ヘルパンギーナの主な症状は、突然の高熱と口内炎です。口の中は痛みを伴うことが多く、痛みで食事がとりにくくなることがあります。また、嘔吐や下痢などの消化器症状が出ることもあります。

発熱

ヘルパンギーナは、突然の発熱で発症します。38-40℃の高熱が出ます。熱の出始めにけいれんすること(熱性けいれん)があります。熱は2-3日間で下がります。

熱を下げて熱による苦痛を和らげるには、アセトアミノフェン(商品名:カロナール®など)などの解熱鎮痛薬を投与します。アセトアミノフェンを投与すると、約30分後には効果が現れ、4-5時間程度持続します。一時的に熱を1℃程度下げ、熱による症状を和らげる効果があります。アセトアミノフェンは子どもにも安全に使える薬ですが、大量に使用すると肝機能障害などの副作用が出ることがあります。

口内炎

ヘルパンギーナにかかると口の中に発疹口内炎)が出ます。

口の中の粘膜に丘疹(小さな皮膚の盛り上がり)ができ、1日以内に1-2mm大の小さな水疱(水ぶくれ)になります。水疱はのどの奥の方にできやすいですが、まれに上あごや舌、頬の内側の粘膜に出ることもあります。水疱の数は大抵10個以下です。水疱は1日後には破裂し、3-4mm大の潰瘍(粘膜の表面がえぐれた状態)になります。口内炎は5-6日間で良くなります。

水疱が破れて潰瘍になると痛みを伴い、食事をしにくくなることがあります。口の中に痛みがあっても言葉で訴えることが難しい乳幼児では、食事の際に飲み込みにくそうにしている、唾液が飲み込めずによだれが増える、口の中を気にしている、食べ物を口に入れると不機嫌になる、食べたがらないなどの様子がみられたら、口内炎による痛みがあるのかもしれません。

突然高熱が出て、口の中が痛そうな様子があれば、ヘルパンギーナの可能性があります。小児科か内科を受診してください。

痛みで食事が進まない場合には、食事の30分程前にアセトアミノフェン(商品名:カロナール®など)を内服すると痛みが軽減し食べられるようになることがあります。

また食べるものをあまり噛まずに飲み込めるものにすると、痛みが感じにくくなり食べられることがあります。プリンやゼリー、アイスクリーム、豆腐などが良いでしょう。また酸っぱいものは染みるので、オレンジジュースなどは避け、牛乳や麦茶などを飲むようにします。水分しかとれないときには、経口補水液(商品名:オーエスワン®など)を利用するのも良いでしょう。

様々な工夫をしても痛みが強く水も飲めないときには、脱水症になることがあります。水も飲めずに尿の量が減り、泣いても涙が出ない、元気がなくぐったりしているときなどは、脱水症の恐れがあります。小児科か内科をもう一度受診してください。

咽頭痛(のどが痛い)

ヘルパンギーナにかかると、のどが赤く腫れ、痛くなることがあります。口内炎の痛みと同様に、のどの痛みがあっても言葉で訴えることが難しい乳幼児では、食事の際に飲み込みにくそうにしている、唾液を飲み込めずによだれが増える、口の中を気にしている、食べ物を口に入れると不機嫌になる、食べたがらないなどの様子がみられたら、のどが痛いのかもしれません。咽頭痛が強くて食事が進まない場合にも、食事の30分程前にアセトアミノフェン(商品名:カロナール®など)を内服すると痛みが軽減し食べられるようになることがあります。

嘔吐・下痢

ヘルパンギーナにかかると嘔吐や下痢などの消化器症状が出ることがあります。口の中やのどの痛みがあっても言葉でうまく説明のできない乳幼児では、ヘルパンギーナにかかっていても周りが気付く症状が発熱と嘔吐や下痢だけで、急性胃腸炎との区別が難しいことがあります。発熱と嘔吐や下痢に加えて、食事の際に飲み込みにくそうにしている、唾液を飲み込めずによだれが増える、口の中を気にしている、食べ物を口に入れると不機嫌になる、食べたがらないなどの症状がある場合には、ヘルパンギーナの可能性があります。小児科か内科を受診してください。

ヘルパンギーナによる嘔吐・下痢には対症療法(症状を和らげる治療)を行います。症状に合わせて、吐き気止めや整腸剤などを投与することがあります。吐き気止めにはメトクロプラミド(商品名:プリンペラン®など)、ドンペリドン(商品名:ナウゼリン®など)、整腸剤にはラクトミン製剤(商品名:ビオフェルミン®など)、酪酸菌(商品名:ミヤBM®など)などがあります。吐き気止めのドンペリドン(商品名:ナウゼリン®など)には坐薬もあるので、嘔吐してしまい薬が飲めないときには坐薬を使用することもできます。吐き気止めは長い間使っていると、身体の動きが悪くなるなどの副作用が出ることがありますが、症状のひどいときに数回使用する分には心配ありません。

発疹

ヘルパンギーナにかかった場合に発疹が出るのは基本的に口の中(口内炎)だけです。手足などの身体にも発疹が出た場合には、手足口病と考えます。手足口病についてはこの後「ヘルパンギーナと似た症状の出る病気」で説明します。

2. ヘルパンギーナでまれに起こる合併症

ある病気が原因となって起こる別の病気のことを合併症と言います。ヘルパンギーナの多くは1週間程度で自然に完治しますが、まれに合併症を起こすことがあります。

ウイルス性髄膜炎

ヘルパンギーナにかかるとまれにウイルス性髄膜炎を起こすことがあります。ウイルス性髄膜炎になると、発熱や頭痛、吐き気・嘔吐などの症状が出ます。熱の上がり下がりに関係なく頭痛が続く場合、髄膜炎の可能性があります。小児科か内科(神経内科)を受診してください。

髄膜炎が疑われた場合には、髄液検査が行われることがあります。髄液検査とは、腰の背骨の間から細い針を刺して、脳と脊髄の周りに流れている髄液を調べる検査です。

ヘルパンギーナによるウイルス性髄膜炎には特別な治療法はなく、症状を和らげるための対症療法を行います。

経過は良好で、多くが1週間以内に完治します。

急性心筋炎

ヘルパンギーナにかかるとまれに急性心筋炎を起こすことがあります。急性心筋炎になると、発熱や頭痛、筋肉痛などの風邪のような症状や、吐き気・嘔吐、下痢などの症状が出た数時間から数日後に、動いた際の息苦しさや足のむくみ、苦しくて横になれないなどの心不全症状や、胸の痛み、動悸や脈が飛ぶ、気を失うなどの不整脈による症状が出ます。ヘルパンギーナにかかった際にこのような症状が現れたら、小児科か内科(循環器内科)を受診してください。

急性心筋炎が疑われた場合には、基本的に入院をして安静にした上で、血液検査や胸部レントゲン検査、心電図検査心臓超音波エコー)検査、心臓MRI検査、心臓カテーテル検査による心筋生検(心臓の筋肉の一部を採取し顕微鏡で細胞を調べる検査)などの検査を行います。

急性心筋炎の治療は、状態に応じて、心不全不整脈に対する治療などを行います。心不全の治療には、利尿剤(体内の余分な水分を尿に出し心臓への負担を軽減する薬)や強心剤(心臓を刺激する薬)、心肺補助装置(心臓と肺の機能を補助する機器)などを使用します。不整脈の治療には、抗不整脈薬(脈を整える薬)や電気的除細動(除細動器を使って心臓に通電させ正常な脈に戻す方法)などを行います。

急性心筋炎は、軽症なものから突然死に至るものまで様々な経過を辿ります。

3. ヘルパンギーナと似た症状の出る病気

ヘルパンギーナと似た症状の出る病気には、ヘルパンギーナと同じ子どもの夏風邪の一つである手足口病プール熱の他、身体に水ぶくれ(水疱)のできる水ぼうそうなどがあります。

手足口病

手足口病もヘルパンギーナと同じエンテロウイルス属のウイルスによる感染症で、夏から初秋にかけて子どもに多く流行します。

ヘルパンギーナと同じように水ぶくれ(水疱)を中心とした発疹が出ますが、出る場所に違いがあります。ヘルパンギーナでは口の中が中心ですが、手足口病では口の中に加えて身体、特に手足にも水ぶくれが出ます。手のひらや足の裏に水ぶくれが出やすいのが特徴です。

また手足口病でも発熱することはありますが、ヘルパンギーナのように高熱が出ることはあまりありません。

手足口病にも抗ウイルス薬はなく抗菌薬も無効で、対症療法(症状を和らげる治療)を行います。

手足口病については「手足口病の詳細情報」でも説明しています。

プール熱(咽頭結膜炎)

プール熱も夏から初秋にかけて子どもに多く流行します。夏ほどではありませんが、冬に流行することもあります。プール熱アデノウイルスによる感染症です。

発熱や、咽頭炎(のどの炎症)による咽頭痛(のどの痛み)、結膜炎(白目とまぶたの裏側にある結膜の炎症)による目の充血・目やに・目の痛み・涙などが出ます。ヘルパンギーナとは異なり、口の中に水ぶくれ(水疱)ができることはありません。

プール熱の原因であるアデノウイルスには、迅速検査キットがあり、のどや結膜を検査用綿棒でこすり検査すると数分で結果が出ます。このアデノウイルス迅速検査を診断の参考にすることがあります。

プールを介して感染することもあるのでプール熱と呼ばれていますが、プールのみで感染するのではなく、接触感染飛沫感染で人にうつります。プール熱の感染力は非常に強く、学校保健安全法施行規則で「主要症状が消退した後二日を経過するまで」(症状がよくなった後2日間まで)の出席停止が定められています。

プール熱にも抗ウイルス薬はなく抗菌薬も無効で、対症療法(症状を和らげる治療)を行います。

水ぼうそう(水痘)

水ぼうそうも水ぶくれ(水疱)の出る感染症で、子どもに多くみられます。水ぼうそう水痘帯状疱疹ウイルスによる感染症です。水ぼうそうには決まった季節の流行はありません。

水ぼうそうの発疹は、ヘルパンギーナと同じように口の中に出ることもありますが、頭部を含む全身に多く出ます。手足よりも体幹に出やすく、手のひらや足の裏には出にくいです。また水ぼうそうでは、水ぶくれ(水疱)だけでなく、皮膚の赤み(紅斑)、小さな皮膚の盛り上がり(丘疹)、かさぶた(痂皮)といった様々な状態の発疹が同時に現れます。

水ぼうそうには抗ウイルス薬があります。12歳以下の健康な子どもであれば抗ウイルス薬を使わなくても自然に治りますが、13歳以上などでは抗ウイルス薬を投与することがあります。

水ぼうそうについては「水痘(みずぼうそう、水疱瘡)の詳細情報」でも説明しています。