きゅうせいいちょうえん
急性胃腸炎
下痢・吐き気・腹痛などを起こす病気。食中毒やほかの患者からうつることが原因。抗生物質が効くのは一部の場合だけでほとんどは自然に治る
21人の医師がチェック 195回の改訂 最終更新: 2024.02.21

急性胃腸炎に悩んでいる人が気をつけたい生活習慣:食べ物、飲み物、予防、感染性など

自分や家族が急性胃腸炎になったときにどういった生活をしたら良いでしょうか。また、急性胃腸炎になりにくいようにするには何か心がけることはあるでしょうか。このページでは日常生活における注意点を説明します。

1. 急性胃腸炎はうつるのか?

急性胃腸炎とは多くの病気の総称です。例えばノロウイルスによる胃腸炎も急性胃腸炎ですし、ロキソニン®の副作用で起こる胃腸炎も急性胃腸炎です。急性胃腸炎の原因の中でも感染性のものはうつります。

急性胃腸炎の主な原因を感染性と非感染性に分けたリストを下に示します。

  • 感染性
    • 腸管毒素性大腸菌(ETEC)
    • 腸管出血性大腸菌(EHEC、O-157
    • 黄色ブドウ球菌
    • 腸チフスパラチフス
    • エルシニア
    • カンピロバクター
    • サルモネラ
    • 腸炎ビブリオ
    • コレラ
    • ノロウイルス
    • ロタウイルス
    • コクサッキーウイルス
    • アデノウイルス
    • アメーバ赤痢
  • 非感染性
    • NSAIDs
    • 抗菌薬抗生物質
    • アルコール
    • 放射線
    • 魚の骨
    • アニサキス

これらの原因の中でも感染性のものはどれもうつる可能性があります。そのため、感染性胃腸炎と診断された場合には気をつけなくてはなりません。手洗いと汚物(便や吐物など)の隔離は必ず行って下さい。

どのくらいうつるのか?

感染性の強くない感染症にかかっても通常生活の中で人から人にうつることはあまりありません。一方で人から人にうつる感染症はあります。特にウイルス性胃腸炎(ノロウイルス、ロタウイルスなど)やコレラは通常生活の中でも人から人にうつる可能性があります。人から人にうつるタイプの感染症は感染対策が大事です。原因微生物を体内に入れないことが大事ですので、手洗いやマスクの着用や汚物の管理を徹底して下さい。

また、大腸菌や黄色ブドウ球菌やカンピロバクターやサルモネラ、ビブリオなどは細菌に汚染されていた飲食物を介して人に感染を起こします。

【食べ物と感染微生物の関係】

食べ物 推定される感染微生物
  • 生の海産物
  • ビブリオ
  • ノロウイルス
  • 生の卵
  • サルモネラ
  • 火のあまり通っていない肉
  • サルモネラ
  • カンピロバクター
  • 大腸菌
  • 衛生状態の悪い牛乳やジュース
  • サルモネラ
  • カンピロバクター
  • 大腸菌
  • エルシニア
  • 衛生状態の悪いチーズ
  • サルモネラ
  • カンピロバクター
  • 大腸菌
  • エルシニア
  • チーズ
  • おにぎりや弁当
  • 黄色ブドウ球菌

上の表はよくある例を示していますが、この他にも食べ物を介した感染(食中毒)は起こります。しかし、ある程度食べたものによって推測ができますので、もし急性胃腸炎になってしまった場合には直前に食べたものを振り返って下さい。受診した医療機関の問診で食べたものを伝えることで診断がつくこともあります。

感染性胃腸炎に潜伏期間はあるのか?

感染症には潜伏期間があります。潜伏期間とは感染を起こす微生物が体内に侵入してから発症する(症状が出現する)までの時間差のことを指します。潜伏期間の長さは原因微生物によって異なります。

【原因微生物と潜伏期間の関係】

原因微生物 潜伏期間
  • 黄色ブドウ球菌
  • 数時間
  • 腸管毒素性大腸菌(ETEC)
  • 数日間
  • 腸管出血性大腸菌(O-157
  • 3-5日間
  • 1-2週間
  • サルモネラ属(非チフス)
  • 12-48時間
  • 赤痢菌
  • 1-2日間
  • カンピロバクター
  • 2-7日間
  • ビブリオ(腸炎ビブリオ)
  • 数時間から数日間
  • 1-3日間
  • エルシニア菌
  • 2-10日間
  • ノロウイルス
  • 1-2日間
  • ロタウイルス
  • 2-4日間
  • アデノウイルス
  • 3-10日間

これらはおおよその潜伏期間の目安です。症状が出現する実際のタイミングには個人差がありますが参考にして下さい。

2. 急性胃腸炎は自然治癒するのか?

急性胃腸炎は原因によっては自然治癒します。

【急性胃腸炎の主な原因】

  • 細菌感染
  • ウイルス感染
  • 薬剤の副作用
  • ストレス
  • アルコール多飲
  • 異物
  • 放射線の影響

例えばウイルス感染による胃腸炎であればノロウイルスであってもロタウイルスであっても自然治癒します。一方で薬剤性胃腸炎であれば、原因となっている薬剤の使用を中止しない限り治る可能性は極めて低いです。このように胃腸炎を起こしている原因によってその後の経過は異なります。

急性胃腸炎の原因を突き止めない限りは、治療を行わなくても良いのかどうかを見極めることはできません。症状が強い場合には医療機関を受診する必要がありますし、原因を調べてもらう必要性が高まります。診察を受けた結果治療しなくても良いという結論になるかもしれません。

胃腸炎のポイントは「脱水があるかどうか」と「症状が強いかどうか」です。そのため、次のいずれかに該当する場合には必ず医療機関を受診して下さい。

  • 下痢や嘔吐が強くて水が全く飲めない
  • 口が乾いてしょうがない
  • 汗が全く出ない
  • ふらつく
  • 意識がもうろうとする
  • 腹痛が非常に強い
  • 歩くとお腹にひびいて痛む

これらは放っておくと重症になりうるため注意が必要な状態です。

3. 急性胃腸炎は完治するのか?

急性胃腸炎のほとんどは完治します。適切な治療をしたり生活習慣を改善したりすることで、後遺症が残ることなく治癒します。

一方で、放射線の影響で起こった胃腸炎は症状が残ってしまうことが多いです。また、状態が悪くなって非常に重症の胃腸炎になってしまった場合には後遺症が残ることがあります。しかし、通常の急性胃腸炎は完治すると考えて良いです。

4. 急性胃腸炎は予防できるのか?

急性胃腸炎になると腹痛や下痢といった症状が出現します。これらは日常生活を妨害する症状ですので、可能であれば急性胃腸炎にかからないに越したことはありません。

急性胃腸炎を予防する方法は原因によります。感染性胃腸炎であれば感染予防が大切ですし、薬剤性胃腸炎であれば薬剤の適切な使用が大切になります。原因別に予防方法を表にまとめます。

【予防方法と主に予防される胃腸炎】

予防方法 原因別胃腸炎
  • 手洗い
  • ウイルスによる胃腸炎
  • 細菌による胃腸炎
  • 寄生虫による胃腸炎
  • 汚物の隔離
  • ウイルスによる胃腸炎
  • 細菌による胃腸炎
  • 寄生虫による胃腸炎
  • 生の食材の回避
  • ウイルスによる胃腸炎
  • 細菌による胃腸炎
  • 寄生虫による胃腸炎
  • 適切な薬剤の使用
  • 薬剤による胃腸炎
  • 胃薬の強化
  • 薬剤による胃腸炎
  • 節酒
  • アルコール多飲による胃腸炎
  • 予防接種(ロタリックス®、ロタテック®)
  • ロタウイルスによる胃腸炎

子どもの中耳炎においても下痢が起こることがあります。そのため、中耳炎髄膜炎肺炎に対して効果がある肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス®、プレベナー®)やインフルエンザ桿菌B型ワクチン(アクトヒブ®)なども間接的に胃腸炎の予防に対する貢献が期待されます。

5. 急性胃腸炎を繰り返すことはあるのか?

急性胃腸炎を繰り返してしまう人はいます。その原因はいくつか考えられます。

  • 免疫が弱いので感染しやすい
  • 常用薬が悪さをしている
  • 生活に問題がある
  • 環境衛生に問題がある

急性胃腸炎を繰り返す人はこれらのどれが問題となっているのかを把握するようにして下さい。問題となっているものを改善することで急性胃腸炎になりにくくなることはできます。

免疫が弱いので感染しやすい

免疫不全には、もともと生まれつき免疫の弱いパターン(先天性免疫不全)と何らかのきっかけで免疫が弱くなったパターン(後天性免疫不全)があります。前者の代表例が重症複合型免疫不全症で、後者の代表例がHIV感染症/AIDSエイズ)です。

免疫とは体内に異物が入ってきたときにこれを排除するシステムのことです。免疫不全があると口などから体内に微生物が入ってきてもうまく倒すことができません。そのため、できるだけ体内に感染を起こす微生物が入ってこないようにする必要があります。医師から免疫が弱いと診断されている人は、手洗いの徹底や環境を清潔に保つなどの工夫を行って下さい。

常用薬が悪さをしている

薬剤によって胃腸炎が起こることがあります。解熱鎮痛薬(NSAIDs)や抗菌薬などがその代表例です。薬剤が原因となっている場合にはその薬剤を中止しないと胃腸炎が改善することは難しいです。胃腸の調子が悪い人は常用薬の内容を確認して下さい。自分がどんな薬を飲んでいるのかよくわからない人は、医師か薬剤師に確認してみると良いでしょう。

もともとの病状からどうしても常用薬をやめられないことがあります。その場合には胃薬を用いて症状を和らげることを行います。胃酸を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬やH2ブロッカーなど)や胃壁を強化する薬(プロスタグランジン製剤やアルミニウム製剤など)を用いて、状態の改善を図ります。

生活に問題がある

アルコールの多飲や暴飲暴食が原因で胃腸炎が起こることがあります。その場合には節酒や食事内容の改善を行わないと胃腸炎は治りません。

環境衛生に問題がある

不衛生な生活環境で暮らしている人や保存状態の悪い飲食物をしばしば摂る人は、胃腸炎を繰り返します。環境や飲食物を改善する必要があります。

6. 急性胃腸炎が流行しているときにやるべきこと

急性胃腸炎が流行することがあります。例えば冬にはノロウイルスによる胃腸炎が流行りますし、春先にはロタウイルスによる胃腸炎が流行ります。こういった流行期には感染をもらわないように予防を怠ってはいけません。

流行期にやるべきことは次のようなことです。

  • 手洗いを欠かさない
  • 必要以上に感染者と接触しない
  • 感染者と接触する際にはマスクをする
  • 汚物(便や吐物)を正しく管理する

必要以上に感染者を避ける必要はありませんが、特に子どもや高齢者、免疫の低下している人は細心の注意を払うようにして下さい。

7. 急性胃腸炎になったらどんな食べ物を摂ると良いのか?

下痢や嘔吐がひどいときに食事をすると症状が悪化するので、固形物を食べずに飲水に励むようにして下さい。固形物を食べるのは症状が落ち着いてからのほうが良いです。万が一、症状が治まるまでに衰弱してしまった場合は医療機関にかかるようにして下さい。

症状が治まってきたら、消化に良いものを食べるようにして下さい。炭水化物やタンパク質が多くて消化に良いものがおすすめです。避けるべきものを次に示します。

  • 脂肪成分の多く含まれるもの
  • 香辛料の多く含まれるもの
  • 繊維質を多く含むもの

これらは状態が完全に回復したら食べるのをトライするくらいがちょうどよいです。

8. 急性胃腸炎になったらどんな飲み物を摂ると良いのか?

急性胃腸炎は脱水状態になると容易に重症化するので飲水が大切です。下痢が頻繁に出ているときは、飲めば飲んだ分だけ下痢となってでていってしまうため飲水をやめてしまう人がいますが、飲水しなくなるのは脱水になるので良くありません。腸から水のような便が出るときには、下痢と一緒に問題となっている微生物も体外に出ています。もし全く飲めないのであれば医療機関にかかるようにして下さい。

下痢の症状が落ち着いてきたら、吸収の良いものを飲むと良いです。オーエスワン®やポカリスエット®のような吸収されやすい飲料水が市販されていますので、これを用いると良いです。また、柑橘系のジュースや炭酸水、牛乳などは吸収が悪かったり刺激的だったりするため避けるようにして下さい。アルコールも胃腸に刺激を起こしますので、症状がなくなるまで飲んではいけません。

9. 便や吐物を触るときの注意点

家族や親しい人が胃腸炎で苦しんでいるときに、汚物(便や吐物)を処理することがあると思います。その際に注意しないまま処理した場合には、自分も急性胃腸炎になってしまうことがあります。便や吐物は感染性を持っていますが、それらを正しく処理する方法を知っておくと感染を予防することができます。

便や吐物を触る時の注意点は次のようなことになります。

  • 触る前後に手洗いをする
  • 使い捨ての手袋を使用する
  • マスクを着用する
  • 着脱可能なエプロンを使用して、装着したあとにエプロンを外す
  • 汚物は密閉できる袋などでパッケージして生活環境に置かない
  • 台所や食卓の近くで作業しない

これらを実践することで周囲の人も胃腸炎になることが防げます。胃腸炎が家族に蔓延したとき、誰も身の回りのことができなくなってしまいます。どんなに親しい間柄であっても、感染を共有しても得がありません。きちんと感染を予防するように心がけて下さい。

10. 急性胃腸炎になったら特に気をつけたほうが良い人

急性胃腸炎はほとんどの場合で重症になりませんし後遺症も残りません。しかし、一部の人では重症にならないように特に気をつけなくてはなりません。

  • 赤ちゃん
  • 高齢者
  • 免疫力の低下している人

これらに該当する人は胃腸炎の重症化が起こりやすいです。感染をもらわないようにしないといけませんし、周囲の人は感染をうつさないように気をつけなければなりません。

赤ちゃん

赤ちゃんは急性胃腸炎が重症になりやすいです。まだ免疫システムが確立していないことや体力がないことから、急性胃腸炎の影響を強く受けやすいです。

ひとたび下痢と嘔吐が起これば脱水の危険性が出てきます。身体の小さい赤ちゃんは脱水になりやすいです。脱水になると重症になるため、赤ちゃんが胃腸炎になったら飲水できているかどうかについて観察するようにして下さい。

高齢者

高齢者も急性胃腸炎が重症になりやすいです。高齢者は体力が落ちていることが多いのと持病を持っていることが多いためです。赤ちゃんの場合と同じく脱水に注意して下さい。飲水できない状況になった場合には医療機関を受診する必要があります。

免疫の弱い人

免疫の弱い人は感染性胃腸炎が重症になります。免疫とは体内に異物が入ってきたときに、これを排除するシステムのことです。このシステムが弱いと感染の原因微生物が入ってきても上手に排除できません。細かい話をすると、免疫とは大きく分けて4つの分類(主に好中球が働く免疫、主にB細胞リンパ球が働く免疫、主にT細胞リンパ球が働く免疫、皮膚粘膜などのバリアが体内を守る免疫)があるので、どれが低下しているかで問題となることが異なります。ここでは詳細を記載しませんが、免疫が低下すると感染が起こりやすくなることは事実です。

どんなときに免疫が低下するのでしょうか。一般的には次のときに免疫の低下が懸念されます。

  • 生まれつき免疫不全が指摘されている人(先天性免疫不全)
  • HIV感染者/AIDS患者
  • 臓器移植後の人
  • がん化学療法を受けている人
  • ステロイドを長期的に使用している人
  • 免疫抑制剤を使用している人
  • 高齢者

これらに該当する場合は、手洗いを忘れずに習慣化し、胃腸炎の流行期にはマスクを着用するなどして病原微生物を身体に入れないようにして下さい。

11. どんなときは医療機関(病院、クリニック)にかかるべきか?

急性胃腸炎では大抵の場合は入院するほどひどくはなりません。しかし、状態が悪いときには医療機関にかかることが必要です。

医療機関にかかるタイミングを見分けるためのポイントは、検査が必要なのか治療が必要なのかの2つを考えることです。検査も治療も必要がない胃腸炎は少なくありません。こうした胃腸炎で受診してしまうと、病院までの往復時間と長く待たされる時間が非常に無駄になります。そんなことであれば家で休んで寝ていたほうがはるかに有意義です。

一方で、検査や治療が必要かどうかを見極めるのは簡単ではありません。状況によって方針が異なるため、検査をして初めてわかることも多いです。そこでここでは、この状態は放置しないほうが良いというものを考えます。

絶対に放置してはいけない状況は次のようなときです。

  • 意識がない
  • 意識がもうろうとする
  • わけのわからないことを言う
  • 汗が全く出ない
  • 脈が触れない
  • 血圧がいつもよりもかなり低い
  • 歩く振動でお腹に強い痛みが走る
  • 飲水が全くできない

これらに該当する場合は医療機関にかかるようにして下さい。また、これ以外にも口の中が渇いたりふらついたりする場合は脱水のサインですので、飲水ができるかどうかを確認する必要があります。口渇感やフラつきのある人が飲水量が少ないあるいは飲水してもすぐに下痢となって吸収できていない場合には医療機関の受診を検討して下さい。

12. 急性胃腸炎になりやすい病気

持病や医療行為が急性胃腸炎の原因になることがあります。ここではどういった場合に注意したほうが良いのかについて説明します。

免疫不全

免疫の低下している人は感染症にかかりやすくなります。とはいえ免疫にはさまざまな作用が複雑に絡み合っているため、どの作用が低下しているのかによって状況が少し異なります。免疫を考えるときには次の4つに分けて考えると良いです。

  1. 好中球(白血球の1種)が担う免疫
  2. B細胞性リンパ球が担う免疫(液性免疫)
  3. T細胞性リンパ球が担う免疫(細胞性免疫)
  4. 皮膚や粘膜が外敵を体内に侵入させない免疫

また、免疫不全を起こす原因を考えることも大切です。次のことが原因で免疫不全を起こします。

  • 生まれつき免疫力が低い
  • HIV感染症/AIDSになっている
  • がんの化学療法を受けている
  • 移植を受けた
  • ステロイド薬を長期的に使用している
  • 免疫抑制剤を使用している
  • 高齢者

免疫不全の人には普段感染を起こさないような微生物が感染を起こすことが分かっています。また、通常起こりやすい症状と異なった症状が出ることもあります。そのため、上の免疫力が低下する原因に該当する人は、下痢や吐き気などを中心とした症状を自覚した場合には医療機関にかかるようにして下さい。

クローン病

クローン病とは小腸や大腸に慢性的炎症が起こる病気です。原因ははっきりとしておらず、難病指定されています。潰瘍性大腸炎などと併せて炎症性腸疾患と呼ばれます。

炎症性腸疾患で起こる慢性的な腸管の炎症の影響を受けて、腸管に潰瘍が起こります。クローン病では小腸と大腸の境目(回腸から盲腸にかけて)あたりで炎症が起こることが多いです。

腸管に起こる炎症や潰瘍は腸粘膜のバリアを弱くさせてしまうため、外敵が侵入しやすくなります。また、クローン病の治療にはステロイド薬を中心とした免疫を抑える薬が使用されますので、細胞性免疫などの免疫機構の低下が起こりやすくなります。

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎とは大腸に慢性的な炎症が起こる病気です。いまだ原因がはっきりとしておらず、難病に指定されています。クローン病などと併せて炎症性腸疾患と呼ばれます。

炎症性腸疾患で起こる慢性的な腸管の炎症の影響を受けて、腸管の粘膜がもろくなって潰瘍が出現します。潰瘍性大腸炎では特に大腸に炎症が起こります。

クローン病と同じく腸管に起こる炎症や潰瘍は腸粘膜のバリアを弱くさせてしまうため、外敵が侵入しやすくなります。また、治療にはステロイド薬を中心とした免疫を抑える薬が使用されますので、細胞性免疫などの免疫機構の低下が起こりやすくなります。

がん

がんの治療で用いる抗がん剤やそれと併用するステロイド薬は好中球を減少させ、細胞性免疫や液性免疫を低下させます。そのため感染が起こりやすくなります。また、栄養状態が低下することで体力も落ちますので、胃腸炎が重症になりやすくなります。大腸がんの場合は、腫瘍によって腸管粘膜がもろくなっているためバリアが弱くなっていることも考えられます。

一方で、感染症以外が理由の胃腸炎も起こります。特に薬剤の影響を受けて胃腸の粘膜が弱くなったり腸管の動きが悪くなったりすることは考えておかなければなりません。がんはあらゆる理由から胃腸炎が起こりやすくなるため、治療を始めてからお腹の不調を感じたら主治医に相談するようにして下さい。

医原性

医原性とは医療行為が原因となって病気を引き起こすことです。実はこのタイプの胃腸炎も少なくない確率で起こることが分かっています。

  • 薬剤の副作用
    • 抗菌薬(抗生物質)
    • 解熱鎮痛薬(NSAIDs)
    • ステロイド薬
  • 上部消化管内視鏡検査胃カメラ
  • 下部消化管内視鏡検査大腸カメラ

医療行為には一定確率で副作用や有害事象が伴います。医療行為を受ける前に、お医者さんからどういった危険性があるのかを聞いておくようにして下さい。あらかじめ把握しておくことで、何かあった場合に早期発見・早期治療に繋がります。

参考文献
・青木 眞, レジデントのための感染症診療マニュアル第3版, 医学書院, 2015
・大曲貴夫/監, がん患者の感染症診療マニュアル第2版, 南山堂, 2012
・Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of Infectious Diseases 8th edition