[医師監修・作成]梅毒の症状(写真あり):痛み、かゆみ、ぶつぶつ、鼻の変形、熱など | MEDLEY(メドレー)
ばいどく
梅毒
梅毒トレポネーマという細菌による感染。ほとんどが性感染症
9人の医師がチェック 82回の改訂 最終更新: 2022.03.04

梅毒の症状(写真あり):痛み、かゆみ、ぶつぶつ、鼻の変形、熱など

梅毒になると皮膚のかゆみやぶつぶつ、鼻の変形などの症状が出ます。梅毒の進行程度によって出現する症状が異なります。このページでは写真などを使って梅毒の症状について説明します。

【注意:このページには皮膚症状の写真やイラストが載っています】

1. 梅毒に感染しても症状がないことがある?

感染症は人体と感染を起こす微生物(原因微生物)の間に複雑な関係があるため、それを理解するためには少し難しいことを考えなくてはなりません。

梅毒に限らず感染症は原因微生物による炎症によって起こります。しかし、微生物の炎症は自分の免疫などの作用によって自然治癒することがあります。微生物によって起こった感染が自然治癒すれば感染症(病気)になりません。つまり、原因微生物が体内に侵入しようが、体内で炎症を起こそうが、病気にならないで済むことがあるということがポイントです。

梅毒の人と性的接触を行なったら必ず梅毒になるわけではありません。早期の梅毒(第1期梅毒、第2期梅毒)の人の体液や感染部位に接触すると、50-75%の人に感染が起こると言われています。感染が起こると自分の免疫で一部の人は治癒しますが、およそ30%の人は治癒できずに梅毒となると考えられています。

また、晩期の梅毒(第3期梅毒、第4期梅毒)ではあまり感染性が高くないことが分かっています。

2. 梅毒の初期症状

梅毒に特徴的な初期症状はありません。梅毒の原因微生物である梅毒トレポネーマが皮膚や粘膜の傷から体内に侵入すると、血液やリンパ液を介して全身に広がります。しかし、この時期には梅毒の症状は出ません。

感染してから3週間ほど経つと皮膚が固くなる変化(硬結)が見られることがあります。これを硬性下疳(こうせいげかん)といいます。梅毒患者が最初に気づく症状は硬性下疳のことが多いです。しかし硬性下疳も、痛みやかゆみをほとんど伴わない上に気付いたらいつの間にか皮膚の硬結が消えてしまうため、「気のせいかな」で済ませてしまう人も少なくありません。

硬性下疳の硬結は軟骨くらいの固さになります。男性や女性の陰部に症状が出ますが、ときに唇や口腔内、肛門などにも現れます。

周囲のリンパ節が腫れることもあります。リンパ節は全身あちこちにあります。皮膚表面に近いリンパ節が腫れていると数mmから1cm以上のグリグリした塊として触れることができます。

リンパ節が腫れる原因は梅毒だけではありません。リンパ節が腫れていることをきっかけにほかの病気が診断されることもよくあります。

特に原因がなく「皮膚が固くなる」「リンパ節が腫れる」といった症状が出た場合には、医療機関を受診して検査を受けると良いです。

3. 梅毒の時期によって症状が違う?

【注意:この章には皮膚症状の写真やイラストが載っています】

梅毒は進行の程度によって第1期梅毒から第4期梅毒までの4段階に分けられます。第1期梅毒と第2期梅毒を初期梅毒といい、その後症状の出ない潜伏期梅毒を経てから晩期梅毒(第3期梅毒と第4期梅毒)に至ります。

4つの時期ごとに出やすい症状が異なります。梅毒の時期別に出やすい症状を説明していきます。

第1期梅毒

梅毒に感染してから数週間から数ヶ月で最初の症状が出てきます。この時期を第1期梅毒といいます。

この時期に出てくる症状は主に次の2つです。

  • 硬性下疳(こうせいげかん)
  • リンパ節腫脹(しゅちょう)

■硬性下疳とは

図:陰茎近位部にできた硬性下疳の写真。

Content Providers: CDC / Dr. N. J. Fiumara (Image in public domain)

梅毒の原因菌である梅毒トレポネーマ(Treponema Pallidum)が皮膚や粘膜の傷を介して体内に侵入して感染が成立すると最初に出てくる症状が硬性下疳です。数週間から数ヶ月の無症状期(潜伏期)を経て硬性下疳が出現します。

硬性下疳は、皮膚が硬くなり痛みを伴わない小円形の皮疹です。皮膚が盛り上がったような皮疹が出現して、だんだんと潰瘍(えぐれた皮疹)を伴ってきます。えぐれた部位から分泌液が出てくることもあり、この分泌液には多くの梅毒トレポネーマが含まれています。

この皮膚の硬結は自然に消えるため、変化に気づかないこともあります。

■リンパ節腫脹

第1期梅毒では硬性下疳が出現して数日後に周囲のリンパ節が腫れることがあります。特に痛みや赤みなどを伴わないことがほとんどで、リンパ節が腫れていることに気づかないことも多いです。

第2期梅毒

梅毒に感染してから1-2ヶ月経過すると強い症状が出現します。この時期には大量の梅毒トレポネーマが全身に広がるためさまざまな症状が現れます。皮膚を中心に全身の症状が現れるため、原因がわからず困惑する人も多いです。

第2期梅毒で出現する主な症状を説明します。

■梅毒性バラ疹

図:バラ疹のイラスト。

Content Provider: Wellcome Library, London (CC BY 4.0)

数mmから1cm程度の大きさで、色はピンクから赤の斑点(紅斑)が全身に出現します。皮疹がバラの色に似ているためバラ疹と呼ばれます。

バラ疹はたいてい数日から数週間で消えます。皮膚の変化以外には特に自覚症状がないため、気づかないこともあります。

丘疹性梅毒

ばら疹が消えてからしばらくすると、隆起を伴う数mmから1cm程度の大きさの皮疹が出現することがあります。色調は茶褐色に近く、手足を中心に出現します。これを丘疹性梅毒(きゅうしんせいばいどく)と言います。

■扁平コンジローマ

図:手のひらに現れた扁平コンジローマの写真。

Content Providers: CDC / Robert Sumpter (Image in public domain)

扁平(へんぺい)に隆起したイボが湿っぽくなり分泌液を出す状態になることがあります。この皮疹を扁平コンジローマと言います。分泌物には多くの梅毒トレポネーマを含みますので、周囲への感染性が高いため注意が必要です。尖圭(せんけい)コンジローマは名前が似ていますが別の病気です。

梅毒の際に出現する皮疹の中でも、扁平コンジローマは梅毒に特徴的です。扁平コンジローマが疑わしい皮疹が出た場合は梅毒の検査を必ず受けて下さい。

■梅毒性乾癬

乾癬(かんせん)は梅毒とは関係ない病気ですが、乾癬に似た皮疹が梅毒によって起こることがあります。梅毒性乾癬と言います。盛り上がった赤い皮疹が皮膚の粉(鱗屑、りんせつ)を伴うのが特徴です。梅毒性乾癬乾癬ではありません。梅毒性乾癬は手のひらや足の裏に現れることが多いです。

■梅毒性アンギーナ

梅毒によって、のどや口の中に口内炎のような粘膜潰瘍が出現することがあります。これを梅毒性アンギーナと言います。

■梅毒性脱毛

梅毒によって円形脱毛症のような脱毛が起こります。複数箇所で脱毛が起こり、脱毛した場所が大きくつながることもあります。梅毒の影響が毛包に及んだことによって脱毛が起こると考えられています。

■リンパ節腫脹

第2期梅毒では梅毒トレポネーマが全身に広がるため、全身のリンパ節腫脹が起こります。

■発熱

特に第2期梅毒では発熱が起こります。感染による炎症が全身に広がる影響で発熱が起こりますが、発熱を起こす原因は梅毒以外にも多くあるので注意が必要です。例えば単なる風邪でも発熱は起こりますので、他に梅毒を疑うような症状が出ていないかを確認することが大切です。

■関節痛

特に第2期梅毒では関節痛が起こります。関節痛は梅毒以外の病気でも起こるので注意が必要です。例えば単なる風邪でも関節痛は起こりますので、他に梅毒を疑うような症状が出ていないかを確認することが大切です。

倦怠感

発熱や関節痛と同じく梅毒で倦怠感を覚えることがあります。感染による炎症が全身に広がる影響で倦怠感が起こります。しかし、単なる風邪でも倦怠感を感じることはありますので、他に梅毒を疑うような症状が出ていないかを確認することが大切です。

上に挙げた症状以外にも、のどの痛みや頭痛、体重減少などが見られることもあります。原因不明の症状が複数現れた場合には、第2期梅毒などの全身に炎症が及ぼされる病気が隠れている可能性がありますので、医療機関で検査して下さい。

第3期梅毒

第2期梅毒のあとに症状が出現しない状態(潜伏性梅毒)に至ります。潜伏期間が終わると第3期梅毒になります。この時期にも全身に症状が出現します。

■ゴム腫

梅毒が進行すると皮膚から深部に感染の影響が広がります。皮膚や筋肉や骨などにゴムのようなしこり(塊)ができることがあり、これをゴム腫と言います。ゴム腫のできた組織は潰瘍化してから治癒しますが、治癒してからも組織の変形を伴います。鼻の軟骨にゴム腫ができた場合には、鼻が落ちるような変化が起こることが有名です。

これ以外にも神経梅毒や心血管梅毒などが見られることがあります。症状に関しては下で詳述します。

第4期梅毒

第3期梅毒を経て梅毒トレポネーマに感染してから何年も経つと、皮膚の症状が目立たなくなり、血管や神経などの症状が目立つようになります。

神経梅毒

梅毒トレポネーマが脳神経を冒すことがあります。これを神経梅毒といいさまざまな症状が出てきます。

  • 頭痛
  • 頚部痛(首の痛み)
  • 複視(物が二重に見える、見えづらくなる)
  • 耳鳴り
  • めまい
  • 記憶障害
  • 感覚障害
  • 麻痺
  • 性格の変化
  • 錯乱

これらは神経梅毒の有名な症状です。こうした症状が見られた場合には検査(血液検査や髄液検査、画像検査など)を受ける必要があります。神経梅毒の有無で治療薬や治療期間が異なることがあります。

神経梅毒は基本的に晩期梅毒(第3期梅毒、第4期梅毒)に見られます。しかし、特にHIV感染者における梅毒では第1期から神経梅毒になることがあります。そのため、特に原因の自覚がなく上に挙げた症状が見られた場合は、梅毒の検査も受けることをおすすめします。

■心血管梅毒

梅毒が進行すると心臓や血管に影響が及びます。主な例として弁膜症や動脈瘤などがあります。心臓や血管の状態を詳しく調べるために血液検査や心臓エコー検査などを行います。

参考文献
・青木 眞, レジデントのための感染症診療マニュアル第3版, 医学書院, 2015
​​​​​​​・Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases 8th edition

4. どういった症状が出たときに梅毒を疑えばよいのか?

梅毒に特徴的な症状として硬性下疳や扁平コンジローマが挙げられます。これらの症状が見られたときにはまず梅毒を疑いますので、医療機関を必ず検査を受けるようにして下さい。

一方で、硬性下疳と扁平コンジローマ以外の症状に関しては、梅毒以外の病気でもよく見られる症状ですので、梅毒を診断する上で決定的なものとは言い難いです。例えば、熱や倦怠感は風邪などでもよく見られる症状です。紅斑(赤い皮疹)も丘疹(盛り上がった皮疹)も麻疹などのウイルス性疾患でよく見られます。

梅毒を疑って検査を受けるタイミングは以下を参考にして下さい。

  • 硬性下疳がある
  • 扁平コンジローマがある
  • 原因に思い当たるふしがないのに皮疹やリンパ節腫脹がある
  • 数ヶ月以内にコンドームをつけないで新たなパートナーと性行為をしてから調子が悪い

梅毒は早期発見早期治療すれば特に後遺症なく治る病気です。また、副作用の少ない抗菌薬(ペニシリン系抗菌薬、セフェム系抗菌薬など)を用いて治療することもできます。感染してから間もないと症状を感じにくいですので、違和感を覚えた時が検査の受け時です。検査を受ける際には、自分だけでなくセックスパートナーも一緒に受けるようにして下さい。パートナーが感染したままですと、いくら治療しても早晩再感染します。