やくぶつせいかんしょうがい
薬物性肝障害
服用した薬の副作用で肝臓が障害を受ける。軽いものであれば、薬の服用を中止することで自然に快復する
6人の医師がチェック 104回の改訂 最終更新: 2025.12.02

薬物性肝障害の検査について

薬物性肝障害とは、薬、サプリメント、健康食品によって肝臓がダメージを受けた状態です。薬物性肝障害になっても症状を感じない人が多いため、みつけるには検査が重要で、特に血液検査が有用です。また、肝障害の重症度を確かめるためにも検査が役立ちます。このページでは薬物性肝障害の検査について詳しく説明します。

1. 問診

問診ではお医者さんからの質問に答える形で、困っている症状や身体の状態、生活背景を伝えます。たとえば、下記のような質問が想定されます。

  • 飲んでいる薬はあるか
  • サプリメントや健康食品を摂取するか
  • 症状はあるか
  • 持病はあるか
  • 飲酒量はどのくらいか(お酒の種類、1回で飲む量、頻度)
  • 家族に肝臓の病気の人はいるか
  • アレルギーがあるか

薬物性肝障害の原因薬物を探ったり、薬物以外の肝障害の原因がないかどうか調べるのに、問診が欠かせません。

2. 身体診察

身体診察とはお医者さんが患者さんを見たり触ったりして、身体の状態を調べることです。

軽症の薬物性肝障害の人が身体診察を受けても、ほとんど異常が見当たりません。しかし、重症の薬物性肝障害に進行してしまった人では、身体診察で異常がみつかり病気をつきとめられることがあります。下記の5つの身体所見について説明していきます。

  • バイタルサイン
  • 視診
  • 聴診
  • 打診
  • 触診

バイタルサイン:脈拍数、呼吸数、体温、血圧、意識状態

バイタルサインは脈拍数、呼吸数、体温、血圧、意識状態のことで、日本語に直訳すると「生命徴候」です。バイタルサインを確認すると、おおまかに全身の状態がわかるため、緊急で対応が必要かどうか判断できます。バイタルサインが異常である人は、治療が遅れないように優先的に詳しい検査を行われることがあります。

視診:発疹、黄疸、羽ばたき振戦

視診とは見た目で身体の異常を調べることです。薬物性肝障害の人には発疹黄疸(眼球や皮膚が黄色くなる状態)がみられることがあります。また、重症の薬物性肝障害の人には「羽ばたき振戦」という徴候が起きます。これは、お医者さんの指示にしたがって腕を伸ばして手のひらを見せるような姿勢をとったときに、意図せず手が震える様子のことです。肝臓の働きが低下し、解毒できなくなったアンモニアなどの有害物質が溜まったときに生じます。

聴診・打診:胸水や腹水の有無

聴診とは聴診器を使って身体の音を聞くことです。打診では身体を優しく叩いて、その音で内臓の異常を調べます。進行した肝障害のサインである胸水腹水をがみつかります。

触診:身体のむくみ、肝臓のはれ

触診とは身体を直接触って調べることです。重症の薬物性肝障害になると脚のむくみが現れるので、指で押して調べます。寝たきりの人は、脚よりもお尻のほうがむくみやすいです。また、お腹の右上に手を当てて、肝臓がはれていないか確認します。

3. 血液検査

血液検査は薬物性肝障害の診断をするうえで欠かせない検査です。血液検査で調べられるのは、肝障害になっているかどうか、肝障害の原因はなにか、肝障害の重症度はどれくらいかといったことです。

肝障害の有無を調べる血液検査

肝障害があるかどうか調べる検査には、下記のような検査があります。

  • ALT
  • AST
  • γ-GTP
  • ビリルビン(直接ビリルビン)
  • ALP

これらの検査で異常がみつかると、次に述べる肝障害の原因を検索する検査が追加されます。

肝障害の原因を調べる血液検査

血液検査で肝障害がみつかった人では、次に肝障害を起こしている要因がなにかを調べます。

【肝障害の要因を調べる血液検査】

  • 好酸球数
  • 薬剤によるリンパ球刺激試験(DLST)
  • 各種ウイルスの抗原・抗体検査やPCR検査
  • 抗核抗体
  • 抗ミトコンドリアM2抗体

◎好酸球数

好酸球は白血球の一種です。アレルギーによる薬物性肝障害であれば、好酸球が増えることがあります。また、寄生虫に感染しているときにも増える値で、たとえば、エキノコックスという寄生虫が感染していると、肝障害に伴って好酸球数が高値になります。

◎DLST(薬剤リンパ球刺激試験)

DLST(drug-induced lymphocyte stimulation test:薬剤リンパ球刺激試験)とは、ある特定の薬剤(被疑薬)に対してアレルギーがあるかどうかを調べる血液検査です。薬剤へのアレルギーによって肝障害が起きているのであれば、原因薬剤を同定できる場合があります。ただし、薬物性肝障害でDLSTをした人のうち被疑薬の陽性反応が出るのは3割程度といわれ、原因薬剤がわからないことのほうが多いです。加えて、DLSTには健康保険が適用されず自費診療になるので、費用がかさむ点にも注意が必要です。

◎各種ウイルスの抗原・抗体検査やPCR検査

肝障害を引き起こすウイルスに感染していないか調べる検査です。たとえば、A型・B型・C型・E型肝炎ウイルスの検査があります。また、検査方法には、抗原検査、抗体検査、PCR検査があります。

感染が疑われるウイルスの種類は、肝障害が生じてから経過した期間や症状などによってある程度絞り込めます。発症から数週間以内の肝障害では、A型・B型・E型肝炎ウイルスなどが疑われ、これらの検査が行われることが多いです。一方で、数ヶ月以上長引いている肝障害のときには、B型、C型肝炎ウイルスを調べます。

◎抗核抗体

抗核抗体は自己免疫性肝炎という病気を見つけ出すのに役立ちます。自己免疫性肝炎とは、本来異物を排除するための免疫システムが誤作動を起こして、自らの肝臓を攻撃してしまう病気です。自己免疫性肝炎は薬物性肝障害と同時に起こることがあるので、薬物性肝障害の人によく行われる検査です。

◎抗ミトコンドリアM2抗体

抗ミトコンドリアM2抗体は原発性胆汁性胆管炎という病気で陽性となる血液検査です。原発性胆汁性胆管炎は、肝臓内の胆汁の通り道(肝内胆管)が破壊される病気であり、薬物性肝障害と似た症状や検査結果となることがあります。原発性胆汁性胆管炎と見分けるのに、抗ミトコンドリアM2抗体が有用です。

肝障害の重症度がわかる血液検査

薬物性肝障害はごくまれに劇症肝炎という重症の状態になります。劇症肝炎となっているかどうか調べるには、下記の検査が有用です。

◎血中アンモニア濃度

血中アンモニア濃度は重症の肝障害のときに高値となります。アンモニアはタンパク質を消化するときに生成され、肝臓で分解されて無害化されます。しかし、肝機能が低下するとアンモニアが分解できなくなり、血中に蓄積してしまいます。

◎凝固検査(プロトロンビン時間:PT、活性化部分トロンボプラスチン時間:APTT)

凝固検査とは、出血を止めるのに必要な凝固因子の働きを調べる検査です。この凝固因子は肝臓で作られますが、肝機能が著しく低下すると凝固因子が作れなくなり凝固検査の値が異常値になります。

4. 画像検査

画像検査をしても、ほとんどの薬物性肝障害では異常はみつかりません。しかし、薬物性肝障害とまぎらわしい病気を区別するのに役立ちます。

腹部超音波検査(エコー検査)

人には聞こえない高い音(超音波)を身体に当てて、臓器から跳ね返った超音波を測定すると、臓器の断面図として見ることができます。この原理を利用した超音波検査合併症の心配がなく受けられます。脂肪肝胆石症肝臓がんなどを見つけるのに有用です。

腹部CT・MRI検査

CT検査やMRI検査は、超音波検査だけでは診断が難しいときに行われます。CT検査は放射線を、MRI検査は磁力を利用して身体の断面を映し出します。腹部超音波検査と同様に、脂肪肝胆石症肝臓がんなどの病気を見つけるのが得意な検査です。

なお、がんなどの病気を見つけやすくするために、造影剤を注射してからCT検査やMRI検査をすることがあります。ただし、気管支喘息、ヨードアレルギー体質、褐色細胞腫腎機能が悪い人などでは、合併症が出やすくなるため造影剤を使えないことがあります。

MRCP検査

MRCP検査とは、MRI検査で得られる画像データをコンピュータ処理して、胆嚢、胆管、膵臓といった部位を見やすい画像に変換したものです。胆石症胆管がん膵臓がんといったの薬物性肝障害とまぎらわしい病気を発見できます。

5. 肝生検と病理組織学的検査:肝臓の組織を詳しく調べる検査

生検とは、皮膚の上から肝臓まで針を刺して、肝臓の一部を採取することです。採取した細胞や組織の一部を顕微鏡で観察することを、病理組織学的検査といいます。この検査によって薬物性肝障害の進行度や要因を突き止められることがあります。しかし、出血などの偶発症がおこりうるので、その他の検査によって十分に病状がわかっている人では行われません。

【参考文献】