子どもが急性胃腸炎になったらどうしたら良い?
子どもが急性胃腸炎になることは多いです。子どもは
1. 子どもの急性胃腸炎の症状
子どもの急性胃腸炎で多く見られる症状は次のとおりです。
- 下痢
- 腹痛
- 悪心(吐き気)
- 嘔吐
- 不機嫌
- 発熱
倦怠感 - 意識もうろう
これらは一般的に体調を崩した子どもによく見られる症状です。これらの症状のうち複数が突然出現した際には急性胃腸炎を考えます。また、特に下痢は胃腸炎に特徴的な症状ですので、下痢が突然出現した場合も急性胃腸炎を考えます。
2. 子どもの下痢の原因
子どもの下痢の原因で最も多いのは
【子どもの下痢の原因の例】
- 胃腸の感染
- ウイルス
細菌 - 寄生虫
- 胃腸以外の感染
- 栄養の問題
- 果糖の過剰摂取
- ソルビトールの過剰摂取
- 過食
- 飢餓(絶食)
- 腸の器質的な問題
- 腸重積
- ヒルシュスプルング病
- 亜イレウス
- 盲管症候群(ブラインドループ症候群)
- 短腸症候群
- 腸に慢性
炎症 を起こす病気(頻度が低い) - 免疫不全
- その他
抗菌薬 関連下痢症- クロストリジウム・ディフィシル感染症
- 中毒
- 溶血性尿毒症症候群(HUS)
子どもの下痢にはこのようにさまざまな原因が考えられます。さらに症状や背景を考えると、疑わしい原因をもう少し絞ることができます。次に考えるべき症状や背景について表にまとめます。
【注目するべき症状や背景と考えるべき病気】
注目するべき症状や背景 | 考えるべき病気の例 |
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上記以外にも症状が出る前の体重と比べてどの程度減っているかは脱水の程度を測るのに適しています。また、尿量が減っている状態も脱水が示唆されますので、お子さんが胃腸炎の場合には尿量について注意するようにして下さい。
子どもが脱水になるとどんな症状が出るか?
脱水は胃腸炎が重症になる危険な状態です。脱水がある場合には悪化する前に医療機関にかかる必要があります。そのためには脱水になった場合にどういった症状が出るのかを知っておく必要があります。
【脱水によって起こりやすい症状(程度別)】
部位 | 軽症の脱水 | 中等症の脱水 | 重症の脱水 |
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以上を参考にして、子どもの様子を観察してみて下さい。少なくとも中等症から重症の脱水症状が見られる場合には小児科や救急科を受診するようにして下さい。
3. 子どもが急性胃腸炎にならないように日頃から気をつけるべきこと
子どもや赤ちゃんは体力がないことや免疫システムが確立していないことから、急性胃腸炎になると非常にしんどくなります。そのため急性胃腸炎になりやすい環境から守ってあげることが大切です。どういったことを心がければ急性胃腸炎を回避しやすくなるのか説明します。
子どもの胃腸炎を予防するうえで注意するべきポイントは次のとおりです。
- 手洗い
- おむつ交換
- 使用する水
- 接触の制限
各々の項についてもう少し詳しく説明していきます。
手洗い
子どもの急性胃腸炎の中で最も多い感染性胃腸炎の予防に手洗いは有効です。特に石鹸を用いた手洗いを子どもと親が行うことが大切です。おむつ交換や吐物を処理した家族は必ず手洗いを行って下さい。
通常はアルコール消毒も手洗いと同じような効果が期待できます。しかし、ノロウイルスにはアルコール消毒の効果が薄いことがわかっていますので、急性胃腸炎の予防の観点からはアルコール消毒よりも手洗いが推奨されます。
おむつ交換
おむつを交換する場所は食卓や台所から離れたところにして下さい。また、交換したおむつは密閉して素早く廃棄するようにして下さい。また、繰り返しになりますがおむつ交換をした人は必ず手洗いを忘れないでください。
使用する水
生活に用いる水や飲料水は汚染されていないものを使用して下さい。もしどうしても清潔な水が手にはいらない場合には、10分間ほど煮沸することで安全性が向上します。
接触の制限
症状のある子どもと必要以上に接触することは避けて下さい。どんなに感染対策を行っても胃腸炎がうつる確率をゼロにはできません。接触を必要以上にしない状態は症状がなくなるまで継続したほうが良いかもしれません。また、特にノロウイルス感染による胃腸炎の場合には症状がなくなってから48時間は接触を必要最低限にするべきであるという意見もあります。
ここで述べた日常生活での注意点は非常に大切ですが、もう一つ忘れてならないのはワクチン(予防接種)です。次の段落でワクチンについて考えてみます。
赤ちゃんのワクチンは急性胃腸炎に役に立つのか
ワクチンは感染から身を守るのに有効です。急性胃腸炎に関わる微生物の中では、ロタウイルスや
これらは定期接種ですので基本的に打ち漏らすことはないはずですが、体調不良などでもし打っていない場合には必ず打つようにして下さい。いつ打てばよいのか分からない場合には近くの小児科で相談するようにして下さい。なお、子供のワクチンの接種スケジュールに関しては、「2歳までに20回!赤ちゃんの予防接種スケジュールの上手な立て方」を参考にして下さい。
4. 大人の急性胃腸炎よりも重症になりやすいのか?
子どもは大人よりも急性胃腸炎が重症になりやすいです。免疫システムが確立していないことや体力がないことなどから、身体のバランスが乱れると状態が悪くなりやすいです。
急性胃腸炎では特に脱水には気をつける必要があります。下痢や嘔吐、食欲の低下といった症状が出現しやすいため脱水になりやすいです。重症予防のためにも、特に脱水には注意するようにして下さい。
- 口の中が渇く
- 汗が出ない
- 体重が減る
- ふらつく
これらの症状が出た場合には医療機関にかかるほうが良いでしょう。また、もっと詳しく子どもの脱水について知りたい方は、このページの中の「子どもが脱水になるとどんな症状が出るか?」の段落で説明していますので参考にして下さい。
子どもが急性胃腸炎になったらいつまで出席停止になるか?
学校の出席停止に関しては学校保健安全法という法律が定めています。その中で急性胃腸炎の出席停止の期間は明確にされていません。第三種感染症として流行性嘔吐下痢症が定められています。子供の急性胃腸炎のほとんどは感染性胃腸炎ですので流行性嘔吐下痢症として考えても、出席停止の期間に関して明確にされていません。
学校保健安全法では、流行性嘔吐下痢症の出席停止期間は「病状により学校医その他の医師において感染の恐れがないと認めるまで」とされています。つまり症状次第なのですが、一般的には「症状が消失するまで」を区切りとします。参考までに海外のThe National Institute for Health and Care Excellence (NICE) という機関では、「下痢や吐き気といった症状が改善してから48時間以上経過するまで」としています。
いずれにしても、子どもが急性胃腸炎で学校を休んだら、症状が消えたタイミングで学校医や近くの医師に相談すると良いでしょう。
参考文献
・Up To Date: Approach to diarrhea in children in resource-rich countries
・Up To Date: Acute viral gastroenteritis in children in resource-rich countries:Clinical features and diagnosis
・Up To Date: Acute viral gastroenteritis in children in resource-rich countries:Management and prevention(2018.1.9閲覧)
・Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases 8th edition