ネフローゼ症候群の症状は?尿の泡立ち(タンパク尿)や浮腫のメカニズム
ネフローゼ症候群の症状は初期には気づかれないことが多く、進行した状態で見つかることもあります。ネフローゼ症候群の症状は尿から多くのタンパク質が失われることによって様々な形で現れます。
1. 尿の泡立ちはネフローゼ症候群の初期症状?
ネフローゼ症候群は腎臓の
ネフローゼ症候群による体の変調はある程度進行してから起こります。初期にはほとんど症状はありません。
2. ネフローゼ症候群の症状:タンパク尿・浮腫み・体重増加
ネフローゼ症候群は腎臓の糸球体という場所の異常のため尿から多くのタンパク質が失われることが原因で様々な症状が現れます。体からタンパク質が失われると様々な症状が現れる原因になります。主な症状としては体の
尿の泡立ち(タンパク尿)
「尿に泡立ちが起きるのは尿に異常があるからかもしれない」というのは一度は耳にしたことがあるかもしれません。尿にタンパク質が混ざっていると尿に泡立ちが起こることがあります。尿は自然に泡立つこともあり、すぐに消えてしまう泡立ちは特に異常がないことが多いです。しかし排尿後しばらくしても消えない尿の泡立ちは
尿の泡立ちが起きるメカニズムについては少し難しい話になるので割愛しますが、尿の泡立ちがなかなか消えないと心配なときには内科・腎臓内科・泌尿器科などを受診することで尿に異常が出ているかを調べることができます。
浮腫み(むくみ)
浮腫みはネフローゼ症候群の症状としてよく現れます。浮腫みは尿からアルブミンというタンパク質が失われることが主な原因とする説があります。
浮腫みが起こるメカニズムについてはまだ不明な部分があります。ここでは仮説の一つを解説しますが少し難しい内容です。血液中のアルブミンは水分を血管の中にとどめておく働きがあります。アルブミンが少なくなると血管の中から水分が血管の周りに移動します。水分が移動する周りの部分を間質といいいます。間質に水分が移動すると体の浮腫みとして自覚されます。
体が浮腫むとスネを押した時に跡が長く残ったり指が腫れた様になって曲げづらくなったりもします。外見上の変化としては眼の上の
多少の浮腫みは塩分の多い食事などで現れることもあり病気を原因とすることの方が少ないです。今までにない浮腫み方や浮腫みが続くなどの時には病気の影響も考えた方がいいでしょう。医療機関を受診して詳しく調べることをお勧めします。
体重増加
ネフローゼ症候群により体の中のアルブミンというタンパク質が少なくなります。アルブミンが少なくなると血管の中の水分が血管の外の間質という場所に移動します。間質にたまった水分は体からなかなか出ていきません。この間質への水分の貯留により体重が増加します。
倦怠感(けんたいかん)
ネフローゼ症候群ではいくつかの原因で
ネフローゼ症候群が起こると多くのタンパク質が尿から失われます。タンパク質の中でもアルブミンというものが失われると血管の中から水分が減っていきます。このために血管の中は水分不足になり脱水の状態になります。脱水は倦怠感の原因の一つになります。
またネフローゼ症候群が起きているときには腎臓の機能が大きく低下していることもあります。腎臓には体の中の老廃物を尿の一部にして体の外に出す役割があります。腎臓の機能が低下して老廃物が体の中にたまると倦怠感が現れることがあります。
3. ネフローゼ症候群に合併しやすい病気や症状
ネフローゼ症候群が起こるとそれにともなう症状や検査の異常が現れることがあります。
血尿
ネフローゼ症候群を
- 膜性腎症
- 膜性増殖性糸球体腎炎
- 巣状分節性糸球体硬化症(巣状糸球体硬化症)
血尿はネフローゼ症候群の原因を絞り込むための手がかりになることがあり、重要な症状または検査結果の一つです。それぞれの病気の解説について「ネフローゼ症候群の原因は?一次性と二次性(糖尿病、高血圧)の違い」で解説しています。
注意したいのは血尿の原因はネフローゼ症候群だけではないことです。血尿の原因となる病気は他にも多くの可能性があります。
【主な血尿の原因】
血尿が現れた際には泌尿器科または内科、腎臓内科を受診して原因について調べることが重要です。
脂質代謝異常
ネフローゼ症候群になると尿からアルブミンというタンパク質が多く出ます。アルブミンは血管の中に水分を引きつける働きがあります。アルブミンが減少するとそれを補おうとしてアルブミンを体の中で作ろうとします。アルブミンを作ろうとするとリポ蛋白という物質も同時につくられます。リポ蛋白は血液中の
血栓症
血管の中に血のかたまりができることを
ネフローゼ症候群が起こると血液をかためる働きをするタンパク質が肝臓で多くつくられると考えられています。このために血液がかたまる血栓症が起こりやすくなります。血のかたまりが肺の血管に詰まると致死的な状態に陥ることが多いです。このために血液を固まりにくくする薬を内服するなどの対策がとられることがあります。
参考文献
・浅野 泰/監「腎臓内科診療マニュアル」日本医学館, 2010
・福井次矢, 黒川清 /監「ハリソン内科学」メディカルサイエンスインターナショナル, 2013