[医師監修・作成]低ナトリウム血症とはどんな病気?症状・原因・検査・治療など | MEDLEY(メドレー)
ていなとりうむけっしょう
低ナトリウム血症
血液中のナトリウム濃度が低下した状態。だるさや意識障害、けいれんを起こす
5人の医師がチェック 164回の改訂 最終更新: 2021.11.30

低ナトリウム血症とはどんな病気?症状・原因・検査・治療など

低ナトリウム血症は血液中のナトリウム濃度が低い状態で、だるさ、吐き気、意識がもうろうとするなどの症状があらわれます。低ナトリウム血症は様々なことが原因で起こり、原因に応じて治療法が異なります。

1. 高齢者に起こりやすい低ナトリウム血症とはどんな病気か?

低ナトリウム血症は血液中のナトリウム濃度が低い状態です。低ナトリウム血症になるとだるさ、吐き気、意識がもうろうとするといった症状の原因になります。

ナトリウムとは?

ナトリウムは筋肉を動かしたり、神経の信号を伝える時などに体の中で使われます。そのため、私達の体が正常に機能するために、ナトリウムは必要な物質であると言えます。低ナトリウム血症になると、ナトリウムを使うことができなくなり、体調不良をきたします。

ナトリウムは食事を介して体の中に取り込まれます。ナトリウムを含む身近なものとして「食塩」があります。食塩の主成分は塩化ナトリウムであり、名前の通りナトリウムが含まれています。

低ナトリウム血症の定義:ナトリウムの基準値など

血液中のナトリウム濃度はmEq/L(メック・パー・リットル)という単位が使われます。血液検査ではナトリウムを意味する「Na」と書かれている欄に数値が記載されていることが多いです。ナトリウムの正常値は検査のキットなどにもよりますが、通常135から145mEq/Lです。血液中のナトリウム濃度が135mEq/L未満の時、低ナトリウム血症と定義されます。

2. 低ナトリウム血症の症状

低ナトリウム血症になるとだるさ、吐き気、頭痛など様々な症状があらわれます。実際どのような症状が見られるかは低ナトリウム血症の重症度により異なります。

低ナトリウム血症は血液のナトリウム濃度が135mEq/Lより低い時を言いますが、低ナトリウム血症の重症度と症状をおおまかに分類すると以下のようになります。

ナトリウムの値

状態

135から145mEq/L

正常値

130から135mEq/L

低ナトリウム血症に該当するが、
症状はあらわれないことが多い

120から130mEq/L

軽症な低ナトリウム血症:
だるさ、吐き気があらわれる

120mEq/Lより低い時

重症な低ナトリウム血症:
頭痛、意識障害、けいれんが起こる

詳しくは「 低ナトリウム血症の症状」で説明しています。

3. 低ナトリウム血症の原因

低ナトリウム血症は血液中のナトリウム濃度が低い状態です。様々なことが原因で低ナトリウム血症は起こりますが、低ナトリウム血症の原因は体のナトリウムの量と水分の量で考えると分かりやすいです。水分の量を基準にすると以下のように分類できます。

図:水分量を基準とした低ナトリウム血症の分類。

  • 体の水分量は減っているが、ナトリウムの量はもっと減っている
    • 嘔吐・下痢
    • 脱水
    • アジソン病
    • 中枢性塩類喪失症候群:CSWS
    • ミネラルコルチコイド反応性低ナトリウム血症:MRHE
  • 体の水分量はほぼ正常であるが、ナトリウムの量と比較すると水分量が少し多い
  • 体の水分量が増えている

それぞれの原因について短く説明します。詳しくは「 低ナトリウム血症の原因」で説明しています。

体の水分量は減っているが、ナトリウムの量はもっと減っている

■嘔吐・下痢

嘔吐や下痢を繰り返すと、水分と一緒にナトリウムを喪失し、低ナトリウム血症が起こることがあります。

■脱水

スポーツをしたり、熱により大量の汗をかくことで脱水になると低ナトリウム血症が起こることがあります。これは汗にはナトリウムが含まれており(汗がしょっぱいのはそのためです)、汗をかくと水分と同時にナトリウムの喪失が起こるためです。

アジソン病

アジソン病は皮膚が黒くなったり、だるさがあらわれる病気で、低ナトリウム血症を起こす病気の一つでもあります。アジソン病は副腎が障害されることで副腎皮質ホルモンが作れなくなることで起こります。この病気を初めて報告したThomas Addison先生の名前をとってこのような病名で呼ばれています。副腎皮質ホルモンは副腎から分泌されるホルモンの一つで、腎臓に働きかけてナトリウムの濃度を調整する作用があります。そのため、アジソン病により副腎が正常に機能しないと、ナトリウムの濃度が調整できなくなり、低ナトリウム血症を起こします。

■中枢性塩類喪失症候群:CSWS

中枢性塩類喪失症候群は脳の手術や、頭の中で出血が起きた後などに低ナトリウム血症が起きることをいいます。中枢性塩類喪失症候群のはっきりした原因はわかっていませんが、脳からはナトリウムの濃度を調整するホルモンがいくつか出ているので、脳の手術や出血が起きるとナトリウムの濃度を調整するホルモンがうまく出せなくなるのではないかと考えられています。

■ミネラルコルチコイド反応性低ナトリウム血症:MRHE

ミネラルコルチコイド反応性低ナトリウム血症は高齢者に多い病気です。ミネラルコルチコイドは副腎皮質ホルモンの一つで血液中のナトリウム濃度をあげる作用があります。年齢を重ねるとミネラルコルチコイドの効きが悪くなることがあり、これが原因で低ナトリウム血症が起こるのがミネラルコルチコイド反応性低ナトリウム血症です。

体の水分量はほぼ正常であるが、ナトリウムの量と比較すると水分量が少し多い

■多飲症

水にはナトリウムが含まれていないため、大量に飲むことで血液が薄まり、低ナトリウム血症が起こります。具体的には5-10Lを超えるような水を飲むと低ナトリウム血症を起こすことがあります(通常の人が飲む水分の量は1日に2-3L程度です)。

■抗利尿ホルモン分泌異常症:SIADH

抗利尿ホルモン分泌異常症は抗利尿ホルモン(Antidiuretic hormone: ADH)が体の中で大量に分泌されることで低ナトリウム血症が起こる病気です。抗利尿ホルモンは脳で本来作られるホルモンで、腎臓に働きかけることで尿の水分を血液中に吸収させる作用があります。本来は、脱水の時に抗利尿ホルモンが体の中で産生されます。しかし、抗利尿ホルモン分泌異常症になると脱水でないにもかかわらず抗利尿ホルモンが異常に分泌され、水分が血液に取り込まれることで低ナトリウム血症を起こします。

甲状腺機能低下症

甲状腺とは首の前に位置する臓器で甲状腺ホルモンなどのホルモンを作る役割があります。甲状腺機能低下症は甲状腺の機能が落ちることで、これらのホルモンが作れず、だるさ、疲れやすさ、動悸むくみなどの様々な症状が現れる病気です。時に低ナトリウム血症を起こすこともあります。

■食塩摂取不足

食塩はナトリウムを得るための大事な供給源です。食塩の摂取量が非常に少ない方では摂取量不足により低ナトリウム血症が起こることがあります。

体の水分量が増えている

ネフローゼ症候群

ネフローゼ症候群は腎臓が障害されることで尿から大量のタンパク質が排泄される病気です。ネフローゼ症候群ではタンパク質が失われるため、栄養状態が悪くなり、体がむくむようになります。体がむくむと体の水分量が増えるため、低ナトリウム血症が起こります。

腎不全

腎不全でも低ナトリウム血症が起こります。これは二つのことが理由としてあります。一つ目は体の水分量が増えナトリウムが薄まるためです。私たちは生きていくために食事や水分を摂取する必要がありますが、尿から不必要な水分を排泄することで体の水分量が一定になるようにできています。しかし、腎不全になり尿が作れなくなると、体の余分な水分を排泄できなくなり体の水分量が増えるので、低ナトリウム血症が起こります。

二つ目は腎臓でナトリウムの濃度を調整できなくなるためです。腎臓は体の中のナトリウムの量が不足していると尿からナトリウムを血液内に取り込む役割があります。腎不全では腎臓によるナトリウムの調整がうまく働かなくなるため、低ナトリウム血症が起こります。

心不全

心不全は心臓の機能が落ち血液が全身に送れなくなることで、体がむくみ、水分量が増える結果、低ナトリウム血症が起こります。また、心不全の治療中に現れる低ナトリウム血症の中には、心不全の食事療法として行われる食塩摂取制限と関連したものや、心不全の治療で使われる利尿薬の副作用で起こるものもあります。これは多くの利尿薬がナトリウムを尿から排泄させることで利尿作用を発揮しているためです。

肝硬変・肝不全

肝臓では生きる上で必要なタンパク質が作られています。そのため、肝硬変・肝不全になり、肝臓が正常に機能しなくなると、栄養状態が悪くなります。その結果、体がむくみ、水分量が増えるので低ナトリウム血症が起こります。

4. 低ナトリウム血症の検査

低ナトリウム血症では問診、身体診察、血液検査、尿検査などを行い状態を把握していきます。これらの検査は低ナトリウム血症の原因や重症度の把握だけでなく、治療方針の決定にも役立てられます。

問診

問診とは体の状態や生活背景につき確認することをいいます。低ナトリウム血症が疑われる場合には、以下のポイントにつき確認していきます。

  • 何か症状があるか
  • 最近の生活状況について変化があったか
  • 飲水量が多くなかったか
  • 塩分摂取量は十分であったか
  • 飲んでいる薬は何かあるか
  • 日頃どれくらいお酒を飲むか
  • もともと持病があるか
  • 家族で何か病気を持っている人はいるか
  • アレルギーがあるか
  • 妊娠はしているか

これらの質問は低ナトリウム血症の原因の推定や治療方針の決定に役立てられます。わかる範囲で構いませんので、診察時に説明するようにしてください。

身体診察

身体診察は病気の状況や原因を知るために身体の状況を客観的に評価することをいいます。具体的にはバイタルサインのチェックや手足の触診による浮腫(むくみ)や脱水の評価、心臓の音や呼吸の音の聴診などを行います。

血液検査

血液検査も低ナトリウム血症の状態や原因を調べる上で重要です。低ナトリウム血症の診断は最終的には血液中のナトリウムの濃度を測定する必要がありますし、低ナトリウム血症の原因を特定する上でも血液検査が重要です。

尿検査

尿検査も重要な検査です。中でも尿中ナトリウム検査は尿の中のナトリウムの濃度を測ることで低ナトリウム血症の原因検索や治療に役立ちます。血中のナトリウム濃度を上げるためには、体から失われているナトリウムの量以上のものを投与しなければならず、尿から失われていくナトリウムの量を参考にすることがあります。

5. 低ナトリウム血症の治療

低ナトリウム血症では体の水分量に応じて治療法が異なります。体の水分量が少ない場合にはナトリウムとともに水分を補う治療、体の水分量が多い場合は利尿剤を使って余分な水分を出すことをします。

低ナトリウム血症の原因ごとの治療

低ナトリウム血症の治療を考える時には「低ナトリウム血症の原因」で紹介した分類を少し改変したもので考えるとわかりやすいです。具体的には以下のようになります。

  • 低ナトリウム血症が何かの欠乏で起こっている場合
  • 体の水分量は減っているが、ナトリウムの量はもっと減っている場合
    • 嘔吐・下痢
    • 脱水
    • 中枢性塩類喪失症候群:CSWS
    • ミネラルコルチコイド反応性低ナトリウム血症:MRHE
  • 体の水分量はほぼ正常だがナトリウムの量と比較すると多い場合
    • 多飲症
    • 抗利尿ホルモン分泌異常症:SIADH
  • 体の水分量が著しく増えている場合

以下、それぞれの分類における治療を簡単に説明します。詳しくは「 低ナトリウム血症の治療」で説明しています。

■低ナトリウム血症が何かの欠乏で起こっている場合

低ナトリウム血症の原因がナトリウムを上げるホルモンの不足や食塩の摂取不足である場合には、不足しているホルモンや食塩を補充することが重要です。具体的にはアジソン病では副腎皮質ステロイド甲状腺機能低下症では甲状腺ホルモン、食塩摂取不足では食塩を補充します。

■体の水分量は減っているが、ナトリウムの量はもっと減っている場合

ナトリウムの欠乏とともに水分も減っている場合には、ナトリウムの補充とともに水分の補充を行います。口から水分が取れる場合にはスポーツドリンクなどのナトリウムの入った飲料水を飲みます。もし、口からの摂取が難しい場合には、生理食塩水や3%食塩水といったナトリウムの入った点滴をします。生理食塩水や3%食塩水に関しては後ほど説明します。

■体の水分量はほぼ正常だがナトリウムの量と比較すると多い場合

多飲症や抗利尿ホルモン分泌異常症では水制限と呼ばれる飲水量の制限を行うことで治療をします。飲水量の制限だけで良くならない抗利尿ホルモン分泌異常症ではトルバプタン(サムスカ®︎)やモザバプタン(フィズリン®)という薬が使われることもあります。トルバプタン(サムスカ®︎)とモザバプタン(フィズリン®)に関しては後ほど説明します。

■体の水分量が著しく増えている場合

心不全、肝不全、腎不全などで体の水分量が著しく増えている場合は飲水量の制限に加えて、利尿剤を使って体の中の水分量を調節することが多いです。この時に使う利尿剤としてはトルバプタン(商品名:サムスカ®︎)という薬が選ばれることが多いです。トルバプタンに関しては後ほど説明します。

低ナトリウム血症の治療で使う点滴や薬

低ナトリウム血症の治療には以下のような点滴、薬を使います。

  • ナトリウムの補充のための点滴
    • 生理食塩水
    • 3%食塩水
  • 利尿剤
    • トルバプタン(サムスカ®︎)
    • モザバプタン(フィズリン®)

■生理食塩水

生理食塩水は医療用の0.9%の食塩水(100ml中に0.9gの食塩が溶けた水)のことで、病院で用いられる代表的な点滴の一つです。水分中に溶けている物質の量が血液のものと近いように設定されています。

生理食塩水のナトリウムの濃度は、血液検査で使う単位に換算すると154mEq/Lであり、血液のナトリウムの濃度(正常値:135から145mEq/L)より少し高いことから、体にナトリウムを補充したい時に向いている点滴と言えます。生理食塩水は低ナトリウム血症の程度に応じて1日1L~3L程度点滴します。

■3%食塩水

尿からナトリウムが大量に漏れ出ている場合など、生理食塩水のみで低ナトリウム血症の改善が見込めない場合には、3%食塩水を使います。

■トルバプタン(商品名:サムスカ®︎)

バソプレシンと呼ばれる抗利尿ホルモンの作用をブロックすることで尿量を増やす薬で、日本では主に心不全肝硬変により体の中の水分量が増えた時の治療に使われています。

バソプレシンは本来、尿の中の水分を血管内に吸収させる作用があります。トルバプタンはバソプレシンの作用をブロックすることで、尿の中の水分を吸収できなくし、利尿作用を発揮します。

注意すべき副作用には高ナトリウム血症、脱水、口渇、腎障害、頭痛、めまい、便秘肝機能障害頻尿などがあります。トルバプタンを開始してから喉の乾きが強かったり、ふらつくような場合には担当の医師に申し出るようにしてください。

■モザバプタン(商品名:フィズリン®)

トルバプタン(商品名:サムスカ®)と同様に抗利尿ホルモンのバソプレシンの作用をブロックすることで利尿作用をあらわす薬で、日本では2006年に保険承認されています。モザバプタンは腎臓でのバソプレシンによる水の再吸収を邪魔することで低ナトリウム血症を改善します。作用の仕組みが似ているようにモザバプタンの注意すべき副作用もトルバプタンと共通点が多く、脱水、血液中のナトリウムの変動、口渇などの消化器症状、肝機能障害、頻尿などです。モザバプタンを開始してから喉の乾きが強かったり、ふらつくような場合には担当の医師に申し出るようにしてください。

低ナトリウム血症の治療上の注意点

低ナトリウム血症の治療では低くなった血液中のナトリウム濃度を回復させる必要があります。しかしながら、ナトリウムの値を戻す時には一つ大事な注意点があります。それはナトリウムの値をあげるスピードです。具体的には24時間で10-12mEq/L以上、上昇させてはいけません。これは、ナトリウムの血液中の濃度が急速に上昇すると脳の橋(きょう)と呼ばれる場所が壊れてしまう(専門的には橋中心髄鞘崩壊症と呼びます)ことがあるためです。橋は脳から全身の神経に司令を送る通り道のようなところであり、橋が障害されると寝たきりになる可能性や最悪の場合、命に関わることがあります。

6. 低ナトリウム血症を起こしたことがある人の日常生活の注意点

ここでは低ナトリウム血症を起こしたことがある人の日常生活の注意点についてお話ししていきます。具体的には以下の3点について説明していきます。

  • 水分摂取について
  • 食事について
  • 転倒の注意について

他にも再発に関する注意点について「 知っておくべき低ナトリウム血症の注意点」で説明しています。

水分摂取について

低ナトリウム血症は血液中のナトリウムが薄くなることで起こる病気です。体の水分がナトリウムの比較して多いと低ナトリウム血症を起こします。このような場合には、飲水制限を心がける必要があります。他にも嘔吐や下痢を繰り返している時や大量の汗をかいた後ではナトリウムが体から失われるので、低ナトリウム血症が起こりやすいです。この場合は、水分とともにナトリウムが失われている状況なので、スポーツドリンクなどのナトリウムの入っている飲料水で水分補給を行うことをお勧めします。

食事について

低ナトリウム血症の人の食事の注意点は原因ごとにも異なります。例えば、塩分摂取不足によって低ナトリウム血症が起こっている場合には、食事で塩分を補うように指導されると思います。一方で心不全が原因で低ナトリウム血症が起こっている場合は、塩分摂取量を増やすことで心不全が悪くなることがあります。そのため、どのような食事をとったら良いかに関しては、担当の医師に直接相談してください。

転倒の注意について

低ナトリウム血症の人では転倒やそれに伴う骨折のリスクが増えるとされています。低ナトリウム血症になると意識が朦朧としたり、集中力の低下の原因となるためです。そのため、低ナトリウム血症の人では転んだりしないように注意しておく必要があります。