こうじょうせんがん
甲状腺がん
甲状腺にできるがんのこと。様々なタイプがあるが、甲状腺乳頭がんというタイプが非常に多い
11人の医師がチェック 132回の改訂 最終更新: 2024.10.30

甲状腺がんを疑われた時に行う検査とステージ分類

甲状腺がんの検査には2つの目的があります。甲状腺がんかどうか診断することと、甲状腺がんと診断された後で、進行度を把握することです。目的にあわせて検査を使い分けます。検査方法や診断基準について見ていきましょう。

1. 問診

問診では身体の状況や生活背景を聞かれます。身体診察を行う前に問診を行います。病気を診断する際には問診がとても重要です。

よく聞かれる質問として以下のものがあります。

  • 気になる自覚症状はなにか
  • 症状が出てから、現在までよくなったり悪くなったりしたか
  • 喫煙をどの程度するか
  • 飲酒をどの程度するか
  • 以前に治療した病気や持病はあるか
  • 放射線に被曝した経験があるか
  • 家族に似たような症状の人はいるか
  • アレルギーはあるか
  • 妊娠しているか、授乳しているか

問診の結果で甲状腺がんかどうかを推定し、がんが考えられる場合には進行の速度や程度、原因などについても推定します。今後の治療を決めるにあたって重要なアレルギーや生活習慣、持病、妊娠や授乳などの有無を知ることも重要です。

これらの中で大事なことについてもう少し詳しく説明します。

自覚症状の出現時期と程度

甲状腺がんの最も多い自覚症状は前頸部のしこりです。異常な塊のことを医学用語で腫瘤(しゅりゅう)とも言います。首の前の腫瘤は甲状腺がんの可能性もありますが、炎症などで腫れている場合もあります。

甲状腺腫瘤は甲状腺がんのこともありますが、他の甲状腺の病気でも自覚する症状です。甲状腺に腫れや腫瘤を触れる病気は下記があります。

甲状腺がんを疑う症状としては、しこりが硬い、指で摘んだ時に動かそうとしても動かないなどがあります。急激に大きくなり、痛みを伴う場合は甲状腺がんの未分化転化を考えますが、良性腫瘍でも腫瘍の内部で出血したりすると、同様の症状になるので、この症状のみではがんかどうかは判断ができません。

その他の自覚症状としては声がれなどがあります。甲状腺がんの声がれでは一般的にはのどの痛みなどは伴いません。声がれが持続している期間や、症状の変化が参考になりますので、医療者に伝えてください。

以前に治療した病気・持病・常用薬

小児がんの治療での放射線治療抗がん剤治療で甲状腺がんが増加することが報告されているため、治療歴があれば伝えてください。稀ではありますが、他のがんから頸部に転移をおこして、しこりを作ることもありますので、がんの治療歴があれば伝えてください。

持病や常用薬によって、今後行う検査を検討したり、治療の選択を検討する必要がありますので、医療者に伝えてください。

被曝歴

原爆や原子力発電所の事故などでこどもの時に被害を受けたか、小さい頃に頭や首に放射線治療を行ったか、などの質問で、放射線に被曝した経験がありそうかを聞かれます。若年での被曝歴は甲状腺がんの発症リスクになることがわかっています。

甲状腺がんの家族歴

家族で甲状腺がんを経験した人がいる場合には家族性甲状腺がんの可能性があります。親子兄弟に甲状腺がんを経験した人が2人以上いる場合は、家族性甲状腺がんの可能性も考えられるため医療者に伝えてください。特に甲状腺髄様がんを経験した家族がいる場合は、治療方針を決める時に重要ですので必ず伝えてください。

2. 身体診察

身体診察では、頸部(首)の触診や、ファイバースコープ検査を行います。

頸部の触診は首の前と横を触って調べます。首の前には甲状腺があるので、触ると甲状腺の大きさの変化やしこりを感じ取れることがあります。首の横の触診は、その部分にリンパ節転移がないかを調べるためです。

ファイバースコープ検査は声を出す声帯の観察のために行います。甲状腺がんがある場合、声帯やその周りの喉頭を動かす神経の麻痺を起こすことがあります。ファイバースコープ検査で声帯の動きが正常かを確認します。

ファイバースコープは、胃カメラと似た構造で、先端にカメラとライトがついた細いチューブです。胃カメラより細く、太さが2.5-5mm程度です。鼻からファイバースコープを挿入して、喉頭を観察します。

鼻をファイバースコープが通る時に痛みを感じるため、検査前に鼻の処置を行います。最初に粘膜収縮薬で、鼻の粘膜を収縮させて、鼻の空間をひろげます。次に局所麻酔薬を用います。これらの薬を鼻にスプレーしたり、薬のついた綿棒やガーゼを鼻に入れて処置をします。痛みを和らげられる状態になったところでファイバースコープを挿入します。

3. 血液検査

甲状腺がんかそうでないかは血液検査で診断はできません。治療方針を決定する際に血液検査を参考にします。

手術や放射線治療、抗がん剤治療には副作用などによって望ましくない結果(有害事象)を伴う恐れがあります。有害事象の出やすさは治療前の全身の状態などによっても違います。そこで、血液検査によって治療の負担に身体が耐えられるかを調べておけば、妥当な治療を選ぶための参考にすることができます。

全身状態の把握のための検査

全身状態を把握するために血液検査を行います。手術、放射線治療、薬物治療(抗がん剤治療、ホルモン治療)など、どの治療をするにあたっても、治療に耐えうる全身状態かを把握することが必要だからです。

貧血の有無や、腎臓・肝臓の機能、栄養状態の他、糖尿病の有無なども血液検査で調べます。貧血や栄養不良や、糖尿病があると、手術を行った後に、合併症が多くなることが報告されています。合併症とは手術によって引き起こされる望ましくないことを指します。合併症は手術のミスのことではなく、うまくいった手術で合併症が出てしまうこともありますが、できるだけ合併症を軽減する努力の一環として、合併症につながるような状態はあらかじめ把握しておく必要があります。

たとえば、放射線治療と抗がん剤治療を併用する場合には、抗がん剤の副作用による貧血の悪化や腎機能の悪化の可能性があり、治療前の評価が必要です。

甲状腺に関する血液検査:甲状腺ホルモン、サイログロブリン

手術前に甲状腺の機能が正常かを判断する目的で甲状腺ホルモンを測定します。甲状腺ホルモンの値が大きく異常な場合は手術前に正常値に近づけるために治療を行うことがあります。

甲状腺ホルモンの値が異常な場合には、甲状腺がん以外の病気も考えられるため、ほかの病気を見分けるために甲状腺の自己抗体を測定します。

サイログロブリンの値は手術後の再発の監視などに役立つことがあります。

以下でさらに詳しく説明します。

◎甲状腺ホルモン

甲状腺の腫瘍が原因で甲状腺機能が高くなったり、低くなったりすることがあります。あらかじめ甲状腺機能に異常がないかを確認します。

◎甲状腺の自己抗体検査

甲状腺の機能が高くなったり、低くなったりしている場合には、腫瘍の影響か、甲状腺の自己免疫疾患か判断を行うために自己抗体の検査を行います。自己抗体とは自分の身体を異物と間違えて認識して攻撃する物質です。自己抗体によって自分を攻撃してしまう病気を自己免疫疾患と呼びます。甲状腺の自己抗体を測定することで、橋本病バセドウ病などの甲状腺の自己免疫疾患がないかを確認します。

◎サイログロブリン

サイログロブリンは甲状腺で作られるタンパク質です。甲状腺の様々な病気で増加し、血液中に出てきたものを血液検査で調べることができます。がんではない、甲状腺の良性の病気でも上昇するため、がんかどうかの診断の目安にはなりません。

手術前にサイログロブリンが1,000ng/ml以上などの異常高値の場合には、濾胞がんの可能性や、乳頭がんでは遠隔転移の可能性を考えます。進行の早い未分化がんではサイログロブリンが上昇しないことが知られており、がんの悪性度の目安にはなりません。

手術後に乳頭がんと濾胞がんでは定期的に測定します。甲状腺を完全に取り除いた後(全摘出後)に、再発の有無の確認に定期的にサイログロブリンの血液検査を行います。サイログロブリンは甲状腺でのみ作られるため、甲状腺を全摘した後は血液中には存在しません。甲状腺全摘した後に一旦下がったサイログロブリンが再度上がった場合には、再発や転移を疑います。

◎カルシトニン、CEA

甲状腺髄様がんでは、カルシトニンとCEAの値が上昇することがあります。この2つが上昇していれば、甲状腺髄様がんの可能性が高くなりますが、上昇していないからといって、髄様がんではないという証拠にはなりません。しかし、再発を見つけるきっかけになる場合があるので、甲状腺髄様がんの手術後はカルシトニンとCEAを半年に1回程度繰り返し測定します。

カルシトニンは甲状腺の傍濾胞細胞で作られている物質です。髄様がんは甲状腺の傍濾胞細胞から発生するため、カルシトニンを作ることがあります。

CEAは一般的に「腫瘍マーカー」として測定されることの多い物質です。腫瘍マーカーとは、がん細胞に由来する血液中の微量の物質のことです。甲状腺がんのほかにも大腸がんなどがある場合にCEAが増加します。

甲状腺髄様がんで手術後に一旦低下したカルシトニンやCEAが再度上昇した場合は、髄様がんの組織が身体の中のどこかにできた可能性が考えられます。そのため、転移や再発を疑って検査を行います。

遺伝子検査

甲状腺がんのうち遺伝が関係する、甲状腺髄様がんが疑われた場合には遺伝子検査を行います。

甲状腺髄様がんの30%は遺伝性です。遺伝性髄様がんは多発性内分泌腫瘍症(multiple endocrine neoplasia:MEN)2型という病気の一部に当たります。MEN2型は複数の臓器に異常を表す病気で、甲状腺髄様がん、副腎褐色細胞腫副甲状腺機能亢進症を引き起こします。

RET遺伝子変異という遺伝的な異常がMEN2型の原因になります。RET遺伝子変異を調べる検査があり、2016年から保険収載されているので、現在は保険でMEN2型に対する遺伝子検査を行うことができます。

遺伝子検査を行うのは、ほかの検査結果から髄様がんの可能性が高い場合です。「病理検査」で説明する穿刺吸引細胞診で髄様がんが疑われ、かつ血液検査でカルシトニンやCEAが高い場合が該当します。

4. 画像検査

甲状腺がんの画像検査は、がんかどうか調べるために行う検査と、がんの広がりを調べる検査、治療後の経過観察で行う検査があります。行われる画像検査は下記のものです。

  • 超音波検査エコー検査)
  • CT検査
  • PET-CT検査
  • MRI検査
  • 甲状腺シンチグラフィ検査

がんかどうか調べるために行う検査で最も役に立つ検査は超音波検査です。超音波検査で腫瘤の形や大きさ、血流などを評価してがんか疑わしいか判断し、追加でがんを診断するために、穿刺吸引細胞診を行うか決めます。穿刺吸引細胞診はがんを診断するために、甲状腺の腫瘤に針を刺しておこなう検査です。穿刺吸引細胞診についてはこのページの「病理検査」で説明しています。

超音波検査と穿刺吸引細胞診で甲状腺がんとわかった場合には、がんの広がりを評価するためにCT検査、PET-CT検査、MRI検査などを行い、がんの周りへの広がりや、リンパ節や離れた臓器への広がりを評価します。この結果で治療の方法を決めます。

治療後の経過観察で行われる検査としては甲状腺シンチグラフィ検査があります。甲状腺シンチグラフィ検査は乳頭がんと濾胞がんの経過観察で行われます。髄様がんや未分化がんでは行いません。甲状腺を全て取りきる手術(甲状腺全摘術)をした後に、甲状腺組織が残っているかや、離れた臓器への転移がないかを調べるために行います。甲状腺シンチグラフィ検査の結果をもとに、放射性ヨード内用療法を行うかを検討します。放射性ヨード内用療法については「甲状腺がんの放射線治療:放射性ヨード内用療法(アイソトープ治療)」で詳しく説明しています。

超音波検査(エコー検査)

超音波検査(エコー検査)は、身体の中を観察する画像検査です。

甲状腺がんと疑わしいものを調べるのには、甲状腺超音波は最も役に立つ検査です。甲状腺の超音波検査と病理検査によって手術前の診断が決まります。

超音波検査では、観察したい部位にジェルを塗って、プローブという機械を当てると、プローブの先にある部分が画面に写ります。時間がかからず、かつ放射線を用いないことが利点です。

超音波検査では、甲状腺に周りと違うかたまり(腫瘤)があるかどうかを判断します。腫瘤があれば、その形、内部の構造、血流の有無などを観察して、どのような病気かを判断します。

甲状腺内の腫瘤を見分けるには、それが腫瘍性のものか、非腫瘍性のものかを考えます。

腫瘍とは一つの細胞が増殖して腫瘤を作ったものです。甲状腺に見つかる腫瘍には濾胞腺腫と悪性腫瘍があります。悪性腫瘍には、乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、転移性腫瘍などがあります。

非腫瘍性のものとして、嚢胞、腺腫様甲状腺腫橋本病に伴ってできる腫瘤などがあります。

超音波検査では画像の特徴からこれらの区別が可能です。超音波検査のみでは判断がむずかしい場合には、病理検査や腫瘍マーカーを参考にします。

あわせて、頸部リンパ節への転移の有無を評価します。リンパ節転移を探すには超音波検査とCT検査を組み合わせます。超音波検査では、腫瘤の形、内部の構造、血流の有無などを評価できます。

CT検査

CT検査は体の断面をうつし出せる画像検査です。放射線を使います。がんの周囲組織への広がりと、頸部リンパ節転移の有無などを評価します。がんの広がりを詳細に調べるためにはヨード(ヨウ素)を含む造影剤を注射して撮影を行います。ヨード造影剤のアレルギーがある場合や、糖尿病でメトホルミン製剤(メトグルコ®など)を内服している場合は、造影剤の副作用が出やすいので、医師に検査の前に伝えてください。腎臓の機能が悪い場合も造影剤を使用できないことがあります。

PET-CT検査

PET(ペット)-CT検査は画像検査で、放射線を使います。PET-CT検査はPET検査とCT検査を組み合わせた検査です。PET検査は、がん細胞が通常の細胞に比べて糖分を活発に取り込むことを利用した検査です。

PET-CT検査にはFDG(フルオロデオキシグルコース)という物質を使います。FDGは糖(グルコース)に似た物質です。FDGを点滴で身体の中に注入すると、細胞がFDGを取り込み、FDGが取り込まれた場所で放射線が発生します。発生した放射線を利用して画像を映し出すことができます。できた画像を見て、がんはFDGの集積が高くなること(陽性)を手がかりに正常組織と区別します。

甲状腺がんでPET-CT検査を行うのは、頸部リンパ節転移の有無を確認する目的と、遠くの臓器への転移がないかどうかを調べる目的があります。治療後にも、再発の有無を判断するために、定期的なPET-CT検査を行います。

PET-CT検査では糖分の取り込みをみるため、糖尿病がある人で血糖値が高い場合は、PET-CT検査を行うことができません。

MRI検査

MRI検査は磁気を利用する画像検査です。放射線を使うことはありません。CT検査と同様、がんの広がりを観察します。

MRI検査にはCT検査より筋肉などの柔らかい組織を詳細に評価できる利点があります。そのため、がんが筋肉へ入り込むように広がっている様子(浸潤)や、血管への浸潤などが評価可能で、手術可能ながんであるかを評価する点で重要な検査です。ただし、頸部リンパ節の観察ではCT検査に劣ります。

MRI検査では画像から病気を見分けやすくするため、ガドリニウムを含む造影剤を注射して検査を行うことがあります。ただし、腎臓の機能が悪いと、造影剤は使用できません。

甲状腺シンチグラフィ検査

甲状腺シンチグラフィ検査は、微量の放射性同位元素を含む薬を使用して行う画像検査です。甲状腺はヨードを取り込んで、甲状腺ホルモンを作る働きをしているため、その働きを利用して検査を行います。放射性ヨードを注射すると、甲状腺組織がヨードを取り込むため、甲状腺組織がある場所から放射線が出るようになります。シンチグラフィ検査はこの放射線を感知して画像にします。

甲状腺がんの中で、乳頭がんや濾胞がんと呼ばれる種類のがんはヨードを取り込む働きを持っています。そのため、甲状腺シンチグラフィ検査でがんがある場所を探せます。乳頭がんや濾胞がんが手術後に取り残されたり、離れた場所に転移したりしても、ヨードを取り込んでいる場所を甲状腺シンチグラフィ検査で探すことができます。

甲状腺シンチグラフィ検査は、通常は甲状腺がんかどうかを診断するためではなく、甲状腺がんの手術後の経過観察で行います。手術後に残存した甲状腺組織がないかを確認する、甲状腺がんが転移していないかを確認する、放射性ヨードを使う治療の効果が見込めるかを確認するといった目的で使います。

甲状腺シンチグラフィ検査の前には準備が要ります。準備をする目的は、残存した甲状腺組織や再発・転移した甲状腺がんの組織に放射性ヨードが十分取り込まれるようにすることです。

その方法は、体内でヨードを枯渇させることと、甲状腺刺激ホルモン(TSH)を増やすことです。

ヨードを枯渇させるために、検査前2週間は摂取するヨードを制限します。昆布、ひじき、わかめ、海苔などのヨードを含む食品を避けます。

また、検査前に体内の甲状腺刺激ホルモン(TSH)を増加させます。TSHは甲状腺ホルモンを作る司令を出すホルモンです。TSHが体内で増加すると、甲状腺ホルモンをたくさん作ろうと甲状腺組織がたくさんヨードを取り込みます。乳頭がんや濾胞がんも正常な甲状腺組織と同じように、TSHの司令に反応してヨードを取り込みます。TSHを増加させる方法には、甲状腺ホルモンの内服を一時中断する方法と、TSH製剤の注射を行う方法があります。

検査後は放射線が微量ながら身体から出ていますので、周りの人に被曝させないよう、人ごみを避けるなど気をつけて生活をします。

甲状腺シンチグラフィ検査の準備や検査後の注意は、放射性ヨード内用療法についての注意と同様です。「甲状腺がんの放射線治療:放射性ヨード内用療法(アイソトープ治療)」で詳しく説明しています。

5. 病理検査:穿刺吸引細胞診(せんしきゅういんさいぼうしん)

病理検査とは腫瘍の一部を採取して顕微鏡などで詳しくみる検査です。甲状腺腫瘍では腫瘍に針を刺して吸引し、採取できた細胞を調べる穿刺吸引細胞診が行われます。穿刺(せんし)とは針で刺すことです。

病理検査は甲状腺の腫瘤ががんかどうかを調べるときに最も信頼できる検査です。病理検査によってがんかどうかを最終的に判断します。さらに、甲状腺がんの中でもどんな種類のものか、リンパ節転移はあるかといった判断もできます。

穿刺吸引細胞診の方法

超音波検査をしながら、甲状腺腫瘍に注射針を刺して、内部の細胞を吸引します。使用する注射針の太さは、血液検査などで用いる針の太さと同じです。1回の穿刺で内部の細胞がうまく引けない場合は、もう1回穿刺することがあります。1回もしくは2回穿刺するのみなので、穿刺時には麻酔は使用しません。

吸い取ったものをガラスに吹き付けて、顕微鏡で観察します。

まれですが、穿刺した針が血管を傷つけた場合は、検査後に穿刺部位が腫れることがあります。出血を防ぐため細胞診を行った日は激しく首を動かしたり、運動したり、飲酒したり、長時間入浴したりすることは避けてください。穿刺した場所が大きく腫れた場合は、検査をした病院に問い合わせてください。

穿刺吸引細胞診の目的

穿刺吸引細胞診を行う目的としては下記の3つがあります。

  1. 甲状腺腫瘍が、がんかどうか調べる
  2. 甲状腺がんであった場合に、どのような種類のものか調べる
  3. 頸部リンパ節が腫れている場合に、がんが転移しているかどうか調べる

それぞれの目的に対して、穿刺吸引細胞診によってわかることなどを説明します。

1. 甲状腺腫瘍が、がんかどうか調べる

病理検査の一つの目的は甲状腺がんかどうかを診断することです。病理検査は甲状腺の腫瘤ががんかどうかを調べるときに最も信頼できる検査です。病理検査によってがんかどうかを最終的に判断します。

ほとんどの場合でがんかどうかが見分けられますが、一部診断が難しい場合もあります。

たとえば、甲状腺がんのうち、濾胞がんは穿刺吸引細胞診では言い当てられません。濾胞がんらしいかどうかは、腫瘍が周りに染み入って広がっているかどうかで判断します。正確には手術で摘出した腫瘍を顕微鏡で見ないとわかりません。

2. 甲状腺がんであった場合に、どのような種類のものか調べる

病理検査では甲状腺がんであるかどうかだけではなく、甲状腺がんであれば組織型も調べることができます。組織型とは、がんを顕微鏡で見た時の特徴による分類です。甲状腺がんの治療を選択する時には、がんの進行度とともに、組織型が大変重要になります。甲状腺がんの組織型には乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、未分化がんなどがあります。

甲状腺がんで最も多い乳頭がんは特徴的な細胞があるため、細胞診で見分けがつきやすいがんです。一方、濾胞がんは細胞診のみでは良性の濾胞腺腫との区別がつきません。手術で取り出した腫瘍を顕微鏡でよく観察し、まわりの組織へ染み出している見た目があれば濾胞がんの診断となります。

髄様がんは細胞診で見分けがつくこともありますが、血液検査のカルシトニンやCEAの値も参考にして最終的に診断を行います。

3. 頸部リンパ節が腫れている場合にがんかどうか調べる

甲状腺がんはしばしば頸部リンパ節への転移を起します。そこで、甲状腺がんが見つかっている人に頸部リンパ節の腫れがあった場合には、超音波検査、CT検査、PET-CT検査を行って、甲状腺がんのリンパ節転移かどうかを総合的に判断します。穿刺吸引細胞診ではリンパ節にがん細胞があるかどうかを見て判断することができます。

細胞診におけるクラス分類

細胞診の評価では、クラス分類を使います。クラスとは、見ている細胞がどの程度がんらしいものなのかを分類したものです。クラスⅠはがんを疑うものが全くない状態で、クラスⅤはがん細胞がはっきりと見えている状態です。

クラスⅠ : がん細胞はない
クラスⅡ :良性異型(変形しているが悪性ではない形)の細胞がある
クラスⅢ :良性なのか悪性なのか判断し難い
クラスⅣ :悪性を強く疑う細胞がある
クラスⅤ :悪性細胞(がん細胞)がある

つまり、クラスⅣでも実はがんではない可能性が少しはあります。クラスⅤなら確実にがんであると判断されたことになりますが、進行度を表すステージはⅠかもしれませんし、もっと進行しているかもしれません。「クラスⅣ」と言われても「末期がんではないか」と思う必要はありません。

ステージやクラスといった言葉を日頃あまり聞き慣れていない場合は、どうしても混同してしまいがちです。お医者さんから病気の説明を受ける際は、聞き間違えないように一度言葉の指しているものを確認してから臨んだほうが良いかもしれません。

6. 甲状腺がんのステージ分類

甲状腺がんの治療方法の決定に重要なことは、組織型とステージ分類です。

組織型とは病理検査で区別される乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、未分化がんなどの種類のことです。ステージ分類とは、がんがどれくらいの範囲まで広がってきているのかを画一的に評価するものです。ステージを基準としてがんの治療法が決定されます。

甲状腺がんが疑われた場合には、甲状腺がんかどうかを診断するためと、がんの種類を推定するために穿刺吸引細胞診を行います。甲状腺がんだとわかり、甲状腺がんの種類が推定できたら、次にがんの広がりの程度を画像検査などで把握します。がんの大きさやリンパ節転移の範囲などからステージ分類を行います。

細胞診、画像検査、血液検査などから判断された組織型とステージ分類に応じて治療を選択します。

TNM分類とは

ステージは国際的な基準(UICC TNM分類)から決まっています。

TNM分類は、がんの広がり(T)、所属リンパ節転移(N)、遠隔転移(M)をそれぞれ段階に分けて評価をします。甲状腺がんではT・N・Mの3点に加えてがんの組織型と年齢によってステージ分類を行います。

分類に使う言葉の意味や評価の基準などを説明します。

T:がんの広がり

がんは周りの正常な組織に染み入るようにして広がっていく性質があります。このことを「浸潤(しんじゅん)する」と言います。TNM分類では、がんそのものが、周りの正常な組織に浸潤した範囲を評価します。甲状腺の周りには喉頭、気管や食道などがあり、声帯の動きを担当する神経もあります。がんの大きさとともに、周りの構造物にどれくらい広がっているかも評価します。

N:所属リンパ節転移

がんは浸潤するだけでなく、転移という形でも周りに広がります。

リンパ節転移は、がん細胞がリンパ液の流れに乗って到達したリンパ節で増殖することを指します。対して、血流にがん細胞が乗っかって離れた臓器に転移するのが遠隔転移です。

リンパ節転移には遠隔転移と違った性質があります。リンパ液の流れには、血液を送りだす心臓のようなポンプがありません。リンパ液は臓器の間をゆっくりと流れています。このため、がん細胞がリンパ液に乗ったときは、いきなり遠いリンパ節に転移することがなく、隣のリンパ節へと順々に広がっていきます。

甲状腺がんのある部位からだいぶ離れたところのリンパ節にがん細胞が見つかった場合は、がん細胞が広範囲に転移していると判断します。つまり、甲状腺がんの周りから遠くの場所までの間にあるリンパ節のすべてを順々に転移してきたと考えます。

がんの場所から最も近くて転移しやすいリンパ節を所属リンパ節と呼びます。TNM分類では所属リンパ節転移がある範囲を評価します。

甲状腺がんの所属リンパ節は甲状腺のまわりにあるリンパ節で、頸部中央区域リンパ節と呼びます。

頸部中央区域リンパ節を細かく分けると、気管の前や横にあるリンパ節、喉頭の近くのリンパ節、左右の肺の間にある縦隔の上の部分(上縦隔:じょうじゅうかく)のリンパ節があります。

頸部中央区域リンパ節より、もう少し離れたリンパ節として、首の横にあるリンパ節(外側区域リンパ節)と、鼻の奥の両側にあるリンパ節(咽頭後リンパ節)に甲状腺がんが転移することもあります。

M:遠隔転移

遠隔転移とはがん細胞が離れた臓器に転移することを指します。

がんの広がり、所属リンパ節転移、遠隔転移を下記の基準で段階に分けます。専門的な話になるので、難しいと感じた場合には「ステージ分類とは」まで読み飛ばしてください。

【T分類:腫瘍の大きさ】

  • Tx:原発腫瘍の評価ができない場合
  • T0:原発腫瘍を認めない場合
  • T1:腫瘍が甲状腺にとどまり、最大径が2cm以下の場合
    • T1a:T1のうち、腫瘍の最大径が1cm以下の場合
    • T1b:T1のうち、腫瘍の最大径が1cmをこえて2cm以下の場合
  • T2:腫瘍が甲状腺にとどまり、最大径が2cmをこえて4cm以下の場合
  • T3:腫瘍が甲状腺にとどまるが最大径が4cmをこえる場合、もしくは、腫瘍の大きさに関係なく、甲状腺のすぐ外側にある筋肉(前頸筋群:ぜんけいきんぐん)に広がっている場合
    • T3a:腫瘍が甲状腺にとどまり、最大径が4cmをこえる場合
    • T3b:腫瘍の大きさに関係なく、前頸筋群に広がっている場合
  • T4:腫瘍の大きさに関係なく、前頸筋群より広範囲に広がる場合
    • T4a:腫瘍が甲状腺の外に広がり、皮下の軟部組織、喉頭、気管、反回神経に広がるが、背骨の前の筋肉(椎前筋群:ついぜんきんぐん)や、左右の肺の間(縦隔:じゅうかく)にある血管、頸動脈などには広がっていない場合
    • T4b:腫瘍が甲状腺の外に広がり、椎前筋群や縦隔にある血管、頸動脈などに広がっている場合

※甲状腺の外への広がりの評価は、目で見えるもの、もしくは画像検査で明らかな場合を言います。取り出した甲状腺を顕微鏡で観察してからの、甲状腺の外への広がりは問いません。

【N分類:所属リンパ節転移】

  • Nx:所属リンパ節の評価ができない場合
  • N0:所属リンパ節の転移がない場合
    • N0a:甲状腺がんの手術後に、取り出したリンパ節を顕微鏡で観察して、リンパ節転移がないことが確定した場合
    • N0b:手術時に目に見える大きさのリンパ節転移がなかった場合、もしくは、手術前の画像検査でリンパ節転移がない場合
  • N1:所属リンパ節転移がある場合
    • N1a:気管の前、気管の横、喉頭の前、左右の肺の間のリンパ節のどれか(頸部中央区域リンパ節)に転移がある場合
    • N1b:頸部の横のリンパ節(頸部外側域リンパ節)もしくは、鼻の奥の横にあるリンパ節(咽頭後リンパ節)への転移がある場合

【M分類:遠隔転移】

  • Mx:遠隔転移の評価ができない場合
  • M0:遠隔転移がない場合
  • M1:遠隔転移がある場合

ステージ分類とは

甲状腺がんの進行度はステージを用いて分類します。ステージとは、がんがどれぐらいの範囲まで広がってきているのかをTNM分類に基づいて評価するものです。ステージを基準としてがんの治療法が決定されます。

ステージは大きくはステージⅠからステージⅣまでに分かれます。甲状腺がんではさらに細かくステージIVA、ステージIVBのように分けます。国際的にはローマ数字(Ⅲなど)で書き表すのが普通ですが、このサイトではアラビア数字(3など)で記載しているところもあります。

治療を受けるために分類の基準を覚える必要は全くありません。しかし、ステージ分類は治療方法を決定する上で非常に重要です。また、自分のがんがどのくらい進行しているのかなどが、ステージ分類に自分の状況を当てはめることで理解しやすくなります。

生存率の統計もステージ分類に基づいています。組織型とステージで分けた生存率のデータがあるので表に示します。

表 甲状腺乳頭がんのステージごとの生存率

ステージ 5年生存率(実測)
(2006-2010年診断)
10年生存率(実測)
(2001-2005年診断)
I 98.8% 94.6%
II 96.9% 91.9%
III 94.7% 86.5%
IV 81.4% 64.0%

表 甲状腺濾胞がんのステージごとの生存率

ステージ 5年生存率(実測)
(2006-2010年診断)
10年生存率(実測)
(2001-2005年診断)
I 100% 100%
II 95.0% 95.5%
III 100% 66.7%
IV 64.8% 32.0%

表 甲状腺未分化がんの生存率

ステージ 1年生存率(実測)
(2005-2009年診断)
5年生存率(実測)
(2005-2009年診断)
IV 16.0% 6.6%

※未分化がんはすべてステージIVとします。

参考文献
・全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査(2018年2月集計)

2018年1月から甲状腺がんのステージ分類の基準が変更されました。2016年に発行されたUICC『TNM悪性腫瘍の分類 第8版』に沿って日本で用いられるステージ分類も変更されました。

色々な点が変更されましたが、そのひとつが年齢についてです。

甲状腺乳頭がん、濾胞がんのステージを決める基準は年齢によって違います。以前は年齢45歳で分けていましたが、今回の改訂で55歳を境に変更されました。この変更の理由として、45-55歳の年齢で見つかった甲状腺乳頭がん・濾胞がんは治りやすかった(予後が良かった)という報告があります。

甲状腺がんのステージは、T分類、N分類、M分類、年齢の組み合わせによって決めますが、基準は組織型によって違います。組織型ごとのステージの決め方を下の表に示します。

表 甲状腺乳頭がん、濾胞がんのステージ分類

年齢 ステージ T分類 N分類 M分類
55歳未満 I Tに関係なく Nに関係なく M0
II Tに関係なく Nに関係なく M1
55歳以上 I T1もしくはT2 N0 M0
II T1もしくはT2 N1 M0
T3aもしくはT3b Nに関係なく M0
III T4a Nに関係なく M0
IVA T4b Nに関係なく M0
IVB Tに関係なく Nに関係なく M1

表 甲状腺髄様がんのステージ分類

ステージ T分類 N分類 M分類
I T1 N0 M0
II T2もしくはT3 N0 M0
III T1もしくはT2もしくはT3 N1a M0
IVA T1もしくはT2もしくはT3 N1b M0
T4a Nに関係なく M0
IVB T4b Nに関係なく M0
IVC Tに関係なく Nに関係なく M1

表 甲状腺未分化がんのステージ分類

ステージ T分類 N分類 M分類
IVA T1もしくはT2もしくはT3a N0 M0
IVB T1もしくはT2もしくはT3a N1 M0
T3bもしくはT4 Nに関係なく M0
IVC Tに関係なく Nに関係なく M1

甲状腺未分化がんは全てステージIVとします。

以下ではそれぞれのステージがどんな状態かに言い換えて説明します。

【55歳未満の甲状腺乳頭がん甲状腺濾胞がんのステージ】

◎ステージ1

55歳未満で見つかった乳頭がんと濾胞がんは、がんが離れた臓器に転移(遠隔転移:えんかくてんい)していなければすべてステージIとします。

ステージIの乳頭がんでは10年生存率が95.9%、濾胞がんでは10年生存率が100%というデータがあります(100%と言っても、そのデータ以外で当てはまらない例はあります)。

どちらも治療は手術が基本です。がんの広がりに応じて、甲状腺の一部を取り除く手術か、甲状腺を全て取り除く手術を行います。通常は周りのリンパ節を取り除く手術も一緒に行います。

手術後に放射性ヨード内用療法を行う場合があります。

微小な乳頭がんでは経過観察を検討できる場合もあります。

◎ステージ2

がんが甲状腺から離れた臓器に到達して増殖している場合です。つまり遠隔転移がある場合です。

ステージIIの乳頭がんでは10年生存率が92.1%、濾胞がんでは10年生存率が93.9%というデータがあります。

どちらも治療は手術が基本です。がんの広がりに応じて、甲状腺の一部を取り除く手術か、甲状腺を全て取り除く手術を行います。周りのリンパ節を取り除く手術も一緒に行います。

手術後に放射性ヨード内用療法を行う場合もあります。

【55歳以上の甲状腺乳頭がん甲状腺濾胞がんのステージ】

◎ステージ1

腫瘍が甲状腺内にとどまっていて、大きさが4cm以下です。リンパ節転移はありません。

ステージIの乳頭がんでは10年生存率が95.9%、濾胞がんでは10年生存率が100%というデータがあります(100%と言っても、そのデータ以外で当てはまらない例はあります)。

どちらも治療は手術が基本です。がんの広がりに応じて、甲状腺の一部を取り除く手術か、甲状腺を全て取り除く手術を行います。通常は周りのリンパ節を取り除く手術も一緒に行います。

手術後に放射性ヨード内用療法を行う場合があります。

微小な乳頭がんでは経過観察を検討できる場合もあります。

◎ステージ2

以下の3通りのいずれかです。

  • 腫瘍が甲状腺内にとどまっていて、大きさが4cm以下であり、リンパ節転移がある場合。
  • 腫瘍が甲状腺内にとどまっていて、大きさが4cmを超える場合。リンパ節転移があるかどうかは問わない。
  • 腫瘍の大きさにかかわらず、甲状腺のすぐ外側の筋肉まで広がっている場合。リンパ節転移があるかどうかは問わない。

ステージIIの乳頭がんでは10年生存率が92.1%、濾胞がんでは10年生存率が93.9%というデータがあります。

どちらも治療は手術が基本です。がんの広がりに応じて、甲状腺の一部を取り除く手術か、甲状腺を全て取り除く手術を行います。周りのリンパ節を取り除く手術も一緒に行います。

手術後に放射性ヨード内用療法を行う場合もあります。

◎ステージ3

腫瘍が甲状腺の外に広がっており、頸部の皮下組織、喉頭、気管、食道、反回神経のどれかに広がっている場合です。リンパ節の転移はあることも、ないこともあります。

ステージIIIの乳頭がんでは10年生存率が84.1%、濾胞がんでは10年生存率が71.4%というデータがあります。

どちらも治療は手術が基本です。甲状腺を全て取り除き、周りのリンパ節も一緒に取り除きます。

手術後に放射性ヨード内用療法を行う場合もあります。

◎ステージ4A

がんが背骨の前の筋肉や、頸動脈の周り、肺の間にある縦隔の血管の近くまで広がっている場合です。リンパ節の転移はあることも、ないこともあります。

統計では、ステージ4Aとステージ4Bを一緒にして、ステージ4の乳頭がんで10年生存率が61.3%、濾胞がんで10年生存率が35.0%というデータがあります。

治療は手術が基本です。手術で甲状腺を全て取り除き、周りのリンパ節も取り除いたうえ、放射性ヨード内用療法を行います。

◎ステージ4B

がんが肺や骨などの離れた臓器に転移している場合です。

統計では、ステージ4Aとステージ4Bを一緒にして、ステージ4の乳頭がんで10年生存率が61.3%、濾胞がんで10年生存率が35.0%というデータがあります。

治療は手術で甲状腺を全て取り除き、周りのリンパ節も取り除いたうえ、放射性ヨード内用療法を行います。

甲状腺髄様がんのステージ】

◎ステージ1

がんが甲状腺にとどまっており、がんの大きさが2cm以下で、リンパ節転移がない場合です。

ステージIの髄様がんに対する治療は手術が基本です。遺伝性の髄様がんなら甲状腺を全て取り除き、遺伝性でない髄様がんなら甲状腺の一部を取り除きます。周りのリンパ節も一緒に取り除きます。

ホルモン治療や放射性ヨード内用療法は効果が期待できません。手術ができない場合には分子標的薬の使用を検討できます。

◎ステージ2

がんが甲状腺にとどまっていて2cmより大きいか、甲状腺のすぐ外側の筋肉まで広がっている場合で、リンパ節転移がない場合です。

ステージIIの髄様がんに対する治療は手術が基本です。遺伝性の髄様がんなら甲状腺を全て取り除きます。遺伝性でない髄様がんでは、甲状腺の全部または一部を取り除きます。周りのリンパ節も一緒に取り除きます。

ホルモン治療や放射性ヨード内用療法は効果が期待できません。手術ができない場合には分子標的薬の使用を検討できます。

◎ステージ3

がんが甲状腺のすぐ外側の筋肉までの範囲に収まっている場合で、頸部中央区域のリンパ節転移がある場合です。頸部中央区域とは、気管の前、気管の横、喉頭の前、左右の肺の間のリンパ節を指します。

ステージIIIの髄様がんに対する治療は手術が基本です。遺伝性の髄様がんなら甲状腺を全て取り除きます。遺伝性でない髄様がんでは、甲状腺の全部または一部を取り除きます。周りのリンパ節も一緒に取り除きます。

ホルモン治療や放射性ヨード内用療法は効果が期待できません。手術ができない場合には分子標的薬の使用を検討できます。

◎ステージ4A

次の2通りのどちらかです。

  • がんが甲状腺のすぐ外側の筋肉までの範囲に収まっている場合で、甲状腺から離れた部分にある、頸部の横のリンパ節(頸部外側域リンパ節)もしくは、鼻の奥の横にあるリンパ節(咽頭後リンパ節)への転移がある場合。
  • がんが頸部の皮下組織、喉頭、気管、食道、反回神経のどれかに広がっている場合。リンパ節の転移はあることも、ないこともあります。

ステージIVAの髄様がんに対する治療は手術が基本です。遺伝性の髄様がんなら甲状腺を全て取り除きます。遺伝性でない髄様がんでは、甲状腺の全部または一部を取り除きます。がんが甲状腺のすぐ外側の筋肉を超えて広がっている場合、甲状腺の一部を取り除く手術ではがんを取り切れない可能性が高く、甲状腺の全部を取り除きます。周りのリンパ節も一緒に取り除きます。

ホルモン治療や放射性ヨード内用療法は効果が期待できません。手術ができない場合には分子標的薬の使用を検討できます。

◎ステージ4B

がんが背骨の前の筋肉や、頸動脈の周り、肺の間にある縦隔の血管の近くまで広がっている場合です。リンパ節の転移はあることも、ないこともあります。

ステージIVBの髄様がんに対する治療は手術が基本です。甲状腺の全部を取り除きます。周りのリンパ節も一緒に取り除きます。

ホルモン治療や放射性ヨード内用療法は効果が期待できません。手術ができない場合には分子標的薬の使用を検討できます。

◎ステージ4C

肺や骨などの離れた臓器に転移がある場合です。

手術ができない場合には分子標的薬の使用を検討できます。

甲状腺未分化がんのステージ】

甲状腺未分化がんは、大きくなるのが速く、通常発見された時にはすでに首の広い範囲に広がっています。甲状腺未分化がんは全てステージ4に分類され、その中でステージ4A、ステージ4B、ステージ4Cに分けられます。

未分化がんについては、1年生存率が16.0%、5年生存率が7.5%としたデータがあります。厳しい数字ですが、治療としてできることはあります。

◎ステージ4A

腫瘍が甲状腺の中にとどまっている場合です。リンパ節の転移はありません。手術で切り取れる場合には手術を行います。手術が難しければ、抗がん剤治療や放射線治療(外照射)を行い、取り切れる大きさになった場合には手術を行います。

◎4B期

腫瘍が甲状腺の中にとどまっていてリンパ節の転移がある場合もしくは、腫瘍が甲状腺の外に広がっている場合です。肺や骨などの遠い臓器への転移がない場合です。

手術で切り取れる場合には手術を行います。手術が難しければ、抗がん剤治療や放射線治療(外照射)を行い、取り切れる大きさになった場合には手術を行います。

◎4C期

がんが肺や骨などの離れた臓器に転移している場合です。

手術、抗がん剤治療、放射線治療(外照射)を組み合わせて治療します。抗がん剤治療と放射線治療で取り切れる大きさになった場合には手術を行います。