しきゅうきんしゅ
子宮筋腫
子宮の壁の筋肉の層にできた良性腫瘍。健診などで見つかることが多い
15人の医師がチェック 130回の改訂 最終更新: 2018.09.13

子宮筋腫があっても妊娠できる?不妊症への効果、妊娠後の経過についての解説

子宮筋腫は不妊症の原因の一つとして知られています。ただし、子宮筋腫があっても必ず不妊になるとは限りません。子宮筋腫を治療することで妊娠ができるようになる人もいます。

1. 子宮筋腫が妊娠に影響する場合とは?

子宮筋腫は不妊症不育症の原因の一つと考えられています。

不妊症の原因を調べた結果、子宮筋腫以外に原因が見当たらないときには子宮筋腫の治療を検討します。不妊症の治療としての子宮筋腫の治療は子宮筋腫だけを手術で切り取る子宮筋腫核出術です。子宮筋腫以外に不妊の原因がない人に対して子宮筋腫核出術を行うと約50%の確率で妊娠が成立するとされています。

参照:日産婦誌.2009;61:145-150

子宮筋腫がある不妊症の人は筋腫を摘出するべきか?

不妊の原因は子宮筋腫だけではありません。不妊の原因がいくつかある場合には子宮筋腫以外の原因の治療が大事です。なぜなら不妊症の原因が他にある場合で子宮筋腫の治療をすると不妊症に対して悪影響を及ぼす可能性も考えられるためです。

不妊治療の一つとして子宮筋腫の治療(子宮筋腫核出術)をするかどうかを判断するときには、子宮筋腫の治療によって得られる利益や不利益をしっかりと考えることが大事です。

参照:日産婦誌.2009;61:145-150

2. 子宮筋腫が不妊症の原因になるのはなぜ?

子宮筋腫が不妊症の原因になる理由については詳しいことはわかってはいません。

一つの説としては、子宮筋腫ができると子宮の内側の形が変わってしまい受精卵が育つのに適しない環境に変化しているからなどと考えられています。他には子宮の収縮に異常が起きたり、子宮筋腫によって精子が卵管膨大部に移動する妨げになることなども不妊症の原因と推測されています。

参照:日産婦誌.2009;61:145-150

3. 子宮筋腫はできる場所で症状が違う?

子宮筋腫はできる場所により3種類に分けられます。粘膜下筋腫、筋層内筋腫、漿膜下筋腫の3つです。それぞれで症状は少しずつ異なります。不妊症の原因になるのは粘膜下筋腫が多いです。以下はそれぞれに分けたときに出る症状について解説しています。

粘膜下筋腫(ねんまくかきんしゅ)とは?

子宮内膜のすぐ下に発生するタイプの筋腫を粘膜下筋腫といいます。子宮内膜は子宮の最も内側の部分になります。

粘膜下筋腫は不妊症の原因になります。粘膜下筋腫ができると子宮内膜の形が変わります。子宮内膜は受精卵が根付く(着床する)場所です。子宮内膜の形が変わっていると受精卵の着床がうまくいかないことがあります。子宮内膜の形が変わることで精子の移動の妨げになることもあると考えられています。粘膜下筋腫は子宮の内側に向かって発育します。

粘膜下筋腫の他の症状は、月経の時の痛みが強い、月経のときの出血量が多いなどです。

筋腫分娩(きんしゅぶんべん)とは?

粘膜下筋腫が大きくなるとその重みで子宮の外に筋腫が飛び出してしまうことがあります。これを筋腫分娩といいます。筋腫分娩が起きると不正出血の回数が増えたり貧血が起きることがあります。

筋層内筋腫(きんそうないきんしゅ)とは?

子宮の筋肉の層の中に発生するタイプの筋腫を筋層内筋腫といいます。子宮の筋層は子宮の中からみて粘膜の奥にあります。

筋層内筋腫は子宮筋腫の中で最も多いタイプです。子宮筋腫が小さいうちには症状がほとんどありません。子宮筋腫が大きくなると子宮の内側にある子宮内膜に影響して月経時の出血量の増加、不正出血などの症状があらわれます。かなり大きくなると不妊症の原因になることがあります。

漿膜下筋腫(しょうまくかきんしゅ)とは?

漿膜の下に発生して大きくなるタイプの筋腫を漿膜下筋腫といいます。漿膜は子宮の最も外側を覆っている膜です。漿膜下筋腫は他の筋腫に比べると膣からみてもわからないことが多いです。

漿膜下筋腫は子宮の外側に向かって大きくなるので子宮内膜への影響は少ないです。このために月経時の出血が多くなったりする症状は出にくいです。子宮内膜への影響が少ないので不妊症の原因になることはほとんどありません。

参照:日産婦誌 2009;61:145-146

4. 筋腫の種類と妊娠の関係は?

子宮筋腫は不妊症の原因の1つと考えられています。子宮筋腫によって子宮の形が変わって受精卵が育ちにくくなることや精子の移動の妨げになることが不妊症の原因と考えられています。

主に粘膜下筋腫と筋層内筋腫が不妊の原因になります。漿膜下筋腫は不妊の原因にはなりにくいと考えられています。

以下では粘膜下筋腫と筋層内筋腫に対して不妊症流産がどれくらい起きたかを調べた報告を紹介します。

参照:Am J Obstet Gynecol.2008;198:357-66. 日産婦誌 2007;59:545-550

粘膜下筋腫がある人の妊娠やその後の経過は?

  粘膜下筋腫あり 粘膜下筋腫なし
妊娠率 14%(15/107) 30%(151/497)
流産 47%(7/15) 22%(33/151)

粘膜下筋腫がある人々は粘膜下筋腫がない人々と比べると妊娠率が低く流産率が高い傾向にありました。この結果から粘膜下筋腫は不妊症にも強く影響している可能性が読みとれます。子宮筋腫があるからといって妊娠できないわけではありません。子宮筋腫を治療することで不妊症に対して効果があるかを医師と相談することが大事です。

筋層内筋腫がある人の妊娠やその後の経過は?

  筋層内筋腫あり 筋層内筋腫なし
妊娠率 37%(519/ 1405) 41%(1676/4077)
流産 15%(185/1121) 8%(1121/14474)

筋層内筋腫がある人々は筋腫がない人々と比べると、妊娠率がやや低く、流産率がやや高い傾向にあります。筋腫の影響は粘膜下筋腫に比べると弱いことも読み取れます。筋層内筋腫があると妊娠や出産ができないわけではありません。治療で得られる効果について医師に相談し判断することが大事です。

5. 子宮筋腫があったら妊娠前に治療するべき?

子宮筋腫は不妊症の原因の一つと考えられていますが、子宮筋腫があるからといって妊娠できないわけではありません。子宮筋腫があっても妊娠できる人は多くいます。しかし妊娠が成立した後でも子宮筋腫は問題になることがあります。子宮筋腫が大きい場合は胎児の成長の妨げになります。子宮筋腫がある状態での妊娠は経過として早産などが多くなることが知られています。

子宮筋腫は出産のときにも問題になる可能性があります。子宮筋腫が子宮口の近い場所にできた場合は経膣分娩に支障をきたす可能性があります。子宮筋腫の位置によっては帝王切開が必要になります。

このために、妊娠が成立する前に子宮筋腫の治療をしておいた方がよい人がいます。子宮筋腫の状態が以下に該当する場合は子宮筋腫の治療が勧められています。

  • 子宮筋腫の直径が5-6cm以上の場合  
  • 子宮筋腫が子宮口(子宮の出口)に近い場所にできた場合 

子宮筋腫と診断されていて妊娠を希望する人は、妊娠を試みる前に子宮筋腫の治療が必要かどうかを医師に一度相談しておくのも大事なことです。

参照:日産婦誌.2009;61:145-150

6. 子宮筋腫を摘出することで妊娠しやすくなる?

不妊症の原因が子宮筋腫の場合、子宮筋腫を治療することでどれくらいの効果が期待できるのでしょうか。

子宮筋腫のタイプごとに分けて手術(子宮筋腫核出術)の効果を検討した報告があります。子宮筋腫以外に不妊症の原因がない人々を2つのグループに分け、一方のグループは手術をして、もう一方のグループは経過観察をしました。

参加した人々は35歳以下で子宮筋腫の大きさは4cm以下という基準で選ばれました。結果を表に示します。

  核出術あり(妊娠率) 核出術なし(妊娠率)
粘膜下筋腫 43.3% 27.2%
粘膜下-筋層内 40.0% 15.0%
筋層内筋腫 56.5% 41.0%

粘膜下筋腫と粘膜下-筋層内筋腫の人々は手術の効果が出て妊娠の成功率が上がったと考えられました。筋層内筋腫の人も手術の効果が出ているように見えますが、2つのグループに統計学的には差があるとは判断されませんでした。しかし、少なくとも手術は不利な方向には働いていないと考えられます。

この検討からは不妊症の原因が子宮筋腫の人に対して手術をすると妊娠の成立に効果がある可能性が読み取れます。

参照:Gynecol Endocrinol.2006;22:206-9

7. 子宮筋腫のある人が妊娠したらどうなる?

子宮筋腫がある人が妊娠した場合は何に気をつければいいのでしょうか。妊娠した人のうち子宮筋腫を合併する確率は0.45-3.1%とされています。妊娠中には胎児への影響などを考えて、特別な場合を除いては子宮筋腫の治療は通常しません。妊娠中の子宮筋腫の変化などについて解説します。

参照:日産婦誌. 2008;60:15-19. J Ultrasound med.1992;11:511-5. 日産婦誌.2009;61:145-150. 日産婦誌 2007;545-549

妊娠中は子宮筋腫はどうなる?

子宮筋腫は女性ホルモンが多くなると大きくなることがあります。妊娠中は女性ホルモンが多くなります。では妊娠中、子宮筋腫は大きくなるのでしょうか。

少し古い研究ですが、妊娠中の子宮筋腫の大きさを調べた研究があります。研究によると半数の人が子宮筋腫の大きさは変わらず3割の人が大きくなり、2割の人が小さくなったという結果でした。

妊娠中に子宮筋腫の治療をするのはどんなとき?

妊娠中に子宮筋腫の治療を行うことはほとんどありません。妊娠中に子宮筋腫の治療をすることの利益はまだ不明なことが多く、胎児への影響も懸念されるからです。ただし例外もあります。子宮筋腫が妊娠継続の障害になる恐れが強いと見られた場合や、筋腫が捻れた場合(茎捻転)などは手術による治療を検討します。

妊娠中に子宮筋腫の手術をするのは大変なことです。もし妊娠前に子宮筋腫があるとわかっている場合は、妊娠を試みる前に妊娠中に子宮筋腫が原因となって起こりうる問題について医師に質問しておくことが大事です。ほとんどの人はそのまま経過観察すれば十分ですが、中には妊娠前に子宮筋腫の治療をしておいたほうがよいと判断される人もいます。

8. 子宮筋腫の手術後でも妊娠できる?

子宮筋腫の手術をした後でも妊娠できる可能性はあります。

子宮筋腫は不妊症の原因の一つです。不妊症の原因が子宮筋腫の場合、子宮筋腫を治療すると約半数の人が妊娠できるようになると考えられています。ただし不妊症は他にも多くの原因があります。子宮筋腫の治療の前に他に不妊症の原因がないかを調べることも大事です。

参照:日産婦誌 2009;61:145-146

9. 妊娠してから子宮筋腫が見つかったらどうすればいい?

妊娠中に子宮筋腫が見つかっても経過観察をすることがほとんどです。妊娠中に子宮筋腫が指摘されても慌てることはありません。

子宮筋腫が妊娠継続の障害や強い症状の原因になったりする場合などは治療を検討することがありますが、多くはありません。

子宮筋腫が妊娠中に見つかると「赤ちゃんに影響はあるのかな?」、「無事に出産できるのかな」など悪い事態を想定して不安な気持ちになると思います。確かに子宮筋腫があるとない人に比べて帝王切開や難産、早産になる可能性が高くなるとされていますが、一方で問題なく出産を迎えている人も多くいます。

不安を解消するにはできるだけ気になる点などを具体的にして医師に相談することが大事です。医師と話すだけで気持ちも軽くなると思います。一人で悩むことはありません。医師は快く質問に対する答えを返してくれると思います。

参照:Am J Obstet Gynecol.2008;198:357-66