すいとう(みずぼうそう、みずぼうそう)
水痘(みずぼうそう、水疱瘡)
ウイルスが原因で、全身に分布する水ぶくれを主体とする発疹と発熱を来す疾患
10人の医師がチェック 121回の改訂 最終更新: 2021.11.26

水痘(みずぼうそう、水疱瘡)に対して行われる治療

水疱瘡(みずぼうそう、水痘)の治療薬と予防接種について説明します。抗ウイルス薬はどんな人に処方されるのか、予防接種を特に受けた方が良いのはどのような人か、詳しく説明していきます。

1. 水疱瘡に対して用いられる治療薬

水疱瘡に対して用いられる治療薬には、抗ウイルス薬、解熱鎮痛薬、発疹のかゆみや炎症を抑える塗り薬、抗ヒスタミン薬があります。

抗ウイルス薬は水疱瘡に有効ですが、必須の薬ではありません。では、抗ウイルス薬が必要となるのはどのような場合なのでしょうか。また、解熱鎮痛薬や塗り薬、抗ヒスタミン薬の使い方についても説明します。

抗ウイルス薬

水疱瘡の原因は水痘帯状疱疹ウイルスです。抗ヘルペスウイルス薬は、水痘帯状疱疹ウイルスの増殖を抑えることで水疱瘡の症状を軽減します。

12歳以下の健康な子どもであれば、水疱瘡は自然に治るため抗ヘルペスウイルス薬による治療は必要ありません。

13歳以上で水疱瘡の予防接種を打っていない人、アトピー性皮膚炎喘息など慢性的な皮膚や肺の病気でアスピリンやステロイドによる治療を行っている人、妊婦、免疫不全のある人、水疱瘡の合併症がある人、その他の大人は、水疱瘡が重症化しやすいため抗ヘルペスウイルス薬で治療します。合併症とはひとつの病気によって引き起こされるほかの病気のことで、水疱瘡の合併症には、脳炎、髄膜炎、皮膚感染症の他、肺炎、肝炎、下痢、咽頭炎中耳炎などがあります。アシクロビルなどの抗ヘルペスウイルス薬を、発疹が出始めてから1日(24時間)以内に開始すると、発疹の拡がりを抑え、かさぶたになって治るまでの期間や熱が出ている期間を1日程度短くしたり、水疱瘡の症状を軽くしたりする効果があります。

抗ヘルペスウイルス薬は、免疫不全や合併症のある人には点滴で、それ以外には内服で投与します。抗ヘルペスウイルス薬の副作用には、下痢や腹痛、胃痛などの胃腸症状、頭痛、腎障害などがあります。

解熱鎮痛薬

熱によるつらい症状を和らげるために解熱鎮痛薬が処方されることがあります。発熱はウイルスの感染から身体を守ろうとして生じる反応なので、必ずしも熱を下げる必要はありません。しかし寝苦しい、ぐったりしているなど熱によるつらい症状がある場合には、それを和らげるために解熱鎮痛薬を使用します。アスピリンは脳や肝臓に障害を来たすライ症候群(Reye症候群)のリスクを高めるため使用しません。アセトアミノフェン(商品名:カロナール®、アンヒバ®など)を使用します。解熱鎮痛薬の効果は4-5時間程度持続します。アセトアミノフェンの副作用には、肝機能障害などがあります。

かゆみや炎症を抑える塗り薬・抗ヒスタミン薬

皮膚を強く掻いて傷つけてしまうのを防ぐ目的で、フェノール亜鉛華リニメント(通称カチリ)、イブプロフェンピコノール(商品名:スタデルム®、ベシカム®)などの塗り薬が処方されることがあります。小児科では伝統的にフェノール亜鉛華リニメントが処方されることがありますが、注意すべき点があります。フェノール亜鉛華リニメントを塗ると、ピリピリとした痛みを感じることがあります。また水疱が破れてただれている部分や、強く掻いて皮膚の表面が剥がれている部分やかさぶたには、フェノール亜鉛華リニメントを使用してはいけないことになっています。このような場合には塗らないようにしましょう。

塗り薬にはかゆみを抑える効果はあまり期待できないので、強いかゆみがある時には抗ヒスタミン薬を内服します。抗ヒスタミン薬にはフェキソフェナジン塩酸塩(商品名:アレグラ®など)やオロパタジン塩酸塩(商品名:アレロック®など)などがあります。抗ヒスタミン薬の副作用には、眠気、下痢、吐き気、肝機能障害などがあります。

2. 水疱瘡には予防接種がある

水疱瘡の予防接種は、理由があって打てない人以外すべての人で、受けることが推奨されます。予防接種で自分が水疱瘡にかからないようにすることと、人に水疱瘡をうつさないようにすることが大切です。水疱瘡の予防接種は公費の対象で、1歳になったら接種します。大人は水疱瘡にかかると重症化するリスクが高いので、かかったことのない人は予防接種を打っておけば危険性を減らせます。

水疱瘡のワクチンはいつ受ければ良い?

1歳になったら水疱瘡のワクチンを受けます。1歳で受けておきたいワクチンには、水疱瘡の他にもMR(麻疹風疹)、おたふくかぜ、ヒブの4回目、肺炎球菌の4回目、4種混合の4回目(標準的には1歳半頃になることが多いが1歳での接種も可能)があります。これらは全て同時に打つことができます。打ち忘れのないように1歳のお誕生日が来たら早めにこれらのワクチンを済ませるようにしましょう。

子供の予防接種スケジュールの表

[PDF版はこちら]

水疱瘡のワクチンは定期接種の対象で、1歳の誕生日の前日から3歳の誕生日の前日までの間は費用の自己負担なく接種することができます。2回の接種が必要で、1回目は標準的に1歳から1歳3か月の間に、2回目は1回目のあと3か月以上たってから(標準的には6か月から1年あけて)接種します。

定期接種の対象年齢を過ぎてしまっても、費用は自己負担になりますが、2回の接種が推奨されています。13歳未満では3か月以上、13歳以上では4週間以上あけて2回接種します。水痘ワクチンを取り扱っている病院であればどこでも打つことができるので、年齢に応じて小児科か内科にあらかじめ問い合わせてから受診をしましょう。

また、水疱瘡にかかったことも予防接種を受けたこともない人が、水疱瘡患者に接触した場合、接触から3日(72時間)以内にワクチンを接種すると、水疱瘡の発症を防いだり発症しても症状を軽くしたりする効果があります。

生ワクチン?不活化ワクチン?

水疱瘡の予防接種は生ワクチンです。生ワクチンは、ウイルスや細菌の病原性を弱めてワクチンにしたものです。生ワクチンを打つと病原性を弱めたウイルスや細菌が身体の中で増えることで免疫がつきます。病原性をしっかり弱めたウイルスや細菌を接種するので、普通は特別な症状は出ません。まれに軽くその病気の症状が現れることがありますが、ワクチンを打たずに病気になる確率よりもずっと低く、また症状も軽く済むため、ワクチンを打つメリットがあるのです。

生ワクチン・不活化ワクチンどちらでも他のワクチンと何本でも同時に接種することができます。同時接種によってワクチンの効果が弱まることも、副反応の頻度や程度が強まることもありません。打つべきワクチンを適切な時期にしっかり打っておくために、同時接種を上手に取り入れることが有用です。

ただし、水疱瘡の予防接種を打った後に同時接種以外で他の生ワクチンの注射を打つ際は、27日以上あける必要があります。

大人もワクチンを受けるのか?

大人も、水疱瘡にかかったこともワクチンを受けたこともない場合には、水疱瘡のワクチンを受けることが推奨されます。その理由は、大人の水疱瘡は子どもよりも重症化しやすいこと、特に妊婦が水疱瘡にかかると先天性水痘症候群など出産した子どもに影響を及ぼす可能性があることなどです。妊娠希望者や妊婦の家族、水疱瘡患者に接する機会の多い医療従事者や介護従事者、子どもと直接関わる仕事をしている人には、特に強く推奨されます。

水疱瘡のワクチンは4週間以上あけて2回接種します。水疱瘡にかかったことがあるかどうか、ワクチンを受けたかどうかがはっきり分からない場合も、血液検査で水疱瘡の抗体があるかどうか(過去にかかったかどうか)を調べることなく、ワクチンを受けて構いません。それによってワクチンの副反応の頻度や程度が強まることはありません。