梅毒でよくある疑問:疑わしい症状は?どこで検査ができる?など
梅毒と言われたら不安を感じる人も多いでしょう。以前は梅毒と言ったら治らない病でしたが、今は治ります。一方で、梅毒は主に性行為でうつる病気ですので、なかなか人に聞きづらいことも多いかと思います。梅毒についてよくある疑問について、このページで説明します。
目次
1. 性行為でうつる病気(性病)には何がある?
性行為でうつる病気を性病と言います。淋菌感染症やクラミジア
これらが代表的な性病です。いずれも性行為でうつります。各々の症状などに関しては「性病のページ」で詳しく説明していますので、気になる人は参考にして下さい。
複数の性病に同時にかかることがある
性病で注意するべきことは、性行為で相手にうつしてしまう点と、複数の性病が重なることがある点です。
性行為で相手にうつしてしまう点に関しては、セイファーセックスを徹底することで予防することができます。不特定多数との性行為を避けることと、性行為の際に正しくコンドームを用いることがセイファーセックス(より安全なセックス)と考えられます。
感染症が重複する点に関しては、検査をするときに注意を払う必要があります。例えば、淋菌感染症とクラミジア感染症が同時にあることは多いですし、梅毒とHIV感染症が同時にあることも多いです。このことを踏まえて、性病が疑わしい人にある程度網羅的に検査を受ける必要があります。梅毒が疑われて検査を受ける場合には、自分が何の病気の検査を受けて、結果はどうであったのかについて、お医者さんに確認するようにして下さい。
2. 梅毒は予防できる?
梅毒はほとんどの場合性行為でうつります。梅毒を予防したい人はセイファーセックスを心がけて下さい。
- 不特定多数との性行為を避ける
- コンドームを正しく使用する
セイファーセックスを行うことで、自分が感染をもらうことを避けられますし、相手に感染をうつしてしまうことも防げます。
3. 梅毒の検査はどこで受けるのがいい?市販の検査キットは?
梅毒を診断するために調べることは主に次の3点です。
- 梅毒を疑う症状があるかどうかの診察
細菌 学的検査- 顕微鏡検査
- 遺伝子検査(PCR法)
- 血液検査
- STS法(RPR、VDRLなど)
- TP法(TPHA、FTA-ABSなど)
梅毒は時期によって症状が出にくかったり検査が陽性になりにくくなったりしますので、3つの結果を踏まえて総合的に診断します。
これらの検査は大きな病院に行かなくてもできます。クリニックでも行うことができますし、保健所でも行うことができます。しかし、施設によっては検査できないところもありますので、検査を希望する人は事前に確認したほうが確実です。
なお、梅毒を自宅で検査できるキットが市販されています。この検査キットを用いても、結局結果を専門的に解釈する必要がありますし、治療するとなったら医療機関にかかる必要があります。それであればはじめから医者にかかったほうが良いので、市販の検査キットを用いることはあまりおすすめできません。
4. 梅毒は皮膚科?性病科?感染症内科?
梅毒は戦前戦後に猛威をふるった病気でしたが、その後患者数が激減していました。しかし、近年になって梅毒患者の増加が指摘されています。

参考資料:感染症発生動向調査
2022年には梅毒患者数は1万3千人を超え、誰もが対岸の火事とはいえない状況になっています。とはいえ、どんな状況だと梅毒を疑ったほうが良いかはよく分からないかもしれません。
以下の状況に当てはまったら、梅毒を疑って受診すべきタイミングだと思ってください。
検査は多くの性病科・皮膚科・泌尿器科・内科のいずれでも受けることができますが、検査できない医療機関もあります。実際に検査を受けられるかどうか、あらかじめ問い合わせてから受診すると良いです。
次に、梅毒の初期に特に気をつけるべき症状を説明しますので、心当たりがあれば梅毒の検査を必ず受けて下さい。
梅毒の症状:硬性下疳
梅毒の原因菌である梅毒トレポネーマ(Treponema Pallidum)が皮膚や粘膜の傷を介して体内に侵入して感染が成立すると、最初に出てくる症状が硬性下疳(こうせいげかん)です。硬性下疳は、皮膚が硬くなり痛みを伴わない小円形の

硬性下疳は第1期梅毒で起こる症状で、数週間から数ヶ月の無症状期(潜伏期)を経て出現します。
梅毒の症状:梅毒性バラ疹
数mmから1cm程度の大きさのピンクから赤い斑点(

梅毒性バラ疹は第2期梅毒で出現する症状です。
梅毒の症状:扁平コンジローマ
扁平(へんぺい)に隆起したイボが湿っぽくなり分泌液を出す状態になることがあります。この皮疹を扁平コンジローマと言います。分泌物には多くの梅毒トレポネーマを含みますので、周囲への感染性が高いため注意が必要です。
扁平コンジローマは第2期梅毒で出現する症状です。梅毒で見られる皮疹の中でも、特に扁平コンジローマは梅毒に特徴的です。
詳しくは「梅毒の症状:痛み、かゆみ、ぶつぶつ、鼻の変形、熱など」で説明しています。
5. 梅毒は治る?治らない?
梅毒は以前は治らない病気と考えられていました。しかし、梅毒に効果的な
何か疑わしいことがあった場合は、恥ずかしい気持ちを忘れて検査を受けるために医療機関を受診して下さい。
6. 梅毒は再発する?
梅毒は治療して治ったと思っても再発することがあります。症状がなくなったり軽くなったりすることで治療がうまくいったように見えて、実は完治していなかったということです。そのため、梅毒の診断を受けて治療を行ったあとは、必ず1-2年は通院して治療の効果が出ているか確認する必要があります。症状が改善していることと血液検査(STS法)の値が小さくなっていることを確認するようにして下さい。
また、梅毒が
7. 妊娠中に梅毒が疑われたらどうしたらいい?
TORCH(トーチ)症候群という言葉があります。TORCH症候群とは、妊婦が感染すると子どもに悪影響が出る可能性が高い病気をまとめた総称です。梅毒はTORCH症候群に含まれます。
梅毒患者が妊娠すると、子どもに影響が出て高確率で
また、CDC(Centers for Disease Control and Prevention:米国の疾病対策センター)では妊婦の最初の受診時に加えて、梅毒がハイリスクの妊婦に対しては妊娠の早期や晩期及び分娩時に梅毒の再検査を行うように推奨しています。検査の精度の問題や妊娠中の性行為による罹患の可能性もあるので、日本でも妊娠中に少なくとも2回の梅毒検査を受けることが望ましいと考えられます。
妊娠中に梅毒が疑われた場合には、過去に梅毒にかかったことがあるかどうかと梅毒の治療をしたことがあるかどうかを確認します。過去に梅毒に対する治療の経験がない場合には、妊娠中の梅毒があると考えて治療を行うことがほとんどです。
どういった治療をするべきなのか?
梅毒に対する治療は、妊婦であろうとなかろうと抗菌薬(
まず、梅毒の治療を開始してから数時間後に発熱や頭痛、皮疹の悪化などが起こることがあります。これをJarisch-Herxheimer反応(ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応)といいます。Jarisch-Herxheimer反応が起こると
また、梅毒の原因菌である梅毒トレポネーマに対してテトラサイクリン系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬は有効ですが、これを妊婦の梅毒の治療に用いることはまずありません。
テトラサイクリン系抗菌薬は胎児の歯に悪影響を与えることが分かっていますので、他の治療薬が使えないような差し迫った状況でない限り出番はありません。また、マクロライド系抗菌薬は梅毒に使用した場合に治療失敗する可能性が高いことがわかっています。先天梅毒の子どもへの影響の強さを考えると、妊婦の梅毒に対しては治療成功率の高い抗菌薬を選ぶ必要があります。
8. 梅毒は母親から子どもにはうつる?
母親が妊娠中に梅毒になると生まれてくる子どもも梅毒になります。子どもが生まれてきたときから梅毒にかかっていることを先天梅毒といい、肝臓や
妊娠中に母親が梅毒になったことがわかった場合は、感染による胎児への影響を考えてできるだけ早く抗菌薬治療を開始します。できるだけ早く治療したほうが、お腹の子どもが先天梅毒になりにくくなると考えられています。また、それと同時に
新生児の梅毒の診断は簡単ではありません。そのため次の項目を鑑みて梅毒の治療を開始することがCDCの
- 母親が梅毒と診断されているか
- 母親の梅毒に対して適切な治療がなされたか
- 生まれてきた子ども(新生児)に行った梅毒検査の結果
- 母親と生まれてきた子どもにおける梅毒検査(STS法)の結果の比較
梅毒と
先天梅毒の治療にはベンジルペニシリンの筋肉注射か点滴が推奨されています。以前は日本に筋肉注射の薬がありませんでしたが、2021年に承認され、現在は子どもの状態に合わせて点滴あるいは筋肉注射を用いて治療します。
もしご自身が妊娠しているときに梅毒と分かったら、子どもが梅毒の影響を受けないかについて心配になることでしょう。梅毒は治る病気です。また、早く治療を行うことで胎児への影響を最小限にすることができます。産科の医師や感染症を専門とする医師に、自分がどういった状況にあるのか、どういった治療をするべきなのかについて確認するようにしてください。
参考文献
・CDCにおける妊婦の性病
・CDCにおける先天性梅毒のガイドライン
・Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases 8th edition
・青木 眞, レジデントのための感染症診療マニュアル第3版, 医学書院, 2015