[医師監修・作成]甲状腺がんとはどんな病気? | MEDLEY(メドレー)
こうじょうせんがん
甲状腺がん
甲状腺にできるがんのこと。様々なタイプがあるが、甲状腺乳頭がんというタイプが非常に多い
11人の医師がチェック 128回の改訂 最終更新: 2021.11.26

甲状腺がんとはどんな病気?

甲状腺がんかもしれないと診断された場合にはとても不安になると思います。甲状腺がんの大部分は、がんの中でも進行がとても遅く、治療を適切に行うことで、長期間元気でいられるがんです。甲状腺がんの治療を受けるにあたって、甲状腺がんの種類や検査、治療など一般的なことについて、一緒にみていきましょう。

1. 甲状腺がんになる人はどのくらいか:発症率(罹患率)

2018年における甲状腺がんの推定罹患数は男性で4,790人、女性13,846人です。人口10万人あたり、男性7.8人、女性21.3人です。罹患数とは、その期間に新しく甲状腺がんと診断された人の数のことです。人口10万人あたりの罹患率に換算して、時代による変化を下のグラフに示します。

甲状腺がんの罹患率の年次推移

甲状腺がんの罹患率は男女ともに増加傾向が続いています。

これは高齢化の影響を受けています。次に説明するように、甲状腺がんは高齢の人に多く見つかります。そのため、人口が高齢化すると甲状腺がんを診断される人は多くなります。

さらに、超音波検査などの画像検査の発達により、1cm未満の微小な甲状腺がんの発見ができるようになったためとも考えられています。

2. 甲状腺がんに気をつけるべき年齢や性別

甲状腺がんは高齢の人に多い病気ですが、若い人にも比較的少数ながら見つかります。男性よりも女性が2倍以上多く診断されています。

統計から、甲状腺がんが見つかった人の数を5年刻みの年齢別に集計し、その年齢の人口10万人あたりに換算したものを下のグラフに示します。

甲状腺がんの年齢階級別罹患率

甲状腺がんは10代の人にもまれに見つかります。年齢とともに多くなり、60歳代から70歳代が罹患率のピークになっています。

甲状腺がんで死亡した人の統計もあります。年齢5年ごとで人口10万人あたりに換算した死亡率を下のグラフに示します。

甲状腺がんの年齢階級別死亡率

このグラフは、年齢ごとに甲状腺がんで死亡する人の人口に対する割合を示しています。高齢になるほど甲状腺がんで死亡する人が多くなることが読み取れます。

罹患率のグラフと見比べると、30代ごろで甲状腺がんが見つかる人もいるのですが、近い年齢で甲状腺がんによって死亡に至る人は少数です。これは甲状腺がんの大部分が進行の非常に遅いタイプのもので、診断されてから10年以上生存できる人が多いためと考えられます。

男女別で見ると、甲状腺がんは女性に多いことが特徴です。罹患率が女性で高いため、死亡率も女性で高くなっています。

ここで、「死亡率」という言葉が紛らわしく思えるかもしれません。このページでは、「死亡率」は「甲状腺がんがある人もない人も含めた全人口の中で、甲状腺がんによって死亡する人の割合」という意味で使っています。「甲状腺がんと診断された人が死亡する確率」という意味ではありません。

甲状腺がんと診断されてからどの程度生きられるかについては、このページの「甲状腺がんの予後や生存率」で説明しています。

3. 甲状腺はのどにある?甲状腺の位置や働きについて

甲状腺はくびの前で、のどぼとけより下の位置にあります。通常の大きさの場合は触れても普通はわかりません。甲状腺の大きさは、重さで言うと20gから30g程度です。小さな臓器ですが、身体にとって重要な甲状腺ホルモンを作って分泌しています。

甲状腺の位置と甲状腺の機能について、以下で詳しく説明します。

甲状腺の場所

甲状腺はのどぼとけのすぐ下にあり、気管の前に張り付いています。のどぼとけは甲状軟骨と呼ばれる軟骨の出っ張りです。

図:甲状腺はのどぼとけ(甲状軟骨)のすぐ下の位置にある。

甲状腺は右と左に大きくわかれますが、真ん中でくっついています。右の部分を右葉(うよう)、左の部分を左葉(さよう)と呼び、真ん中を峡部(きょうぶ)と呼びます。たとえて言えば気管の前に蝶々が羽を広げたような形で張り付いています。

通常の大きさの場合は触れても、甲状腺がどこにあるかわかりません。甲状腺自体が大きくなったり、甲状腺の中にしこり(瘤、腫瘤)ができたりすると触れて区別することができます。甲状腺は気管に張り付いているため、飲み込む動作に一致して上下します。甲状腺の内部にしこりがあると、飲み込みの動作に一致してしこりが上下することが触ってわかります。

甲状腺の働き

甲状腺は、身体を活発にする甲状腺ホルモンというホルモンを作っています。食物(おもに海藻)に含まれているヨード(ヨウ素)を材料にして甲状腺ホルモンを作ります。

甲状腺ホルモンは多すぎても少なすぎても身体に異常をきたします。そのため、甲状腺ホルモンの量を一定の範囲に保つしくみがあります。

以下で詳しく説明します。

◎甲状腺ホルモンの働き

甲状腺ホルモンには以下の役割があります。

  1. 細胞の代謝を盛んにする
  2. 交感神経を刺激する
  3. 成長や発達をうながす

全身の細胞は脂肪や糖分を分解して、エネルギーを生み出しています。甲状腺ホルモンは全身の細胞にエネルギーを多く作らせるように働きます。

甲状腺ホルモンは交感神経という神経を刺激する作用もあります。交感神経は、脈を早くする、血圧を上げるなどの作用があります。

胎児や小児にとっては、甲状腺ホルモンは脳など身体が成長発達するためにも必要です。

◎甲状腺ホルモンの調整

甲状腺ホルモンの量は常に体内で一定になるように調整されています。

脳から出る2種類のホルモンが甲状腺ホルモンの調整に関わっています。

甲状腺に直接働くのは甲状腺刺激ホルモン(TSH)です。TSHは脳下垂体から分泌されています。甲状腺はTSHの作用を受けると甲状腺ホルモンを多く分泌します。甲状腺ホルモンが血液の中で多くなると、脳下垂体はTSHを減らします。すると甲状腺は甲状腺ホルモンの分泌を減らすので、甲状腺ホルモンが増えすぎるのを防ぐことができます。

甲状腺ホルモンの調整に関わるもう1つのホルモンが、「甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン」(TRH)です。長い名前ですが、「甲状腺刺激ホルモンを放出させるホルモン」という意味です。TRHは、脳の視床下部という部分から分泌されています。TRHは、脳下垂体を刺激して、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌を増やします。その結果、甲状腺ホルモンが増えると、視床下部はTRHの分泌を減らします。

このようにTSHとTRHが関わることで、血液中の甲状腺ホルモンの量が一定に保たれています。

◎甲状腺ホルモンの分泌が多い時の症状

甲状腺ホルモンが通常より多く分泌される状態を甲状腺機能亢進症とよびます。下記のような症状が出ます。

  • 安静にしているのに心臓がドキドキする、脈が速くなる
  • 暑がりになる
  • 汗をたくさんかく
  • 食欲があり、食事をたくさんとるが痩せる
  • イライラする
  • 手の指が細かく震える

甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気にはさまざまなものがあります。甲状腺がんでは、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることはあまりありません。そのため、甲状腺機能亢進症の症状があれば甲状腺がんよりも先にほかの病気を考えます。

◎甲状腺ホルモンの分泌が少ない時の症状

甲状腺ホルモンが通常より少なく分泌される状態を甲状腺機能低下症とよびます。下記のような症状が出ます。

  • 体がだるくなる
  • 寒がりになる
  • 顔や手足がむくむ
  • 便秘がちになる
  • 常に眠気がある
  • 食欲はないのに太る
  • 肌が乾燥する
  • 脈が遅くなる

甲状腺ホルモンの量が低下する病気にはさまざまなものがあります。

甲状腺がんの治療中には、甲状腺ホルモンが少なくなることがよくあります。それは甲状腺を手術で全て取り除いた場合です。甲状腺ホルモンが不足していると、上記のような症状が出ますので、甲状腺ホルモンを薬として内服して補充します。

4. 甲状腺がんの組織型の分類:乳頭がん・濾胞がん・髄様がん・未分化がん

がんを分類する方法の一つで、組織型という分け方があります。組織型とは、がんを顕微鏡で観察した時の見た目による分類です。組織型によってがんの性質は大きく違うため、治療も組織型によって使い分けます。

甲状腺にできる悪性腫瘍は組織型で分類すると、乳頭(にゅうとう)がん、濾胞(ろほう)がん、髄様(ずいよう)がん、未分化(みぶんか)がん、悪性リンパ腫などがあります。このうち悪性リンパ腫は甲状腺の細胞からできるものではないので、ここでは説明を省きます。甲状腺の細胞からできる甲状腺がんは主に、乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、未分化がんなどです。乳頭がんと濾胞がんはその性質から分化がんとも呼ばれます。

それぞれの組織型の頻度は乳頭がんが最多です。続いて濾胞がん、髄様がん、未分化がん、悪性リンパ腫、その他の順になります。2004年の統計では、甲状腺がん全体のうち乳頭がんが92.5%とほとんどを占め、続いて濾胞がん4.8%、髄様がん1.3%、未分化がん1.4%という頻度でした。

甲状腺がんの分類の基準としてよく参照される『甲状腺癌取扱い規約第7版』では、甲状腺がんを下記のように分けています。

  1. 乳頭がん
  2. 濾胞がん
  3. 低分化がん
  4. 未分化がん
  5. 髄様がん

乳頭がんや濾胞がんにはそれぞれ、特殊型として様々な型が含まれています。

低分化がんは、甲状腺乳頭がんや濾胞がんと未分化がんの中間的な性質の甲状腺がんです。乳頭がんや濾胞がんとは異なる細胞が集まった組織である低分化成分が全体の半分以上を占めており、がん細胞が乳頭がんに典型的な見た目ではなくなっていることで診断されます。低分化がんは新しい概念であり、治療方法や生存率に関してはまだ不明確な点が多く残っています。

以下で、低分化がん以外のそれぞれの組織型の特徴を説明します。

参考文献
甲状腺癌の疫学に関する最新のデータ. 臨床外科 2007 62:11, 39-46
・甲日本甲状腺外科学会/編, 甲状腺癌取扱い規約第7版, 金原出版, 2015

乳頭がん

甲状腺がんの中で最も多いのが乳頭がんです。

乳頭がんは進行の遅いがんです。乳頭がんは、濾胞がんとともに「分化がん」とも呼びます。分化がんとは、甲状腺がんであっても、正常な甲状腺組織と同じように甲状腺刺激ホルモンの刺激を受けてヨードを取り込む仕組みがあるもののことです。この機能を利用した治療法があります。

乳頭がんはリンパ節転移を起こしやすい特徴がありますが、適切な治療を行うことで、多くの人が治療後10年以上生存できます。

◎統計上の特徴

甲状腺がんの90%以上で最多の組織型です。
女性に多く、10-80歳代まで幅広い年代で現れますが50歳代前後に多いです。
女性10万人あたり1年間で8人に甲状腺乳頭がんが発生します。
約2%から5%で家族内発症があります。

◎起こりやすい症状

初期は無症状です。がんが大きくなると甲状腺にしこりが触れるようになります。

まれに声帯を動かす神経(反回神経:はんかいしんけい)に広がることで声がれが出ます。症状について詳しくは「甲状腺がんの症状」のページで説明しています。

◎がんの組織の特徴

甲状腺乳頭がんは、甲状腺ホルモンを作る濾胞細胞が変化してできます。がんの組織を顕微鏡でみると乳頭状と呼ばれる構造をしているため、乳頭がんと呼ばれます。特徴的な細胞の形をしているため、細胞を顕微鏡で見る検査(細胞診)でも見分けられます。甲状腺がんの手術前に細胞診を行った結果、乳頭がんだとわかることが多いです。

◎がんの進行や広がりの特徴

乳頭がんの進行は遅く、見つかってから数年治療せず経過観察しても大きさなどに変化がないこともあります。

進行すると声を出す神経や気管に広がる場合があります。リンパ節転移を起こしやすいですが、リンパ節転移があっても治療後の生存率などにはあまり影響を与えません。

治療後は長期間生存できる人が多いですが、10年以上たっての再発もあり、通院も長期間必要です。

濾胞がん

濾胞がんは甲状腺がんの中で二番目に多いがんです。乳頭がんとともに濾胞がんも分化がんです。つまり、濾胞がんは甲状腺ホルモンを作る正常細胞と同じように、甲状腺刺激ホルモンに反応してヨードを取り込む機能を持ちます。この機能を利用して治療を行います。

濾胞がんの細胞は、顕微鏡で見ても良性の濾胞腺腫との区別がつきにくく、手術前の検査では濾胞がんだとはっきりわからないことがあります。手術で切り取った腫瘍を顕微鏡でよく観察して、がんがどうかを見分けます。

◎統計上の特徴

濾胞がんは甲状腺がんの5%前後をしめます。
女性に多く、乳頭がんより年齢は少し高齢の人が多いです。

◎起こりやすい症状

初期は無症状です。がんが大きくなると甲状腺にしこりが触れるようになります。まれに声帯を動かす神経に広がることで声がれが出ます。

症状について詳しくは「甲状腺がんの症状」のページで説明しています。

◎がんの組織の特徴

甲状腺濾胞がんは、甲状腺ホルモンを作る濾胞細胞からできます。濾胞がんの細胞は、顕微鏡で見ても良性の濾胞腺腫の細胞と区別がつきにくいため、細胞を観察する検査(細胞診)で濾胞がんを確実に見分けることは困難です。そのため、手術をするまで濾胞がんかどうかがはっきりしていないことがあります。

手術で腫瘍を取り出せば、バラバラの細胞ではなくまとまった組織として顕微鏡で観察することができるので、がんかどうかを見分けられます。腫瘍を包む膜を破って広がっているか、腫瘍内の血管に腫瘍が入っている場合には濾胞がんの診断になります。

◎がんの進行や広がりの特徴

濾胞がんの進行は比較的遅いです。
転移をする場合には主に血液に乗って転移して、肺や骨に転移を起こします。
肺や骨に転移していない場合には高い確率で治療後5年以上の生存を見込めます。

参考に甲状腺濾胞がんの生存率の表を載せます。がんの進行の度合いを表す「病期」によって生存率が違います。

病期 5年生存率(実測)
(2006-2010年集計)
10年生存率(実測)
(2001-2005年集計)
I 100.0 100.0
II 95.0 95.5
III 100.0 66.7
IV 64.8 32.0

病期はがんの大きさや広がりによって決めます。数字が大きいほど進行していることを意味します。肺や骨に転移がない場合はIII期までとなります。III期までであれば、5年生存率は90%を超えています。しかしIII期とIV期では生存率に差があります。

表の数字は実際にそれぞれの病期で診断された患者さんの経過を集計したものです。5年生存率でII期よりIII期の生存率が低くなっていますが、これは対象となる人の数が少ないと正確な統計が難しいためです。対象とする人の数え方などによって多少数字が変わる可能性はありますが、「早い病期なら5年生存率や10年生存率が高い」といった大まかな傾向は、濾胞がんの性質として理解できます。

参考文献
・全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査(2019年11月集計)

髄様がん

髄様がんは乳頭がんや濾胞がんとは異なる性質を持ちます。乳頭がんや濾胞がんとは異なる甲状腺の細胞から発生します。髄様がんのもととなる傍濾胞細胞(ぼうろほうさいぼう)はカルシウムを調整するカルシトニンというホルモンを分泌します。そのため髄様がんがあるとカルシトニンが増加することがあります。

髄様がんの特徴として約4割が遺伝性です。髄様がんの中で遺伝に関係するものは、多発性内分泌腫瘍症(multiple endocrine neoplasia:MEN)2型の場合です。

◎統計上の特徴

髄様がんは甲状腺がんの1.5%前後を占めます。ごくまれな病気と言えます。

髄様がんのうち約4割が遺伝性の髄様がんです。遺伝性の甲状腺髄様がんは、多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2)に関連します。MEN2は甲状腺髄様がんの他に、副腎の腫瘍(褐色細胞腫:かっしょくさいぼうしゅ)や、副甲状腺機能亢進症を起こします。

◎起こりやすい症状

初期は無症状です。がんが大きくなると甲状腺にしこりが触れるようになります。症状について詳しくは「甲状腺がんの症状」のページで説明しています。

◎がんの組織の特徴

甲状腺髄様がんは、甲状腺の傍濾胞細胞からできます。傍濾胞細胞は、本来はカルシトニンというホルモンを作る細胞です。このため髄様がんはカルシトニンを作っていることがあるので、血液検査でカルシトニンの量を測定すると再発や転移の指標となります。ほかにも血液検査のCEAの値が再発や転移の指標になります。

◎がんの進行や広がりの特徴

遺伝性髄様がんの場合には両側の甲状腺にがんができることがあります。そのため、手術で甲状腺を全て取り除きます。遺伝性ではない髄様がんでも中心となる治療は手術です。

リンパ節転移が多い場合には治療後の経過が悪くなる傾向にあります。肺や肝臓に転移することもあります。

未分化がん

分化がんの「分化」とはがんの組織が正常の構造と似た組織を保っているということを表します。分化がんは正常に近い形態を保っていますが、未分化がんは正常とは遠い形態です。

未分化がんは見た目も正常から遠く、悪性度も高いがんです。未分化がんは大きくなるのも非常に速いものです。手術のみでは治療が難しく、放射線治療抗がん剤治療をあわせて行います。

◎統計上の特徴

未分化がんは甲状腺がんのうち1-2%程度で、ごくまれです。
未分化がんが見つかる人の年齢は60-70歳代が中心です。
未分化がんの多くはもともと甲状腺にあった分化がん(乳頭がんや濾胞がん)が長い経過の中で変化を起こして発生するものと考えられています。

◯甲状腺がんの未分化転化

乳頭がんや濾胞がんの性質が変化して未分化がんにかわることを「未分化転化(みぶんかてんか)」と呼びます。未分化転化が起こると、急に大きくなる硬くて動かない甲状腺のしこり、呼吸の苦しさ、飲み込みづらさなどの症状が出ます。転移したリンパ節や、遠い臓器に転移した場所でも同様に、しこりの急激な増大が起こります。未分化転化の仕組みや原因、発生頻度などは未解明です。

◎起こりやすい症状

未分化転化によって、急激に大きくなる前頸部のしこりが現れます。しこりは痛みや、皮膚の赤みを伴うことがあります。さらに、熱やだるさといった全身の症状、声がれ、呼吸の苦しさが出ることもあります。

症状について詳しくは「甲状腺がんの症状」のページで説明しています。

◎がんの組織の特徴

未分化がんには通常の甲状腺細胞の形態や、甲状腺組織がありません。

◎がんの進行や広がりの特徴

未分化がんは非常に進行が早いがんです。診断時にはすでに頸部の全体に広がっていることや、他の臓器への転移があることがあります。未分化がんと診断された時の1年生存率は5%から20%とされています。

未分化がんの中でも、比較的経過が良いものがあります。がんを取りきる手術(根治手術)ができた場合や、40Gy以上の放射線治療ができた場合、何らかの抗がん剤治療ができた場合には、経過が良い傾向にあるとの報告があります。

参考文献
甲状腺未分化癌研究コンソーシアム設立とその成果. JOHNS 2011;27(7):985-989.

5. 甲状腺がんに見られやすい症状

甲状腺がんの初期には症状がありません。小さい甲状腺がんは健診の超音波検査などで偶然見つかることもあります。

大きくなるとくびの前あたりにしこりを触れることや、違和感がでることがあります。甲状腺がんの場所によっては声がれがでることがあります。これは声帯を動かす反回神経に甲状腺がんが広がった場合で、声帯が動かなくなることが声がれの原因になります。

がんが急激に進行すると頸部の痛みがでたり熱が出ることがあります。

がんが転移を起こした場合に、転移した先の臓器に影響して症状を表すこともあります。たとえば、肺転移で呼吸が苦しくなったり、骨転移で転移した部位の痛みが出たりすることがあります。

甲状腺がんの症状として代表的なものがくびのしこりですが、くびにしこりができる病気は甲状腺がん以外にも多くあります。しこりが触れて心配になった場合には、一度耳鼻咽喉科や内科に受診してみてください。

症状について詳しくは「甲状腺がんの症状」のページで説明しています。

6. どういったことが甲状腺がんの原因になるのか?

甲状腺がんになりやすい人の特徴は放射線被曝、ある遺伝子変異を持つ場合、体重増加などが知られています。このような、病気を発症する危険を高めるものをリスク因子と言います。リスク因子があるからといって必ずがんになるとは限りません。またリスク因子が無いからといって、がんにならないわけでもありません。様々なリスク因子が絡み合ってがんを発症します。

放射線被曝

放射線被曝によって甲状腺乳頭がんが増加するということは、広島や長崎の原爆、チェルノブイリ原発事故の研究で報告されています。被曝時年齢が若く、被曝量が多かった人で甲状腺がんが増加する傾向にありました。甲状腺への被曝量に比例して甲状腺がんの発生頻度も多くなります。被曝時年齢が若いほど、甲状腺がんのリスクは高まりますが、20歳以上で被曝した場合には甲状腺がんのリスクの増加はありません。

また、チェルノブイリ原発事故で増加した初期の小児甲状腺がんのほとんどが乳頭がんでした。放射線被曝によって遺伝子変異が起きやすくなって、発がんすると言われています。病院でのCT検査などの被曝量では、甲状腺がんが増えたという報告はありません。

チェルノブイリ原発事故についての研究からは、内部被曝で甲状腺がんになりやすくなることも報告されています。

内部被曝とは放射線を出すものが身体の中にあることにより起こる被曝です。対して、身体の外から来た放射線に触れることを外部被曝と言います。内部被曝が起こるのは、例えば土の中に含まれる天然の放射性物質や、核実験などによる放射性物質に汚染された灰を含んだ空気や水、食べ物を摂取した場合です。チェルノブイリ原発事故では放射線性物質に汚染された灰を含んだ空気や食べ物を摂取したことで内部被曝を起こしていた人々に、甲状腺がんが増加していたと報告されています。

福島第一原発の事故でも甲状腺がんの懸念がたびたび報道されましたが、福島では一般の人の甲状腺被曝の推定量は低く、甲状腺がんの発がんリスクは考えにくいとされています。2016年の報告では、福島県内におけるがん発見率の地域での差や、外部被ばく線量との関連性がないとされています。

病院での被曝も重要です。X線検査やCT検査などに伴う被曝量のみでは甲状腺がんの発生を高くすることはほとんどありません。しかし、がんの放射線治療では大量の放射線被曝が起こります。さまざまながんに対して放射線治療が使われますが、一般的に、放射線治療が新しいがんを発生させてしまう可能性もあると考えられます。放射線治療によって発生したがんを二次性がんと呼びます。二次性がんの可能性があるにも関わらず、放射線治療を行うのは、もともとのがんが進行すれば長期生存が困難となると考えられるからです。放射線治療後に長期余命が考えられる子どもや若年者での放射線治療では二次性がんのリスクも考えて治療を選択します。

甲状腺がんについては、頸部への放射線治療の経験や、骨髄移植前の全身放射線照射などの経験があると、二次性甲状腺がんのリスクが高くなるという報告があります。

参考文献
・Radiation dose-response relationships for thyroid nodules and autoimmune thyroid diseases in Hiroshima and Nagasaki atomic bomb survivors 55-58 years after radiation exposure. JAMA. 2006 Mar 1;295(9):1011-22.
・Childhood thyroid cancer in Belarus, Russia, and Ukraine after Chernobyl and at present. Arq Bras Endocrinol Metabol. 2007 Jul;51(5):748-62.
・Risk of thyroid cancer after exposure to 131I in childhood. J Natl Cancer Inst. 2005 May 18;97(10):724-32.
・Thyroid cancer risk in Belarus among children and adolescents exposed to radioiodine after the Chornobyl accident. Br J Cancer. 2011 Jan 4;104(1):181-7.
・I-131 dose response for incident thyroid cancers in Ukraine related to the Chornobyl accident. Environ Health Perspect. 2011 Jul;119(7):933-9.
・Risk of second primary thyroid cancer after radiotherapy for a childhood cancer in a large cohort study: an update from the childhood cancer survivor study. Radiat Res. 2010 Dec;174(6):741-52.
・Comprehensive Survey Results of Childhood Thyroid Ultrasound Examinations in Fukushima in the First Four Years After the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident. Thyroid. 2016 Jun;26(6):843-51.
・Comparison of childhood thyroid cancer prevalence among 3 areas based on external radiation dose after the Fukushima Daiichi nuclear power plant accident: The Fukushima health management survey. Medicine (Baltimore). 2016 Aug;95(35):e4472.

遺伝

一部の甲状腺がんは遺伝により発生します。ただし遺伝が関係する甲状腺がんは少ないです。

甲状腺がんは組織型で大きく4つに分けられます。乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、未分化がんの4つです。この中で髄様がんの一部は遺伝で発症することがわかっています。髄様がんには遺伝性の髄様がんと、遺伝と関係のない散発性(さんぱつせい)の髄様がんにわけられます。髄様がんの中で遺伝に関係するものは、多発性内分泌腫瘍症(multiple endocrine neoplasia:MEN)2型の場合です。日本で見つかる髄様がんのうちおよそ4割が多発性内分泌腫瘍症2型に関連しています。それ以外では遺伝とは関連しません。

多発性内分泌腫瘍症2型ではRET遺伝子の変異が98%にあります。そこで、髄様がんが見つかった場合には、多発性内分泌腫瘍症2型かどうかを調べるためにRET遺伝子変異の検査をして、治療の方針を決定します。

遺伝性髄様がんの場合には通常、手術で甲状腺を完全に摘出します(甲状腺全摘術)。なぜなら、髄様がんのもととなる傍濾胞細胞(ぼうろほうさいぼう)の全てに遺伝子変異があるため、甲状腺を残すとその部分から髄様がんが再発する可能性があるからです。

髄様がん以外の甲状腺がんのうち遺伝性のものが5%ほどあり、家族性甲状腺がんと呼びます。

家族性甲状腺がんには、甲状腺以外の臓器に病気を伴う症候性と、他の臓器に病気を伴わない非症候性があります。家族性甲状腺がんの厳密な定義では症候性の場合は除外され、「親子兄弟に2人以上の髄様がんではない甲状腺がんが存在し、明らかな症候群を伴わないもの」とされています。ややこしい定義ですが、これに従えば、多発性内分泌腫瘍症2型による遺伝性髄様がんは家族性甲状腺がんとは呼ばないことになります。家族性甲状腺がんは、甲状腺がん単独で遺伝が関係するものです。

家族性甲状腺がんは通常の甲状腺がんの発症年齢よりも若い年齢で発症する傾向にあります。家族性甲状腺がんは通常の甲状腺がんに比べて、進行が少し速く、悪性度が高いという報告が多くありますが、変わらないという報告もあり、現時点ではどちらとも言えません。

親子兄弟に甲状腺がんを経験した人が2人以上いる場合は、家族性甲状腺がんの可能性も考えられ、自分も甲状腺がんになる可能性が高まります。首の超音波検査などを定期的に行うことが対策として考えられますが、甲状腺がんが早く見つけられた場合に、積極的に治療を受けることが生存率を伸ばすかどうかについては不確かです。過剰な超音波検査によって、本当は無害なものまで治療してしまうなどの望ましくない面もあります。検査をしなければ、しこりとして触れた段階で受診して調べることになりますが、もともと進行の遅い甲状腺がんであるため、その時点での治療でも遅くない可能性があります。

以上のことから、2人以上の家族が甲状腺がんと診断された時、自分も定期的に検査をするかどうかは考え方によっても変わります。医師などとよく相談して、自分の希望になるべく近い方針を探してください。

体重増加

体重が甲状腺がんと関係する可能性があります。

男性、女性ともにBMI(体重[kg]÷身長[m]÷身長[m])が高い人のほうが甲状腺がんがわずかに多いという報告があります。ただし、日本人に限ったデータでは、体重増加と甲状腺がんのリスクの関連を報告したものはありません。

体重は甲状腺がんと関係しているかもしれませんが、甲状腺がん予防のために減量するべきと言えるほど強い関係ではありません。

参考文献
・Body-mass index and incidence of cancer: a systematic review and meta-analysis of prospective observational studies. Lancet. 2008 Feb 16;371(9612):569-78.

7. 甲状腺がんが疑われたときに行われる検査

甲状腺がんが疑われたときに行う検査で重要な検査は、超音波検査と穿刺吸引細胞診です。超音波検査は甲状腺の中身を映し出せる画像検査です。腫瘤の形や、大きさ、血流などを調べて、がんらしい特徴がないかを調べます。超音波検査でがんの可能性がある場合には、穿刺吸引細胞診を行います。穿刺吸引細胞診は、腫瘤に針を刺して中の細胞を吸引して顕微鏡で調べる検査です。

超音波検査と穿刺吸引細胞診で甲状腺がんだとわかった場合には、治療方針を決めるため、追加で血液検査、頸部CT検査、頸部MRI検査や、PET-CT検査などを行います。

血液検査ではがんの治療が可能な状態か全身状態の評価を行います。また、甲状腺ホルモンや腫瘍マーカーなどを測定して診断の参考にします。頸部CT検査では甲状腺がんのひろがりを評価します。場合によって頸部MRI検査を追加で行います。PET-CT検査では全身に転移がないかを調べます。

全身の評価が十分にできたら、甲状腺がんの組織型とがんの広がりをあわせて、治療方針を決定します。

検査の詳しい内容については「甲状腺がんが疑われた時に行う検査とステージ分類」に書いてありますので、参考にしてみてください。

8. 甲状腺がんのステージ

甲状腺がんの治療方針を決定するためには、甲状腺がんの組織型とともにステージが重要です。

甲状腺がんの組織型は穿刺吸引細胞診を行って推定します。

ステージはがんの進行した度合いを表す指標です。ステージはTNM分類という基準を用いて決めます。2018年1月から甲状腺がんのステージ分類が変更されました。2016年に発行されたUICC『TNM悪性腫瘍の分類 第8版』に沿って決められています。TNM分類は、がんが隣り合った組織に染み入るように広がっている範囲(T)、周りのリンパ節への転移(N)、離れた臓器への転移(M)をそれぞれ段階に分けて評価をします。T、N、Mの3点に加え、年齢、がんの組織型の組み合わせによってステージを決定します。

ステージは治療を選ぶための参考として使われるほか、生存率などの統計もステージを基準にしたものがあります。

ステージの詳しい内容については「甲状腺がんが疑われた時に行う検査とステージ分類」に書いてありますので、参考にしてみてください。

9. 甲状腺がんの生存率と死亡率

甲状腺がんとわかった後は治るのか、この先どうなるのか、病気の見通しが心配になると思います。ここではがんの生存率や死亡率を参考に、今後予想される見通しについてみてみましょう。

ただし、生存率も死亡率もあくまで統計上の数値です。ひとりひとりの経過には大きな個人差があります。数字はあくまで目安と考えて、自分のいまの状況でできることは何かを主治医とよく話し合うことが大切です。

まずはじめに、甲状腺がんの生存率についてみてみましょう。

甲状腺がんの生存率は組織型とステージによって違います。組織型が特に重要です。甲状腺がんの中で最も多い乳頭がんは治療後10年以上生きる人も多いがんです。一方、同じ甲状腺がんでも、甲状腺未分化がんは進行が早く治療に苦渋するがんです。参考に乳頭がんと濾胞がんの10年生存率を下の表に示します。

表 甲状腺乳頭がんのステージごとの生存率

ステージ 5年生存率(実測)
(2006-2010年集計)
10年生存率(実測)
(2001-2005年集計)
I 98.8% 94.6%
II 96.9% 91.9%
III 94.7% 86.5%
IV 81.4% 64.0%

表 甲状腺濾胞がんのステージごとの生存率

ステージ 5年生存率(実測)
(2006-2010年集計)
10年生存率(実測)
(2001-2005年集計)
I 100% 100%
II 95.0% 95.5%
III 100% 66.7%
IV 64.8% 32%

ほかのがんでは主に5年生存率を用いますが、甲状腺がんは生存率が良いことと、5年以上たっても再発することがあるため、この表では10年生存率を示します。

がんは若い人ほど進行が早くなる印象があるかもしれませんが、甲状腺がんでは若い人の方が治療後の経過は良好です。甲状腺がんの進行度を決めるステージ分類では、乳頭がんと濾胞がんでは55歳を境に、大きく進行度の分類が異なります。つまり55歳以下の発症では経過が良好ということです。

18歳以下の若年者でもまれではありますが、甲状腺がんの発症はあります。若年者に発症しやすいものは乳頭がんです。18歳以下の若年発症の甲状腺乳頭がんでは成人発症に比較して、長期間の生存の見込みは更に良いとされています。診断時に進行した状態であっても適切な初期治療と経過観察で、経過は良好です。

次に甲状腺がんの死亡数や死亡率についてみてみましょう。

日本の2017年の甲状腺がんによる死亡数は男性531人、女性1,202人でした。人口10万人あたりに換算した粗死亡率は男性0.9人、女性で1.9人です。甲状腺がんになるのは女性が多いため、女性の死亡率も高くなっています。

甲状腺がんで死亡する人は近年増えてきています。しかし、その変化は高齢化によるものと考えられます。甲状腺がんの死亡率の推移を下のグラフに示します。

甲状腺がんの死亡率の年次推移(粗死亡率と年齢調整死亡率)

グラフでは、男女ともに甲状腺がんの粗死亡率は上昇しています。しかし、粗死亡率は高齢化の影響を受けます。一般的にがんの死亡率は高齢になると増加します。甲状腺がんも高齢ほど死亡率が高くなります。そのため、高齢化がすすむと粗死亡率も上昇して見えます。

高齢化の影響を分けて考えるには、年齢調整死亡率という数字を使います。年齢調整死亡率は、人口の年齢構成が一定と仮定して、実際の年齢ごとの死亡率をもとに計算します。

年齢調整死亡率は男女ともに低下傾向が続いています。これは、甲状腺がんの診療の進歩に伴って、甲状腺がんによる死亡を防げていることによると考えられます。

つまり、最近の日本では、甲状腺がんへの対策が成果を上げていますが、それを上回るスピードで高齢化が進んだため、甲状腺がんで死亡する人は増えています。

参考文献
・全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査(2018年2月集計)
・国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」

10. 甲状腺がんに対して行われる治療

甲状腺がんの治療方法は組織型によって異なります。いずれの組織型でも、治療の中心を担うのは手術治療です。手術に加えて、放射線治療、ホルモン治療、抗がん剤治療などを行います。

治療法の選び方や、治療全体にわたっての注意などについて「甲状腺がんの治療法や病院の選び方」で説明しています。

手術

手術が甲状腺がんの治療の基本になります。乳頭がん、濾胞がん、髄様がんでは最初の治療として手術を行います。未分化がんでがんが大きく取り切れない場合には、最初に放射線や抗がん剤の治療を行って、がんが小さくなった場合には手術を行います。

最初の手術治療後に再発や転移をした場合でも、手術で摘出可能な場所の場合には手術治療を行います。手術治療ができなくなった場合には、放射線治療や抗がん剤治療を検討します。

手術について詳しくは「甲状腺がんの手術」のページで説明しています。

放射線治療

放射線治療には放射性ヨードを内服する内照射と、放射線を体の外からあてる外照射があります。

◎放射性ヨード内用療法

放射性ヨード内用療法は乳頭がんと濾胞がんに対して行う治療です。甲状腺はもともとヨードを取り込んで甲状腺ホルモンを作る働きをしています。乳頭がんや濾胞がんのがん細胞は、がんになってもヨードを取り込む働きを持っているため、それを利用して治療を行います。

ヨードの放射性同位元素である放射性ヨードを内服すると、放射性ヨードは甲状腺組織や甲状腺がんの部分に取り込まれます。放射性ヨードは放射線を放出するので、甲状腺組織や甲状腺がんは内部から放射線を浴びて破壊されます。

放射性ヨード内用療法は、最初の手術治療が終わった後に残った甲状腺組織を破壊するためのアブレーションと、再発や転移した場合に行う治療の2種類があります。どちらの場合も、治療の前にはヨードを摂らないように食事の調整をする必要があります。

詳しい治療の方法は「甲状腺がんの放射線治療:放射性ヨード内用療法」に書いてありますので参考にしてください。

◎外照射

外照射は身体の外からがんの場所を狙って放射線を照射する治療です。甲状腺に行う場合のほか、骨や脳に転移した場合に行います。

甲状腺に行う場合としては、未分化がんで手術ができない大きさの場合に、がんを小さくするために抗がん剤を併用した外照射を行います。その他に、乳頭がんや濾胞がんの手術後で放射性ヨード内用療法ができない場合には、がんが広がることを防ぐ目的で外照射を行います。

乳頭がんや濾胞がんで骨転移や脳転移を起こした場合には、転移の部分に照射を行うことがあります。

詳しくは「甲状腺がんの放射線治療:外照射」に書いてありますので参考にしてください。

薬物治療

甲状腺がんの薬物治療は主にホルモン治療と、抗がん剤治療に分けられます。ホルモン治療は乳頭がんや濾胞がんに対して行います。甲状腺がんは抗がん剤が効きにくいがんでしたが、最近では分子標的薬というタイプの抗がん剤の効果が報告されています。

薬物治療について詳しくは「甲状腺がんの薬物治療」のページで説明しています。

ここではホルモン治療と抗がん剤治療を使う場面などを大まかに説明します。

◎ホルモン治療

ホルモン治療は乳頭がんと濾胞がんに行われる治療です。体内のホルモンバランスを変えることで、がんの増大を防ぎます。

乳頭がんや濾胞がんは甲状腺刺激ホルモンによって増大します。ホルモン治療は甲状腺刺激ホルモンを減らす治療です。

甲状腺刺激ホルモンの本来の機能は、正常な甲状腺組織を刺激して、甲状腺ホルモンの分泌を増やすことです。血液中の甲状腺ホルモンが多くなると、甲状腺刺激ホルモンの分泌が減って、甲状腺ホルモンの分泌も減ることで、甲状腺ホルモンの量が一定に保たれています。

そこで、甲状腺ホルモンを薬として多く飲むことで、甲状腺刺激ホルモンを減らすことができます。これが甲状腺がんのホルモン治療です。

◎抗がん剤治療

甲状腺がんは通常の抗がん剤が効きにくいがんです。しかし、最近では分子標的薬と呼ばれるタイプの抗がん剤が使われるようになり、一定の効果が出ています。以前は手術治療以外に有効な治療方法がなかった髄様がんや、未分化がんにも分子標的薬を使うことができます。乳頭がんや濾胞がんでは放射性ヨード内用療法の効果がなくなった時点で分子標的薬の使用を検討します。

定期通院での経過観察

甲状腺の超音波検査の技術向上により、1cm以下の微小乳頭がんが見つかる頻度が増えています。1cm以下の甲状腺がんの中には転移などをせずに長期的に悪化しないものもあります。転移などがなく、急激に大きくなる恐れがないと思われた場合には、すぐには治療せず、外来で定期的に超音波検査などで大きさをみる場合もあります。しかしながら、急激に悪化するリスクもあるため病状について主治医からよく説明を受けたうえで治療方針を決定してください。

手術をせずに経過観察をする場合には、年に1回から2回の超音波検査などを行います。がんが3mm以上大きくなったり、ほかにも新しくがんと疑わしいものができたり、リンパ節転移と疑わしいものが見つかったりした場合には、手術を行います。

11. 甲状腺がんの治療後に注意すべきこと

甲状腺がんの治療後に注意すべきことは、定期的に通院することと、薬の内服を忘れずにすることです。

甲状腺がんは5年以上たってからも再発することがあり、最低10年、可能な限り長く通院することが理想的です。手術後すぐの時期は3ヶ月に1回程度の通院、その後は半年に1回程度の通院を行い再発や転移の有無を確認します。甲状腺がんは再発や転移がおきても適切なタイミングで治療を行うと長期間元気でいられるがんです。症状がない場合にも定期通院をしてください。

甲状腺全摘術後の場合は、甲状腺ホルモンの内服が必要です。甲状腺ホルモンが不足すると、疲れやすくなったり、むくみやすくなったり、腎臓や心臓が悪くなったりすることがあります。体調が悪くて食べたり飲んだりするのがつらい日にも、出来る限り内服を継続してください。

甲状腺がんの治療後の生活などについて詳しくは「甲状腺がんを治療した人が知っておきたいこと」のページで説明しています。