疥癬の初期症状は?原因のヒゼンダニを見つける検査と治療薬
疥癬(かいせん)はヒゼンダニという肉眼では見えないダニが皮膚に寄生して、激しいかゆみを起こす病気です。顕微鏡でヒゼンダニを見つけて診断し、ストロメクトールなどの薬で駆除します。ほかの人にうつさないよう注意が必要です。
目次
1. 疥癬の原因は?
疥癬の原因は、ヒゼンダニという大きさ0.4mmほどのダニです。ヒゼンダニが皮膚に寄生することで激しいかゆみなどが起こります。菌や
白癬(水虫)や乾癬とは名前が紛らわしいですが、まったく別の病気です。水虫は白癬菌というカビ、乾癬は
ヒゼンダニとは?
ヒゼンダニは小さいのでほとんど目に見えません。ヒゼンダニは皮膚の中にもぐりこんでおよそ1か月間、毎日数個の卵を産み付けます。卵が孵化して成虫になるまでおよそ2週間です。成虫は皮膚の表面で交尾してどんどん増えていきます。
ヒゼンダニが増殖して皮膚のかゆみや赤みを起こした状態が疥癬です。
疥癬はうつる?
疥癬はうつります。ヒゼンダニが寄生している皮膚に長時間接触すると疥癬がうつります。性行為をしなくてもうつるので性病ではありません。
性行為でうつる場合もありますが、寝具や衣類を介してもうつります。老人ホームや医療介護施設での集団感染がよく問題になります。
ヒゼンダニは身体から離れると数日で死にます。集団感染が起こらないように、寝具や衣類を頻繁に交換することや皮膚を清潔に保つことが重要です。もし強いかゆみを感じたら、皮膚に目に見える変化が出ていないかをよく見てください。
2. 疥癬の初期症状は?
ヒゼンダニが皮膚に寄生してから
初期症状はかゆみのことが多いです。疥癬のかゆみは非常に強いかゆみです。かゆみの原因はヒゼンダニに対する身体の過敏反応です。数匹のヒゼンダニがいるだけで激しいかゆみが出ます。夜間にかゆみが強くなります。ただし、高齢者では比較的かゆみを感じにくい人もいます。
傷付いた場所から
疥癬で出る皮疹
疥癬では皮膚に赤いぶつぶつ(
- 手首の手のひら側
- 指の間
- 肘
- 乳房の下
- 脇の下
- へその周り
- 臀部(おしり)
- 太もも、足の付け根
- 陰部(
陰嚢 )
疥癬の症状は、身体の左右対称に現れます。つまり右手に症状が出れば左手にも出ることが多いです。
3. 疥癬の症状「疥癬トンネル」とは?
ヒゼンダニは、皮膚の下にトンネルを作って、トンネルの中に卵を産み付けます。ヒゼンダニが皮膚に作るトンネルを疥癬トンネルといいます。疥癬トンネルができやすい部位は以下です。
- 手首の手のひら側
- 指の間
- 腕
- 肘
- 陰部
疥癬トンネルは皮膚の上に波線状に見えます。長さは数mm程度です。
4. 特に重症、角化型疥癬とは?
角化型疥癬は、特に重症の疥癬です。かさぶたや垢が溜まったように見える症状が出ます。数千匹のヒゼンダニが寄生しています。かゆみは比較的弱い場合があります。ノルウェー疥癬、痂皮型疥癬(かひがたかいせん)とも言います。
角化型疥癬は免疫が弱っている場合に起こりやすくなります。免疫が弱るとは次のような場合です。
日常生活の中で角化型疥癬になるほど免疫が弱ることは普通はありません。
かさぶたや垢に見える部分が剥がれ落ち、中に入っている多数のヒゼンダニが周りの人に感染する危険性があります。
5. 疥癬の検査はどんなことをする?
疥癬を疑わせる強いかゆみが出たときに、症状の出ている皮膚をピンセットやハサミで切り取って顕微鏡でくまなく見ていきます。ヒゼンダニの成虫や卵が見つかれば疥癬とわかります。
1回の検査でヒゼンダニが見つからず、繰り返し検査が行われることがあります。
角化型疥癬は乾癬と似て見えることがあります。乾癬はうつらない病気です。乾癬と間違って角化型疥癬を見逃すとヒゼンダニが広がってしまうので、正しく診断することが大切です。
6. 疥癬の治療は?
疥癬の治療には、ヒゼンダニを駆除する薬とかゆみを抑える薬があります。
- イベルメクチン(商品名ストロメクトール®)
- ヒゼンダニを駆除する薬です。1度飲めば効果が出ます。
- 抗
ヒスタミン 薬(商品名ザイザル®、アレジオン®、アレロック®など)- かゆみを抑える飲み薬です。
- フェノトリンローション(商品名スミスリンローション®)、硫黄剤、クロタミトンクリーム(商品名オイラックスクリーム®)
- ヒゼンダニを駆除する塗り薬です。
患者と接触があった人も、うつっている恐れがあるので同時に治療する必要があります。
ヒゼンダニは人体でに住みついて生きていくのが適しているのですが、人体から離れると温度や湿度の問題から生きていくのが難しくなります。人体を離れて数日で死にます。
ヒゼンダニは生命力が非常に強いわけではないので、疥癬の治療は1度行えば十分なことが多いです。
ただし、ヒゼンダニが死滅してもかゆみはしばらく残ります。抗ヒスタミン薬などでかゆみを和らげる治療が有効です。
疥癬の薬の副作用は?
イベルメクチンの副作用に次のものがあります。
- めまい、吐き気、嘔吐
- 下痢
- かゆみ
- 蕁麻疹、
発疹
副作用が出ることは多くはありません。
抗ヒスタミン薬の副作用に眠気などがあります。
塗り薬の副作用として赤みやヒリヒリ感が出ることがあります。
疥癬の薬は妊婦にも安全?
疥癬の薬は妊婦も使えます。ただし、イベルメクチンやフェノトリンローションは「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ」、クロタミトンクリームなどは「大量又は長期にわたる広範囲の使用は避ける」とされています。
また、イベルメクチンは授乳中は飲めません。授乳中にイベルメクチンを使うときは授乳をストップするよう言われます。
疥癬の治療が1度で済まない場合
ヒゼンダニの卵が残っていると、イベルメクチンを飲んでも1度で完治しない場合があります。ヒゼンダニの卵は生命力が強いです。卵は2週間ほどで大人のヒゼンダニになります。卵が孵化するまでの2週間は薬が効きません。
そのため、一度治療したのに2週間位で症状がぶり返すようなことがあれば、卵からかえったヒゼンダニが悪さをしている可能性があります。その場合は、もう一度治療することがあります。
角化型疥癬では普通2回以上の治療が必要です。
疥癬は洗濯物からうつる?
ヒゼンダニは成虫も卵も洗い落とせば問題になりません。きちんと洗濯した服やシーツから周りに疥癬をうつしてしまうようなことは考えにくいです。
心配なら熱湯で洗濯したうえ高温の乾燥機で乾かせばヒゼンダニは死滅します。
7. 疥癬が出たら生活で何に注意する?
疥癬は家族や接触した人にうつる可能性があります。うつさないように次のことに気を付けてください。
- かゆみのある部位をしっかりと洗う
- バスタオルやタオルは誰かと共用しない
- 下着や寝間着は毎日交換する
- 同じ部屋や同じベッド(布団)で寝ない