胃がんの生存率は?ステージごとの生存率や手術後の再発率などを解説
胃がんの生存率は
目次
1. 胃がんのステージごとの生存率は?
「
ステージ | 5年生存率(%) |
ステージI | 96.0 |
ステージII | 69.2 |
ステージIII | 41.9 |
ステージIV | 6.3 |
ステージとはがんの進行度を分類したものです。5年生存率とは、診断から5年後に生存している人の割合です。この統計を読み取るときにはいくつか注意することがあります。
まずこの統計結果は2012-2013年に診断された人々の結果になります。現在より約10年も前の結果になりますが、がんの生存率について網羅的に記した「がんの統計」としてはこれが最新版です。胃がんの治療は近年目覚ましい進歩を遂げています。この数値には新しい薬の治療の効果などは含まれていません。
2. 胃がんのステージとは?
胃がんのステージは「がんの深さ」、「
ステージの決め方は?
がんの大きな特徴のひとつが
がんの進行度を判定するには、原発巣と転移巣の両方を考えに入れる必要があります。胃がんのステージを決めるには、原発巣の状態(T因子)、リンパ節転移(N因子)、遠隔転移(M因子)の3点の組み合わせによってがんの状態を評価します。3点を元にしてステージを決定します。
- T因子
- TX:
癌 の浸潤の深さが不明なもの - T0:癌がない
- T1:癌の局在が粘膜(M)または粘膜下組織(SM)にとどまるもの
- T1a:癌が粘膜にとどまるもの
- T1b:癌の浸潤が粘膜下組織にとどまるもの(SM)
- T2:癌の浸潤が粘膜下組織を超えているが、固有筋層にとどまるもの(MP)
- T3:癌の浸潤が固有筋層を超えているが、漿膜下組織にとどまるもの(SS)
- T4:癌の浸潤が漿膜表面に接しているかまたは露出、あるいは他臓器に及ぶもの
- T4a:癌の浸潤が漿膜表面に接しているか、またはこれを破って遊離腹腔内に露出しているもの(SE)
- T4b:癌の浸潤が直接他臓器まで及ぶもの(SI)
- TX:
- N因子
- NX:領域リンパ節転移の有無が不明
- N0:領域
リンパ節 に転移を認めない - N1 : 領域リンパ節に1-2個の転移を認める
- N2 : 領域リンパ節に3-6 個のリンパ節転移を認める
- N3:領域リンパ節に7個以上の転移を認める
- N3a:領域リンパ節に7-15個の転移を認める
- N3b:領域リンパ節に16個以上の転移を認める
- M因子
- MX:領域リンパ節以外の転移の有無が不明である
- M0:領域リンパ節以外に転移を認めない
- M1:領域リンパ節以外の転移を認める
T因子、N因子、M因子をそれぞれ評価したところで下の表に従いステージを定めます。
N0 | N1 | N2 | N3 | |
T1a | IA | IB | IIA | IIB |
T1b | IA | IB | IIA | IIB |
T2 | IB | IIA | IIB | IIIA |
T3 | IIA | IIB | IIIA | IIIB |
T4a | IIB | IIIA | IIIB | IIIC |
T4b | IIIB | IIIB | IIIC | IIIC |
遠隔転移 | IV |
ステージIVは「末期がん」か?
ステージIVは末期がんを意味する言葉ではありません。確かにステージIVはステージ分類の中で一番進行したものになります。5年生存率6.6%という数字には重みがあります。
しかし、ステージIVでも元気な人もいますし、ステージIVで診断されてから長生きする人もいます。「末期がん」には厳密な定義はありません。ステージIVという診断を聞くと、言葉のイメージから末期がんを思い浮かべてしまうかもしれませんが、それは幾分違うと思います。
胃がんにおけるステージIVとは領域リンパ節以外に転移がある状態のことを指します。胃でのがんの状態(深さ)やリンパ節への転移の有無は問いません。ステージIVでは通常、手術を行うことはありません。
では「末期がん」はどういう状態でしょうか。
最初に述べましたが末期がんには定義がありません。一般的なイメージを考えてみることにします。末期というと余命がかなり限られていることが明らかな状態だと考えられます。そこで、ここで言う「末期」は抗がん剤による治療も行えない場合、もしくは抗がん剤などの治療が効果を失っている状態で、日常生活をベッド上で過ごすような状況を指すことにします。
胃がんの末期は、すでにいくつかの臓器に転移がある段階です。胃がんは肝臓、肺、骨などに転移し、転移しているがんが体に影響を及ぼします。このような状況では、以下のような症状が目立つ悪液質(あくえきしつ:カヘキシア)と呼ばれる状態が引き起こされます。
- 常に
倦怠感 (けんたいかん)につきまとわれる - 食欲がなくなり、食べたとしても体重が減っていく
- 身体の
むくみ がひどくなる - 意識がうとうとする
悪液質は身体の栄養ががんに奪われ、点滴で栄養を補給しても身体がうまく利用できない状態です。気持ちの面でも、思うようにならない身体に対して不安が強くなり、苦痛が増強します。
末期がんの症状を楽にするには
3. 胃がんの生存率は年齢で違う?
胃がんを診断された時点で年齢が高いほうが生存率は低いと考えられます。
がん治療の生存率には2つの考え方があります。死因を胃がんに限った場合と胃がん以外の原因も全てを含めた場合です。
胃がん以外の死因を考えると、高齢者のほうが若い人よりも胃がん以外で亡くなる場合が多い、すなわち高齢者のほうが生存率が低いと考えられます。胃がんの患者さん同士で比較しても、年齢以外の要素が同じような人ならば高齢者のほうが生存率が低いことが考えられます。
死因を胃がんに限った場合は、年齢によらず生存率には差がないとする意見もあります。つまり、胃がんが高齢だから急速に進行するといった関係は認められていません。
このため胃がんの治療は例えば85歳以上の超高齢者だからという理由だけで手術ができないということはありません。身体の状態がよい患者さんに対しては高齢でも手術を行うことが可能です。
ただし、高齢者は持病を多く抱えている場合や、体力が落ちている場合があります。体の状態が手術に適していないと見られる場合にはもちろん手術が勧められません。手術を行う際には手術前の検査をしっかりと行い手術後もリハビリテーションを行うことや家族のサポートなどが重要です。
参考:
日本臨床外科学会雑誌.1999;60:2305-2310
日本消化器外科学会雑誌.2014;47:1-10
4. 胃がんは早期発見すると生存率が上がる?
胃がんは早期に発見すると生存率が上がると考えられます。
胃がん生存率はステージごとに集計されて、発表されています。「がんの統計 2022」で発表されている資料を参考にして説明を行います。がんの治療では5年後にどれほどの人が生存できているかを目安にすることが多く、今回も5年生存率を紹介します。
ステージ | 5年生存率(%) |
ステージI | 96.0 |
ステージII | 69.2 |
ステージIII | 41.9 |
ステージIV | 6.3 |
ステージの数字が小さいほど早期の段階です。早く発見されたものほど生存率が高くなっています。
早期発見・早期治療の効果を知るには、同じ程度に進行しているがんを早期治療した場合としなかった場合を比較する必要がありますが、そのような研究を行うのは現実に困難です。
一般に、がんは早期で治療をした方が生存率は上昇します。
胃がんは時間とともに進行して胃の壁の深くに浸潤していきます。胃の壁の深くに浸潤していくとがんが血管やリンパ管に入り込み全身へ転移する可能性が高くなります。このためにがんを早期に見つけるほうががんを身体から取り除ける可能性が高くなるので早期に発見する方が生存率もあがると考えられます。
5. 胃がんの手術後の生存率は?
胃がんの治療後の生存率が「がんの統計 2022」に記載されています。手術ができた人に限った場合の生存率は以下のようになります。
ステージ | 5年生存率(%) |
ステージI | 96.4 |
ステージII | 69.2 |
ステージIII | 50.7 |
ステージIV | 17.9 |
手術症例に限った場合の5年生存率を示します。このステージは臨床
6. 胃がんが再発したら生存率は?
胃がんが再発する場合は2通り考えられます。
- 胃の中に再発
- リンパ節や他の臓器に再発
胃の中に再発するのは、
対してリンパ節や他の臓器に胃がんが再発した場合は、全身にがん細胞が散らばっている可能性を考えなければなりません。このような場合は治療法は抗がん剤治療になります。
再発や転移をした状況はそれぞれの人で異なります。抗がん剤治療が必要な人でも極端な例でいうと転移している場所がたくさんある人とリンパ節にだけ再発した人では状況が大きく異なることは直感的に理解できると思います。再発してもそれぞれで状況が異なるので、生存率などの推定にはどうしても誤差があります。
自分の状況をしっかりと把握して、目の前の選択肢の中で自分や家族などにとって一番いいと思った治療を選んでいくことが大事です。