子宮筋腫の検査:超音波検査、MRI検査などの検査について解説
子宮筋腫の検査では子宮筋腫があるかどうか、あった場合にはその位置や大きさなどを知ることができます。過多月経、不正出血などの症状の原因が子宮筋腫であると診断されることもあります。症状のある子宮筋腫には治療が検討されます。
目次
1. 子宮筋腫の検査をするのはどんなとき?
子宮筋腫が原因となりうる症状があるときには、まず子宮筋腫があるかを診断する必要があります。子宮筋腫を原因とする症状は以下のものがあります。
過多月経は生理(月経)のときの出血が多くなること、不正出血は月経周期に外れて出血が起きることです。月経困難症は月経時の腹痛などの症状が重く日常生活にも支障をきたすこと、圧迫症状は子宮筋腫が大きくなることで腹痛の原因になったり周りの臓器に影響したりすることです。
ここにあげた症状は子宮筋腫以外の病気が原因になることもあります。また子宮筋腫はあっても症状を起こさないことが多いです。できた場所によっては症状の原因とは考えにくいこともあります。その場合には他の病気が隠れていないかを含めて、他の検査が追加されることがあります。思い当たる症状があるときは医療機関を受診して原因を調べることが大事です。
2. 子宮の病気には何がある?
子宮筋腫の症状は、過多月経、不正出血、月経困難症、圧迫症状がよくみられます。これらの症状は子宮筋腫だけにみられる症状ではありません。他の病気が原因になることもあります。症状ごとに考えられる代表的な病気の例を挙げます。
症状だけを手がかりにして子宮筋腫を診断するのは難しいことです。思い当たる症状があるときは医療機関を受診して原因について調べることが大事です。
3. 子宮筋腫の検査には何を使えばいい?
子宮筋腫と診断するためにいくつかの検査を使います。
子宮筋腫の検査では
4. 超音波検査で何がわかる?
超音波検査(
プローブという機械を身体に当てて検査します。プローブからは超音波が出ており、超音波の跳ね返りから身体の中の様子を画像で観察できます。子宮筋腫はできている場所が大事な情報になります。とくに大事なのが子宮内膜との位置関係です。子宮内膜との関係で子宮筋腫は3つに分類されます。分類は粘膜下筋腫、筋層内筋腫、漿膜下筋腫の3つです(詳細はこちら)。
子宮筋腫の超音波検査はお腹の上から観察する方法と膣から観察する方法の2つがあります。それぞれに特徴があります。
お腹からみる超音波検査(経腹法)とは?
お腹からみる超音波検査は子宮の全体や子宮筋腫の場所を把握するのに優れています。
子宮は下腹部にある臓器です。お腹から子宮を観察することで子宮筋腫を画像としてとらえることができます。子宮筋腫は塊として描出されます。典型的な子宮筋腫の場合は子宮の正常な部分と区別ができます。
お腹からみる超音波検査では、お腹にゼリーを塗ってプローブを当てて検査をします。子宮を見やすくするために尿を膀胱の中にためてから検査をすることがあります。
膣からみる超音波検査(経膣法)とは?
膣からみる超音波検査は子宮筋腫と子宮内膜との関係をみるのに適しています。子宮内膜は子宮の内側にある膜のことです。経膣法では子宮のすぐ近くの内側から観察することができるので子宮内膜との位置関係の把握に向いています。
子宮筋腫が子宮内膜の下にあれば粘膜下筋腫、子宮の壁の筋肉の中にあれば筋層内筋腫、筋層よりさらに外側にあれば漿膜下筋腫の診断になります。
膣からみる超音波検査では、膣から指の太さ程度の棒状のプローブを挿入して検査をします。婦人科で受けることのある
5. MRI検査ってどんな検査?
MRI検査は子宮筋腫の位置や個数を把握するために重要な検査です。
MRI検査は、磁気を利用する画像検査です。放射線を使うことはないので放射線の身体への影響を心配する必要はありません。身体の中に
MRI検査では子宮筋腫と正常な部分との境がはっきりとわかります。子宮筋腫は円形に近い形で確認することができます。
6. 子宮鏡検査はどんな時に使う?
子宮鏡は
子宮鏡検査は不正出血、過多月経などの症状がある場合や他の検査で子宮の中に異常が疑われる場合に用いられる検査です。子宮鏡は子宮の中を直接のぞくことができるので他の検査ではちがった情報を得ることができます。
子宮鏡には柔らかいタイプ(軟性鏡)のものと硬いタイプ(硬性鏡)があります。現在は柔らかいタイプを使うことが多いです。
参考文献:齊藤寿一郎, 子宮鏡(診療の基本,研修コーナー), 日産婦.2006;58:479-486
7. 子宮筋腫には種類がある?
子宮筋腫はできた場所によって3つの種類に分けられます。分類は粘膜下筋腫、筋層内筋腫、漿膜下筋腫の3つです。
粘膜下筋腫とは?
子宮内膜のすぐ下に発生して子宮の内側に向かって大きくなるタイプの子宮筋腫を粘膜下筋腫といいます。
粘膜下筋腫は最も症状が現れやすい筋腫です。月経の時の痛みが強く(月経困難症)、月経のときの出血量も多い(過多月経)です。月経時の出血量が多いと貧血の原因にもなります。
粘膜下筋腫は不妊の原因となることがあります。粘膜下筋腫ができると、受精卵が根付く(着床する)場所である子宮内膜の形が変わります。この形の変化により受精卵の着床がうまくいかなくなって、不妊症が起きると考えられています。他に筋腫が膣から出る筋腫分娩(きんしゅぶんべん)という症状が現れることがあります。筋腫分娩はこの後に説明をします。
筋腫分娩(きんしゅぶんべん)とは?
筋腫分娩は粘膜下筋腫に特有の症状です。
粘膜下筋腫が大きくなるとその重みで筋腫が子宮の外に出てしまうことがあります。あたかも筋腫を分娩したかのようにみえるので筋腫分娩といいます。筋腫分娩が起きると不正出血の回数が増えたりして貧血の症状が出ることがあります。
筋層内筋腫(きんそうないきんしゅ)とは?
子宮筋層内に発生して大きくなるタイプの筋腫を筋層内筋腫といいます。筋層は子宮の壁を作る層の一つです。
筋層内筋腫は子宮筋腫のなかで最も多いタイプのものです。子宮筋腫が小さいうちは症状がほとんどありません。大きくなると子宮の内側にある子宮内膜に影響を及ぼして月経時の出血量の増加、不正出血などの症状が出ます。
漿膜下筋腫(しょうまくかきんしゅ)とは?
漿膜の下に発生して大きくなるタイプの筋腫を漿膜下筋腫といいます。漿膜は子宮の最も外側にある膜構造になります。漿膜下筋腫は他の筋腫に比べると膣からみてもわかりにくいことが多いです。
漿膜下筋腫は子宮の外側に向かって大きくなるので子宮内膜への影響は少ないです。このために月経時の出血が多くなったりする症状は出にくいです。
漿膜下筋腫の症状は周りの臓器に影響します。子宮の周りにある直腸や膀胱に影響をすると、便秘や
8. 子宮筋腫は血液検査でわかる?
子宮筋腫の診断に血液検査を使うことはありません。
子宮筋腫は、月経量が増えたり不正出血が起きて貧血の原因になることがあります。健康診断などで貧血が指摘される場合には子宮筋腫を診断するきっかけにはなります。
9. 子宮筋腫でPET検査は必要?
PET(ペット)検査は放射線を使う画像検査です。PET/
参考文献:中本裕士, 10.婦人科疾患のPET診断(C.産婦人科検査法,研修コーナー), 日産婦誌 2007;59:125-131
PET検査を使うのは?
子宮の病気では子宮体がん、子宮頸がんなどの
PET検査の原理は?
PET検査は、
検査直前に糖分を含む食べ物や飲み物を口にすると、糖分に似た性質をもつFDGの取り込みに影響が出てきれいに撮影できなくなる恐れがあるため注意が必要です。
PET検査で陽性はがん? 子宮筋腫でも陽性になることがある?
PET検査で陽性という結果が出るとがんの存在を意味するのでしょうか。答えは必ずしもそうではないです。PET検査は、がんのほかにも
子宮筋腫もPET検査で陽性になることがありますが子宮筋腫はがんではありません。子宮筋腫と診断されていて他の理由でPET/CT検査を行い子宮に陽性の箇所があると指摘されるかもしれません。その結果だけで「がんがあった」という意味ではありません。PET検査は絶対ではないのでその後しっかりと検査をすることが大事です。