2020.03.26 | コラム

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するヒドロキシクロロキンの有効性についてわかっていること(2020年3月25日)

ヒドロキシクロロキンがどのような薬であるかについても紹介しています
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するヒドロキシクロロキンの有効性についてわかっていること(2020年3月25日)の写真
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世界各国で新型コロナウイルスの感染が拡大しています。新型コロナウイルス感染症の大きな問題として、「未だ有効性が確認された治療薬がない」ということが挙げられます。そんな中、米国のトランプ大統領が新型コロナウイルス感染症の治療のgame changerになりうるとコメントし、注目を浴びている薬に「ヒドロキシクロロキンン(プラケニル®️)」があります。
このコラムではヒドロキシクロロキンがどのような薬であるか、新型コロナウイルス感染症に対する有効性がどの程度わかっているのかについて紹介します。

ヒドロキシクロロキンとはどのような薬か

ヒドロキシクロロキンは、もともとマラリアという感染症に対する治療薬(抗マラリア薬)として開発されました。ヒドロキシクロロキンが開発される前には、クロロキンという抗マラリア薬がありましたが、重い副作用として目の障害(網膜症)が問題となりました。そのため、網膜症の副作用を軽減するため開発されたのが、クロロキンの代謝産物であるヒドロキシクロロキンです。

また、はっきりした機序はわかっていませんが、免疫を適切な状態に調節する作用もあります。そのため、海外では皮膚エリテマトーデス、全身性エリテマトーデス関節リウマチなどの免疫の異常で起こる病気にも使用されており、日本でも皮膚エリテマトーデス、全身性エリテマトーデスの治療薬として2015年に承認されています。なお、クロロキンについては日本で承認されていません。

ヒドロキシクロロキンは適切に使用すれば、比較的安全性の高い薬です。ただ、副作用が全くないわけでなく、吐き気や食欲不振などの消化器症状、皮疹骨髄抑制、心筋症肝機能障害などがあります。網膜症についても、クロロキンほど多くはないですが起こることがあり、ヒドロキシクロロキンの使用前や使用後に定期的に眼科受診をすることが求められています。また、内服用量を性別、身長から計算した理想体重に応じて決めるなど、注意点がいくつかある薬です。

 

新型コロナウイルス感染症に対する有効性についてわかっていること

新型コロナウイルス感染症のヒドロキシクロロキンの有効性については3月20日にフランスから36人の感染者を対象とした研究結果が報告されています(1)。36人の内訳は6人が無症状、22人が上気道症状のみということで比較的軽症の患者が中心でした。36人のうち20人はヒドロキシクロロキンを使用(一部はアジスロマイシンという薬を併用)し、残りの16人はヒドロキシクロロキンを使用しませんでした。この2つのグループについて6日後にPCR検査での陽性率を比較したところ、ヒドロキシクロロキンを使用していた人たちのほうが陽性率が低かったという結果でした。また、日本からもヒドロキシクロロキンで治療し改善した少数例の報告がこれまでに挙がっています(2, 3)。

ヒドロキシクロロキンの仲間のクロロキンについては、中国で複数の病院による臨床研究が進められており、高い有効性が示唆されています(4)。

このようにいくつか有効性を示す報告がされていますが、これらの結果がヒドロキシクロロキンに対する過剰な期待に繋がらないよう注意する必要があります。というのも(特に小規模な)研究結果は有効性が出たという結果のほうが取り上げられやすい傾向にあるためです。そのため、後で行われたより大規模な研究で、有効性が証明されなかったということも珍しくありません。

また、新型コロナウイルス感染症は、若く持病がない人は軽症で自然に良くなることが多い一方で、お年寄りや持病がある人は重症化しやすい傾向があります。重症化した人にもヒドロキシクロロキンが効果があるのか、ヒドロキシクロロキンがお年寄りや持病がある新型コロナウイルス感染症の人に安全に使えるかなど、今後さらなる情報の集積が求められています。

 

新型コロナウイルス感染症に対するさらなる研究の動き

新型コロナウイルス感染症に対するヒドロキシクロロキン投与の有効性、安全性についてはまだまだ検証が必要です。こういった背景もあり、ヒドロキシクロロキンの臨床研究・治験がいくつか進められています。臨床研究・治験のデータベースサイトである「ClinicalTrials.gov」を見てみると、

 

  • 中国での新型コロナウイルス感染症に対するヒドロキシクロロキンの第3相試験 (5)
  • メキシコでの新型コロナウイルス重症肺炎に対するヒドロキシクロロキンの第3相試験 (6)
  • メキシコ、アメリカでの新型コロナウイルス患者と接触後の予防内服に関する第2,3相試験 (7,8,9)

 

などの研究の準備が進められていることがわかります。情報が集積をしていくことで、ヒドロキシクロロキンが本当に有効な薬なのか、またそうなのであれば、どのように使うべきなのかがはっきりしてくると思います。一方で、これらの結果が出るのには時間がかかるため、治療薬のない現状において、専門家の判断のもと新型コロナウイルス感染症の人にヒドロキシクロロキンの投与が行われることもあるかもしれません。こうした動きによって素早く治療が受けられるだけでなく、新たな示唆が生まれることもあります。

 

新型コロナウイルス感染症の治療薬の候補として期待がかけられているヒドロキシクロロキンについて紹介しました。新型コロナウイルス感染症は急速に世界に広がっており、不安な人も多いかもしれません。今後治療薬に関する情報の集積が進み、1日も早く治療法が確立することに期待しています。

 

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。