ねふろーぜしょうこうぐん
ネフローゼ症候群
腎臓に障害が起こり、本来漏れでない量のタンパク質が尿の中に漏れ出る状態。その結果、血液の中のタンパク質が減少し様々な症状が現れる
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最終更新: 2023.09.27
ネフローゼ症候群の基礎知識
POINT ネフローゼ症候群とは
腎臓の糸球体という場所の異常によって、尿中に大量のタンパク質が出ていってしまう病気です。さまざまな症状が現れます。通常、健康な人では1日あたり40mgから120mgのタンパク質が尿から出ていますが、ネフローゼ症候群の人は3500mg以上のタンパク質が尿から出ていきます。体のむくみや倦怠感、息苦しさなどがネフローゼ症候群の症状です。ネフローゼ症候群はさまざまな腎臓の病気が原因になり、一次性ネフローゼ症候群と二次性ネフローゼ症候群の2つに分けられます。それぞれの原因となる病気については以下の「ネフローゼ症候群について」を参考にしてください。尿検査や血液検査、画像検査(超音波検査、CT検査など)、腎生検(腎臓に針を指して一部を取り出す検査)などを用いて診断が行なわれます。原因に合わせて治療法が選ばれますが、ステロイド薬や食事療法などが中心になります。健診や偶然受けた検査でタンパク尿が出ていると指摘された場合にはネフローゼ症候群の可能性があります。内科や腎臓内科を受診して詳しく調べてもらってください。
ネフローゼ症候群について
- 尿中に大量のタンパク質が流れ出て、血液中のタンパク質が減少し、それにともなう様々な症状が現れる病気
- 腎臓の
糸球体 (血液をろ過するところ)に障害が起こる
- 腎臓の
一次性 と二次性 に分けられる(詳細はそれぞれの疾患を参照)- 一次性ネフローゼ症候群の原因:腎臓(糸球体)に起こる病気
- 二次性ネフローゼ症候群の原因:全身に影響する病気や薬剤
ネフローゼ症候群の症状
ネフローゼ症候群の検査・診断
- 主な検査
- 尿検査:尿中のタンパク質排泄量を調べる(1日の尿中タンパク質が3.5g以上であることがネフローゼ症候群の診断基準の一つ)
- 血液検査:血液中のアルブミン(代表的なタンパク質)の低下があるかなどを調べる(3.0g/dl未満がネフローゼ症候群の診断基準の一つ)
- 画像検査:腎臓の形や大きさの他にも肺水腫がないかなどを調べる
胸部レントゲン 検査腹部超音波検査 CT 検査MRI 検査
- 必要に応じて行う検査
腎生検 ・病理検査:腎臓の一部を取り出して、組織の状態を調べる- ネフローゼ症候群の原因の確定のために有用
- その他検査に関する情報
- 小児の場合
- 治療が効きやすい微小変化型ネフローゼ症候群がほとんどをしめる
- 治療は効きやすいが再発が多く注意が必要
- まずは
生検 は行わずに治療をする場合が多い
- 大人の場合
- 積極的に生検をして、どのタイプのネフローゼ症候群かを見分けることが治療のために重要
- タイプによって、治療への反応性が異なる
- 小児の場合
- 血液検査や年齢、
むくみ の経過からある程度、ネフローゼ症候群の原因 を推測できるが、それを確定するのに生検が大きな役割を果たしている
ネフローゼ症候群の治療法
一次性 ネフローゼ症候群の主な治療ステロイド薬 - 腎臓の
炎症 を抑える - 尿タンパクを減らす
腎機能 低下を和らげるむくみ を抑える
- 腎臓の
免疫 抑制薬- ステロイド薬の効果がない場合(
ステロイド 抵抗性)や、ステロイド薬の量を減らすと再発する場合(ステロイド依存性)に検討される - シクロスポリンやシクロフォスファミドなど
- ステロイド薬の効果がない場合(
- 食事療法
- 減塩:むくみ症状の緩和が期待できる
病期 の進行によってはタンパク質の摂取制限も行う- 食事療法を実践することは難しいので、主治医や栄養士とよく相談することが大切
二次性 ネフローゼ症候群は、原因に対する治療を行う- 治療に際して補助制度がある
- 東京都の難病医療費等助成の対象
- 小児慢性特定疾病医療費助成など医療制度の利用
ネフローゼ症候群に関連する治療薬
ジピリダモール製剤(抗血小板薬)
- 血小板凝集を抑え血栓を抑える作用や冠動脈を拡張させる作用をあらわし、血流を改善することにより心疾患や腎疾患などの症状を改善する薬
- 血小板が凝集すると血液が固まりやすくなり血栓ができやすくなる
- 体内には血小板凝集を促進する物質や血小板凝集を抑える物質がある
- 本剤は血小板凝集を促進する物質の阻害、血小板凝集を抑える物質の合成促進作用などにより抗血小板作用をあらわす
- 本剤には冠動脈を拡張させ心臓への血液循環を改善する作用もある
- 尿タンパクを減少させる作用によりネフローゼ症候群などの腎疾患へ使用する場合もある
副腎皮質ホルモン(ステロイド内服薬・注射剤)
- 抗炎症作用、免疫抑制作用などにより、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、血液疾患などに効果をあらわす薬
- 副腎皮質ホルモンの一つのコルチゾールは抗炎症作用、免疫抑制作用、細胞増殖抑制作用、血管収縮作用などをもつ
- 本剤はコルチゾールを元に造られたステロイド薬
- 本剤は薬剤のもつ作用持続時間によって、(作用の短い順に)短時間作用型、中間型、長時間作用型に分けられる
- 本剤は多くの有益の作用をもつ反面、副作用などに注意が必要となる
- 副作用の軽減目的のため、抗菌薬や胃薬などを併用する場合もある