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1. 新型コロナウイルスの流行状況
感染者数 | 死亡数 | 感染者数における死亡割合(%) | |
米国 | 61,492,765 | 839,480 | 1.4 |
インド | 35,707,727 | 483,936 | 1.4 |
ブラジル | 22,529,183 | 620,251 | 2.8 |
イギリス | 14,708,999 | 150,712 | 1.0 |
ロシア | 10,485,705 | 310,513 | 2.6 |
トルコ | 10,045,658 | 83,843 | 0.8 |
フランス | 12,312,242 | 126,708 | 1.0 |
ドイツ | 7,570,361 | 114,127 | 1.5 |
韓国 | 670,483 | 6,114 | 0.9 |
中国 | 116,839 | 4,849 | 4.2 |
日本(クルーズ船を除く) | 1,765,604 | 18,403 | 1.0 |
クルーズ船 | 712 | 13 | 1.8 |
その他 | 132,646,398 | 2,735,426 | 2.1 |
総数 | 310,052,676 | 5,494,375 | 1.8 |
人口100万人あたりの感染者数 | 人口100万人あたりの死亡者数 | |
米国 | 186,908 | 2,552 |
インド | 26,256 | 356 |
ブラジル | 107,795 | 2,968 |
イギリス | 221,188 | 2,266 |
ロシア | 71,820 | 2,127 |
トルコ | 114,155 | 953 |
フランス | 183,765 | 1,891 |
ドイツ | 90,990 | 1,372 |
韓国 | 13,095 | 119.4 |
中国 | 82 | 3.4 |
日本(クルーズ船を除く) | 14,002 | 145.9 |
(2022年1月11日更新、参考:COVID-19 Dashboard by CSSE Johns Hopkins, WHO, 厚生労働省, 総務省統計局)
*日本の感染者数および死亡数は自治体公表資料集計分(厚生労働省HPより)
日本国内の感染者数、死亡数
2. コロナウイルスとは?
風邪の原因として有名なウイルスです。いくつかの種類があることが分かっており、ほとんどが感染しても軽い風邪で済みます。一方で、過去にSARSとMERSという重篤な感染症を過去に引き起こしたタイプのコロナウイルスが存在します。
2020年1月から世界を席巻している新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はこのコロナウイルスが変異したもので、感染力や人体への影響が強いことがわかっています。
詳しくはこちらのコラムを参考にしてください。
3. 想定されている感染経路
ヒトヒト感染の中でも、「飛沫感染」が想定されています。これはインフルエンザを筆頭に一般的な風邪と同じ感染経路です。一方で、飛沫感染する病原体は「接触感染」もするので手洗いは欠かせません。
【飛沫感染】
- 咳やくしゃみをしたときに、口や鼻から飛び出す細かいしぶきを介して感染する
- 空気感染と異なり、2m以上病原体が飛ぶことはほとんどない
【接触感染】
- 皮膚や粘膜、病原体に汚染された環境を介して感染する
- 新型コロナウイルスが手に付着した状態で目や口を触ると感染が成立しうる
4. 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2、2019-nCoV)の感染力
「一人が周囲の何人に感染を広げるかを数値化したもの」に基本再生産数(R0:アールノート)というものがあります。暫定値ではありますが、2020年1月29日に発表された論文では新型コロナウイルスのR0は2.2と報告されています。これは季節性のインフルエンザとほぼ同等で、SARSより低い数字となっています。ただし、今後のデータ解析によってこの数字は更に変わってくると予想されます。
また、これと似た数字に実効再生産数(Rt)というものがあり、実世界で感染者がどの程度周囲に感染をうつしているかを数値化したものです。この数字は「直近でどのくらい感染が広がっていたのか」を図る指標になります。皆さんの感染予防の努力(手指消毒、マスク着用、ソーシャルディスタンスなど)によって実効再生産数を抑えることができます。例えば、緊急事態宣言によって人と人との接触を抑えることができると、この実効再生産数の数字は下がります。
5. 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2、2019-nCoV)の致死率
まだ疾患が見つかってから時間があまり経っていないため、数字は暫定値となります。暫定値ながら現在のところ新型コロナウイルスの致死率(正しくは死亡割合)は2-3%程度となっています。この数字は決して小さくないながら、過去のSARS(致死率:9.6%)やMERS(致死率:34.4%)と比較すると小さいものとなっています。
6. ワクチン
世界的流行の背景を踏まえて2020年は世界各国でワクチン開発が猛スピードで進みました。多く企業(ファイザー社、モデルナ社、アストラゼネカ社など)がワクチンの精製に成功しており、我が国においても2021年2月からいよいよ実用段階に入っています。ワクチンによって新型コロナウイルスの感染を90%以上予防できると報告されており、高い効果が期待できますが、ウイルスのさらなる変異(VOC-202012/01、501Y.V2、501Y.V3、E484K、E484Q、L452Rなど)によって既存ワクチンの効果減衰が懸念されています。
7. 治療方法
ウイルスを攻撃するような薬はありませんが、症状が非常に強い人にはその状態から回復させるような治療(支持療法)を行い救命します。抗HIV薬や抗インフルエンザ薬、はたまた内服ステロイド薬が有効であったという報告があるため、この事実を踏まえて一部治療に取り入れられています。具体的には、デキサメタゾンやレムデシビルなどがこれにあたります。
8. 有効な予防方法
一般的な風邪と全く同じで、何よりも手洗いです。マスクに関しては、装着する意義は高いですが、非常に小さな微生物であるウイルスから完全に身体を守るのには十分ではないため、100%の予防効果は期待できません。一方で、咳や痰の症状がある人は周囲にうつさないように必ずマスク着用(咳エチケット)するようにしてください。また、リスクを減らす意味では人と接触する場面でマスク着用時間を最大にすることは大切です。特に3密(密閉、密集、密着)と呼ばれる場面や大きな声を出すような場面では、症状がなくてもマスクを着用するように努めてください。(ユニバーサルマスキングといいます) さらに「体調が悪い人と不必要に接触しないこと」や「自分の体調が悪いときには自宅にいること」も忘れないようにしてください。
流行期には人と人との距離を適切に保ち接触を最小限にする方策がとられます。これをソーシャル・ディスタンシング(Social Distancing)といい、感染症罹患者を極力増やさない狙いから、現在の日本でも推奨されています。暑い時期にはマスクの装着による熱中症のリスクも考えなければならないため、気温の高い環境下では周囲の人とある程度(2mが目安)離れているときにはマスクを外して体調管理することも大切です。
9. 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2、2019-nCoV)について知っておくと良いこと
感染者の多くは重症にならない
このウイルスに感染したら致命的というわけではありません。多くの人(およそ8割程度)は軽症で済んでしまい、中には無症状の人もいます。
現在の日本国内の流行状況は限定的ではあるが重大局面を迎えている
国内で判明している感染者は2020年2月中旬までは湖北省に関連する人が中心でしたが、現在は感染者が市井に多く存在し、二次感染者、三次感染者広がりを見せています。ですが、海外諸国と比較する流行を最大化させずになんとか感染コントロールができている状態です。
今の流行状況であれば、疑わしい症状(発熱、咳、呼吸困難、筋肉痛など)が出ても、新型コロナウイルス以外にも単なる風邪などによるもののということも十分に考えられます。特殊な理由がない限り、濃厚接触者や感染者の多い国に関連した人、明らかにコロナが疑われる症状がある人、症状がしばらく持続している人以外はPCR検査を慌てて受ける必要なありません。(検査のキャパシティの問題や検査の精度の問題がありますが、詳しくはこちらのコラムを参考にしてください) とはいえ、二次感染者(既感染者からうつされた人)や三次感染者(二次感染者からうつされたひと)が増えてきた場合など状況によって検査を受けるべき人も変わってきますので、不安がある人は医療機関や保健所に問い合わせてみてください。
ロックダウン(都市封鎖)について
2020年3月25日の小池都知事の会見において「ロックダウン」という言葉が用いられました。ロックダウンとは日本語で都市封鎖のことで、感染症流行の程度によってやむなく外出等の制限を要請するものです。これによって人と人との接触を最小限にして感染症の爆発的流行を阻止する狙いです。実際に4月7日から5月24日まで緊急事態宣言が出され、日本国内でもロックダウンを経験しました。(我が国のものは欧米諸外国などの完全なる都市封鎖とは異なります)
法律的な罰則が付随するわけではないですし、交通機関などのインフラをストップさせるわけではないので、市民の生活が著しく阻害されるものではないのですが、感染症阻止のために強く要請されるものです。
もちろん食料などの物資が途絶えることはありませんので、買い溜めをする必要はありませんし、パニックにならずに落ち着いた行動をするようにしてください。
過度に恐れずに手洗いを徹底することが流行を阻止する最大のキー
流行は決して油断のできない状態ではありますが、重症になりやすい人もある程度背景が見えているので、みなさんはあまりパニックにならずにやれること(手洗いの徹底と咳エチケット)を徹底することが肝要です。この心がけ一つで、自分だけでなく周囲の人(特に重症になりやすい人)に感染をうつさないようにすることができます。
また、いざ自分がコロナにかかって医療を受ける必要が出てきたときに、医療機関がぱんぱんで入れないということがないようにしておく必要があります。コロナ患者の一定数(2割程度)は重症化することがわかっているので、日頃からコロナ患者を減らすような努力が必要です。やはり皆さんの感染予防の心がけが重要になってきます。
今後の状況によって、もちろん対応は変わってきますので、その都度このコラムの内容をアップデートしていきます。あまり不安に駆り立てられすぎないようにしつつ、みんなで流行を阻止する世の中にしていきましょう。
参考
役立てて欲しいツール:「症状チェッカー」
また、症状を入力すると考えられる病気について教えてくれる「症状チェッカー」というツールがあります。病気が心配な方は病気の知識を深めるのに役立ててください。
◎症状チェッカー:https://medley.life/symptoms/
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