[医師監修・作成]低ナトリウム血症の原因:SIADH・MRHE・CSWSなど | MEDLEY(メドレー)
ていなとりうむけっしょう
低ナトリウム血症
血液中のナトリウム濃度が低下した状態。だるさや意識障害、けいれんを起こす
5人の医師がチェック 164回の改訂 最終更新: 2021.11.30

低ナトリウム血症の原因:SIADH・MRHE・CSWSなど

低ナトリウム血症は脱水、多飲症、心不全腎不全など様々なことが原因で起こります。低ナトリウム血症は体の中のナトリウムが減っているためか、体の水分量が増えているためかで原因を分類して考えます。

1. 低ナトリウム血症はなぜ起きるのか?メカニズムによる分類

低ナトリウム血症は血液中のナトリウム濃度が低い状態です。様々なことが原因で低ナトリウム血症は起こりますが、低ナトリウム血症の原因は体のナトリウムの量と水分の量で考えると分かりやすいです。低ナトリウム血症は通常よりナトリウム量が水分の量と比較して少ない場合と言えます。つまり水分量を基準にすると次の3通りに分けられます。

  • 体の水分量は減っている(ナトリウムの量はもっと減っている)
  • 体の水分量はほぼ正常である(ナトリウムの量と比較すると水分量が多い)
  • 体の水分量が増えている

低ナトリウム血症をこのように分類することは治療を考える上でも非常に重要です。例えば、水分量が減っている場合には、ナトリウムを補うだけでなく、水分も一緒に補う必要があります。具体的には嘔吐や下痢で低ナトリウム血症になっている場合などです。

それに対して体の中の水分量が増えていることで低ナトリウム血症になっている場合は体の中の水分を減らす必要があります。例えば、心不全で低ナトリウム血症になっている場合です。

ここでは、低ナトリウム血症の原因を体の水分量で分類して、説明したいと思います。

それぞれの分類に対応する原因の例として以下のものがあります。

  • 体の水分量は減っているが、ナトリウムの量はもっと減っている
    • 嘔吐・下痢
    • 脱水
    • アジソン病
    • 中枢性塩類喪失症候群:CSWS
    • ミネラルコルチコイド反応性低ナトリウム血症:MRHE
  • 体の水分量はほぼ正常であるが、ナトリウムの量と比較すると水分量が多い
  • 体の水分量が増えている

詳しくは以下で説明していきます。

体の水分量が減っている場合

体の水分量が減っている場合でも、ナトリウムがより減っている場合に低ナトリウム血症になります。具体的には以下のような状態があります。

  • 嘔吐・下痢
  • 脱水
  • アジソン病
  • 中枢性塩類喪失症候群:CSWS
  • ミネラルコルチコイド反応性低ナトリウム血症:MRHE

詳しくは以下で説明していきます。説明が難しい病気もありますので、当てはまらないと思ったところは読み飛ばして頂いても構いません。

■嘔吐・下痢

嘔吐や下痢を繰り返すと、水分と一緒にナトリウムを喪失し、低ナトリウム血症が起こることがあります。そのため、嘔吐や下痢の時にはナトリウムが入ったスポーツドリンクを飲むことをお勧めします。嘔吐がひどく、飲水が全くできない場合には、点滴で水分とナトリウムを補う必要があります。

■脱水

スポーツをしたり、熱により大量の汗をかくことで脱水になると低ナトリウム血症が起こることがあります。これは汗にはナトリウムが含まれており(汗がしょっぱいのはそのためです)、汗をかくと水分と同時にナトリウムの喪失が起こるためです。スポーツをしたり、熱が出て脱水が疑われる場合も、ナトリウムが入ったスポーツドリンクを飲むことが望ましいです。

アジソン病

アジソン病は皮膚が黒くなったり、だるさがあらわれる病気で、低ナトリウム血症を起こす病気の一つでもあります。アジソン病は副腎が障害されることで副腎皮質ホルモンというホルモンが作れなくなることで起こります。この病気を初めて報告したThomas Addison先生の名前をとってアジソン病と呼ばれています。

アジソン病で障害される副腎は腎臓の上にある小さな臓器です。副腎皮質ホルモンは副腎から分泌されるホルモンで、腎臓に働きかけてナトリウムの濃度を調整する作用があります。そのため、アジソン病により副腎が正常に機能しないと、ナトリウムの濃度が調整できなくなり、低ナトリウム血症を起こします。

他にもアジソン病では、倦怠感、体重減少、血圧低下、うつなどが起こります。アジソン病では副腎皮質ホルモンを補充する必要があります。

■中枢性塩類喪失症候群:CSWS

中枢性塩類喪失症候群は脳の手術や、頭の中で出血が起きた後などに低ナトリウム血症が起きることをいいます。英語名はCerebral Salt-Wasting Syndromeなので、CSWSという病名で呼ばれることもあります。

中枢性塩類喪失症候群のはっきりした原因はわかっていませんが、脳からはナトリウムの濃度を調整するホルモンがいくつか出ているので、脳の手術や出血が起きるとナトリウムの濃度を調整するホルモンがうまく出せなくなるのではないかと考えられています。脳の手術や、頭の中で出血が起きた後に低ナトリウム血症が起きた時に考える必要のある病気です。

■ミネラルコルチコイド反応性低ナトリウム血症:MRHE

ミネラルコルチコイド反応性低ナトリウム血症は高齢者に多い病気です。英語名はMineralocorticoid Responsive Hyponatremia of the Elderlyなので、MRHEという病名で呼ばれることもあります。ミネラルコルチコイド反応性低ナトリウム血症はミネラルコルチコイドというホルモンの効きが悪くなることで起こる病気です。ミネラルコルチコイドは本来、腎臓に働きかけ血液中のナトリウム濃度を上げるホルモンなので、ミネラルコルチコイドの効きが悪くなると低ナトリウム血症が起こります。そのため、ミネラルコルチコイド反応性低ナトリウム血症ではナトリウムの入った点滴をしたり、ミネラルコルチコイドを補充することで治療を行います。

体の水分量はほぼ正常の場合

体の水分量はほぼ正常で、ナトリウムの量が水分量と比較して減っている場合、低ナトリウム血症になります。具体的には以下のような病気があります。

詳しくは以下で説明していきます。説明が難しい病気もありますので、当てはまらないと思うところは読み飛ばして頂いても構いません。

■多飲症

水にはナトリウムが含まれていないため、大量に飲むことで血液が薄まり、低ナトリウム血症が起こります。多飲により起こる低ナトリウム血症は通常5-10Lを超えるような水を飲まないと起こりません(通常の人が飲む水分の量は1日で2-3L程度です)。このような大量の水を飲む場合には心因性多飲症といって、大量の水を飲みたくなってしまう病気が隠れていることがあるので、注意が必要です。多飲症により低ナトリウム血症になった場合、飲水量の制限を行います。

■抗利尿ホルモン分泌異常症:SIADH

抗利尿ホルモン分泌異常症は抗利尿ホルモン(Antidiuretic hormone: ADH)が体の中で大量に分泌されることで低ナトリウム血症が起こる病気です。英語名はSyndrome of Inappropriate secretion of Antidiuretic HormoneでSIADHの略称で呼ばれることもあります。抗利尿ホルモンは脳で本来作られるホルモンで、腎臓に働きかけることで尿の水分を血液中に吸収させる作用があります。本来は、脱水の時に分泌されて血液中の水分を増やす働きがあります。しかし、抗利尿ホルモン分泌異常症では脱水でないにもかかわらず抗利尿ホルモンが異常に分泌され、水分が血液に取り込まれることで低ナトリウム血症を起こします。

抗利尿ホルモン分泌異常症で抗利尿ホルモンが体の中で大量に作られる理由の中では薬の副作用によるものが有名です。低ナトリウム血症と関連する薬剤はあとで詳しく説明しますが、例えばうつ病の治療薬などでは脳の抗利尿ホルモンを作る場所に作用することで、抗利尿ホルモンが体の中で大量に作られてしまうことがあります。その他、がんでも抗利尿ホルモン分泌異常症が起こることがあります。これはがんが抗利尿ホルモンを作るためで、肺がんなどで起こることがあります。

抗利尿ホルモン分泌異常症の治療として、何か原因となるものが見つかっている場合には、原因に対処を行います。例えば薬の副作用により抗利尿ホルモン分泌異常症が起きている場合には、原因となっている薬剤をなるべく止められるように試みます。

甲状腺機能低下症

甲状腺とは首の前に位置する臓器で、甲状腺ホルモンなどのホルモンを作る役割があります。甲状腺機能低下症は甲状腺の機能が落ちることで、これらのホルモンが作れず、だるさ、疲れやすさ、動悸むくみなどの様々な症状が現れる病気です。時に低ナトリウム血症を起こすこともあります。

甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンの値を測ることで診断することができます。そのため、低ナトリウム血症がある人で甲状腺機能低下症が疑われる場合には、甲状腺ホルモンの値のチェックがされます。甲状腺機能低下症の治療には甲状腺ホルモンの補充を行います。

■食塩摂取不足

食塩はナトリウムを得るための大事な供給源です。食塩の摂取量が少ない方では摂取量不足により低ナトリウム血症が起こることがあります。そのような方では食事の中の塩分の摂取量を増やすことで低ナトリウム血症が改善することが多いです。

体の水分量が増えている場合

体の水分量が増えると、体の中のナトリウムが薄まるため、低ナトリウム血症が起こります。体の水分量が増えることで低ナトリウム血症が起こる病気には具体的には以下のような病気があります。

詳しくは以下で説明していきます。説明が難しい病気もありますので、当てはまらないと思ったら読み飛ばして頂いても構いません。

ネフローゼ症候群

ネフローゼ症候群は腎臓が障害されることで尿から大量のタンパク質が排泄される病気です。尿は血液中の毒素などを体の外に排泄するため、腎臓で血液を濾過(ろか)した結果できるもので、血液中の大事なタンパク質などは尿中に漏れ出ないようになっています。しかし、腎臓の濾過する膜が障害されると、血液の濾過が適切に行われなくなり、尿の中にタンパク質が漏れ出るようになってしまいます。これがネフローゼ症候群です。

ネフローゼ症候群ではタンパク質が失われるため、栄養状態が悪くなり、体がむくむようになります。体がむくむと体の水分量が増えるため、低ナトリウム血症が起こります。

ネフローゼ症候群に関してはほかのページでも詳しく説明しています。

腎不全

腎不全になると低ナトリウム血症が起こります。これは二つのことが理由としてあります。一つ目は体の水分量が増えナトリウムが薄まるためです。私たちは生きていくために食事や水分を摂取する必要がありますが、尿から不必要な水分を排泄することで体の水分量が一定になるようにできています。しかし、腎不全になり尿が作れなくなると、体の余分な水分を排泄できなくなります。そうすると体の水分量が増え、ナトリウムが薄い状態となります。これが腎不全で低ナトリウム血症を起こす一つ目の理由です。

二つ目は腎臓でナトリウムの濃度を調整できなくなるためです。腎臓は体の中のナトリウムの量が不足していると尿からナトリウムを血液内に取り込む役割があります。しかし、腎不全では腎臓によるナトリウムの調整がうまくできなくなります。このように腎臓によりナトリウムの調整ができなくなることもまた、腎不全で低ナトリウム血症を起こす要因になります。

腎不全により尿が作れなくなり低ナトリウム血症になっている場合には、透析により余計な水分を除去することで低ナトリウム血症の治療を行います。

心不全

心不全は心臓の機能が落ち血液が全身に送れなくなることで、体がむくみ、水分量が増える結果、低ナトリウム血症が起こります。また、心不全の治療中に現れる低ナトリウム血症の中には、心不全の食事療法として行われる食塩摂取制限と関連したものや、心不全の治療で使われる利尿薬の副作用で起こるものもあります。これは多くの利尿薬がナトリウムの値を下げる副作用があるためです。

心不全により低ナトリウム血症が起こる場合には、まず飲水量の制限を行います。飲水量を制限しても改善しない場合はナトリウムを下げない利尿薬であるトルバプタンを使います。トルバプタンに関しては「低ナトリウム血症の治療」でも説明しています。

肝硬変・肝不全

肝臓では生きる上で必要なタンパク質が作られています。そのため、肝硬変・肝不全になり、肝臓が正常に機能しなくなると、栄養状態が悪くなります。その結果、体がむくみ、水分量が増えるので低ナトリウム血症が起こります。肝硬変で水分量が増えたことにより低ナトリウム血症が起きた場合も、まず飲水量の制限を行い、改善しない場合はナトリウムを下げない利尿薬であるトルバプタンを使います。トルバプタンに関しては「低ナトリウム血症の治療」でも説明しています。

2. 低ナトリウム血症を起こす主な薬剤

低ナトリウム血症は薬の副作用で起こることがあります。具体的には脳に働いて抗利尿ホルモンの分泌に影響する薬や、腎臓の働きに影響する薬があります。低ナトリウム血症を起こす副作用が知られている薬剤の例として以下のものがあります。

これらの薬剤で低ナトリウム血症が起きている場合には、薬を中止することで低ナトリウム血症の改善が見込めます。ただし、もともとの病気の関係上、薬を中止できない場合もありますので、対応については担当の医師との相談が必要となります。以下で詳しく説明していきます。

■抗てんかん

てんかん薬はてんかんを抑えるための薬です。てんかんは脳から正常でない刺激が伝わる(医学用語で興奮と呼びます)ことで、痙攣などのさまざまな症状がおこる状態です。抗てんかん薬は異常な興奮を抑えることを目的とした薬ですが、抗てんかん薬の副作用として脳から分泌されるホルモンである抗利尿ホルモンの分泌が増えるというものがあります。低ナトリウム血症を起こす抗てんかん薬として以下のものが知られています。

  • カルバマゼピン
  • バルプロ酸ナトリウム

■抗うつ薬

抗うつ薬はうつ病などに対する治療薬です。抗うつ薬も脳に作用することで、うつ状態を改善しますが、抗てんかん薬同様、抗利尿ホルモンの分泌が増える副作用が現れることがあります。低ナトリウム血症を起こす抗うつ薬として以下のものが知られています。

  • パロキセチン
  • ミルナシプラン
  • ミルタザピン
  • アミノトリプチリン

■抗精神病薬

抗精神病薬は統合失調症などに対する治療薬です。抗精神病薬も脳に作用する薬剤であり、一部の薬剤で抗利尿ホルモンの分泌が増える副作用が現れることがあります。低ナトリウム血症を起こす抗精神病薬として以下のものが知られています。

  • クロルプロマジン
  • ハロペリドール
  • リスペリドン

■利尿薬

利尿薬は尿の量を増やす薬です。心不全腎不全などで体がむくんでいる時に、体の水分量を適切なものとするために用いられます。利尿薬の一部にはナトリウムを尿中に排泄することで尿の量を増やすものがあります。ナトリウムを尿中に排泄するタイプの利尿薬では低ナトリウム血症が起こることがあります。具体的には以下の利尿薬が該当します。

  • フロセミド
  • ヒドロクロロチアジド