新型コロナワクチン体験記ー感染症科の医師の場合

2月から医療従事者を皮切りに新型コロナウイルスのワクチン接種が始まりました。私が勤めていた病院でも、ワクチンを接種するべきかどうかで迷っている人が多くいました。病院に勤めている人間がすべてワクチンに関する最新の学術論文を読んでいるわけではありませんので、ワクチンに関する知識は一般人とほとんど変わらない、というのが現実です。そのため院内の職員も今回導入されるmRNAワクチン(ファイザー社製のコミナティ)に対して、「1年足らずで承認されたワクチンは本当に安全なのか?」、「遺伝子を接種するってどうなの?」というような漠然とした不安をもっていました。
医療従事者でのワクチン接種率が低ければ、当然非医療従事者の接種率も低くなってしまい、新型コロナウイルスを収束させることが難しくなります。院内感染対策としても、ワクチンを接種している人が多いほうが、病院でのクラスター発生の確率も低くなります。ワクチンを接種するかどうかの最終判断はもちろん個々人にゆだねられるべきですが、適切な判断材料は提供されるべきです。そのため、私は感染症科の医師としてワクチンに関するポスターや動画を作成し、正確な情報の周知に努めるようにしていました。
そしていよいよ、3月になって当院にもようやくワクチンが入ってくることが決まりました。各診療科ごとにワクチンを接種するかどうかの希望調査があり、もちろん私は接種希望で返答しました。院内で接種する日程も決まり、いよいよ接種か!と思っていたら、3月末で異動することが決まっていたため、残念ながら打つことができませんでした…。
しかし次の勤務先から、最前線で働いてもらうのにワクチン未接種では困る、ワクチンを接種しに来てくれと連絡が入り、私もワクチンを接種できることになりました。まさに捨てる神あれば拾う神あり(!?)、ですね。
で、1日有給休暇をとり、次の勤務先へワクチンを接種しに行きました。
いざ、ワクチン接種の会場へ
会場ではこのような予診表を最初に記載します(この予診表は2回目のもの)。
1回目の接種:接種部位の軽い痛みのみ
薬液が0.3mLと少ないためでしょうか、接種は一瞬で、痛みはほとんど感じませんでした。接種後は
ワクチンを接種し終わると、このような接種記録書が発行されます。海外では新型
2回目の接種:1回目と同様、接種部位の痛みのみ
さて、2回目を約3週間後の4月7日に接種しました。2回目のほうが副反応が強く出ると前もってわかっていたので、次こそは接種部位の痛みや腫張などの局所反応が強く出たり、熱や
どんな副反応が多い?
さて、国内での副反応等についてですが、すでに報告が上がってきています。2月25日の13時までに先行接種を受けた医療従事者19,808例の報告をみると(新型コロナワクチンの接種後の健康状況調査、2020.4.20閲覧)、局所の
私の勤める病院では1-2割程度の割合で発熱が認められ、中には休みをとっている人もいました。多いのはやはり局所の疼痛で、痛みが強くて肩が上がらないという方もいましたが、接種後2日目にはほとんど問題ない程度に回復しているようでした。新しいワクチンですので、未知の副反応に対する不安を多くの人がもっているようですが、実際に接種してみると、我慢できる程度の痛みや倦怠感、発熱などがほとんどで、心配するような大きな副反応の心配はないようです。
さいごに
現在感染力が高く、重症化しやすいとされる変異株が猛威を振るっており、すでに第4波が始まっています。現場で実際に患者さんを診察している実感ですが、感染者の増え方が早く、重症化する患者もこれまでになく多くなっています。これまでの波の中で一番大きな波になると思います。ワクチンを接種することで、感染を防ぐだけではなく、重症化の予防も期待できます。ワクチンがあなただけではなく、あなたの周りの大切な人も守ってくれるはずです。副反応ですが、院内の様子を見る限りは、大きな副反応はほとんど起きていません。自粛疲れ、コロナ以前の生活に戻るには、ワクチンを接種して、
ぜひ前向きに接種を検討いただければと思っています。
執筆者
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。